『くちゅぷちゅキッス(まじかるメディシン番外編)』

 兄さんの部屋のベット。僕たちはタオルケットをすっぽりかぶって、できるだけ静かに裸身を重ねる。
 薄明かりが糸の隙間から染み出し、晶兄さんの顔が淡い青緑に染まっている。
「慧、目ェ閉じろよ。……やっぱ、なんか変だ」
「いつものキスは、そんな恥ずかしくないのにね」
「大人キスで目を閉じるのは、なんか本能っぽい感じだよなぁ……」
 確かにそんな気がする。ちょっと前までは軽い疑問だったことも、体験すれば少しずつ分かってくる。僕は兄さんの下でそっと目を伏せる。
 覆いかぶさるように、兄さんが僕の体を抱く。しっとりと濡れた唇が押し当てられる。
「んん……、兄さ……ん」
 上唇と優しくついばまれていると、口がだんだん開いていく。僕も少し舌を伸ばし、兄さんの歯列を舐める。
「けい……」
 そして、兄さんの舌も絡み合うように伸ばされる。一緒に甘い唾液が流れ落ち、僕の口内に溶けていく。
 僕はさらに兄さんとの密着を強めようと、背中へ回した腕に力を入れる。お互いの汗ばんだ胸がピッタリと張り付いていく。
 兄さんの両手が僕の頭を掴む。そっと耳の裏を撫でられ、そのまま耳たぶを伏せられる。
 僕の鼓膜から、全ての音が遮断される。
「……あッ、……あぅ……うんッ」
 こうすると意識が舌先に集中し感度が増すらしい。兄さんはどこでこういう知識を仕入れるのか、僕はこれまでにいろいろと実験台にされてしまっている。
 でも、僕そのことが嫌いじゃない。むしろ、お互いが気持ち良くなるために一生懸命勉強(?)する兄さんには感謝さえしている。
 キスが続く。グチュグチュという唾液の潰れる音が耳の奥から響いてくる。それはとてもイヤらしく、僕の呼吸もどんどん荒くなっていく。
「は……はぶ……ッ! ふ……、ふうぅ……」
 兄さんの舌が僕の口の天井をこぞり上げる。僕はこの感触にめっぽう弱い。まるで頭の中まで直接舐められているかのようにさえ感じてしまう。
(気持ちいい……。兄さん、それ、すごいイイよぉ……ッ!)
 僕も気を入れて兄さんの口を吸う。粘膜が揺れ、唾液が行き交う。僕はこのままドロドロに溶けてしまいそうな錯覚さえしてしまう。
 自然と体がくねりだす。柔らかい肌がこすれあい、さらなる発汗が促される。タオルケットの中が、薫る汗で蒸されていく。
「あ……ッ、そこ……、あッ……ああッ!」
 兄さんは腰を器用に動かし、僕たちのペニスの芯を重ねる。熱い肉棒の律動に、思わず僕の腰も跳ねる。
「すごいな……、お前キスだけでこんなに硬くなってる……」
「に、兄さんだって……」
 兄さんのモノが、ゴリゴリと僕のペニスを刺激する。お腹とサンドイッチされた二本のペニスはビクビクと痙攣し、奥からとろみまでこみ上げてくる。
「は……はぁ……あ……、はぁ、はぁ……、はうぅ……」
 性器同士のなぶり合い……。お互いのもっとも感じるところで愛撫するという倒錯的な行為が、どんどん官能をつのらせていく。
 兄さんの高ぶりが、直接おちんちんから感じられる。悦楽が波紋のように下腹部から広がっていき、僕の脳を揺らす。
「慧……、けい……ッ」
 兄さんが切なげな声で僕の名を呼ぶ。手はそっと僕の頬を撫で、口の周りのヨダレを指ですくっている。
「はふ……」
 僕は少し口を開き、兄さんの指を舐める。
 唇で指先を挟むと、兄さんの手の動きが止まる。僕はもう少し顔を動かし、兄さんの指をもっと深く吸い込む。
 クチュ……チュ……、プチュ……。
 ほ乳瓶でミルクを飲む赤ちゃんのようにしゃぶる。舌を絡めながら吸飲し、爪先をそっと噛む。
「はは……、慧、すごくヤラしい……」
 兄さんの嬉しそうな声……。僕はこの行為がそんなにエロいとも思えないんだけど、兄さんが喜んでくれるならやっぱ嬉しい。……うん、それだけで感じちゃう。
 兄さんが口内の指をクルリと回す。指と舌という変則的なフレンチキスに、僕の息が詰まる。脳に酸素が上手く行き渡らないまま、心が撹拌されていく。
 兄さんの腰の動きが速くなる。もどかしげながらも確実に快感を押し上げるピストン運動に、僕の背筋が反り返っていく。
「あ……あぁ……」
 自然と足が兄さんに絡まる。指先はキュッと曲がり、ピクピクと震え出す。
「慧……、俺……出すよ……。もう、出しちゃう……ッ」
 兄さんの快感が確かに伝わる。僕も首を振って同意する。
 しっかりと目をつぶり、兄さんのリズムに意識を集中させる。
(一緒に……、一緒にイきたい……ッ! 兄さんと、同時にッ!)
 自然と呼吸が重なる。いつのまにか腰の動きまでシンクロしている。これはたぶん兄さんも意識して合わせている。
(兄さん……ッ!!)
 僕は腕に力を込めて、兄さんを抱きしめる。好き……兄さんが好き……ッ!
「慧……ッ!!」
 兄さんの腕も僕の首にきつく絡み、熱い唇が再び重なる。勢いにまかせて舌を吸われ、僕は絞るような呻きを上げる。
「ぐうッ……、に……にいさ……ッ!」
 その瞬間、堪えきれない快感の波が僕の意識をさらう。閉じたはずのまぶたにフラッシュが差し込まれ、心が飛ぶ。
「は……はぶ……ッ! う……うあああぁぁッ!」
「け……慧いぃッ!」
 ドビュウウウウゥッ! ビュルウウゥッ! ビュウゥッ! ビュルウゥッ! ビュッ! ビュウウゥッ!
 僕たちは一緒にイった。二つのペニスからは同じタイミングで大量の白濁液が噴き出した。
 僕たちは限界まで強く抱き合い、そのまま体を硬直させた。
「……に……いさ……ん」
「う……うぅ……」
 達した瞬間に染みこむ兄さんの体温……。僕はあまりの心地よさにヒクヒクと震える。
 兄さんも無意識なのか、僕のうなじをずっとなで続けている。
「は……、はぁ……」
 しばらくすると、体に力も入らなくなる。なんか、このまま眠ってしまいそうだ……。兄さんに抱かれたまま寝ちゃえたら幸せなんだろうな、……なんて、僕は思ってしまった。

 まあ、そういうわけにもいかないので、僕たちはそのままお風呂に向かった。佐奈ちゃんはとっくに寝ていて、母さんも今日は帰ってこない。今、この家は僕たちの自由空間だ。
「うー……、おちんちん全然小さくならないよ」
「はは、それならもう一回くらいするか? お風呂とかでさ」
「でも、もうこすりすぎて痛いくらいだし……」
「そりゃ残念♪」
 脱衣所を抜け、僕たちは直接浴室へ。
 蛇口をひねればすぐに熱いお湯がシャワーから出てくる。僕たちは二人一緒にお湯を浴びる。
「やっぱさ……、セックスって気持ちいいね……」
「そうだな」
 兄さんは僕の濡れた頭を撫でる。
「そのうちお尻とかでも出来るようになるといいね。……まだ指一本しか入らないけど、もう少しでさぁ」
「……まあ、あんま無理するなよ」
「うん、でもダイジョブだと思うよ」
 僕は今、もっとちゃんとセックス出来るようにいろいろ練習中している。例えばシャンプーとかで指を濡らしてお尻に入れたり……。ちょっとずつ広がってきているみたいだし、もうすぐお兄ちゃんのモノも入るようになると思う。
「そうしたらさ、佐奈ちゃんも仲間にいれてあげようよ。こんな気持ちいいこと、佐奈ちゃんも大好きだと思うんだ。……だから、佐奈ちゃんが精通したらスグにでもさぁ……ッ」
「……ああ、そうだな」
「うんッ!」
 僕は熱い水滴に打たれながら兄さんを見上げる。湯煙の向こうに優しい兄さんの笑顔が見える。
 大好きな、大好きな、大好きな兄さんの笑顔。
 僕は思わず、そのまま兄さんの胸に抱きついてしまった。

(了)

[未投下]

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