夢を見た。


飛び散る血。

叫ぶ母。

さようならと呟く父。

あぁ、幸せが終わると、そう思った瞬間だった。




あの頃、今から7年前、僕が9歳のときの話だ。

たまたま、そうたまたま、毎日忙しい父が休日だったから。

「今日は家族サービスだ。」

と、父が言ったから。

僕と父と母で、公園に出かけたんだ。


父が公園に遊びに連れて行ってくれるのは初めてだったから…。

僕はただ、嬉しかった。


あんなことになるなんて、思わなかったんだ。



道路にてんてんと転がっていったボールを僕が追いかけて行って。

たまたま通りかかった乗用車が、僕を轢きかけて。

父が僕を突き飛ばして。

そのまま父が乗用車の餌食になった…だけ。


それだけ、だったんだ。


まるで、漫画のような展開。


母が、何かを叫んでいる。

乗用車に乗っていた人が近くの公衆電話へ走っていく。

僕はただ、突き飛ばされた痛さと、飛び散った血の多さに、愕然となるだけだった。




父が、残り少ない力を振り絞って、僕に手招きした。

僕は、刃物を突きつけられた気持ちになって、そのまま父に近づいた。

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