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「海だーーーー!」
青い海、白い砂、抜けるような大空。海だ。
「うん、ええ天気や」
「気持ちいいわね〜」
荷物を持って浜に下りる。今回は二泊三日の泊まりで海に行くことになった。
必要最小限の荷物以外はすでに海の近くの旅館に置いてきていた。
水着も既に着ている。外に出る時はちょっと抵抗があったけど人間ようは慣れだ。
「よっしゃ、泳ごうぜ!」
すでにノリは波打ち際まで走って行っていた。元気だ。
「ちょっと待って」
俺は荷物の中から浮き輪を出すと空気を入れる。
「なんや?辰実泳げへんのか?」
「・・・実は」
そう、カナヅチだったりするのだ。
「初耳ね〜」
「去年はプールにしか行かなかったからな」
ぶしぶしとポンプを踏み続ける。海とかプールは好きなんだけどなぁ・・・。
何故か身体が浮かないのだ。
『どわーーーー』
遠くでノリが波に飲まれている。今日は波が高いのかな。
「よし、完成」
ぱんぱんに空気が入っていることを確認する。
「よっしゃ、いこか」
「あら?ノリはどこに行ったのかしら?」
『ぅぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・』
あ、居た。力一杯クロールで沖へ向っている。無駄にテンションが高いな、あいつ。
波打ち際につく。波が足に当たり足の下の砂がさらわれていく。
「うぅ・・・この『今から水につかる』ってのが結構覚悟が・・・」
「てい」
「うわわっ!ぷっ」
後から押されて頭から海に突っ込んでしまった。ぺっぺ、しょっぱい。
「な、なにすんだよ和久」
「隙だらけやで辰実」
そう言うと和久もどんどん海に入って行く。あいつもテンション上がってんな。
「私達も行くわよ辰実ちゃん」
「お、おお」
桜子に腕を引っ張られる。
「もう足がつかない」
浮き輪があるんだけど何となく足が付かないと不安だな。
「なに?恐いの辰実ちゃん」
「こ、恐い事はない」
浮き輪に掴まって桜子がバタ足をしている。うぅ、どんどん沖に出て行く。
「ん〜、気持ち良い」
沖の浮きの近くまでくると桜子が浮き輪から離れる。俺は波に身を任せて
ぷかぷかと浮いていた。
「夏って感じだな」
太陽の光に目を細めながら空を見る。立派な入道雲が見えた。
「ぶはっ!」
「うわっ!ノリ!?」
ノリがものすごい形相で浮き輪に掴まってきた。
「ちょ、ちょい休憩・・・ぜーぜー」
どんだけ全力で泳いでんだよ。
「ノリ、飛ばし過ぎやで」
横を和久がスイーっと横切る。こいつ泳ぎ上手いな。
「よし、回復。いくぞーーー!」
「おい・・・うわっぷ」
ノリのバタ足の飛沫が顔にかかる。どうやら浮きまで行く気らしい。
「俺らも行こか」
「そうね」
和久と桜子もノリを追いかけて泳いで行く。
「ちょっと待って〜」
俺も浮き輪にしがみ付き泳ぐ。お、遅い。
「お〜い。置いてくなって〜・・・わっぷ!」
大きいうねりに身体が揺れる。波でバランスを崩してしまった。
「わわっ!ごぼ・・・た、助け・・・がぼ」
浮き輪を浚われてしまった。し、沈む!
「ごぼごぼ・・・ぱっがぼっ・・・はぁ!」
何とか息継ぎをしようとばたばたともがくが海水が入ってくるばかりだ。
(し、死む〜〜〜!)
「ごほっごほっ」
「だ、大丈夫か辰実!?」
「か、和久〜〜〜〜」
た、助かった・・・。和久が俺を抱かかえてくれた。
「辰実あんま抱き付いたらあかん。胸が当たっとる」
「へ・・・?わー!スケベ!・・・がぼ」
「こ、こら。暴れるな!」
夢中だったとは言え和久にしっかりと抱き付いてしまった。う〜、カッコワルイ。
「ぜぇぜぇ」
「どんくさいなぁ辰実」
「ほっとけ・・・はぁはぁ」
「浮き輪浮き輪っと・・・」
和久が波にさらわれた浮き輪を探す。その時ばしゃばしゃと桜子がこちらに泳
いで来るのが見えた。
「かぁ〜ずぅ〜ひぃ〜さぁ〜〜!抜け駆けは許さないって言っただでしょー!」
泳ぎながら喋ってるよ。器用なやつ。
「桜子あかん!何する気や!?」
「へ?わわっ!ごぼごぼ」
「辰実ちゃんは私のなのー!」
桜子に抱き付かれて再び沈む。海水をしこたま飲んでしまった。
「あかーん!二人分の体重を支えるのは無理やーーー!」
「あぁーん、辰実ちゃーん」
「ぶくぶくぶくぶく・・・」
桜子・・・覚えてよろ・・・。
「し、死ぬかと思った・・・」
あの後ノリが浮き輪を持ってきてくれたので何とか助かった。
「和久が抜け駆けするから悪いのよ」
「お前なぁ・・・。さっきのはホンマに危なかったで」
和久が浜に敷いてあるゴザに倒れるように横になる。
「後向いたらお前等三人が沈んでくのがみえてビビったぞ」
「いや、助かったよノリ。お前がいなかったら死んでた」
ノリが四人分の飲み物を買って帰ってきた。スポーツドリンクを受けとって
一口飲む。海水で荒れた喉が癒される。
「ぷはっ。生き返った」
『ぐ〜』
「うっ」
お、お腹が鳴ってしまった。
「あら、もうお昼ね。海の家でお昼食べましょ」
桜子が砂を払いながら立ちあがる。
「せやな。俺はもう腹ペコや」
そう言えばもうそんな時間か。それにしても海で食べるラーメンとか焼きソ
バって何であんなに美味いのかな。
「よっしゃこい!」
ボンッ
ビーチボールが跳ねる。
「いくでー。辰実パスや」
和久のトス。
「まかせろ!うりゃっ」
「おわっ」
会心のアタックが決まった。受け損ねたノリが砂まみれになる。
「へっへ〜ん。どうだ」
「ノリ、しっかりやりなさいよ」
「ぺっぺっ!桜子、お前も働け!」
さんざん泳いだ俺達はビーチバレーをしていた。久しぶりに全開で身体を動
かした気がする。気持ち良いもんだ。
「くそぅ。なんか1対2で勝負してる気がするぞ」
実際桜子はあまり動かずにノリ一人でボールを追っかけていた。
「ねえ辰実ちゃ〜ん?私と組みましょうよ〜」
桜子がくねくねと”しな”を作って近寄ってくる。
「却下。お前と一緒だとロクな事がない」
襲われたり襲われたり襲われたり。
「何よケチー」
「おわっ!だから抱き付くなって!」
ただでさえ水着で露出度が高いんだから本当に抱き付かないでくれぇ。
「なんつーかあれだな。目の保養だな」
「せやなぁ」
うんうんと頷く野郎二人。お前等も止めてくれよ・・・。
「きゃっ」
『ズルッ』
・・・ズル?
桜子が尻餅をついている。和久とノリは固まってこちらを見ている。心なし
か周囲の視線も集まってるような・・・。
「・・・・・・・・・」
「痛ったーい」
尻をさすってる桜子が手に持ってるのは水着。うん、それはわかった。
・・・・・・誰の?
「・・・のわああぁぁぁぁ!!」
俺の水着かー!!!
「お、落ち付け辰実っ・・・おわっ」
「うわっ!」
慌てて近づいてきたノリが砂に足を取られてこける。その勢いで俺まで押し
倒されてしまった。
「あたたたた」
「・・・・・・」
お、重い。
「ノリ、重・・・」
「・・・・・・やーらかい」
ノリの両手が丁度俺の胸を鷲掴みにしていた。しばらく思考が止まる。
「・・・・・・ノリ」
「うへへ・・・ん?」
「死ねえええぇ!!!」
「うげぁっ!」
ノリを思いっきり殴り飛ばして桜子から水着をふんだくる。
「うわーん!見られたー!!」
ものすごい人数に乳を晒してしまった。うぅ、半泣きだ。
「あはははは。ごめんね辰実ちゃん」
あはははじゃない。やっぱり桜子と関わるとロクな事がない・・・。
「あ〜、疲れた」
流石に泳ぎ疲れてゴザに座る。
「何や、もう泳がんのか辰実」
「ちょっと休憩」
和久も隣に座る。桜子とノリはまだ泳いでいるみたいだ。元気だなぁ。
「喉乾いたな」
ノリが買って来てくれたスポーツドリンクはもう飲んじゃったし。買いに行くかな。
「あれ?」
ゴザの隅にペットボトルが転がってる。中身は水かな。
「これ誰の?」
「さあなあ。桜子の荷物の近くやから桜子のとちゃうんか?」
桜子のか。ラベルが剥してあるし封も開いてるみたいだけど中身は減ってない
な。中身を入れな直したのかな。
「ま、いいや。もらっちゃえ」
キャップを外して一気に飲む。
「ぶっ!?ごほっごほっ!」
「辰実!?」
の、喉が焼ける。ものすごいアルコール臭。例えるなら化学の実験の時のアル
コールランプ・・・。
「な、なんだこれ・・・うあ」
一口飲んだだけなのに視界が歪む。
「おい辰実!しっかりせえ!」
「・・・和久」
倒れてしまったらしい。ダメだ、頭がぼーっとする。
「いったい何を飲んだんや・・・うわっ、こりゃごっつい強い酒やで!」
和久が一口含んで吐き出す。
「こらアカンな。辰実、一回旅館に行くで」
「ん・・・」
朦朧とした意識で一回こくりと頷く。
「よっしゃ、ちょっと我慢せえよ」
「あ」
和久におんぶされてしまった。・・・なんか嬉しいな。
「さてと、少し休んだら治るとはずや」
旅館の部屋。和久が敷いてくれた布団に横になる。頭がふらふらして気持ちいい。
「水貰ってくるわ」
「ダメ・・・」
部屋を出て行こうとした和久に無意識に抱き付いてしまった。
「こらこら辰実。水もらいに行かれへんやんか」
困った顔で和久が頭を撫でる。思考がとろける。
「ん・・・和久ぁ」
「やれやれ。ホンマに辰実は酒が入ると性格変わってまうんやなあ」
和久があやすように頭を撫で続ける。胸の奥が切なくなる。
「和久・・・好き・・・・・・」
ぎゅっと抱き付く。自然とそんな言葉がでた。
「・・・辰実、お前酔うとるんや。少し休めや」
肩に手が置かれる。引き剥がされまいとさらに強く抱き付く。
「・・・好き」
「辰実・・・」
和久の動きが止まる。
「まいったなぁ・・・。俺かて我慢の限界があるで」
それだけ言うと和久も抱きしめてくる。
「あかんな・・・ずっと我慢しよ思てたんやけどなあ」
「和久ぁ・・・好き。好きだよ」
自然と涙が溢れた。何で自分が泣いているのかわからない。
「なあ辰実。それ本心か?」
抱きしめたまま頭を撫で続ける。どうなんだろう・・・頭がぼーっとして考え
がまとまらない。
「ん・・・・・・わかんない」
「そうか」
和久がじっと顔を見つめる。そのまま唇が重なった。
「ん・・・」
ただ触合うだけのキス。
「ふぅ」
唇が離れる。和久の顔を見ると微笑んでいるよな気がした。
「・・・もっと・・・したいな」
「辰実・・・」
唇がぶつかる。さっきのとは違う唾液を交換するような深いキス。もう何も
考えられない。
「んん・・・ふぅ・・・んあ」
ぴちゃぴちゃと音が響く。お互いの舌が絡む。
「辰実、ホンマにええんか?」
キスを止めると和久がそんな事を聞いてくる。身体が熱い・・・もっとしてほ
しいと思った。
「うん・・・いいよ」
ゆっくりと布団に押し倒される。首筋に和久がキスをする。
「あん・・・くすぐったい」
「ちょっとしょっぱいな」
和久に舐められた場所が熱い。水着がたくし上げられて和久の手がじかに触れる。
「んあ・・・あぅんん・・・」
じれったいほどゆるゆると揉み解すような愛撫。先端がカチカチになるのがわか
った。
「立っとるで辰実」
「んん・・・バカ」
「アホはええけどバカって言うな」
「ふぁあ!・・・くぅん」
起立した先端が口に含まれ舌先で転がされる。ビリビリと電気が走る。
「辰実・・・可愛いで」
「はぁ・・・あう、うぅん」
和久の言葉が脳に染み込んでいく。心まで溶けていくような感覚。
「辰実、俺を恨んでくれてかまわん。俺は今女のお前が愛しくてしゃーないんや」
身体中を愛撫しながらそんな事を囁く。胸の奥がたまらなく切ない。
「うん、いいよ。私も和久が好き」
「男に戻らんでもええんか?」
「うん。私も今が・・・あん・・・以外と気に入ってる・・・から」
これは・・・多分本心だと思う。女になって確かに色々変わったし皆の態度も
変わった。けど、和久達は私を前のままの『佐伯辰実』として接してくれた・・・。
「そうか・・・」
「あんっ!ふあぁあ!」
和久の指が秘唇に潜り込んでくる。思考が完全に弾け飛ぶ。
「あぁんっ、んんっ、あ・・・和久ぁ」
「ごっつい締め付けや。指が食い千切られそうやで」
「あっあっあうっ!はぁん」
水着の中で手が蠢く。太股までぐっしょりと濡れている。
親指が秘唇の上部の突起に触れる。
「うあ!あああっ!ああん!」
「大洪水やな、辰実」
コロコロと指で転がす。その度に背筋に電撃が走る。
「そろそろ・・・ええか?」
ぼやけた頭で和久が言いたい事を理解する。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息が上がって声が出ない。一度だけ頷く。下の水着が脱がされる。手伝うよう
に腰を少しだけ上げる。
「いくで」
両足がゆっくりと開かれる。”クチャ"といやらしい音が響く。和久のものが
あてがわれる。
(・・・熱い)
今となっては自分にはないもの。不思議だが嫌悪感や恐怖は無い。
「くうっ・・・・・・・・・んん」
押入ってくる。異物の侵入に筋肉が萎縮する。
「辰実、大丈夫か?」
「ん・・・平気、大丈夫・・・だから」
「わかった。力抜けよ」
「はぅっ・・・・・・・・んあぁぁ!」
一気に押し込まれる。痛みと熱さが全身を駆け巡る。
「全部入ったで」
「はぁ・・・・・・・あ・・・あん」
繋がったまま抱きしめられ頭を撫でられる。少しだけ痛みが薄らぐ。
「動いて・・・いいよ」
「ん」
様子をみるようにゆっくりと和久が動く。
「あうっんん・・・あっあっあっ!」
少しずつ動きが速くなって行く。身体の感覚が麻痺していく。
「くあ・・・た、辰実」
「和久和久ぁ!」
和久にすがりつき、首筋に顔をうずめる。頭の中を鼠花火が跳ね回っている。
「も・・・限界や」
和久の動きがさらに速くなる。繋がった部分が溶けてドロドロになっている気
がする。
「ああっあんっあっ!ふあぁぁっ!」
今までで一番強く腰が叩きつけられる。膣内の奥にぶつかる感覚に意識が飛ぶ。
「ううっ!」
和久のものが引き抜かれお腹に熱い飛沫が迸る。
そのまま意識は真っ白になった・・・。