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「昨日遅刻したから早めに学校行こ思て迎えに来たらイキナリ女の子が出てく
るんやからビックリしたで」
 そう言いながら好奇心丸出しの目で和久を俺を見ている。
「嘘だろ・・・マジで女になっちまってるよ」
 シャツの首口を摘んで大きく膨らんでしまった自分の胸を見る。見事な大き
さだ。嬉しくねぇ・・・。少し躊躇してからズボンとパンツを摘んで股間も覗
いてみる。
「いやぁ、初めは辰実に先を越されたんかと思ったで」
「あぁ、我が息子まで居なくなってしまった」
 がっくりとうな垂れる。
「辰実、お前俺の話聞いとるか?」
「ん?ああ。ワリぃ」
「色々聞いてみて俺はお前が辰実やって信じたけどこれからどないするんや?」
 和久に言われて時計を見てみると針は8時にさしかかろうとしていた。
「やべぇな。そろそろ仕度しないと学校遅刻しちまう」
 その前に学校に行ってどうするんだろうか。
「せやなぁ。とりあえず島崎先生に相談してみぃへんか?あの人ならなんかエ
エ知恵貸してくれるんと違うかのぉ」
「そうだな。なんで女になっちまったかも全然わかんねーし。先生に相談して
みるか」
 一つため息を吐くとガクランに手を伸ばす。
「ちょいまち。辰実、そのままやとちょーっと刺激が強過ぎるで」
 和久は呆れたような困ったような顔で胸の辺りを指刺してくる。
「何が?・・・ってあぁ」  下を向いてみて何となく理解した。胸がでか過ぎて乳首が浮いてしまっている。
「あー、これはかなりエロいな。ってゆーかやばいな」
 自分の胸で少しムラっとしてしまった。危ない危ない。
「しゃーない、何とかするから和久ちょっと外で待っててくれや」
「あいよ。時間ないから急げよ」
 そう言うと和久は頭をかきながら出ていった。
「さてと・・・」
 何とかするとは言ったもののどうしたら良いのやら。俺はブラなんて持って
無いしトランクスだってぶかぶかになって辛うじて腰骨に引っ掛かってる感じ
だ。身長も縮んでしまったのかガクランも結構デカイ。
「かと言ってノーパンはまずいしサラシなんて持ってるはずないし・・・」
 何か無いかと部屋をぐるっと見まわすと救急箱が目に入った。
「これしかないか」

「終ったみたいや・・・な」
 玄関のドアを開けると和久が待っていた。俺を見た途端和久は妙な顔のまま
固まってしまった。本日二度目だ。
「なんちゅーか。その格好は破壊力デカイなぁ」
「うっさい」
 ガクランのサイズが合わなかったので袖と裾を折り込んで身体の大きさに合
わせてなんとか着れる状態にした。髪も長くてうざったかったので後で一つに
まとめてある。パンツは少し小さめのボクサーパンツでごまかしてある。
 着替え終わって鏡を見た時は自分にまたしてもムラっとしてしまった。
なんだかなぁ・・・。
「胸の方も上手く隠せたみたいやな」
「ああ、先の方をこう、バンソウコウで・・・」
 胸の前でバンソウコウを貼るジェスチャ−をする。
「言わんでもエエわい」
「いてっ」
 和久に頭をしばかれてしまった。照れてるっぽいが・・・まさかね。
「さて、今から急げばHRの10分前には学校につけるな」
「島崎先生は今日1時限目は授業ないはずやから多分駅に居ると思うで」
「じゃ、駅までダッシュだな」
「おう、急ぐで」

「お前達の言ってる事はよくわかった」
 あれから駅で登校中の生徒の指導をしている島崎先生を見付けるのに時間は
かからなかった。島崎先生を捕まえて事情を話したが、最初は冗談か何かかと
取り合ってくれなかった。だけどこちらが必死だったのが良かったのか島崎先
生も話を聞いてくれる事になり、3人で駅の喫茶店に入った。
「こっちの女の子が佐伯だって事も信用しよう。しかしこいつは困ったな」
 島崎先生はボリボリと頭をかいてタバコを吹かした。
「そうだな。とりあえず病院に行ってみるか。原因が何かの病気かもしれんしな」
「病院ですか」
 正直な所病院でどうこうできる問題でもない気がする。男が女になっちまう
病気なんて聞いた事ない。だけど今はそれが最良の方法な気もする。
「佐伯は俺が病院に連れて行くから橘はこのまま学校に行くように」
「島崎先生そりゃ殺生やで。俺も着いて行きたいで」
「学生の本分は勉強だ。それにお前が着いて来たってどうしようもない」
「せやかて俺も辰実の事心配してるんやで」
「和久、心配してくれるのはありがたいんだが確かにお前が病院に行っても意
味ないしな。俺と先生だけで大丈夫だからとりあえず学校行っとけ」
 和久は心底心配そうな顔で俺を見ている。こう言う時にコイツと友達で良か
ったと本気で思う。
「そうか、なら俺は学校行くけどちゃんと後で連絡してくれや。島崎先生、辰
実の事頼むで」
 それだけ言うと和久は喫茶店を出ていった。
「さて、じゃ俺達も行くか。確か佐伯が1年の頃怪我した時に世話になった病
院があっただろ」
「あそこの先生なら信用できるかな」
「よし、じゃまず学校に連絡だな」
 そう言うと島崎先生は何箇所かに電話をかけていた。
『チャラ…』
 俺はその時やっと左腕にブレスレットが着けっぱなしなのを思い出した。

「はぁ・・・」
 あの後結局解かった事は俺が佐伯辰実本人だと言う事だけで何故急に女の体
になってしまったかの原因はさっぱりわからなかった。とりあえず付けられた
病名が『突発性性転換疾病』とかなんとか。
「一応校長はこの診断書で納得してくれたけど・・・マジでこの身体で明日か
ら学校に行くのかよ」
 診断書を投げ出してベットの上に転がる。
「しかも明日会議で決まるまであの格好で行かなきゃいかんし・・・」
 壁にかけられたガクランをちらっと見る。
「はぁ」
 クラスメートの反応を思うと憂鬱な気持ちになってくる。
「う〜む」
 何となく大きく膨らんでしまった自分の胸に手を置いてみる。
「でかいな」
 EとまではいかないがDカップくらいはありそうだ。そのままふにふにと手
を動かしてみる。
「自分で自分の胸マッサージしてる感じか。そんなに気持ち良いもんでもない
んだな」
 それでも硬過ぎず、柔らか過ぎない押し返すような弾力が手に心地良い。両
手で軽く揉んでみる。
「うむ、立派なもんだ」
 ふと、机の上に置かれている鏡に目が行く。鏡の中の自分の胸を弄っている
少女と目が合う。
「うぁ!?」
 鏡の中の自分と目が合った瞬間、胸を中心に奇妙な感覚が広がっていく。ハ
ッキリとした快感ではないのだが確実にじわじわと身体を昇ってくる。
「ふぅ・・うん」
 自然と口から声が漏れる。胸を揉んでいる手に力が入る。
「な、なんだこれ」
 胸の先端に貼ってあるバンソウコウに圧迫された部分がもどかしい。直接服
の中に手を入れてバンソウコウを少しずつ剥して行く。
「ふ・・・ぁ」
 小さめの乳輪に貼り付いた部分が剥がれるとそれまでとは違った確かな感覚
が身体を駆け巡っていく。
「ちょ・・・ダメだって。とまれ」
 言葉とは逆にどんどん手に入る力が強くなっていく。そして指が胸の先端の
起立している部分に触れる。
「ふあぁっ!くぅ・・・」
 声が漏れないように歯を食いしばる。
「く・・・そ・・・はぁ」
 精神力を総動員して手を胸から剥す。何となくこれ以上男として先に進んで
は行けないような気がした。
「はぁはぁ・・・何やってんだ俺」
「もう寝よう」
 昨日と同じようにそのまま布団に潜り込む。
「くぅ・・・ん」
 動く時に起立した乳首が服に擦れて痺れるような甘い感覚が広がる。
これも無視するのに相当な精神力を必要とした。
「はぁ」
 横向きになるとまた鏡に目が行ってしまう。顔は上気し少しトロンとした表
情になっている。
(戻れんのかな。俺・・・)
 そう思うと胸に言い様の無い不安がこみ上げてくる。
『チャリ』
 ブレスレットが音を立てる。
「そう言えばこれ結局取れなかったな」
 病院で診察の邪魔になるからと切断を試みたのだが不思議な事にどの工具を
使ってもまったく切れなかった。
「はぁ、今はそれどころじゃないか」
 俺は電気を消して目を瞑った。

「そう言えば昨日風呂に入りそこねてたな」
 朝の6時半。寝た時間が早かったからかいつもより1時間以上早くに目が覚
めていた。
「うへ、軽く汗臭い」
 昨日寝る直前に自慰まがいの行為をしてしまった為に汗をかいたらしい。思
い出すと少しだけ自己嫌悪になる。
「まだ余裕あるし。風呂入ってから行くか」
 脱衣所で服を脱ぎ全裸になる。脱衣所の大きな鏡に全身が移る。
「初めて今の自分の身体をちゃんと見たけどこれは」
 簡単なポーズをとってみる。
「自分で言うのもなんだが、あれだ。相当可愛いな。って言うかエロイな」
 大きく膨らみつんと上を向いた形の良いバスト、くびれたウエスト、せり出
しているヒップ。俺の身体は完璧な『女』になっている。
「やばいやばい。変な気分になる前に風呂に入ろ」
 慌てて鏡から顔を反らす。それにしても初めて生で見る女の体が自分だとは。
はぁ、複雑だ。
 シャワーで汗を流し身体を洗う。
「うぬ、髪が邪魔くせぇ」
 今の俺の髪は腰の辺りまで伸びている。ここまで伸ばした事はもちろんない
ので非常に鬱陶しい。
「切っちまうか・・・でもなぁ」
 もし元に戻った時に切った分髪が短くなったりしたら・・・。想像するのは
止めよう。
「慣れるしかないか」
 ため息をつきながら身体を洗う。その度にチャリチャリと音が鳴る。
「昨日はそれどころじゃなかったけどこれも何とかしないとな」
 左腕に着いたままになっているブレスレットをいじる。あのお姉さんならこ
れの外し方を知ってるかもしれない。
「あぁもぉ。面倒臭い」
 身体の泡をシャワーで落すと髪にシャンプーをつける。洗うの大変そうだ。

「ふぅ、さっぱり」
 髪をタオルで拭きながら時計を見る。7時ちょうど。そう言えばまだ和久に
連絡して無かった。
「7時か・・・起きてるかな」
 携帯から和久の電話番号を呼び出す。

プルルルル・・・
『もしもし?辰実か?』
「おぉ、和久おはよう」
『「おはよう」やないで。心配しとったんやからはよ連絡くらいせぇ!』
「わり・・・」
『まぁええわ。それで?なんかわかったんか?』
「いや、結局原因は解からず終いだった」
『そうか・・・で?これからどないするんや?』
「とりあえず今日から学校に出る事にはなった」
『女の子のままで学校に行くんか!?エライ冒険やな』
「言うな、憂鬱なんだから」
『今からお前の家行くけど大丈夫か?』
「おぉ。あ、待った。風呂上がりだから30分後くらいに来てくれ」
『わかった。ほなな』

「さてと」  髪をドライヤーで乾かす。髪の量が多いのだから当然だがいつもより時間が
かかる。胸は・・・しょうがない。またバンソウコウをニプレス代りに使うし
かないか。パンツもボクサーパンツを使う。
「しっかしあれだな。今更だが17年間連れ添った息子が居ないって言うのは
何となく寂しいな」
 ボクサーパンツに包まれた下腹部を撫でてみる。虚しい。
「あとは・・・。半袖のカッターシャツを出すか」
 長袖のカッターシャツを洗濯機に放り込んで半袖のシャツを着る。確かこれ
去年洗濯失敗して縮んだんだっけか。まぁ、身体小さくなってるし大丈夫だろう。
「ぐお・・・く、苦しい」
 予想以上に小さかったのか胸の部分が圧迫される。
「ま、まぁ着れるからよし」
 時計を見ると15分ほど時間が経っていた。
「後は髪か」
 後で一括りにしても良いけどなんだが芸がない気がする。う〜む、時間も少
しあるし見よう見真似でみつあみにでもしてみるか。

「・・・正直お前可愛いで」
「嬉しくねぇって」
 和久が来たので外にでると開口一番そんな事をほざきやがった。勘弁してくれよ
 髪は不器用なりになんとか1本のおさげにまとまっていた。
「悪い悪い。ところで俺と結婚してくれ」
「その口もぎ取ってやろうか」
「痛い痛い!冗談やがな」
 じろりと睨みつけると俺は和久の頬をつねる。こいつなりの元気付けなんだ
ろう。内容はあれだが。
「んで、学校には普通に行けるんか?」
「ああ、俺が佐伯辰実本人だって証明は一応できたからな」
「そうか。せやけど早く元に戻るとええのぉ」
「ホントにな」
 学校に向って歩き出す。和久の家が俺の家と近い事もあって結構二人で登校
したりしている。
「しかし目線が低いな。変な感じだ」
「せやなぁ。だいぶちっこくなってしもうたみたいやな」
 もともと175センチあった身長が女になってから20センチ近く低くなっ
てしまっていた。
「これも慣れるしかねえか」
 慣れる前に戻りたいけどね。
「それより辰実。お前このまま教室に行くのは少しまずいんちゃうか?」
「ん?あぁ、それなら大丈夫だ。HRの前に保健室の古条先生が俺に話がある
らしくてな。んで、その間に担任の今田が俺の事話しておいてくれるってさ」
 保険医の古条先生。女の先生で優しい人だ。1年前に怪我した時に世話にな
ったっけか。和久は主にサボる為に保健室を使ってて古条先生と仲が良いみた
いだけど。
 駅の前に差し掛かる。まだ朝早い事もあって生徒の数は少ないが学生服を着
ている俺が目立つのかそこはかとなく視線を感じる。
「和久、俺って目立ってる?」
「そりゃなぁ。客観的に見て可愛いし男もんの服着てるし」
「まいったなぁ」
 ため息を一つ吐くとちくちくと刺さる視線を無視して学校に向った。

「あらあら。佐伯君本当に女の子になっちゃったのね」
「あはははは・・・」
 学校に着いてから和久とわかれて俺は保健室に来ていた。
「えっと、古条先生。俺に話ってなんですか?」
「ほら、佐伯君女の子の事あんまりわからないでしょ?下着も着けてないみた
いだし。まったく、無防備ねえ」
 そう言うと古条先生は困った顔をした。
「いや、そりゃまぁ俺が女性の下着なんて持ってたら色々と問題あるでしょ」
 持ってたら変態だな。
「あと服の事とか月経の事とかもあるし。放課後に色々とお買い物にいくわよ」
「買い物ってまさか。し、下着買いに行くんすか?」
「当然。身体のラインだって崩れるし。女の子として当たり前のエチケットよ」
「あと男物の学生服も昨日の職員会議で女の子が着るのはマズイって事になっ
たからセーラー服買うわよ」
「げぇっ」
「こ〜ら。女の子がそんな言葉いっちゃダメでしょう」
 せ、せぇらぁふく・・・俺が・・・勘弁してくれ。
「先生、それは拒否権はあるんでしょうか・・・」
「だーめ、決定事項よ。と、言うより命令ね」
「はぁ〜・・・」
「しょうがないじゃない。女の子のまま学校に通うんだったらそれくらいしな
いと。男の子に戻るまでの間だと思って我慢しなさい」
「あぁ、なんかドッと疲れた」
 俺は諦めてがっくりと肩を落とした。

 放課後ちゃんと保健室まで来るようにと古条先生に釘を刺された後、俺は自
分のクラスの前まで来ていた。時間はちょうどHRが終るか終らないかって感
じだな。
 ・・・入り辛い。このまま帰っちゃおうかな。
 ウロウロしていると教室のドアが開いて担任の今田が出てきた。
「え〜っと、佐伯か?」
「は、はいそうです」
「実際信じられんが本当に女の子になったんだなぁ」
「好きでなったわけじゃないんですけどね」
 力なく笑ってみる。それにしても今田のやつ、興味深々って感じだな。教師
なんだったらもう少し自重しろよ。
「今クラスの皆にお前の事話しておいたから大丈夫だぞ」
 何が大丈夫なんだよ何が。
「1時限目までまだ時間があるから中に入って準備しておけよ」
 それだけ言うと今田はさっさと行ってしまった。教室の中はザワザワと騒が
しい。どうやら俺の話題みたいだ。
「ほんっと逃げてぇ」
 深呼吸をすると俺は覚悟を決めて教室のドアを空けた。

「お、おはよ・・・」
 そこまで言いかけて俺の声はかき消されてしまった。

うおおおお、アレが佐伯かよ!?信じらんねー
すっげ。可愛い。惚れそう。
佐伯ー!付合ってくれー!
ちょっと!男子うるさい!
佐伯君・・・可愛い・・・
ちょっと、ムカツクーなによあれー

 予想はしていたが俺は顔を引きつらせる。好き勝手言いやがってちくしょう。
和久の方を見ると『こらあかん』と言った感じでお手上げのポーズをとった。
「はぁ、オーケー。お前等の気持ちはよーくわかった」
 30分とちょっとの間で1日分以上疲れたよ・・・。俺は皆の野次を無視し
て自分の席に座った。それと同時に俺と親しい友人達がぞろぞろと集まってくる。
「ホントに佐伯か?学校の壮大なドッキリじゃないよな?」
「佐伯君可愛い〜」
「あー、うるさいうるさい」
 俺は手の平をヒラヒラと振って追い払う仕草をする。
「やっほぅ、辰実♪」
「っぃよう!」
 ・・・こいつらを忘れていた。不吉なニコニコ顔を貼りつけて近づいてくる
のは十和田桜子(とわださくらこ)と木下典弘(きのしたのりひろ)。
 俺と和久と一緒によくつるんでる級友・・・訂正、悪友。
「よ、ようノリ、桜子」
「んっふっふっふっふ」
 桜子の笑顔がさらに強くなる。あぁ、嫌な予感。
「ノリ!GO−!」
「あいさー!」
 桜子の掛け声と同時にノリが素早く俺の後ろに回りこんできた。
「お、おい。いったいなん・・・おわっ」
 あっというまにノリに羽交い締めにされてしまった。
「ノリ!お前なに考えてんだ!?」
「ぐふふふふ、観念せい」
「た・つ・みちゃ〜ん、ボディチェックの時間で〜す」
「ちょ、待てって。冗談だろ!?」
 桜子が両手をワキワキと動かしながらやばい笑顔でじりじりと近づいてくる。
こ、恐い。
「とう」
「おわぁっ!」
 桜子がむんずとばかりに俺の胸を鷲掴みにしてくる。
「うわっ!ちょ・・・止めろってうひゃひゃひゃひゃ」
「きゃーおっきい。しかもノーブラ!辰実ちゃんエローい」
 もぞもぞと手が俺の胸をまさぐる。くすぐったさの奥から違う感覚が沸き上
がってくる。や、やばいって。
「うひゃひゃ。ホントダメだって!桜子!おい、あぁん」
「ほらほら。ええのんかええのんか?」
 何とかもがいてみるがノリにガッチリと捕まえられていて抜け出せない。
「ええ加減にせい」
「いったーい!」
 桜子の悲鳴と一緒に俺は地獄から解放された。危ない。ちょっとあえい
でしまった。
「ちょっと、何すんのよ和久」
「そんくらいにしとけや、エロ娘」
 どうやら和久のチョップが桜子に炸裂したようだ。桜子が頭を押さえて和久
に抗議している。
「エロ娘とは失礼ね。これはスキンシップよ」
「お、お前は会社のセクハラ上司か・・・」
 俺はノリの腕を振り解くと呼吸を整えた。
「いやー、楽しかった。でも本物の辰実みたいだな」
 ワハハハとノリが豪快に笑う。もうちょっと別の方法で確かめてくれ。頼むから。
「それにしても本当に女の子になっちゃったのね」
「あぁ、もう説明すんのメンドいから信じてくれて助かるよ」
 椅子に崩れ落ちるように座る。まだ息が少し荒い。
「思った通りお祭り騒ぎになってもうたな」
 男子、女子共にこっちをチラチラと見ながら何かを話している。
「ぬあぁ、やっぱり逃げりゃよかった」
 そう言いながら机に突っ伏す。それと同時に1時限目の教師が教室に入ってきた。
「こらー、お前等席につけー」
「やべ、もう時間だ」
 和久、ノリ、桜子が自分の席に戻って行く。まだヒソヒソと声が聞こえるが
他の連中も教科書を出して前を向いている。一応騒ぎは収まったみたいだ。
「さて、どうなることやら」
 俺は何度目になるか分らないため息をつきながら教科書を机の上に出した。

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