第一話 〜辰実と和久〜
「辰実〜、じゃまするで〜。・・・って鍵くらいかけんかい。無用心やな」
海への旅行から2日。和久は辰実のアパートに来ていた。冗談でドアノブを回した
つもりがたいした抵抗もなくドアが開く。
「おらんのか〜?」
部屋とキッチンを繋ぐドアを空けるとクーラーに冷やされた空気が流れてくる。
「・・・なんや、寝とるんか」
ベットの上。辰実はタンクトップにショートパンツという無防備な姿で眠っていた。
首振りにした扇風機の緩やかな風がさらさらと辰実の前髪をなびかせている。
「ったく。幸せそうな顔して寝とるなあ」
ベットの横に腰を下ろすと扇風機の風で少しだけ乱れた前髪を指でとかし、そのま
ま頭をゆっくりと撫でる。
「・・・ん・・・・・・」
「こうやって寝とると普通の女の子なんやけどなぁ」
『元』親友だった少女の寝顔を眺めながらひとりごちる。旅行先で男と女の関係に
なってから3日。二人の仲は相変わらずだった。
「・・・可愛ええ顔しとるな」
辰実のあどけない寝顔を眺めているうちに和久の心にいけない思いが首をもたげる。
「いたずらしたろかな」
悪い笑みを浮かべると手を辰実の胸にのばす。そして優しくゆっくりと力を入れる。
「んん・・・」
「おっきい胸やなぁ」
指を一本だけ伸ばすと胸の先端を刺激する。
「ん・・・ふぁ・・・・・・んん」
眠っている辰実の頬が上気しせつない吐息が漏れる。そのままいじり続けていると
タンクトップごしでもハッキリとわかるほどに胸の先端が自己主張するように起立する。
「んん・・・あっ」
和久の指の動きに合わせてピクピクと辰実の身体が小さく動く。
「あ、あかん。変な気分になってしもうた」
胸から手を離すと顔をゆっくりと近づける。
「ん・・・」
唇と唇が触合う。和久はそのまま小鳥がついばむようなキスを繰り返す。
「ん・・・ん?」
辰実の目が薄っすらと開く。そのまま固まったように和久と見つめ合う。
「・・・・・・うわわっ!?か、和久!!?」
現状を理解したのか辰実は飛び起きるとベットの端まで飛びずさる。
「よっ、おはようさん」
「な、ななな何やってんだよお前!?って言うかなんでここに居るの!??」
顔を真っ赤に染めながらパニックに陥る辰実。呼吸が上がっている。
「いや、鍵開いとったで。無用心にも程があるぞ。これが俺やなくて強盗やったら
どないするつもりやったんや?」
自分のした『いたずら』を棚に上げて怒ったふりをする和久。
「え?マジ?・・・あ、いや・・・その・・・・・・すまん」
辰実の脳裏に強盗に組み伏せられる自分の姿が浮かぶ。そのイメージをぶんぶんと
頭を振って消すともう一つの疑問を和久にぶつける。
「そ、それは分ったけどお前は何をやってたんだよ」
「何ってキスやがなキス。ちゅう。ヴェーゼ。接吻」
「き、キスってお前ね・・・」
「今更照れんでもええやん。何度もしたんやし」
そう言うとカラカラと笑う。逆に辰実は顔をさらに赤く染めてうつむいてしまう。
「・・・それで、今日は何だよ」
照れを隠すようにむすっと和久に尋ねる。
「それや。海の写真できたから持って来たで」
そう言うと写真屋のロゴの付いた袋をヒラヒラと振る。
「あ、そっか。写真の現像和久に頼んだんだっけ」
和久から袋を受け取ると中身を空けて写真を取り出す。
「おぉ、よく撮れてんじゃん・・・・・・げっ」
一枚の写真が辰実の目に止まる。
「お、お前いつこの写真撮ったんだよ・・・」
辰実の手には辰実と桜子の写った写真。辰実が手前でポーズをとり桜子がその後で
驚いた表情をしている。
「よう撮れとるやろ」
手に持った写真を穴の開くほど見つめながら辰実の身体がプルプルと震える。海へ
の旅行。その時、ついその場の空気に浮かれて取ってしまったいわゆる『セクシーポーズ』。
普段の辰実ならば絶対にしないような格好と表情がその写真には写っていた。この時、
あまりの辰実らしからぬ行動にいつもは積極的過ぎる桜子の方が驚いていたほどだ。
「こ・・・これはダメだ!この写真は絶対ダメーー!」
そう叫ぶと手に持つ写真をビリビリと破り捨てる辰実。
「あー、なんちゅー事をするんや。勿体無い」
「はぁはぁ・・・。こ、こんな写真が残ってたら末代までの恥じだ」
破った写真をぺっとごみ箱に捨てる。
「甘いな辰実。既に人数分現像済みや。ネガもこれこのとおり」
和久がバックの中からさらに3っつの写真屋の袋を取り出す。
「あうぅ・・・」
さすがに諦めたのか辰実はがっくりとうな垂れる。
「まあえーやないか。想い出や想い出」
「あんまり覚えてたくない・・・」
むーっとむくれる辰実の頭を和久が撫でる。辰実の目が自然と心地良さに細まる。
「ん・・・ずるいぞ。頭撫でるの」
「でも意外と気にいっとるんやろ?」
辰実、今日何度目かの赤面。
「あの写真意外にも色々想い出になるような事あったやないか。それで我慢せえ」
「ほんと・・・色々あったよな」
愛夏さんの事、愛夏さんの妹だった少女の事、黒服の男達の事、様々な事が辰実
の頭に浮かぶ。そして・・・。
「なんや?タコみたいに真っ赤やぞ?」
「・・・・・・」
ある事を思い出した瞬間、辰実の顔が今まで以上に赤く染まり和久と目を合わせ
られなくなってしまう。
「もしかしてあの事思い出しとるんか?」
「う、うるさい・・・」
あの事。辰実と和久が一線を越え、辰巳に女として生きて行く事を決意させた原因
の大きな部分を占めると言っても過言ではないあの事。そう、和久が辰実を抱いた時の
事を思 い出していた。実際、強烈な酒のせいで辰実本人はあまり良くは覚えていない
のだが、和久と肌を合わせたと言う事実は完璧に覚えていた。
「あんときの辰実は可愛かったで」
そう言って悪戯っぽく笑う和久に辰実はますます目を合わせられなくなる。
「は、恥ずかしいから・・・あんまりそういうこと・・・言うなよ・・・・・・な」
うつむいたまま消え入りそうな声でつぶやく。
「なんやって?よく聞こえんぞ?」
にんまりと笑うと和久は辰実に向って耳を突き出して近づく。そして辰実の耳元で
小さくつぶやく。
「なあ、もっかいせえへんか?」
「なっ」
「ええやろ」
「あ、こら・・・」
辰実の頬にキスをしながらその小さな身体を抱きしめる。辰実はピクっと身体を竦
ませると身を固まらせてしまう。
「緊張しとるんか?」
「ひぅっ!んくっ・・・」
耳たぶを軽く甘噛みし、そのまま辰実の首筋に顔をうずめてキスマークを付けるよう
に吸い付き、鎖骨に舌をはわす。
「だって・・・前したときは・・・その、痛かったから・・・」
「そっか。じゃ、今回は優しくしたる」
タンクトップを脱がして押し返してくるような弾力のある胸を少し持ち上げるように
揉み先端をクニクニといじる。
「あ・・・はぁ・・・」
たいした時間もかからずに辰実の薄い桃色の乳首はカチカチに固くなる。そのツンっ
と突き出すような突起を口に含み舌先でコロコロと転がす。
「ふぁ・・・うぅん・・・・・・」
辰実の切なそうな吐息が耳に届くたびに和久の中にたまらない思いか駆ける。
「辰実の乳首、なんか甘い気がするわ」
「なんだよ・・・それ・・・んんっ」
もう片方の胸を少し強くこね、先端を指で摘む。
「辰実・・・めっちゃドキドキしとるぞ」
「んくっ・・・しょうが・・・ないだろ・・・」
和久が辰実をゆっくりとベットに押し倒し、ショートパンツも脱がしてショーツ一枚
の姿にする。辰実が潤んだ目で和久を見つめる。
「うっ・・・」
「和久?」
「な、なんでもない」
(アカン、そないな目で見られたら俺も心臓爆発しそうや)
軽く頭を振ると辰実に再び口付けする。
「ん・・・んん・・・」
和久が舌を差し込む。辰実はそれをすんなりと受け入れて自分の舌を積極的に絡める。
「あん・・・んむ・・・・・・ふぁ」
その間も胸を揉み、先端をいじる。辰実の眉が何かを耐えるように寄せられる。
「ぷはっ・・・」
唇が離れる。二人の間に唾液が糸を引く。
「辰実・・・可愛いで」
「はぁ・・・はぁ・・・」
辰実は頬を上気させ肩で息をしている。何も言い返さないと言うよりも言い返せるほ
ど頭が上手く働いていない。
「ん・・・んくっ・・・はぁん」
胸からお腹、ヘソへと順に舌を移動させる。舌が通った後を唾液が妖しくてからせる。
和久がふと下をみるとショーツには大きな染みができていた。
「辰実は感じやすいんやなあ」
「んっ・・・わかんない・・・」
和久がちろちろとヘソを舌先でなぶると辰実はむず痒そうに身体をくねらせる。
「ちょっとだけ腰上げてくれ」
「うん・・・」
辰実が言われるがままに腰を浮かせると和久が最後に残ったショーツも脱がす。
「・・・なあ辰実、俺のも触ってくれへんか?」
「・・・・・・・・・うん」
和久は辰実を起すとあぐらをかいてベットの上に座る。ズボンの上からでもわかるほど
ギンギンにいきり立った和久自身に辰実の手が伸びる。チャックがおろされる。
「和久の・・・熱い」
「うぉっ、辰実の手ひんやりしてて柔らかくて気持ちええ・・・」
以前は自分にもあった見なれたそれを辰実は思ったより抵抗なく触る事ができた。あと
は昔取った杵柄、どうすればいいか心得たように手を動かす。
「気持ち・・・良いか?」
「あぁ、最高や」
5本の指をフルに動かしてしごくうちに、先に透明の雫が溢れてくる。そこへ自然に顔
を近づけて行く。
「た、辰実!?何もそこまでせんでも・・・うおっ!」
「ん・・・・・・」
先端に溜まっている雫を舌でペロっと舐め取る。そのままキャンディーを舐めるように
ペロペロと舌をはわせる。
「うぁ・・・気持ち良過ぎや・・・」
「んっ・・・んっ・・・」
側面や裏筋を舌と唇を使ってしゃぶる。懸命に奉仕する辰実の頭を和久が優しく撫でる。
そうしていると辰実がもじもじと腰を動かし始める。
「もうええぞ」
「うん」
顔を上げさせると自分も服を脱いで辰実を抱き寄せる。密着した状態で和久は片手を下へ伸ばす。
「んんっ!」
「次は俺が気持ち良くしてやる番やな」
クチュクチュと微かに水音を響かせて辰実の濡れている部分をいじる。指が動く度に
辰実はビクビクと身体を震わせて和久にしがみ付く。
「あっ・・・あっ・・・ふぅ・・・くぅん」
割れ目をさすり、指を差し入れ掻き混ぜ、クリトリスを親指でゆるゆると刺激する。
辰実の奥から止めど無くトロトロの蜜が溢れ出す。
「あんっ・・・かずひさ・・・かずひさぁ」
辰実は和久の名前を呼ぶと押し寄せてくる快感を耐えるように和久にすがりつき、首筋
に顔を埋める。目尻に涙が光る。
「辰実、俺もう我慢できなくなってしもうた。挿れてええか?」
「・・・・・・ん」
小さくそう言うとコクリと頷く。辰実の秘唇が和久の指で広げられ熱くいきり立ったもの
が当てがわれる。
「んくっ・・・あつ・・・い」
「痛くせえへんからな。力抜けよ」
自分にすがりついている辰実の頭を優しく撫でながらゆっくりと腰を進め押し入る。
「んんっ!」
「うぁ・・・きつ・・・ぐぅ」
先端が埋まっただけで射精してしまいそうな快感が和久に走る。和久はそれを息を止めて
やり過ごすと再びゆっくりと腰を進める。
「あっ・・・・・・あっ」
熱くドロドロに溶けているような膣内(なか)を肉を割って押し進む。辰実が声を上げる
度に和久のものをキュウキュウと締め付ける。和久の肩にかけられた辰実の手に力が篭もる。
「くっ!」
「んあぁっ!!」
少しだけ力を入れてズッと奥に押し込む。子宮口に和久の先端がコツンと当たる。
「あ・・・あぁ・・・くぅん」
「辰実、大丈夫や。全部入ったで」
ふるふると震えている辰実の身体を抱きしめてあやすように撫でる。きつく閉じられた
辰実の目に新しい涙が浮かぶ。
「だい・・・じょうぶ・・・だから・・・うごいていいよ・・・」
「痛くないか?」
「・・・・・・ん、大丈夫みたい」
「・・・わかった」
「ん・・・」
和久は落ち付かせるように辰実にキスをするとゆっくりと自身を引き抜くき、そしてゆっ
くりと突き入れる。
「あっ、あぁっ・・・ふぁっ」
辰実の腰を抱くとじょじょにスピードを上げて腰を下から突き上げるように動かす。
「辰実ん中・・・気持ち良過ぎや・・・」
「あっ、あうっ、んあぁっ!」
突き上げる動きにグラインドが加わる。身体の中を掻き回されるような感覚に辰巳は身体
をわななかせ咽び泣く。
「ふあっ!うぅんん・・・はぁん」
「くうぅ・・・あかん」
腰の後がジンっと痺れる。急速に高まってくる射精感を舌を噛み必死に耐えながらそれで
も動き続ける。
「んっ・・・あっ・・・か、かずひさ・・・・・・もっと、動いて・・・いいから・・・んんっ」
「た、辰実っ・・・!」
辰実を抱かかえると腰を叩き付けるように振る。
「あっ!うあぁっ!ふぁっ!あぁん!」
「も、限界や・・・」
じゅぷじゅぷと粘っこい音と辰実の嬌声が響く。ぐぅっと静な、だが強い圧力をもったもの
が和久の尿道をせり上がってくる。
「うくっ、出るっ!」
辰実の身体をきつく抱きしめる。膣内に収まった和久自身が限界まで膨れ上がり熱い固まり
を辰実の子宮に叩き付ける。
「んぁっ!あっ・・・はぁ・・・ぁ」
ビクビクと身体を震わせて和久を受け止める。大きく息を吐くと脱力して和久にもたれかかる。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「辰実、大丈夫か?」
「う・・・ん。あ、あれ?」
ゆっくりと和久から離れるが、身体に力が入らずにベットの上に倒れてしまう。
「ほ、ホンマに大丈夫か!?」
「うん、なんか腰抜けちゃったみたい」
コロっと転がって横になったまま和久の方を向く。
「そうか・・・でも辰実まだイってないやろ?」
「へ?ちょ、ちょっと和久・・・あんっ」
和久の手が熱く火照った辰実の身体をさする。そのまま身体を入れ替えて後ろから抱き
しめる。辰実の背中に熱く固いものが当たる。
「か、和久ちょっと待って。まだ・・・ふぁ」
「俺だけ気持ち良くなるんは不公平やろ。辰実もちゃんとイカせたる」
後から首筋にキスをする。手を伸ばし胸をこねるように揉み解す。
「んく・・・あぁんっ!も、もうじゅうぶん気持ち良かったから・・・これ以上は・・・はぁん」
指が秘唇に伸び、クリトリスを指の腹で掻く。
「気持ち良かったって事は身体は慣れてきとるみたいやから遠慮せんぞ」
「あ、ちょっと・・・ふあぁっ!」
片足を持ち上げて一息に一番奥まで突き入れる。
「んっ!あっ!んく・・・あぅんっ!」
後からの挿入で膣内に当たる場所が変わる。その感覚と容赦のない和久の動きにシーツ
を握り必死に耐える。
和久がズンズンと突き入れ、グラインドさせ、掻き回す。辰実は切なげに喘ぎ、身体を
つっぱらせ、ヒクヒクと痙攣させる。絶頂が近い。
「か、かずひさ・・・もう・・・ひんっ・・・ダメぇ」
「一緒にイクぞ」
荒い息をつき、トドメとばかりに腰を限界まで早く振る。
「うっ!んっ!あっ!あっ!ふあっ!うあぁんっ!」
「ぐうぅ・・・っ!」
腰を叩き付け辰実を抱きしめる。和久が辰実の膣内でビクンビクンと爆ぜる。
「んああぁーーーー!」
辰実の身体中に電気が走り頭がからっぽになる。二人共グッタリと倒れ込みしばらく
はぁはぁと荒い息だけが響く。
和久は辰実の身体の向きを変えさせると優しく抱きしめる。辰実の腕が躊躇いがちに
和久の背中に回される。しばらくそうしていると辰実は頭を和久の腕に預けてすーす―
と寝息を立てはじめていた。和久はその頭を空いた手で撫でながら寝顔をじっと見つめる。
「あかんなぁ、優しくしてやる言ったのに泣かせてしもうた」
既に乾き始めている涙の跡を舌でなぞる。
「ずっと大事にしてやるから勘弁な」
辰実の寝顔に向って呟き、和久も目を閉じ寝息を立て始める。
「ん・・・」
和久は気がつかなかったが、辰実は小さく微笑んでいた。