アリスの娘たち〜 ハルカ
「眠ったようじゃの」
「ええ、先生。いい夢を見てくれるといいんですけど。私はこの子の不安を取
り除いてあげられたかしら……」
「まぁ大丈夫じゃろ。さてオマエさんこの後……」
「ざーんねん! お仕事入っているんです。先生とは、またね」
「……つれないのぉ」
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「はぁ、はぁ……。そ、そこは……」
「感じるのか?女ってヤツは何度ヤッても面白いな。こんなところも感じるのか
よ……」
ハルカは、アリスの指定した伽の相手に蹂躙されていた。
今日の相手はどうもSM嗜好らしい。待ち合わせの場所で待っていたらいき
なり後ろから羽交い絞めにされ、手錠をかけられた後、居住区画のサブ管理
室に連れ込まれた。最初、ハルカは決まりを無視した男に襲われたものと思
い、室内にある監視カメラに叫んだ。
「ア、アリス。助けて、モニターしてるんでしょ?」
しかし、合成音声の冷たい声がハルカの助けを無視してこういった。
「はるか、ソノ人ガ今日ノ相手デス。彼ノ思ウ様ニサセテアゲナサイ」
「へへへ、そういうことだよ。よろしく、ハルカさん。俺、こういうの一度やって
みたかったんだよね」
ハルカはアリスの指示どおりにするしかなった。
それが"アリスの娘"の仕事だから……。
男はコンソールにハルカをうつぶせに押し倒すと、そのままスカートと下着を
剥ぎ取り、後ろから犯し始めた。ハルカは何の抵抗もできないまま、男に犯
されるしかなかった。性転換して15年。もう何人もの男と何度も肌を重ねてき
たハルカは、最初は苦痛しか感じなかったものの、すぐに体が男の欲望を
受け入れ、相手の強引な性行為にも感じる体になっていた。
「おしりの穴も感じるなんてな。もしかして、女になる前から使われてたんじゃ
ないのか?パートナーにさ」
ハルカは心まで犯されていた。男の言うとおり、ハルカは性転換前に同室だ
ったパートナーと"した"ことがある。でもこの男と違って、彼は真剣だった。
彼はハルカのことを本気で愛していた。だから彼のために"アリスの娘"にな
ろう、そう思って、ハルカは偶然一人空いた枠に志願したのだった。まだ子供
だったハルカは"アリスの娘"がどんなものか知らなかった。ただ、ほんとうに
彼のものになるためには、性転換するしかないと思っていた。そうすれば、彼
にもっと愛してもらえると思っていたのだった。
だから、医官の先生がいつも冗談交じりに言う「転換前にパートナーを押し倒
した」というのは、本当は意味も立場も違う。
ハルカは性転換前に女性としたことは無かった。
「ほら、脱げよ。全部脱いで体を良く見せるんだよ」
ハルカの手錠を外しながら男はさらにハルカへの蹂躙を続けようとしていた。
ハルカよりも若く見えるこの男は、きっと最近"男になった"のだろう。乱暴で
直接的な性欲が、今度はハルカを視姦しようと強引に服を脱がせていく。
……あの人はこんなに乱暴じゃなかったな。
ハルカのパートナーだった彼は、ハルカよりも10歳以上も年上の立派な大人
の男だった。パートナーというよりも、実際は小さい子供の面倒を見る保護者
という役割だった。人口が厳密に管理されている移民船では、パートナーが
必ずしも近い年齢ではない。もっとも本人たちの希望や、その他の都合で
パートナーを変えることも良くあることで、中には数人のグループもある。
「あ、痛い!やめて!!」
秘唇を嘗め回していた男が、ハルカのクリトリスに歯を立てた。
「わりぃ、ちょっと強すぎたか?」
「……ゴメン、ちょっと強すぎたかな?」
初めて時、あの人もそういった。本当はアリスが決める初夜の相手を、ハルカ
は強引に彼に決めていた。そうでなければ何のために女になったのかわから
ない。
彼は黙って"アリスの娘"になってしまったハルカを、最初は「勝手な行動をし
て!」と叱ったが、すぐに苦笑しながらこういった。
「ありがとう、ハルカ。僕の為に。愛してるよ」
そういって、女になったばかりの……まだ未成熟な体のハルカを愛してくれた
のだった。小さいけれども、しっかりとした胸の膨らみに、彼は目を丸くしなが
ら手を伸ばして愛撫した時、ハルカは思わず彼を拒否してしまった。
男の体とはまったく違う未経験の感覚に、ハルカは驚いたのだ。
「……ううん。ちょっとびっくりしただけ。ごめん、続けて……」
あの時とおなじセリフに、ハルカは心の中で苦笑していた。
……いけない、この男に集中しなきゃ。
ハルカはそう考えたが、優しかった彼の思い出が、次第に頭の中を占拠し始
めてしまっていた。
女の感覚は男のそれとは、まったく感じが違っていた。もともとそういう目的
で作り変えられた体とはいえ、ハルカは自分の肉体に与えられる刺激と、
恐怖感と期待感をない交ぜにした感情に、打ち震えていた。
自分でもまだ見慣れていない裸身を彼の目に晒す羞恥心。
息を吹きかけられるだけで、意識が朦朧となる首すじ。
男の時には何も感じなかった、耳たぶや指の付け根への刺激。
"女は初めてのときとても痛い"それは彼も心得ていたので、初めての幼い
ハルカの体に、ありとあらゆる愛撫を執拗に加えていた。
「あ、いや……」
彼がハルカの両足首を持って開いたとき、快感よりも恐怖感が上回り、声を
出してしまった。
「怖い?やめようか?」
「ううん、ここでやめちゃったら何のために、ここへ来たのかわからないよ。
お願い、私がどんなに辛そうに見えても続けて。最後までして!」
「……わかった」
そういうと彼は、ハルカの股間に顔を近づけて、花唇を舐め始めた。
「……、んんん」
今までとは比べようが無い初めての快感に、ハルカは自分の口を押さえて、
声を出すのを我慢した。体の奥でムズムズとこみ上げていたものが、さらに
大きく広がるような感覚に、身を捩って耐えていた。ハルカの小さな突起を、
彼が甘噛みした刹那、電流のようなものがハルカの全身を爆発させるほど
の快感となって襲った。
「んんんーっ!!。はぁ、はぁ……」
「イったのかい?、少し休もうか?」
「……いいの。いいから、続けて……」
ハルカは息も絶え絶えに彼に応じた。すると彼は顔を近づけ、ハルカの
目尻にうっすらと溜まった涙を舐めとりながら、膣に指を入れてきた。
「痛くない?」
「ん、……大丈夫。そこまでは……、自分でもしてみたから……」
「ふふふ、エッチな子だね。じゃあ、もう一本挿れてみようか?」
「ん、ダメ。声が出ちゃいそう……」
そういうと彼は、自分の唇でハルカの口をふさいだ。
「んふん……、ふむ……」
舌を絡ませるディープキスに再びハルカの中の何かがこみ上げてくる。
ハルカは秘穴に指を2本入れられ、入り口をこねくり回される感覚に気が
遠くなりそうになっていた。体の中を荒れ狂う嵐のような快感とは裏腹に
静まり返った部屋の中に、くちゅり、くちゅりという音が響いて、ハルカの
羞恥心を煽る。
「はぁ、はぁ、もう……。気が、遠く、ん……。なり、そう……」
「じゃあ、いいかな?」
これだけ体の準備ができていても、やっぱり痛いのだろうか?
そう思うとハルカは不安を感じないではなかった。
彼を見上げて、その優しい瞳に映る、もう一人の自分に尋ねた。
……いいよね、痛くても、怖くても、我慢できるよね。だってそのために、私は
ここまで来たんだもの、自分を変えてでも、彼に愛されたかったんだもの……。
ハルカがそっと目を閉じたのを肯定と受け取った彼は、完全に強張りきった
怒張をハルカの入り口にあてがうと、少しずつ侵入を果たそうと腰を動かした。
「い、痛い……」
ハルカは突然現実に引き戻された。見ると男がフィストファックをしようと手の
先をすぼめてハルカの膣内を犯そうとしている。
「やめて、壊れちゃうわ……」
「うそつけ。もう何年もやってるんだから、これぐらい経験あるだろ?」
若い男の身勝手な要求に、ハルカは目を閉じて我慢しなくてはならなかった。
たとえ性器や内臓を傷つけられても、再生槽にはいれば傷は治る。
それゆえに大胆にハルカの肉体を傷めつける男もいる。
……でもね。心だって傷つくんだよ。それが仕事だってわかっていたって、
辛い事もあるんだから……。
ハルカは、男のしていることをあまり考えないように、再び優しかった彼の
思い出を手繰り始めていた。
股間どころか、下半身を切り裂かれるような破瓜の痛みに耐えかねて、絶叫し
かけたハルカの口を、彼は強いキスでふさいだ。そして片手をハルカの背中に
回して肩を抱き、もう一方の手で後頭部を押えて身動きできないように手に力
を込めた。ハルカは自分の中に押し込まれていく、焼け付くような痛みに耐える。
やがて、お腹の中の塊を押し上げるような感覚がすると、彼は動きをとめた。
……これが子宮に当たってる感覚なんだ…
目を開けて見上げると、彼は優しく微笑んでいた。
「大丈夫?痛いと思うけど、我慢できる?」
「うん、……大丈夫。続けて……」
そういうと、彼はゆっくりと抽挿を繰り返すように腰を動かし始めた。
……じゅぶっ、じゅぶっという愛液と血をハルカの膣内でかき混ぜる音だけが
部屋に満ちていく。何度も全身を刺し貫く痛みが、少しずつ快感に変化してい
った。やがて恥ずかしい水音よりも、二人の喘ぎ声が部屋を支配していった。
最初は消えるように、途切れ途切れだったハルカの喘ぎ声も、やがてはっきり
とした声に変わっていった。
暫くすると、彼のうめき声とともに、ハルカは体の中に何かをぶちまけられる感
覚がした。ドクドクと流し込まれる液体が彼の精液なのだと思った瞬間、ハルカ
の頭の中でフラッシュがたかれ、そのまま気を失ってしまった。
いつの間にか、ハルカを蹂躙していた男は姿を消し、一人部屋に残されていた。
毛布を掛けていってくれたのは、罪悪感を感じた男の、せめてもの思いやりの
つもりなんだろうか。股間に刺す様な痛みを感じたので見ると血が出ていた。
痛いのを我慢して傷口を確かめてみたが、傷の程度が良くわからなかった。
コンソールに押し付けて犯されていたのと、床に転がされていたのとで、全身
にも鈍い痛みを感じる。
……医務室よっていかなきゃダメかな……
ぼんやりとそう考えながら、ハルカは服を身に着けるために、コンソールに手
をついて立ち上がろうとしたが、腰に力が入らなくてその場に再びへたり込ん
でしまった。
自然に涙が頬を伝って、流れ落ちていった。
優しかった彼に独占されていたかった、あの頃の自分を思い出す。
「ひくっ。…ア、…ラァ、寂しいよぉ。もう一度ハルカを慰めてよぉ…」
囁くような小さな泣き声が、部屋に消えていく。
部屋の隅にあるモニター装置の光が、一瞬チカリと明滅した。
永遠に再会することのかなわない人物の名を呼ぶ、ハルカの傷ついた心を
知っているのは、アリスだけだった。