新・フィルムは生きている! 映像作品純情派

投稿者:長岐栄


 だから、嫌な予感はしていたんだよな。

「……」

 何もいわないっつぅか、いえないっつぅか、そういう微妙な空気。

 いや、まぁ、正直すまんかったという気がしないでも無い。

 今回の件に関しては美神さんではなく間違いなく俺のせいだし。

「あの、おキヌちゃん?」

「よ……横島さぁ〜ん」

 甘えるようなトロンとした瞳、まるで鳴いているかのような艶っぽい濡れた声、ねだるように見上げてくるのはバイト仲間の幽霊少女。

 普段の無邪気さというか無垢な表情から抜け出しきらない、未経験の感覚に戸惑っている様子がありありと分かる。

 トレードマークの巫女服がはだけてしまって上着は少女の双丘に僅かに引っかかっているだけ……余りにも、余りにも色っぽすぎる。

 

 横島は、湧き上がる胸の高鳴りを否定できないままその姿に囚われつつあった。

 

 

――新・フィルムは生きている! 映像作品純情派――

 

 

「ふん、ふふ〜ん♪」

 鼻歌かなでながら、腕まくりした巫女服少女が台所でまとめたゴミの取りまとめに没頭している。

 ふよふよと宙に浮きながら、青白い人魂を従えているものの、その表情は明るくて、見るものの心を和ませてくれる。

 しかし六畳一間の部屋の片隅で上下デニムの赤バンダナな少年は膝を抱えていた。

「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、見られても〜た。おキヌちゃんに見られても〜た」

 目の幅に涙を流しながら横島は汚れちまった悲しみに涙していた。

 何故か?

 よく見ると部屋全体。そして、彼の本棚が整然と片付けられている。日常考えられない光景だった。

 そして、その整然っぷりは『秘蔵のブツ』に至るまでだった。

 本棚に並ぶVHSビデオテープ。燦然と輝く『18』の二重丸印。

 それが何なのか聞くだけ野暮というものだろう。

 その中でも横島を絶望にたたき込んだのはちょっと心持ちせり出して仕舞われているビデオだった。

 タイトルは「乱れ巫女 −悦楽の夜明け− 主演:蒼井みのり」と書いてあるが、些細な問題、とは言えまい。

 よりにもよって「乱れ『巫女』」である。

 巫女服姿の少女が来ることが分かりきっていて、このセレクションをするあたり勇者というか。よっぽどこの作品がツボなのか、天然なのか、萌えなのか。

 その辺の論議はさておいて、いつもはかなりハードなエロ本もわりかし平気で片付けてくれるおキヌちゃんが流石にこれを見た瞬間固まったのは言うまでも無い。

 止めるいとまもあらばこそ。

 裏表紙を見れば、自分と同じ格好で少し似た感じの女性があられもない姿で痴態を晒している。そんなものを見れば当然の反応だ。

 まさしく一瞬、時間が止まった。

 自業自得といえば自業自得といえよう。

 だが、それほど大事にならなかったのはおキヌちゃんが寛大だったのかなんだったのか。特に何も言われず今に至るが、それがむしろ怖いと言える。

「ん?」

 半泣き状態のままで横島は、不意になんだか嫌な予感を覚えた。

 本棚にある件のビデオに目をやった。先ほどおキヌが片付けたはずなのだが、微妙に口が開いている。

「……」

 横島の時間が数秒止まった。

 ぅぃぃぃぃぃぃぃいいぃっ

 心なしかビデオデッキの駆動音が聞こえる気がする。

「んなっ!?」

 横島は慌ててテレビを見る。

「えいっ♪」

 おキヌの掛け声一つ、ブンッと、ブラウン管が音を立てて画像を映し出す。

 ちょうど物語が始まろうとしていた。

「ちょっ、おキヌちゃんっ!?」

 慌てて振り返ると、笑顔でテレビのリモコン構えたおキヌがふよふよしていた。

「すごく興味があったんです♪ 私と同じ服を着てる人が主演の『びでお』ってどんなお話なのか♪」

 どーやら、さっき固まったのは、横島のセレクションのギリギリぶりにではなく、単純にパッケージの服装が同じだったことにあるらしい。

『そーいえば、おキヌちゃんって元禄生まれで漢字はあまり読めない?』

 ならば、かのビデオのタイトルが何を意味しているか気づいていないということだ。

 彼女の声を聞く限り、中身がどんなものか想像が付いていないのは疑いない。

『というか、分かっていたら笑顔でこんなことは言ってないっ!!』

 結論:今ならまだ間に合う。

「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!! 堪忍してぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 横島が思わず絶叫していた。

「駄目です♪ 横島さんが見てるお話、私も興味あるんですから、見せてください♪」

 興味深々、純真無垢を絵に書いたような笑顔が横島の心にメガトンハンマーの如くズガンッとのしかかる。

「だぁぁぁめぇぇだぁぁぁ、これはおキヌちゃんが見ちゃ駄目なんだあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 半泣き通り越して本気で泣きながら、おキヌからリモコンを奪い取ろうと奮闘している。

「駄目ですよ♪」

 ふよふよ浮きながらおキヌは横島の奪取攻撃から身をかわす。

「お部屋片付けてなかった罰です♪ 私にも見せてください」

 ニコニコ笑顔に邪気は無い。邪気が無いほど彼は切ない。

 ビデオデッキとテレビの電源落せば済むことに何故か気づかない二人だった。

『やばいっ、ヤバイッ、やばすぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!』

 程なくしてテレビ画面には境内を箒でお掃除する巫女さんの姿が……現れない。

「あれ?」

 何度と無くこのビデオに『お世話になった』横島は疑問を持たずにいられない。

『な、なんでだ?』

 導入部で登場するはずの巫女さんがいつまでたっても出てこない。

 隣のおキヌちゃんはそんなことは露知らず、興味津々、瞳爛々で画面に見入っていた。

 カッ

 テレビからフラッシュのようなまばゆい閃光が迸り、二人の意識は白光に包まれた。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「あり?」

 思わず周囲を見回す。

 先ほどまで、生活臭漂う六畳間だったというのに、

 晴れ渡った青空、神社の境内、そう、まごうことなき神社の境内だ。

「あれれ? 横島さん? 部屋の様子が? あ、最近の『ビデオ』ってもしかして周辺の様子まで」

 隣で元禄生まれのおキヌちゃんがのほほんとナイスなボケをかましてくれていた。

「こ、これは……っ」

 だが、横島にとってはあながち冗談ではすまなかった。

『これってまさかっ』

 このシーンはついさっきまでブラウン管の中に映し出されていた風景だ。

「ちょ、ちょっと待てっ、なんで俺ら神社の境内にっ!?」

 思わずおがーんと頭抱えて絶叫していた。

「たっ、助けてくれぇぇぇぇぇぇっ!!」

「「え?」」

 突如響き渡った若い男の救いを求める声に、階段の方を振り返る。

 鳥居の向こうで、いかにも軽薄そうな、カジュアルシャツを着た男が必死の形相で駆け上がってくる最中だった。

 そして、その後ろ、

「ギヒッ!!」

 タキシードに身を包む、口以外の顔のパーツが存在しない人物が飛び掛っていた。

「ギヒヒッ!!」

「こっ、こいつはっ!!」

 横島の脳裏に、映画に閉じ込められ時の記憶がフラッシュバックしていた。

 作品に宿った魂を喰らう妖怪・モンタージュだ。

 かつてある映画作品がこいつの餌食になり、横島やおキヌも遭遇したことがある。

「よ、横島さん、もしかしてっ」

 ここに至って、おキヌも声を上げる。

「すごいっ、モンタージュさんが出演しているビデオなんですねっ!!」

 斜め45°上をいく発想と共にググッと両手を握り締めキラキラ瞳を輝かせていた。

 ダガシャァッ!!

 コケたっ、その場に居る全員が一斉にコケた。モンタージュも含めてまとめてコケた。

「あれ?」

 周囲のドミノ倒しにおキヌちゃんだけが平和な『?』マークを浮かべていた。

「ちゃうわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 いち早く立ち直った横島が両手をわななかせて空に向かって絶叫していたっ。

『その通りだっ』

 どこからとも無く、厳かな声が空間に響き渡る。

「「え?」」

『今、この世界は危機に瀕しているっ!!』

「だ、誰だっ」

『私は、この作品のスタッフたちの情熱の結晶っ、「作品世界」だっ』

「え? え?」

『そこな妖怪によって、すでに女優は食われてしまったのだっ!!』

「なっ、なにぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 横島は思わず絶叫していた。

「あのピッチピチのねーちゃんが、あのバケモンに喰われちまったってのかぁぁぁっ!!」

 血の涙を流さんばかりに、顔中に青筋立てて絶叫する。

「ど、どうでもいいから早く助けてぇぇぇぇっ!!」

 モンタージュに大口開けて迫られる男優が必死に救いを求めていた。

「「「あ」」」

 ようやく存在を思い出して振り返れば、大口開けて迫るモンタージュに追いつかれていた。

「ひぃぃぃいあぁぁぁぁぁっ!!」

 バクンッ シーハーシーハー

 大口開けて一瞬で男優を飲み込んだモンタージュは爪楊枝で歯糞を取っている。

「……」

「……」

 ヒュオォォォォォォォッ

 気まずい沈黙の隙間を縫って、寒風が吹きすさぶ。

「え、え〜と、この作品ってさ」

『あー、女優と男優が各一名でな』

 世界はようやく言葉を絞り出していた。

「て、ことは」

 そして、作品の登場人物は居なくなった。

「じゃぁ、もうあいつ放っておいても良くね?」

『いや、そうもいかんぞ』

「え?」

『現在、君たちはこの作品の一部、すなわち、君達も奴の標的にっ』

「待たんかぁぁぁぁぁいっ!!」

「よ、横島さんっ、モンタージュさんがっ!!」

 おキヌの呼びかけに振り返る。

「ギヒッ!!」

 タキシードの怪人は間違いなくこちらを見つけて舌なめずりしていた。

「に、逃げるぞおキヌちゃんっ!!」

 おキヌの手を引っつかんで、全力逃走に入った。

「あ、は、はいっ」

 おキヌは思わず飛ぶことすら忘れて駆け出した。

 ガツッ

「あっ」

 ドシャッ

「あうぅ、い、痛たた」

 したたかに打ち付けた鼻の頭を押さえ……ふと、振り返ると。

「ギヒッ!」

「あ……」

 見上げた先に、モンタージュの顔の無い視線がおキヌを見下ろしていた。

「あ、あぁぁぁ」

 射すくめられたように、尻餅ついた少女は身動きが取れなくなる。

「きゃぁぁぁぁあっ」

 思わず顔を背けて悲鳴を上げる巫女服少女。

「ギヒィィィィッ!!」

 歓喜を思わせる声と共に大口を広げてモンタージュが飛び掛る。

「こんのやろぉぉぉぉっ!! おキヌちゃんに何しやがるっ!!」

 ズザシュゥッ!!

 横島の霊波刀・ハンズオブグローリーが横薙ぎに一閃する。

「ギヒィッ!!?」

 タキシードの脇が浅く薙がれていた。

「ざけんじゃねぇぞっ!」

「ギヒッ!!」

 ギィッ!!

 タキシードのステッキとハンズオブグローリーが真っ向からかち合っていた。

『なんだっ? こんな軽かったのかこいつの攻撃』

 若干拍子抜けしていた。

 ギンッ!! ガッ ザシュッ

 打ち合った霊波刀を切り返す。切っ先がモンタージュのタキシードを浅く凪いだ。

「んなろぉぉぉぉっ!!」

 更に一歩踏み込んでハンズオブグローリーを真上に振り上げる。

 ザシュゥッ!!

 横島の唐竹割りがモンタージュを両断した。

「ギヒィィィィィィィィィィッ!!」

 ズシュゥゥゥゥゥウゥゥウゥゥゥゥゥゥッ

 分かたれたモンタージュは断末魔の叫びを上げ、霧のように薄まり掻き消えていった。

「これで片付いた? はっはっはっは〜っ!! このゴーストスイーパー横島忠夫にかかったらこの程度の相手はへっちゃへーっ!!」

 高らかな勝利宣言にいつも訪れるはずのツッコミはない。

 残念ながらここにはボケキャラしかいなかった。唯一のツッコミがボケるともはや止まることはない。

「えっと? 良かったんでしょうか?」

 おキヌが冷や汗と共に小首を傾げていると、横島はこの『作品世界』に向けて呼びかける。

「じゃ、もー帰って良いんだよな? あの巫女服ねーちゃんのおらん世界に、はっきり言って用が無いぞ」

『すまないがもう一つ頼みがある』

 世界は申し訳なさそうに、だが有無を言わせない声で語りかけてきた。

「な、何だ? そもそも登場人物がおらんだろここには、どないせーと」

『それだっ、頼む。この作品をこの世界を完成させてくれ』

「え?」

『喰われた者たちに代わって、この作品を完結させてくれぃっ』

 世界の身を震わせる必死の訴え。

「な、なにぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

『私はこの作品に込められた熱意。このままでは製作者たちの熱意が満たされず。悔やんでも悔やみきれないっ。頼む、この先のシーンを代役として全うしてくれぃっ』

「いや、そういわれても、この先のシーンってアレじゃねぇかっ!!」

 何度となくこのビデオで『お世話になった』横島は知っている。

 今から始まるシーンはこのビデオの佳境、18禁アダルトビデオの佳境といえば言うまでもない。

 いわゆる、『濡れ場』だ。

『そうだっ、だからこそ、この作品を完成させるには不可欠っ』

 要するに、巫女服の少女をグッチョングッチョンのヌメヌメにして、アンアン言わせるシーンなのだ。

 となると、今この場で巫女服の少女といえばおキヌな訳で、男も横島な訳で、

「ちょ、ちょちょちょっ、ちょぉっと待てっ色々あるだろっほら、心の準備とか!!」

『大丈夫っ、準備ならばバッチオッケー布団もティッシュもこちらで用意しているぞっ』

「論点はそこじゃねぇっ!!」

 危機として帰ってきた言葉に横島は頭をかかえる。

 大体、主役カップルが食われてしまった今、横島とおキヌがやる代役というのは当然ながらその二人だ。

「えっと、分かりました。その、横島さんとなら」

 少し恥ずかしそうにおキヌちゃんははっきり答えていた。

『そーだよおキヌちゃんなら、きっと何の気なしにこんな感じで答え……』

「へ?」

 横島は硬直する。

「ちょっ、おキヌちゃぁんっ!! 代役の意味分かって言ってるっ!?」

「はい、えっと、今の話だと一緒のお布団で寝るんですよね?」

 グッと両手を握り締めて、「私、頑張りますから」って言わんばかりの表情だった。

 わかっていなかった。

 根本的に分かってなかった。

 あながち間違っていないけど根こそぎ間違っている。

『ありがとう、君の優しさと覚悟に感謝する』

 世界は厳かに礼を口にする。

「ちょっとまてぇぇぇぇっ!! 覚悟も何も明らかにおキヌちゃん意味わかって無いだろがっ!?」

『甘いっ、甘いぞっ、清純無垢で何も知らない巫女少女が快楽の絶頂に至るまで乱れる様を描くのがこの作品のコンセプトっ!! この状況に何の問題があろうかっ!!』

「お前に問題無くても俺は大ありじゃボケェェェェェェェッ!!」

 全力で持って絶叫していた。こめかみの青筋は今にも引きちぎれんばかりだ。

「第一、おキヌちゃん幽霊なんだぞっ、代役しようにもっ」

『安心したまえっ、ここは作品世界、すなわち魂で構成された世界っ。君も魂だけここに留まっているから、彼女と魂通しでくっつきあうのも抱き合うのもオールオッケーだっ』

 白い歯がきらりと輝きそうな爽やかな声だった。

「へ?」

『つまり、この作品世界の中ならば、君たちは何の支障も無く愛し合うことできるから何の遠慮はいらないぞっ!!』

「なっ、なななっなぁにぃぃぃいぃっ!!」

『お、落ち着け横島忠夫っ、冷静に考えろ、この作品をおキヌちゃんとともに完成させる。つまり、代役として、これから『濡れ場』を魂状態の俺とおキヌちゃんが実現する。特典は幽霊であるはずのおキヌちゃんとアレか、幽霊のはずのおキヌちゃんとあぁいった関係に至ることができるって事なのか……』

『その通りだっ!!』

「人の葛藤モノローグにツッこんでくるなぁぁぁぁっ!!」

 おキヌとの<検閲削除>な関係になることを意味する。

『嫌なわけが無いっ。むしろ、可能ならば、と夢想したこともあるっ。そ、そら、おキヌちゃんに体があったらなぁって、確かに思ったよ』

 そう思ったことがあるのは事実だし、実際、彼女はべらぼうに可愛い。

『で、でもさ、でも』

 そんな横島の葛藤は他所に、世界は場面は切り替わった。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「ん、つつ、ここは?」

 周囲を見回す。

 無人の境内が見える。

 板の間の上に敷かれた布団があってその上にはキョトンと正座するおキヌ。

 当然ながら布団は一つで枕は二つ。赤い掛け布団は半分浦井で折り返されて、真っ白なシーツの上に二人はたたずむ。

 横島はこのシーンに見覚えがあった。

 というより、このビデオはここからが「本番」といっていい。

 ここは作中の男が巫女少女を物するための「仕掛け」が施された場所だ。

 室内には香の匂いが立ち込めて、鼻腔をくすぐる。

 どういう効果があるのか? なんとなく……予想が付かないではない。

 程なくして、世界は二人に影響を与えていた。

 ドックン ドックン ドックン

『や、ヤバイかもしれん』

 高まった心拍と共に心のタガを緩むのが分かる。

 横島は、自分の身体に影響が出ていることを感じていた。

 ほどなくして、隣の巫女服少女の表情に明らかな変化が現れ始めていた。

「あっ」

 頬をかすかに上気させて、おキヌが普段とはあまりにかけ離れた切なげな声を上げる。

「ん……ふぁ、ぁっ」

 瞳は徐々に潤みを帯び熱く濡れ始め、桜色の唇が切なげに蠢いていた。

 もじもじと足を、太ももを付け根からもじもじさせて、

「ん……ん、はぁ……」

 たまらなくなってきたように桃色の吐息を吐き出す。

「よ、横島さぁ……ん」

 上体がユラリとよろめいて、ギュゥッと横島の腕にしがみついてくる。

 横島の煩悩ゲージがすさまじい勢いで上昇していった。

「なんだか変です……変なんです。幽体が……熱い」

 瞳をウルウルと潤ませながら、上気した顔が湿ったような吐息を伴い見上げてくる。

 グビッ

 横島は盛大に生唾を飲み込んでいた。

 夢想だにしなかった清純少女の上気した瞳。

「お、おキヌちゃん」

 目の前の夢のような光景に、どうすれば良いか判断が止まった。

「横島さぁん……あ、熱い……熱いれすぅ」

 未体験の感覚に戸惑いながらも……その感覚を受け入れていくのが分かる。

 ろれつが回らなくなって、少女は自ら服の留めに手をかけていく。

「ちょっ、おキヌちゃん」

 思わず声で制止をかけるが、視線はしっかり釘付けだった。

 本来は解けることの無いはずの彼女の巫女服がスルっとはだける。

 それが、袴の紐は解け……上着は乱れる。

「よこしまさぁ……ん」

 はだけさせたまま、腕だけでなく……今度は真正面からしがみつかれた。

「え、え?」

『あかん、あかんておキヌちゃん……俺という男の理性がそー長続きするはずがぁぁっ!!』

「もぉ、もぉ、我慢……できないんです」

『そら、こっちのセリフやぁぁあぁぁぁっ!!』

 完全に蕩けた瞳のまま、おキヌは半ば強引に自らの唇を横島のそこに押し当てていた。

 真っ赤に染まる横島。

『が、我慢……』

 しかし、手を出してはいけないという意思が働くのか、金縛りのように体が動かない。

「幽体が……幽体が熱くてたまらないんです……お願いです。さすってくださいっ、横島さんの手で、お願い、早く……早くぅ」

 涙目の美少女が、横島の手を自らの乱れた着衣の内側に導いて。

 フニュッ

 暖かで、柔らかい感触が手に触れていた。

『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』

 少年の煩悩ゲージはMAXを余裕でブッちぎっていた。

『や、ヤバイっ、もぉしんぼーたまらんっ!!』

「お願いです。揉んで下さい。苦しいんです……」

 濡れた瞳が懇願してくる。

『そ、それはもーっ!!』

 思わず絶叫して、飛び掛かる準備は万端だった。

『俺への愛の告白とっ!!』

 動けない。

『あれ?』

「そ、そんな……」

 我ながら信じられない思いで自分を見回す。

『おかしい、とっくの昔にガバァッといってイヤァァァァって言われてる頃なのに』

 『いやぁぁぁぁ』、といわれることが分かってるなら普段から自粛すれば良かろうが、そこは横島である。

 だからといって、現状が変わるわけでもなくて、

「お願いです……横島さんの手で……横島さんがさすってくれないと駄目なんです。横島さんに触って欲しくて堪らないんです」

 潤んだ上目遣い、一心に横島に哀願する清純無垢な巫女服少女の艶かしい姿。

 ブチンッ

 切れた。

 いつもどおりでは無い、それでも、少年の中で何かがブッちぎれた。

 隙間から見える少女の胸のふくらみ。

 恐る恐る……少年の手のひらはその感触味わった。

 フニ フニ

『こっ、これはっ』

 柔らかな感触、張りのある白い肌と途上を思わせる膨らみが、少年の劣情を駆り立てる。

「あっ……ふぁ、んっ」

 胸がもみしだかれるリズムに合わせて、少女は切なげな吐息を漏らしていく。

「もっと……もっと触ってくださいっ、横島さんに触っていて欲しいんですっ」

 この言葉に横島のわずかに残っていた理性が更に融けた。

「お、おキヌちゃん」

「横島さん」

 潤んだ瞳で見詰め合う。

 今度は横島が開いた左手で少女を抱き寄せて

 意識せず、なぜか自然に出来た。

「あ……っ」

 戸惑いながらも嬉しそうな少女の声。

 チュ

 互いの唇を押し当てた。

 少女は一瞬だけ驚いたように目を見開くが、程無くして、自ら少年の身体にしがみついて、自分からも少年の唇を求めるようになっていた。

「ん……んん」

 チュ……チュプ

 互いの唇をむさぼりながらも、少年は少女の胸を触り続ける。

 頬を紅潮させて、時折ビクッと背筋をそらすような反応が可愛くて仕方ない。

「あ……っ、はぁ……はぁっ」

 唇を離した瞬間、荒くも甘い吐息が互いにかかる。

 うっすらと汗がにじむ、熱に浮かされたように、だんだん熱く熱く、

「おキヌちゃん」

「はい」

「俺も……熱くなって来ちゃった」

 暗に少し離れることを示唆する。

 横島の上着に、優しく手をかけて、ボタンを外し始める。

「お、おキヌちゃんっ?」

「私が横島さんを……」

 切なげな瞳がジッと見ていた。

『や、ヤバイッ、可愛いっ』

 流石に少年の顔が赤く爆発する。リミッターは振り切れそうだった。むしろ、既に振り切っていた。

「い、いや、それは流石にちょっとっ」

「……」

 無言の上目遣いは不満そうだった。

「わかりました……待っていますから早くしてくださいね」

 とてもとても、真剣にお願いされてしまっていた。

 振り返って少年はそそくさとデニムを脱ぎ捨てる。中のシャツ、気づいたら下着に至るまで一気に脱ぎ捨てた。

 気づけば下腹部で既に激しく怒張した少年のモノが存在を主張する。

『こ、こら予想以上な事に……いくらなんでもおキヌちゃん驚かせるんじゃ』

 だが妙だった。

『でも、いきなりおキヌちゃんがあんな積極的……って、まさかビデオの影響って奴か』

 ギクッとして考えが至る。

『やっべぇ、俺も……影響受けてるって事だよ。だって、おキヌちゃんに変なことしちゃいかんって思いつつ』

 股間はギンギンである。むしろ、「しちゃいかん」って思っているのが加速を促しているようにも思える。

 そもそも横島はそんな心配しなくても良い、きっとビデオの影響が無かったら更に節操無く飛び掛っていることは保証付きだ。

「よ……こしま……さぁん」

 不意に濡れた声が少年を呼びかける。

 振り返った先には、柱にしがみつくおキヌの姿。

「はぁ……はぁっ」

 息も絶え絶えにおキヌはその可愛らしいお尻を突き出して、背中越しに横島を見上げてくる。

「は……んぁ、横島さぁん……早く、来てください」

 肩越しにこちらを見つめる潤みきった瞳と高潮した頬、今にも蕩けそうな声。

 半ば以上さらされている白く形の良いお尻がふるふると震えていた。

 太ももに引っかかった真っ赤な袴はかすかに太股に引っかかって全てを剥いでしまうよりも艶かしい。

「ふぁ……ぁん」

 今にも泣きそうな……鳴き声とともに青白い人魂が切なげに揺れる。

 太ももには溢れてきたとろとろの蜜が滴って、横島を誘うように柔らかな肌が上気している。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」


 そして、そんなおキヌを見て横島も理性は限界を迎えていた。

 もはやこの素敵な空間を看過する事などできはしない。

「あぁ……横島さん……切ないんです……早く……早く……っお願い……横島さん、私を、私を無茶苦茶にしてください」

 ただ、はっきりしているのは、もう横島からの刺激無しではおキヌちゃんは堪らなくなっているということだ。

 半分むき出しになったお尻に惹かれ、横島はグビッと喉を鳴らす。

「横島さん……私の唇に……もっと唇に、して下さい」

 潤んだ瞳で訴えかけられる。

 思わず腰だけに集中しかけていた意識がハッとその唇に引き戻される。

 蕩けたような瞳は、熱い感情の本流の中でも、ただ一心に少年を求める衝動で満たされ更に熱く、熱く少年を求めていた。

「おキヌちゃん」

「横島さん……っ、んっ、ふぅっ」

 言葉の先は肩越しのキスで塞がれた。

 少女に背中越しで後ろからのしかかるように少年は身体を密着させる。

 触れ合った腰には自然と少年の怒張したモノが押し当てられて少女はいささかビクッと潤んだ瞳を震わせる。

 唇を求め合うために仰け反る体が、更に跳ねる。

 少女の肌はひんやりとしていたが、それでもいつもよりずっとずっと熱く火照る。しかし、腰に触れた少年の怒張する猛りはそれよりも更に熱く硬く、触れたそこを中心に体が熔けるような錯覚を少女に与えた。

 かすかに離れた唇がまた切なげに声を絞り出す。

「あんぁっ……熱……んむぅ」

 再び唇を塞ぎ、少年の手のひらが、少女のわきをかいくぐって上着の隙間から柔らかな膨らみを揉みしだいた。

「んんっ、んむぅっ……ふ、んむぅ」

 指先には桜色の突起と思しきツンとした感触……その周囲で指を這わせるたびに少女の体がビクリと跳ねる。

 溢れそうな涙を称えた瞳はとても満足げにその感触を味わい。互いの唇をむさぼりあう。

 チュッ……チュプッ、チュパ……チュ

「はぁ、ん……あ……あぁ」

 互いの唾液が糸を引いて、名残惜しくも唇を離す。

「おキヌちゃん……」

 あまりに可愛らしい反応に、愛おしさが溢れ出した。

「横島さん……私……幸せです」

 肩越しに真っ直ぐ少年を見つめる少女の言葉が少年を震わせる。

『か、可愛い……』

 濡れているけれど先ほどまでと違う、少女の意思が見えた。

「こんな風に横島さんに触られるのが……暖かくて気持ちのいいものだなんて」

 濡れた瞳でありながら、間違いなく確かな彼女の意思のこもった瞳は喜びを、感動を露にしていた。

「おキヌちゃん」

「もっと、もっと私に横島さんを刻み付けてください。離れられないくらい深く深くっ」

 その真摯な言葉に……応える気の効いた言葉は出てこないけれど。

「俺……おキヌちゃんにもっと……触れたい」

 素直にただ猛る想いを口にする。

 『作品世界』がどうとか関係ない。横島自身の意志がおキヌを求めていた。

「俺だけのおキヌちゃんに……したいっ」

「してっ、して下さい……横島さんだけの私に、もっともっと」

 うなじが露になっていた。白く美しい肌が少年の網膜に焼きつく。

 かすかな後れ毛に覆われたその場所に唇を這わせる。

「ぅ、あ……あぁ」

 チロリチロリと舌が這い、少女のうなじを蹂躙する。

 そして、おのずと仰け反りは深くなる。

「ふぁっ……あぁ……っ」

 少女はくすぐったくもたまらない感覚に襲われて声を漏らす。

 もじもじと太股をすりあわせる様が、密着した肌を通して互いに伝わってくる。

 おキヌの後ろから次々と迫る刺激は歓喜と悦楽と幸福を帯びていて、目じりに涙がかろうじてこぼれずに潤っていた。

「あんっあぁ……ん、はぁん、横島……さぁん」

 濡れた声が部屋一杯に広がっていた。

「可愛いよ……おキヌちゃん」

 思うままに少女の耳元へささやく、

「ぁ……横島さんっ、横島さぁんっ!!」

 喜びで瞳は震えて、唇は愛しい名前を叫ぶ。

 何度も何度も、叫ぶ。

 舌はうなじから耳に触れていた。

「ん……ふぁぁぁっ!!」

 耳を甘噛みされ、少女はまた瞳を濡らす。

 わきから伸びた手は一心不乱に少女の胸を揉みしだく。

 少年の手の中でその柔らかな乳房は蹂躙されるかのように形を変えた。

 唇は柔らかな耳たぶをくわえて離さない。その感触を舌先で味わいもてあそぶ。

「あぁ……っ、あぁあぁぁ」

 喜びとも安らぎとも分からぬ少女の喘ぎ。

 横島の手のひらは胸のふくらみだけでなく背筋、腰のくびれ、そして、柔らかな感触に覆われた白い桃のようなお尻へ至る。

 心地よい感触が横島の煩悩を満たし、理性を溶かす。

「柔らかい」

 思わず声に出た。

「や……ぁっ、言わないで下さいっ。は、恥ずかしいです」

 直に触られていることを思い出しておキヌは頬を更に染める。

「だって、本当に……凄い柔らかいんだ。こんな気持ち良い」

 フニ……フニ

「あ、あぁ……」

 横島の視線は軽く旅をする。後れ毛が残るうなじから、白い上掛け、そして、袴からこぼれた白い肌。

 形の良い二つの柔肌がクレバスを作り、足の付け根には赤い袴がかすかに視界を遮っていた。

 少年は……そのわずかに遮る赤い布を少しだけ下へとずらす。

「っ!? 横島さんっ?」

 ビクリッとおキヌがわずかに怯えた声を上げ振り返る。

 内股をキュッとすぼめて、濡れた秘裂は白い柔肌に守られて一本の縦筋となった。

「や……いやぁ……そんな、そんなところ」

 横島と濡れた瞳が重なり合う、僅かに怯えたような潤んだ瞳。

「おキヌちゃん……見たいんだ。もう見たくてたまらないんだ」

「……」

 少年の眼を見た瞬間、小さく息をついて、少女は体から力を抜いた。

 少女のクレバスの最奥が少年の視線の前に露になる。

 白い肌の隙間で花ビラのようなピンク色のヒダが濡れそぼって蕾になっていた。

 時折呼吸するようにピクンピクンと震えていて。

 少年の視線を釘付けにした。

「……あまりジッと見ないで下さいね」

 わずかに声を絞り出す。かすかに震える声が互いの心音を更に跳ね上げる。

「ちょっとそれは無理かも……だって、おキヌちゃんのここ……凄い綺麗だ」

 少年は完全に見入っていた。

「横島さん」

 胸の高まりが止まらない。

 この美しい少女のたまらないほど美しいこの場所。

 横島にとって初めて見る女性の秘所が、この清楚な少女の穢れを知らない愛らしい少女の……秘する所。

「あぁ……横島さん、横島さぁん」

 ピンクの秘裂が何かを求めて切なげに揺れる。

 少年は秘裂の魔力に誘われるように近づいていく。

「ひゃぅっ、息が……横島さんの息、かかってますっ」

 興奮した荒い吐息は、少女の未成熟なピンクの花びらを揺らす。

 既に濡れ沿ったその場所はかすかな刺激さえも少女を熔かす快感へと変えていく。

 チュッ ピチャ

「っ!?」

 おキヌの全身がびくりっと震えた。

 横島の舌が秘裂を優しくなぞっていた。

「やっ、だ、ダメェェッ!! そんな、そんなところ舐めちゃっ!! あぁっ、ああぁぁぁあぁぁぁぁっ」

 横島の舌が少女の秘裂やヒダをなぞり、捲る度に、少女の体は悶え跳ねる。

 チュプッ、チュ……

 最初はヒダに口づけて。

 チュ……ツプ

 ピンクの花びらを、舌先でもてあそぶ。

「ひゃ……っ、ふ、あぁあぁぁぁぁ、やぁ、ダ、ダメェェ」

『そんな場所っそんな場所を舐められたらっ私っ』

 イヤイヤと首を振りながらも漏れてくる濡れた声は喜びに染まっている。

 秘裂のもっとも深い位置に、かすかに覗く狭い入り口、サーモンピンクのそこからは蜜が次から次へとあふれ出していた。

 少年は溢れる蜜を吸い尽くす勢いで、一心にその蜜を舐め取る。

「あぁ……横島さん、そんな……そんな場所をっ、あぁっ」

 少女は羞恥の余り自分の秘所を隠したい衝動と、そこを少年に蹂躙される喜びに『もっともっと……』求め突き上げてくる思いの間で、融けたように葛藤する。

 その葛藤が更なる快感を呼び起こしていた。

 甘い吐息はもう止まらない。

「た、立ってられな……あぁっ!!」

 足はガクガクと震えて、柱に捕まる両手には抜けてしまいそうな力をかすかに込める。

 震える秘所を舐めるため、少年は少女の柔らかなお尻を両手で挟んでいた。

「もっと、見たい」

「え?」

 ビクッと怯えたように振り返って、少年がゆっくりと、秘裂を……左右に開く様を、目にした。

「やぁぁぁっ!! ダ、ダメェェェェェッ!!」

 一際激しい羞恥が彼女の全身を駆けめぐった。





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