BIRTHDAY CARD 3
「……なんだ、これは」
これ以上ないというくらい眉間にしわを寄せて、三蔵は、にっこり笑った八戒の手の中に収まっている、毎年決まった時期になると見たくもないのになぜか否応なく三蔵の視界に入ってくる、植物繊維が人為的に固められた、白い物体を睨みつけながら言った。
「やだなあ。三蔵。毎年同じこと言わせないでくださいよv」
語尾のハートマークもまぶしく八戒がうきうきした声で(十中八、九ほぼ間違いなく、演技だろうが)三蔵に向かって言った。
「……なんで、毎年毎年毎年この俺がこんなものに付き合わなきゃなんねーんだ?ああ??」
「別に無理に、なんて一言も言ってないじゃないですか」
珍しく八戒の笑顔に丸め込まれずに三蔵が抵抗を示すと、八戒は半瞬だけすっと目を細め、三蔵をちらりと見て、その半瞬後さらににこにこと笑顔を作って続けていった。
「何だ。悟浄におごってあげる気がおありなら、そう正直におっしゃってください。最高僧サマ?」
「…………………」
そうやってかってにおごるだのおごるだのおごるだの触れ回ってるのは貴様だろう!という正しい突っ込みは、八戒の笑顔にかき消されてとっくの昔に不発に終わっている。
どうせ今年も心にもないとんでもなくあられなことを書かなければならないだろうことは八戒が現れてから0.1秒で予測完了していた。
大体この碧の瞳の世間一般的に(作者にも)ほのぼのお兄さんと表現されている、誰よりも苛烈な魂を持った男は、あのクソエロ河童の誕生日にはやけに熱心なくせに、自分の誕生日にはほとんどまるっきり興味を示そうとしない。
なんだか自分があのゴキブリ男に負けているようで三蔵は大変不愉快だった。
「はい、どうぞv」
八戒が差し出した紙とペンをひったくって、恐ろしく何か言いたそうだった三蔵はすべてをぐっとこらえて(さすがこのあたりは最高僧の称号を持つ男である)白い紙に恐ろしい勢いで文章を書き付けて、八戒にそれをなげて返した。
ささやかな、抵抗だったが八戒は当然そんなこと1ミクロンも気にしていなかった。
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