BIRTHDAY CARD 3




「…あれ、三蔵。こんなに短くてかまわないんですか?」

 三蔵から受け取ったその紙にちらりと目を走らせて、八戒は言った。

「長さに制限があるなんて聞いていない。そんなおぞましいもん長く書けるかこの俺が!!」
「いやー、三蔵。もう3年目ですから、マンネリを打破しようと僕もいろいろ考えているんですよ」

 にこにこと笑う八戒に恐ろしく嫌な予感を覚えた三蔵は、先ほど八戒に渡したばかりの紙を引っ手繰って取り返し、それは一体どういうことだ、と視線で続きを促した。

「去年もおととしも、皆さん一言しか書いてくださらなかったじゃないですか。ですからきっと悟浄もなかなかそれを書いた人物を当てるのに苦労したと思うんですよね」

 あんなエロ河童が苦労しようがしまいがそんなことはどうでもいい!と三蔵は激しく思ったが、自分の身がかわいかったので口に出すのはやめにした。

「ですから、今年はまず無条件で、一番短い人が悟浄におごることにしようかと…」

 その八戒の台詞が終わるか終わらないかのうちに、三蔵は恐ろしい勢いで、その白い紙の余白の部分にペンを走らせた。経文でも書いているのかと八戒が覗き込むと、そこには小さな字でびっしりと書き込まれた
およそ三蔵とは思えない
文句がつらつらと書き連ねてあった。

「……他は」

 三蔵が低い声を押し出した。八戒は三蔵の意図するところが少しわからず、首をかしげる。

「他には、条件はもうないのか?」

 地の底から轟くような声を出す三蔵の目が心なしか据わっているように感じて、八戒はそんなにてれなくてもいいのに、とつぶやき更に三蔵を脱力させることに成功した。

「ああ、そうですね。ありますよ。勿論」
「それを先に説明しろ!」
「だって三蔵、僕が説明するより先に勝手に書き始めちゃったじゃないですか」

 にこにこ笑う八戒に事実を指摘され、それ以上の反論を三蔵はあきらめる。

「あとはですね。悟浄が書いた人を当てれば、当てられた人が悟浄におごります。ひとりも当てられなかったら悟浄が皆におごるんですけれど。この辺のルールは言わなくても理解してもらえますよね?」

 いや、絶対にしたくない、と口に出すことはかろうじてとどまり、三蔵はものすごい勢いでかきあげた、そのクソエロ河童に八戒から手渡されるであろう白い紙をもう一度見直した。

「とにかく、三蔵の分はこれで確定ですね。当日を楽しみにしておいてください」

 さわやかににこやかに手を振る八戒の後姿をボーっと眺めていた三蔵は、しばらくして我に返るとダッシュでその書きたくもない文字を書き連ねてしまった自分の右手を洗浄しに、洗面所へと向かっていった。








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