Birthday Card 4
「なかなかはやってるんだなー、こんな山奥で」
うんざりした表情を隠しもせず、でも僅かに期待を込めて悟空が言った。
きっとこの大地の気が結集して生まれた猿にはおいしい食事ができればそれ以外のことはどうでもいいのだろうが。
悟浄はその台詞を聞いてますますうんざりしてきた。もう今日何度うんざりしたかよくわからない。自分の誕生日にこれほどうんざりできるというのはやはり自分はそういう星の元に生れついているのだろうかと疑ってかかってしまう。
とにかく、カードの送り主を当てることができなければ、おそらくこの食欲魔人でどこぞの異次元につながっている胃袋を持っている猿の妖怪が、オソロしいほどこの高そうなレストランで食べまくった料理の支払いをさせられてしまうこと請け合いなのだ。
悟空も、自分が払わされる危険性があるのだから食欲を抑制してもいいところなのだが、ちっともそんな方面には頭が回らないらしい。三蔵がいくら言っても食べることをやめないので、三蔵も自分の精神衛生上悟空の食欲に口をはさむことはなくなってきていた。
「そりゃそうですよ。考えても見てください。桃源郷の大きな料理屋だって大通りには少ないじゃないですか」
うきうきした表情で、八戒が言う。
そうだっただろうか、と悟浄は思ったが、きっとそうだったんだろうと無理矢理自分に言い聞かせて、更に店の奥へとずんずん歩いて行った。
「やたらと扉が多いと思ったら廊下も長いレストランだな」
「北方の国ではこういうつくりをすることがあるそうですよ。寒さ対策だとか。それより悟浄。次のカードを引いてください」
八戒の手の中から、もう一枚カードを選んで、悟浄はそれを引いた。
「注文は随分多いでしょうが、どうか一々こらえてください」
――――――間違いなく、誰かの陰謀だと悟浄は思った。一々こらえてやってもいいのだが、誰が書いたかはっきりしろ、と心の中で叫んで、目の前の小さなドアを手前に引いた。