おんがく会のお弁当
小さな子供たちが、一生懸命口を大きくあけて歌う姿はとてもかわいらしかった。
左右に揺れながら、どの子供たちも指揮者を一生懸命目で追っている。
1曲目は合唱。なんだかよくわからないけれどとても伝統ある歌らしい。
2曲目は合奏。首から下げられた縦笛部隊、鍵盤ハーモニカ部隊、ハーモニカ部隊、少しずついる木琴、鉄琴、アコーディオン、そしてマラカスと、にぎやかで元気な曲だった。
3曲目はまた合唱。低音部と高音部に分かれた子供たちが追いかけながら歌を歌っている。
とてもとてもかわいらしくて、なんだか悟浄はきてよかったなどと思ってしまった。
どの曲もどこかできいたような、少し懐かしい感じがする。
…3曲目になってくると、もうほぼ半分の子供たちがぴょこんぴょこんと耳としっぽを飛び出させていたことはご愛嬌ということで。
1年生のプログラムが終わると、すぐに昼食の休憩が取られた。
ヘンなプログラムだが、何か考えがあってのことらしい。
「あれー?悟浄、あの曲わかんね―の?」
八戒が重箱を開けて皆で食べる段取りをしている間、悟空が素っ頓狂な声を上げた。
「…わり―な、しらね―よ。そんな有名な曲じゃねーだろ」
その重箱をどうやったらかなりの割合で占拠できるか真剣に考えながら、悟浄は適当に言葉を返した。
「ナニいってんだよ。めちゃくちゃ有名だぜ。それしらね―のってモグリだよ、モグリ」
「…フン、猿ののーみそでも覚えてられるくらいなら確かに多少は有名な歌かもしんねーけどな」
やはり適当にきっと脊髄反射的に言葉を返してやっているだけの悟浄を、八戒は、少し、意識して見つめた。
1曲目は「さくらさくら」
2曲目は「おもちゃのマーチ」
3曲目は「かっこう」
……悟浄は、それらを、知らない、という。
「八戒、早く食べたいよーーー」
悟空が甘えた声で八戒に甘えてくるまで、八戒は、その思考に沈みこんでいた。
あまりに有名な、それらの曲を、悟浄は、知らない、といったのだ。
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