おんがく会のお弁当
当然のことながら、八戒のお弁当は大変美味しく得難い存在のものであった。
小さく握った俵のおむすびはゆかりをまぶしたものと野沢菜を刻んだものをまぜた2種類がある。
隣には形よく巻かれただしまき卵。
そして、ひじきと豚肉の煎り煮と小さく切った人参が彩りを添えるポテトサラダ。
ほうれん草の白和えとお約束の鳥のからあげに紫蘇の葉でまいた一口サイズのハンバーグ。
デザートには柿と林檎をきちんとむいて、ちがう小さ目の重箱に詰めてきていた八戒の心遣いが悟浄にはとても嬉しかった。
「この猿っっってめ―、自分ばっかり食うんじゃねえっ!!」
一番目当てのからあげを食べるために悟浄がのばしたはしの先を掠め取るように悟空は右手でそれをつかむと、あっという間に口にほおりこんだ。
「へへーんだ、とったもんがちだよーだ」
「まあまあ、二人ともそんなにあわてなくてもちゃんとたくさんつくってきましたから」
「…フン、あの全身消化器官猿とお前のつくったものには目がないクソエロ河童には言うだけ無駄だな」
相変わらず自分の分を必要以上に確保しながら、三蔵は不機嫌そうにそう言った。
「……なんだか今日のお弁当って気合はいってるじゃん、八戒」
口いっぱいお弁当を頬張りながら、悟空が嬉しそうに言う。
「そうですねえ。今日はちょっと頑張りましたよ」
にこにこ笑いながら、自分はだしまき卵を一口ずつ食べて、八戒はいった。
「今日は、特別な日ですから」
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