おんがく会のお弁当
毛むくじゃらのかたまりが走り去ったあと、太陽はそろそろ南の一番高いところに上り詰めようとしていた。
その暖かな陽射しを浴びて、うーんと一伸びすると、八戒はそのタイサンボクの葉をポケットにしまって、玄関のドアをパタンと閉めた。
そしてキッチンで、アールグレイを一口飲むと、八戒は、今度こそ悟浄をたたき起こしに行こうと決意した。
一生懸命書かれた招待状。
ふたりで、来て欲しいといわれた。
ジーンズのポケットでかさこそ鳴っている。
その葉。
「悟浄、悟浄、いい加減おきてください」
ものすごく幸せそうに眠る悟浄の背中を揺り動かして、八戒が声をかける。
「…やー、もう少し、あと少し、あと5分……」
「どこかの不良提督みたいなこと言わないでください。悟浄、起きてくださいよ」
「む―……」
そう言ってまだぐずる悟浄の額に一つキスをおとすと、八戒はがば、と勢いよくおき上がってきた悟浄の両腕をするりとかわし、ひらひらと手を振ってキッチンへときびすを返した。
「八戒―――。もっかいキスしてくんなきゃ起きない―――」
「ナニ言ってるんですか。もう一回キスしたら向こう1ヶ月僕はあなたと一緒には眠りませんよ」
「……………………強くなったねー、八戒さん」
「なんとでもv」
そして悟浄の寝室のドアに手をかけて、悟浄を振り返ると、八戒はにっこり笑って、こう言った。
「そうそう。悟浄。11月の第2金曜日は予定を空けておいてくださいね」
「何で?」
「ナイショですv」
ドアを閉じないままキッチンへと向かった八戒の背中をぼーっと見送りながら、悟浄はがしがしと紅い髪の毛をかき回した。
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