おんがく会のお弁当

なんだかよくわからなかったけれど、とても嬉しくなった。

目の前のきれいにきれいに笑う八戒がそんな風に嬉しそうな顔をしてくれることがとてもとても嬉しかった。
そのきっかけが、…自分の誕生日だとしたら。

悟浄はなんだかたまらなくなって、きれいに微笑んだまま悟浄をまっすぐ見ている八戒をぎゅう、と抱き寄せた。

「…八戒、嬉しそう……」

 こげ茶色の髪に顔を埋めながら、悟浄がいう。

「…そう見えますか」

 ふわ、と両腕を悟浄の背中に回し、きゅ、と悟浄の広くて逞しい背を抱きしめると、八戒は、そう言葉を返した。

「…なんつったって、俺が、こんなに嬉しくなるくらい、お前、嬉しそうだから」
「…そりゃ嬉しいです」

 悟浄の肩に頭を乗せて、目を瞑って、八戒は言った。

「そうか。だから、お弁当作ってくれたのか」
「…いいえ」

 きっと誰にも見せたことのない、おそらく、彼の既に死んでしまった姉以外に見せたことがないだろう無防備で優しい表情で八戒は悟浄の言葉を否定した。
 
「嬉しいからつくったんじゃありませんよ」

 目を3回ぱちぱちと瞬きさせたあと、悟浄は、その八戒の言葉の意味を胸の中にすとんとおさめた。

「……そっか。じゃあ、ティーカップおろしたのも?」
「ええ」
「ジャスミンティーいつもと違ったのも?」
「…ええ」
「こー――んなでっかいケーキつくったのも?」
「…勿論です」



 

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