おんがく会のお弁当

言われなくてもわかっている。

今日が何の日で、八戒が一体なにをしたいのかも。


複雑な気持ちであることはまちがいがない。
一体なにがうれしくて誕生日など祝うようになったのだろう。

そんなものはどうだっていい。なんだっていい。
それを祝ったからといって何かよいことでもあるというのだろうか。


…ただ。

自分はそうであったとして。
じゃあ八戒はどう思ってくれているのだろうか。


自分が八戒の誕生日に言ったことは忘れてしまうわけにはいかない。
力いっぱいお祝いしたかったのだ。
八戒が、この世に生まれてきてくれた日を。
目の前にこの碧色の存在があるという奇蹟を確認することのできる日を。

当然双子の姉の誕生日でもあるその日を八戒が自ら祝おうという気になるなんてことは1ミクロンもないはずだということは理解している。
できることなら、そんなつらいことをいちいち確認させるようなことはしないほうが良かったのかもしれない。

だけど、誕生日という節目は1年に1度必ず訪れる。
意識しないようにしていても、その日の状況を何年もさかのぼることが容易なくらい、普通の節目となってしまっている。
その誕生日が、これから一生八戒にとって厭うべき日になることは悟浄にはがまんならなかった。
自分は、こんなに、八戒が生まれてきてくれたことが嬉しいのに。

だからこそ、力の限りお祝いしたかったのだ。
ほんの少しでも、八戒が、誕生日に嬉しいを思い出せるように。
八戒が、嬉しい、と思ってくれるように、お祝いをしたかったのだ。


……ということを、八戒に思っている自分は、八戒がおそらく同じように思ってくれていることを嬉しく思うべきではないのだろうか。

クッションを抱えて、ごろごろ横になって、悟浄は天井を仰ぎ見ると、ほんの少しのため息をついた。



 

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