「……、……ん…ぁ、……く……」
「はぁ……、はぁ……、……、……はぁっ」
ベッドの上では二つの肉体が絡み合っていた。
天井や壁にはむきだしのパネルが張られ、床はリノリウム張りでチリ一つ落ちてはいない、
清潔だが人工的で無機質なだけの部屋に、たった一つ置かれた巨大な調度品。
木製で天蓋付きの豪華な年代物の寝台は、冗談と悪趣味以外の何ものでもなかったが
この部屋にその寝台を据えさせた主人が今していることは、まさにそれなのだった。
何故ならこの二人は実の兄弟だから。
秘石を奉り強大な軍事力を支配する青の一族、その家長にして長兄たるマジックと
末弟のサービス。それが彼らの名前だった。
上で動いている男――マジックの体は全体的にがっしりとしていて肩幅が広く、
それでいながら鈍重さは少しも感じさせない。
優雅で自信に満ちた仕草は指先の一本一本にまで行き渡り、育ちのよさと
彼がその上に積み重ねた研鑽を物語っていた。
今まさに心身共に成熟期の真っ只中にある、男性として理想的な肉体だった。
背中では、体を前後に揺する動きに合わせて、後背筋が縮みまた伸びるのがはっきりと分かる。
対照的に下でうつぶせに組み敷かれている方の体は、
背中から見ると咄嗟に男性だとは分からない。いや女性には決して見えないのだが、
充分に筋肉は発達しているにもかかわらず、男としてはあまりに華奢なのだ。
その不自然で奇妙に人工的な匂いのするアンバランスさが、なんとも蠱惑的な肉体だった。
彼――サービスは上半身を力無く倒して顔と肩をベッドに横たえ、
両腕はその横に無造作に投げ出して、兄に持ち上げられ貫かれている尻を
膝と折り曲げた足先のみで支えている。
「ん……、ぁ…、はぁ……、う、んっ…」
負担のかかる姿勢で、なおかつ乱暴に突き上げられてあげる声は、自然と乱れて高くなる。
あるいはそれすら計算して、彼はこのような格好をしているのかもしれなかった。
昼間から分厚いカーテンを閉め、それでも夜の暗がりとは雲泥の差がある明るさの中で、
彼らの肉体は動き続ける。
「くぅ、はっ……」
「……ぁぁ、……ん、………ぅ…」
二人の間に会話はない。
睦言を交わすような間柄ではなく、必要な話はすでにベッドに入る前に済ませていた。
だから後はただ相手の体を使用して、自らの欲求を満たすことだけが二人の目的。
――あるいは「一人の」なのかもしれないが、どちらもそのことを気にはしていなかった。
「ん……、くっ」
サービスが見せつけるかのように苦しげに自分の下唇を噛む。
「…………、ふ」
マジックはそれをあざ笑ってますます腰を掴む力を強くし、指を皮膚にくい込ませて捕まえ
より垂直に近い角度へと弟の体を持ち上げた。
「……ぁ」
内部で突き上げられる場所が変わったことに、抱かれている体は即反応する。
一方でより苦しい姿勢を強いられたことにより首がシーツに押しつけられ、
後ろへと折り曲げられて呼吸ができないほどになった。
たまらずサービスは自ら上半身を持ち上げて、
自分を後ろから責め立てる兄の体へと向かって背筋を仰け反らせる。
「ふぁッ、は、…、んん」
口を開けて大きく息を繰り返す弟を、愛しげにマジックは片手で抱き留めて、
指で思いっきりその乳首をつねった。
「く、あッ」
ビクンと体が震えて、尻がきゅっとすぼまる。
「……んッ」
そこにくわえ込まれてたものが激しく締めつけられて、
予想以上の反応にマジックは思わず呻いた。
そのまま放出することはプライドが許さずにこらえたものの、頂点が近いことを知って
彼は片手でサービスを留めたまま、もう片方の手も前面に回し、性器ごと弟の腰を引き寄せる。
「あっ、あ、ああっ……」
捕まえられた手の中で、身をよじり切なそうに鳴く声を聞きながら、
今まで以上の激しさで下から上へと突いて、突いて突いて、指の中でサービスの性器も
限界を溢れ出させそうになっていくのを感じ取る。
「……や、ぅ、……ぁあ」
「…ん、……んぁっ、………はぁッ」
「ぁあ、あああっ」
とうとう登り詰めたマジックの痕跡が中に放出されるのを感じながら、サービスは
兄に比べてずっと少ないその欲望をシーツの上にしたたらせ、さらに体ごと崩れ落ちた。
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