沖田は下穿きも脱いで一糸まとわぬ姿になり、布団の上で片膝を立てて座る。
そうして目の前の、やはり裸になった山崎の体を見上げた。
なで肩で、まるで少年のような自分の体とは違い、均整の取れた逆三角形の肉体に、
多少は嫉妬すると同時に別の欲求もかきたてられる。
そんな沖田の思いを知ってか知らずか山崎は、まるでこのまま眠ろうかという静けさで横に座り、
そのまま後ろへと体を横たえた。
「来ないのか? ソージ」
「行くよ」
猫のような仕草で彼の体の上へと這い上がると、腕を掴まれて、穏やかに引き寄せられる。
けれどもその優しさは、愛ではなくて愛玩に近い。
まあ別に僕も彼のことを愛しているわけじゃないしと、沖田は胸の中で呟いた。
気持ちの押しつけなしに優しく扱われるのは、それはそれで心地良い。
「僕みたいな相手の下でも、ススムくんは気にしないんだね」
「ソージは、下になるのは嫌なんだろう」
彼よりゆうに頭半分は背の高い男は、それだけを言いながら、
自分の体の上にまたがった沖田の頭に向かって手を伸ばし、その耳の後ろをくすぐった。
あるいは本当に猫だと思っているのかもしれない。
ともあれ山崎の指は、淡々と事実ばかり指摘し続ける口調や、
何をしてもほとんど表情が変わることのない顔とは違い、情感細やかに
絶え間なく髪を絡めながら動き続けて、くすぐったいのと同時に気持ちがよかった。
感覚を楽しみながら、お返しに胸の上をツツと一本の指でなぞりつつ、沖田は笑う。
「当たり前でしょ。ススムくんにのし掛かられちゃ、僕なんて潰れちゃうよ」
それを聞いた山崎は、何の感情も乗っていない溜息を吐いた。
呆れているようにも見えるし、笑いたいのを失敗しているようにも取れる。
だがおそらくは、どちらでもない。彼のそうした欠落こそ、沖田の好きなモノだった。
「どちらでもいいなんて方が珍しいんだよ」
指でなぞった跡を、今度は舌でなぞっていく。
何の反応もうつさない顔とは裏腹に、体の下で強ばっていくもののギャップを楽しみながら、
ゆっくりとじらすように愛撫を続ける。
「そうらしいな」
脇腹を撫でられた。そのまま無骨な手が腰へと降りてくる。
「どうして平気なの?」
「知っているだろう」
胸の突起を舌で転がしながら上目遣いに様子をうかがうと、
山崎は相変わらず茫洋とした顔で天井を見上げていた。
他の人間が行為の最中にこのようなことをしていれば興ざめだが、
彼に限ってはそういうものなのだと、むしろ楽しくすら感じる。
「ススムくんがどっちでもいい人だってことは知っているけど。理由までは知らないよ」
「理由はないからな」
返事はそれだけだった。
山崎の腕が腰の後ろを軽く叩き、円を描くようにして指が背骨を上がっていく。
沖田は背筋を這い上がる感触に、思わず猫のように背を反り返らせた。
「う、ん……」
吐きだした息は意外と熱く、自分の体が火照り始めているのを知る。そして山崎の指は
休むことなく沖田の体を触っていく。脇の下を撫でられ、上腕部から首筋へと複雑に円を描く動きは、
普段の彼からは想像も付かないほどの熱心さだった。
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