「……ひ、ゃ……ん……ぁ」
サービスは狂おしくもだえる。
「好きって言ってごらん。サービス。僕のことが好きだって」
そうしたら許してあげる。言外にそう匂わせる。
そう匂わせながら、少年の性器の律動を感じ取り、それがひときわ激しくなったところで手を止める。
「……あぁ、んっ」
求める動き。無意識に腰を振る動き。それすらなまめかしい。美しい少年、美しいお人形。
「ミツヤ……ミツヤ……」
サービスはうわごとのように繰り返す。
――もっとして欲しい。
なのかもしれなかったし、
――やめて欲しい。
なのかもしれなかった。
分からない、分からないだろう、本人にも。ただ一つ確かなことは、彼はおぼれようとしている。
性の快楽に。逃れられない人の業に。欲望に。
欲望を知らない少年も、これだけは知らずにはいられない。
教えてあげる。このミツヤが。
「言ってごらん? 言わないと、気持ちよくなれないよ」
「……ミツヤ」
「なんだい、サービス?」
にっこりと微笑む。愛しているよという笑顔で。
それを潤んだ瞳が見上げていた。
「ミツヤは……ぅん……、僕のこと、……ぁ、……好き?」
「大好きだよ、サービス」
本当にいとおしくてたまらないよ。愚かで弱い、君のことが。
「じゃあ僕も……ミツヤのこと……」
そこでサービスは言葉を切った。
期待に胸をふくらませながら、ミツヤは少年を愛撫する。性器を刺激し、前立腺を触る。
そして口をすった。深い深いディープキス。唾液を口の中に一方的に流し込む。
サービスはほとんど抵抗することなく、それを飲み込んでいった。
与えられるものはいつだって受け取る。それがこの子供のやり方。彼はそのほかにすべを知らない。
唾液でむせながら、サービスは呟いた。
「僕、ミツヤのこと……可哀想だと思う」
「な、に……?」
思わず目を見開いた。
サービスはそれに気づかない様子で、うわごとのように口走る。
「痛いの、苦しいの、ミツヤはいっぱい知っている。ミツヤはマジック兄さんのことが好きで、
ルーザー兄さんのことは……好きじゃない。ハーレムはミツヤのことが好きで、僕は……嫌いじゃない」
「なにをッ」
激高しそうになる。あれだけ与えてやったのに、これだけ快楽を教えてやったのに、言うことがそれか。
思わず殴りつけそうになった、その拳をとどめたのは、やはりあの瞳だった。
潤んだ瞳がじっとミツヤのことを見上げている。無防備に。いつでも殺せる弱さで。
「可哀想なの……ルーザー兄さんも、ミツヤも。マジック兄さんも。
いっぱいいっぱい戦っている。いっぱいいっぱい苦しんでいる。
僕は何も出来ない。してあげられない。守られてばっかりで。ごめんなさい。
だから僕は……ミツヤのこと……嫌いになれないよ……」
ぽろぽろと瞳から涙がこぼれる。それは真実の涙だった。
少年が口にしたのは、ようやく口にしたのは、真実の言葉だった。
嫌いじゃない――ではなく、嫌いになれない。それがサービスがミツヤに向ける感情だった。
すっと心が冷えていく。しかしそれは怒りではない。失望でもない。
だって、その言葉はあまりに的確だったから。恐ろしいほどに真実であったから。
受け入れざるを得ないではないか。ミツヤは決して愚かな人間ではない。
だからこそ、冷静に、その言葉を受け入れた。評価した。この少年の賢しさを。愚かな、賢さを。
「そう……そうなんだ」
ミツヤは微笑む。それは心からの笑顔だった。
「可愛いね、君は。本当に可愛いよ」
――僕はそんな君が大好きだ。もちろん、愛してはいないけど。
◆
性器をもてあそぶ、前立腺を刺激する。口に舌を差し入れてなめ回す。
もう手加減はしなかった。ただひたすらに上を目指して、彼を突き動かす。
「……あ、ん……う……は、ぁ……」
サービスは声を上げた、先ほどよりも大きくて、はしたない声を。
彼もまた、何かから解放されたのだろう。
――可愛らしい、まったくもって可愛らしい。
そうして壊してあげたい。はじけさせてあげたい。
「はあっ、……うう……あっ、はあっ」
ひときわ大きく喉をのけぞらせて、少年は――サービスは絶頂を迎えた。
「僕もね、確かに本当は君のこと、好きじゃないんだ」
ぐったりとシーツに倒れ伏している少年を、ミツヤは抱き寄せる。逃がさないように。
もちろん逃げられなどしないのだが、逃がさないように。
「でもまあ、嫌いじゃない……、それは正しいかな。同じだね」
くすりと笑う。大好きだし、嫌いじゃない、本当はどうでもいい、どれも真実だった。
ミツヤは単純な人間ではないので。サービスのように、無垢で純粋でなどありえないので。
「だからさ……、今度は僕のことも気持ちよくしてくれるかな。ねえ、……嫌いになれない僕のことを」
目を潤ませ、頬を赤く染め、まだ何が起こったのか現実を受け入れられていない少年の頭を、
自分の下腹部へと誘う。
「舐めて」
そう命じた。
え?と戸惑う少年に対して、再度命じる。
「君があまりに可愛いからさ、僕ももうはち切れそうなんだ。舐めて、慰めて欲しい……分かるかな?」
え?とおずおずと、サービスは目の前のものを見る。怒張した性器。大人の男の象徴。
陰毛に覆われたそれは、あまりにも自分のものとは違っていて、それに……怖かった。
ミツヤはかまわず片手でサービスの頭を掴まえたまま、それを押しつけていく。
「だって、君だけが気持ちいいなんて、そんなの不公平だろう。ねえ」
「……」
困ったような声がする。押しつけられていく頭に対して、抵抗する力はあまりにも弱い。
「君が舐めてくれないなら、僕はこのことを君のお兄さんに話しに行くかもしれない。
そうしたら、どうなるかな?」
「……っ」
びくりと手の中の頭が反応する。まったく、この少年は愚かではない。
こんなことを自分の兄に知られたら、ミツヤに気持ちいいことをしてもらったなどと知られたら
……怒られる。そのことが分かるのだ。ルーザーの怒りはそれ以上にミツヤに向くだろうが、
サービスにとっては兄がそうして自分のために他人を傷つけることすら辛いのだ。
純粋さとは、優しさとは、単なる足枷でしかない。
その証拠に、おずおずとサービスは舌を出した。
ちろりと舐める。それだけでもう、体を電撃が走るような快感がした。
――ああ。屈服させたと思った。
この子供を屈服させた。この純粋で無垢で、それゆえに強情な子供を。
――殺さなくてよかった。そうだ、こっちのほうがずっと楽しい。
ミツヤは笑う。楽しくて。幸せで。
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