由紀子×泉田/◆QTBUWlBVVQ(4-729)さん




目の前のステージはまだ準備中らしく、スツールに掛けているバンドはチューニングの真っ最中。
周囲にはそれぞれ洒落た格好をした老若男女たちが席についている。若、の部分がやや少ないか。
日本語のほか、英語だけでない外国語が沸き立つシャンパンの泡のように耳に入ってくるが
その会話の切れ端のいくつかは、どうやら私の目の前に座っている人についてのものらしい。
だがそれも当然と思われる。ラメが織り込まれているノースリーブのニットの胸は形良く盛上がり
ゴールドの細い輪が幾つも腕で上品な光を放っている。ほの暗い照明の下でも光り輝くその美貌。
ミニタイトから伸び出た長い脚は、今晩の女性客の中でイチバンの札が下がっていること間違いない。
ジャズの夕べに相応しい、まことに見目麗しい姿である。

「泉田君。もうちょっとさ、何ていうか…スーツ以外の服って持ってないの?」
「警官の制服で来たらよかったですかね」
自分でも下手だと思う冗談を涼子はことさらツメタク無視してくれた。
「でも君があんな脳ミソが沸いたオヤジ達みたいになったら百年の恋も即刻冷めちゃうだろうから
 まあ、その格好もカンベンしてあげるとするわ」
私もまた上司のザレゴトには手をつけないことにして
「私は、あなたが常々嘆かれている通りつまらない男です。ジャズに誘うのがそもそも間違いです」
それをつかれると涼子も弱いらしい。それ以上私の服装に文句をつけることをしなくなった。
「じゃあ言うけどさ、せめて靴ぐらい洒落たもん履きなさいよ」
「捜査聞き込みでくたびれた靴は、刑事の証です。職務熱心ということで良いじゃありませんか」
「ふん」
機嫌を損ねてしまった。そっぽを向いた涼子の硬質な唇から独り言か何やら漏れている。
「買ってあげるのが一番早いんだけど、そういうの泉田君嫌がるだろうしなぁ。それにそんな
 押し付けがましい女のようなマネなんて絶対絶対やりたくないし。ああもう、面倒くさいっ!」

なにやらどんどん一人で不満をエスカレートさせていく上司と目を合わせないようにしつつ、
ライブハウスという初体験の場所を観察していると、たしかに色んな客が来ているものだ。
イタリア男なら似合うだろうが日本人ゆえ貧相な胸元を必要以上にはだけた頭の軽そうな中年男と、
これまた中途半端な年齢ゆえ開けた胸元が色気過剰になってしまっている女性とのカップルが
多いのに気がついた。うーむ、確かに涼子に言われるまでもなくアレはキビシイよな。
それにしても向こうに一人座っている黒髪の美しい女性は…もしや。


「ニューカンネックレスなんかにまんまと見とれてんじゃないわよ!」
と唐突にネクタイを引っ張られた。ああいうのをそう言うものなのか。漢字では乳間と書くらしい。
アホらしい。しかも知ったからといって誰に披露するべくもない要らん知識である。
「それを見てたんじゃありません」
それにソンナモノに目が行くわけがない。目の前の女性は無意識有意識に関わらずその場の視線を
地引網で掻っ攫っていくほどの魅力の持ち主なのだ。ただし、黙っているならという注釈が前に付く。
「じゃなくって、あの女性ですよ」
と本当に見ていたものを涼子に正直に言ったのだが瞬時に後悔した。
その女性とは、警視庁警備部参事官室町由紀子警視。
涼子の顔がイジワルに輝いた。ろくでもないことを考え付いたに間違いない表情である。
なにせ目の前にいるのは旧来のライバル、天敵、ハブとマングース、とまあこれだけ並べれば
二人の関係はご理解頂けるだろう。

こういう場所だけあってさすがに由紀子も堅苦しいスーツ姿ではないが、彼女が纏う知的な雰囲気は
このくだけた空間の中、そこだけ空気が違っているように見える。
「一人で来るなんてまったくブスイな女だこと!こういう所は男にエスコートされて来るものなのにさ」
ツンと鼻をあげるが、涼子はエスコートされた側ではなく、した側ではなかったろうか。
「いや、グラスが二つあるじゃないですか。相手の方と来てらっしゃるんですよ」
「あんなジャズのグルーヴも分からん女を誘うような物好きな相手、見ないわけには行かないわ」
椅子から立ち上がりかける涼子を慌てて引き止めた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいって」
「あら?泉田君だってモノズキなその相手、気にならない?気になるでしょうが」
「そうやって決め付けないで下さいよ」
せめてもの意思表示として、軽く肩をすくめて溜息をついてみせる。



「なんでまたそんなに室町警視にからむんですか」
「あら、だってこれは自然な衝動よ。悪徳政治家の済まし顔のポスターに落書きしたくなるのと同じ」
それは犯罪です。公職選挙法でいうと、ポスターにいたずらしたら4年以下の懲役もしくは
禁錮または100万円以下の罰金。まあ涼子にとってはその程度はハシタ金なんだろう。じゃなくって。
それに由紀子は少々生硬なところは見受けられるものの、断じて悪徳なんかではない。
「だって、じゃないでしょう。小学生みたいなこと言わないで下さい」
「あたしは自分の感情に正直なだけよ」
「プライベートの時間ぐらい、お互い穏やかにしたらいかがです?」
特にあなたです、と言ってしまうと危機が私に向かうこと確実なのでここはケンメイに口を噤んだ。
「どうして皆が皆お由紀には甘いんだろ!不公平!」
「そんなことはありませんって」
「違わない!」
そう断言して手元のフルートグラスを粋な仕草でクッと煽った。
「だいたいね、どっちも同じだけの成果を挙げた場合、手放しで褒められるのは毎回お由紀、
 私への評価は毎回留保付き!これがヒイキじゃなければなんだって言うのさ」
テーブルに肘をつくも気だるげなアンニュイには程遠く、まるで不貞腐れたコドモのようである。

私は数日前のとある出来事を思い出していた。たしかに涼子の言うとおりの状況があったのだ。
しかし…アレは留保付きでも認められるだけまだマシだったのではなかろうか。
それほど涼子のヤリクチは過激だったのだ。つまり、涼子の身から出たなんとやら。
それをハイヒールで天高く棚に蹴り上げておいて、お由紀が贔屓だなんだ言うとは笑止千万。
だがドレイとしてはそう言えるはずもなく、私は説得、つまり一番穏便な方法を採ることにした。
乗り切れるかどうかは天国の神様よりも地獄の悪魔に祈った方がいいのだろうが、はて祈りの文句は
何と言えば聞き届けてもらえるんだろうか。悪魔に祈りというのも何か変だが他に言いようもない。

「今晩ここに来たい、といって私の残業を早朝出勤に変えさせたのは、一体誰でしたっけね」
切り口上で言ってのけた私に涼子の視線が鋭くなる。まるで猛獣の前の調教師の気分である。
噛み付かれる前にもう一押し、ムチではなく言葉を続ける。
「よその女性が連れてる男に興味なんて引かれないで下さいよ。誘われた私の立場がありません」
まだ一杯目も干してないというのに、耳元でやけに脈音が大きく聞こえる。
これを男のみみっちい嫉妬と取られるなら取られたでかまわない。そもそも妬いていい立場じゃない。
ステージが始まる前のざわついた場内の中、私の周囲だけ無音になったように思われた。


涼子のそっとはかれた息とともに、小さく言葉が唇に紡がれた。
「…ゴメン」
誤った?いや謝ったのか涼子は。そのわりに態度は済まなそうじゃないし、声に優しい情感が篭っている。
正面向いた涼子の顔に私は息を呑んだ。美しい大人の顔に載せられた、可憐に上気した少女のような表情。
「妬いてくれたんだ」
さっきは是としたくせに、そう断言されてしまうとなぜか困ってしまう。だがここで否定すれば
純粋にデートで来ているだろう由紀子に多大な被害が及んでしまう。したがって返す言葉は
「まあ、その…そうですかね」
まったくこのジャジーな洒落た場所にそぐわない、不粋極まる歯切れの悪い返事である。
それでも今夜の女王様は追求の手を止める気になってくれたようだ。通りかかったウェイターに
「キールロワイヤル。」
「は、かしこまりました」
しつけの良いウェイターが背筋を伸ばし、混み合った椅子の間をスマートに歩き去っていく。
「ずいぶん可愛らしいものを頼みましたね」
「…そういう気分になるときも、あるの!」
多大な失言をやらかしたというのに、酔い覚ましのチェイサーの冷水を私にかけても来ない。
さきほどのやり取りが涼子の内部でどのような化学変化を遂げているのかは…神のみぞ知る。
由紀子の姿は、外人の集団が目の前の空席にきたことで既に隠れてしまっていた。

場内の照明がより一層落とされ、拍手とともに今夜の主役がシックな衣装でステージに登場した。
バンドの音が空間一杯に豊かに広がっていく。私はさっきまでの思考を放棄することに決め、
ハスキーなボーカルの声にのって、贅沢な時間へ涼子とともに漂い始めた。





朝のすがすがしい空気を窓越しに感じながら、人気の無い警視庁の廊下に私の足音を聞く。
早朝出勤の原因は直行直帰の出張とやらだそうな。ああ上司を選べぬ宮仕えの悲しさよ。
と、愚痴すれすれの感想と一緒に生あくびをかみ殺していたところ
「お早う、泉田警部補。昨夜はどうもありがとう」
意外な声がして振り向くと、今朝はかっちりとしたスーツ姿の由紀子がそこに立っていた。
「お早うございます」
微笑の半歩手前ぐらいに由紀子の端正な口元がほころびた。
「お涼のお守も、お疲れ様」
「わたしたちに気付いてらしたんですね」
「そりゃあんな目立つ人ですもの、気付かないほうがありえないわ」
「いつもこんなにお早いんですか?」
「通勤のラッシュが苦手なのと、読書時間の確保でね」
私の素朴な疑問に由紀子は手持ちの書類鞄を軽く持ち上げて見せ、親切に答えてくれた。
「ははあなるほど」
一人静かに警察ミステリー小説をめくる、眼鏡の似合う知的美女。由紀子らしい日常である。

「あの、不躾な質問で怒られてしまわれるでしょうが…最後までお相手が来なかったような?」
「そうね。彼は来なかったけれど、昨日あの場所に彼は居たのよ」
まるで謎掛けのような言葉である。だが口元には過去を懐かしむような優しい笑みが浮かんでいた。
「唐突なお願いで驚くでしょうけど、今晩は私に付き合ってくれないかしら?今日お涼は出張でしょう」
本当にトウトツな由紀子の申し出だが、直属上司のそれ以上のトウトツに毎度のごとく付き合わされ、
慣れきっている身にとっては特に驚くほどの事でもない。
「それはいいですが…」
「もちろん、お涼にこの件は内密にして欲しいのだけど」
「別に知れたとしても私は困りはしませんが」
「よくもあのお涼を手なずけたもんだわね」
クスリと微笑まれた。いやこれは単なる猛獣使いが猛獣を扱うコツを覚えたようなもので、と思うが
それは言わないことにする。
いつもかち合うと、気圧の低いところで湯を沸かすがごとく即時沸点に達してしまう両者なので
…点火するのは涼子なのだが、こんな由紀子の笑顔を見るのは珍しいような気がする。
「あまり夜遅くならないよう帰しますから。あの不良娘とは違ってね」
食事だけですから。単なる同じ職場のよしみで食事するだけですから。と私は誰に聞かれたわけでもない
言い訳を頭の中で繰り返していた。



そして夕刻。暮れなずむ銀座の町並みを車窓に映しながら晴海通りをタクシーで西へ向かう。
打ち水がされ掃き清められた門構えは、帰りに一寸寄るとかそういう場所ではない。
政治家やら官僚やら悪代官が密談をするとかいう、かの有名な料亭という場所ではないか。
思わずスーツの上から財布のある場所を押さえてしまう。カードが使えない店なんてことはないよな。
「大丈夫よ。ここは私持ちだから」
「とはいっても高そうですよ」
庶民丸出しの私のセリフに呆れたそぶりはまったく見せず、由紀子は焦る私を手で制した。
「今日誘った訳は後で話しますから、ちょっとお願いしていいかしら?」

「桜花の間で予約しました者ですが」
由紀子に頼まれたのはこのセリフを店の入り口で言うことだった。予約を入れたのは由紀子なのだが
あとで話すと言われたことだし、別にたいしたことでもない。
和服の従業員に先導されて曲がりくねった廊下を歩き、ふすまがスラリと両に開かれた。
日本美にはまったくうとい私にでもこの部屋がずいぶんと税を、いや贅を凝らした部屋だと判る。
中央の座卓はどうみても漆塗りだし、掛けられた書は誰かは知らないが秀麗な句がしたためられている。
腰が沈むほどの座布団が敷かれた座椅子にかけると、ほどなく冷酒と小鉢が運ばれてきた。
「ここは懐石料理じゃなくって会席料理だから、あまり気構えなくて大丈夫よ」
どっちもカイセキという響きなので区別がつかないが、由紀子が言うなら気を緩めて大丈夫なのだろう。

由紀子の解説によって先ほどの小鉢は先付というのだと知れた。
「季節にちなんだ趣向をこらす場合が多いんだけど…あらもう食べてしまったのね」
「なんとも無作法ですみません。とにかく美味しいという事しか判りませんでした」
「それで充分よ。あれこれ薀蓄捻りまわして食べどき逃す方が料理人に対して失礼だわ」
由紀子の言葉に救われた私は安心して次の椀に手をつけることにした。
吸物、向付は今朝水揚げされた鯛、煮物はこっくりと煮た地鶏、揚物、焼物、蒸物は卸し蕪の海老蒸し。
ご飯が出るころにはすっかり満足しきりで、料亭での密談密約が江戸時代から一向に廃れない理由が
コッパ役人の私にもうかがい知れた。人の精神をすっかり蕩かすほどのものがここには確かに在る。
止め椀つまりみそ汁を飲み干し、あとは水物といわれる果物を食し、食事は以上で終了。



だが由紀子の目的が食事ではないのはこちらも承知している。銚子のお代わりを仲居に言いつけて
人払いをすると由紀子が懐紙で口を上品に拭った後に切り出した。
「盗聴器は仕掛けられてないようだから、大丈夫ね」
コトリと音がして携帯よりも小さな機械が座卓の上に出される。
いきなり不穏な単語が飛び出たものだから驚いたが、いったいそれは何のためなのだろうか。
「あの、お涼と泉田警部補は付き合ってるの?」
最後の緑茶を噴出しそうになって寸前でこらえて飲み込んで
「それは、その部下としてはどこにでも上司に付き合わざるを得ないといいますか」
まさか由紀子は我々が恋人同士だというとんでもない見込み違いをしているのだろうか。
そういう話をするのに料亭というのはずいぶんと大げさでもある。
ともかくこれ以上の誤解を招かないよう、きっぱり否定して後顧の憂いを断っておかなくては。
「つまりそういうことで、薬師寺警視とは恋人とかでは全く、天に掛けてもそれはありません」
「そう?片方はその気のように見えるのだけれど」
「違います。だいいち、彼女が私を男性としてみている態度に見えてるんですか?」

私としては無い威厳をかき集め重々しく言ったはずなのに、目の前の人はどうして噴き出すのだろう。
それにしてもいい笑顔だ。毎度飽きもせず衝突する二人を引率教師の目で見ていたが、涼子に並び
由紀子だって相当の美人なのだ。まさに高嶺の花といった風情なのに涼子がそれを地に落している。
重ねた杯の勢いでそんな内容のことを言うと、由紀子の目が驚いたように丸くなった後
再度クスクス笑い出した。由紀子は笑い上戸なのだろうか?
「ああ!だから泉田警部補がいる時はことさら私にニクマレ口叩いてきたのね。まったく、もう…
 お涼も可愛げがあるというか、セコイというか」
苦笑ではなく優しげな、まるで姉が妹に向けてするような笑みだと酔った頭でぼんやり思う。
「学生時代から進歩がないんだから。ううん、それ以前からそうなのかもしれないけど」
言っている内容がまったく分からないといった顔でいる私に由紀子が向けてきたのは、
今度こそ間違いなく苦笑だった。



「お涼と恋人じゃなくても、あなたにしか頼めない事があるの」
と前置きをして由紀子が話し出したのは
「地上で一番の硬度を誇るダイヤモンドでも欠けることがあるっていう話は、ご存知?」
「いいえ、寡聞にて知りませんでした」
ダイヤモンドねえ。思い浮かべたのは一人の女性。だがあれはなんていうか…呪いのダイヤ?
「つまり硬度と靭性の違いって所なんだけれど。…私はまだ何も言ってないわよ」
スイと杯を口に運んだ由紀子が涼やかな微笑みを浮かべる。
「それで有名なのはホープダイヤね。他にも色々そういった話はあるのだけれど私には専門外だし
 日常でダイヤが割れるなんてことはまずないって事だから安心していいのだけれど」
ダイヤの話になぞらえてはいるが、由紀子が言いたいことは私にも伝わってきた。
「私の出来る限り、努力します」
料亭で奢られたからではないぞ。敵に塩を送る潔い由紀子の態度に感銘を受けたからである。
「よろしくね」
仇敵を利するようなことをしたというのに由紀子は私の返答に心から満足したようだった。
涼子がダイヤだというなら、由紀子は一粒一粒吟味された真珠に喩えられるだろうか。

その由紀子の上半身ががたりと音をたてて座卓の上に崩れ落ちた。真珠を連ねる糸が切れたかの
ような有様に不吉な予感が私を襲う。由紀子はどうにか姿勢を立て直そうとしたようだが、
私が側に寄る前にとうとう畳にくたりと崩れ落ちてしまった。



「どうしました!」
由紀子の肩を持ち抱き起こすと苦痛とは聞こえぬ呻きが漏れ出でた。
「な、に…?」
「お酒に酔われたんではないですか?」
「違うわ。いつもより飲んだ量も少ないし、この酔い方は…ありえないわ」
身体を支えようとして背中に手を添えるとビクンと身体が跳ねた
「い、や…熱い」
見ると由紀子の頬は上気して脈も異様に早まっている。
「医者を呼ばせましょうか」
「いいえ、自分の身体のことは自分で良く分かってるわ。にしても、こんなことだとはね…」
思うように動かせないらしい身体を捻って由紀子がスーツの上着を脱いだ。ブラウスが汗に濡れ
下着の線が見えてしまっている。視線のやりばに困りながら由紀子の言葉の続きを待った。

「今日ここに誘った本当の目的を言うわ」
額に浮かんだ汗がつっと秀麗な面を滑っていく。
「ここが如何わしい相談に使われているという内部告発が下から上がってきたのよ」
告発したのは私と同じ名も無きノンキャリア、そして出世コースに乗ったエリートからも。
「リーク元は他省庁の誰かとしか言えないけれど…ああっ!」
苦しげな様子の由紀子を座椅子に掛けさせようとして腕を回すが、身を捩られてしまった。
あまりに色っぽい仕草だが、このいきなりの媚態は不自然極まりない。そして告発したのは女性…
嫌な予感が私のうちで明確な輪郭を取りつつあった。

「ここで行われていた相談とは、エリート幹部が将来有望な女性を『説得』することだったようね。
 単なる談合やら密談やら暴力団との接触のほうがよほどマシだわ」
「そんな下手なご冗談を」
「不謹慎だったかしらね。お涼と長年付き合ってきた副作用がこんなところで出たのかしら」
気丈に笑ってみせる由紀子だが、傷病で倒れた相手になら私にも知識と手段がある。
だが怪しげな症状にいたっては打つ手が無い。どうしたらいいものか手をあぐねていると
「…本当はこの件についてはしかるべき部署に任せるべきだと今も思ってるわ」
あの由紀子が、管轄違いだと分かっていながら手を出したのだ。何が彼女をそこまでして…
「私は、兵頭の悲劇をもう一人だって出したくなかったの」
あの後味の悪い故人のことを私は思い出した。美人警察官を死に追いやった蛇蝎のような男。



――真面目な人なんだなあ。お涼もそれは認めている。
「だいたい地方研修たって適当に年数過ごしてりゃいいのよ。私なんかは、そりゃ回りが放って
 置いてくれなくて国際警察という場にひっぱられたんだけれどね」
上層部は厄介払いのつもりだったんだろうなあという推測はおいておく。
「頭のいいエリートさんたちは手を抜きまくってやる通過ポイントでしかないのに、ちっさいとこも
 真面目に熱心におやりになったんでしょうよ!ほんっとうにドサ周り、ご苦労様だわ。
 警視庁幹部候補でそういうことやれるのは、お由紀以外誰も居ないわ」
だがそういう顔つきは小悪党に対するイジワルなのとは違って、煙たい学級委員長をうるさがる
跳ね返りムスメといった風情であった。

「今日は下調べのつもりでここに来たのだけれど、下手に巻き込んでしまって御免なさいね」
「そんなちいさいこと気にしちゃいませんよ。それよりも私はどうしたら」
「とりあえず、このままでいいわ」
「そんな苦しそうなのに」
「どうせ数時間も続かないでしょう、こんなの」
畳に身体を横たえたまま、涼子ほどゴージャスとは言えないが形のよい胸が上下している。
「失礼します」
気の毒で見ておられず、一番上まで留められたブラウスのボタンを二つほど外し、両腕に由紀子を
抱え上げて立ち上がった。私の胸のうちには由紀子を気遣う気持ちの他腹立たしさが満ち満ちていた。
キャリアに見えたらしい私が、非力な美人部下を手篭めにしにきたと店側から見られていたのだから。
そんな極悪非道なこと誰がするか!上司はともかく私は虫も殺せぬ善良な市民なのだ。
(ええっと、たいていこういう場合は襖の向こうに布団が敷いてあるもんだよな)
由紀子を抱えたまま、行儀悪く足ですらりと開けるとまさにその光景が目の前にあった。
さきほどまでは推測でしかなかった最悪の行為が、実際にあったのだと実感せざるを得なかった。



私は日本人としては背が高い方だ。それをうっかり忘れて鴨居にしたたか額をぶつけてしまう。
「大丈夫?」
と由紀子は気遣ってくれるが
「こちらこそ床に放り出してしまって申し訳ありません」
「布団の上だから大丈夫、痛くもなんとも無いわ。お気遣いありがとう」
低い目線だから気付いたのだろうか、由紀子が畳の上から鍵を摘まみあげていた。
上を見るとさっきの衝撃で柱の飾りの能面が斜めに傾いている。
どうやらこの部屋にある金庫の鍵らしく、差しこみ扉を開けると…いやなんともはやな写真の数々。
まぎれもない犯罪の証拠を見つけたのだが、こんなところに隠しておくとは間抜けすぎる。
「これだけあれば刑事事件として立件出来るわ…あらなにかしら?縄?」
「あ、触らないほうが!…その、証拠ですし」
由紀子の手から慌てて取り上げたそれと、写真を拾い集めて脇に寄せる。ロコツなえげつない写真に
目がいきそうになるが刑事としてそういうものはしっかり慎んでいたのだが、その自制も由紀子の方に
振り向いた途端飛んでしまいそうになった。布団の上に座り込んだ由紀子のフレアスカートの裾が、
その、かなり上の方までまくれ上がっており…いや、これはまずい。ちょ、ちょっと待ってくれ。
あたふたと身を屈め、情けなくも由紀子に背を向けて座り込んだ。
「まさか!泉田警部補も?」
「まことに不覚ですが、こちらの膳にも何かあったようです」
「襲い掛かる女性には怪しい薬を、中高年の自分には強精剤とはね!呆れを通り越して吐き気がするわ」
まったく腹が立つ。こんなものまで必要な男だと店側に見られていたとは!
「私はともかくとして、泉田警部補はどう?」
「どうって言われましても…何と言ったらいいのやら見当もつきません」
どんどん頭の中が霞がかかったように思考の輪郭がぼやけていき、私の視界は暗転した。



「泉田警部補?!しっかりして!」
肩をしきりに叩かれて、私は声のする方へ顔を向けた。自分の腕の中にその相手がいる。
「室町警視?いったいどうしてこんなところに」
「それは私が聞きたいところだわ。お願い、腕を緩めてくれないかしら」
気がつけばずいぶんと素晴らしい感触が体中のそこここに感じられる。慌てて腕を解くと
由紀子はいくぶんほつれた髪を撫で付けて私を下から見上げてきた。
「こんな事態になったのも、立場が上である私の判断ミスで起こったことだわ。
 現場の責任を取るのがキャリアの役目。泉田警部補、私の上から退いてくださらない?」
由紀子らしい責任感溢れる言葉ではあるが、この場合の「責任を取る」って…

とりあえず圧し掛かったままでは色々とマズイ。浮かせた身体の下から滑り出た由紀子は
立ち上がり細い腰に手を回すとスカートを布団の上にふわりと落した。
私は目前の光景に息を吸い込み、吐き出すのを一瞬忘れてしまった。
「皺になってしまうから脱いだのだけど」
おかしいかしら?と由紀子の目が問うが、私のキャパシティーはもう限界に近づきつつある。
目の毒という単語その通りの姿だが、毒というにはあまりにも目に眩しい魅惑的な肢体。
「緊急避難ってあるわよね」
つまり、それは…喉が干上り舌が口内に張り付くのを感じる。
「お涼とは、恋人同士じゃないのよね?」
恐ろしいほどの緊張をはらんで無言で見つめ合う。
「さっきのは質問、これは確認よ」
立っているのは布団の上だと分かっているが、嵐の真っ最中の船の甲板に立っているかのように
ぐらぐらと視界が揺れている。向こうも同じなのだろう、私は由紀子に両腕を掴まれていた。
「私だって27の女よ、何も無かったわけじゃないわ」
「私も過去にそれなりにある33歳ですが」
しかし、こんな状況に付け入るわけには。


「…正直言うと、身体が辛いの。泉田警部補が嫌じゃなければだけど…」
普段は怜悧に輝く瞳が、蜜をかけたように溶けて潤んでしまっている。
「お願い、助けて」
腕に飛び込まれてしまっては撥ね付けるわけにもいかず、だが腕はしっかりと由紀子を抱いていた。
というのも立っている気力がそこで尽きたらしい由紀子がその場で倒れそうになったからだ。
頭をぶつけないようにそっと布団の上に降ろして、由紀子と向かい合わせに座る。
す、と由紀子のすんなりした指が自らのボタンを外していく。体中が燃えるように熱い。
ネクタイを抜いたところで、由紀子が外の物音に気がついた。
「ここに水とグラスを用意しておきますので。どうぞ、お続きを」
そうだ、店が事情を知ってなければこんな狼藉がまかり通るわけがない。
「こうなったら何もせずに帰るなんて不自然なこと…」
出来ませんね、と続ける言葉が私の喉からなぜか出てこない。どうしてだ、私には気兼ねする
相手など今のところ誰も居ないというのに。
私の複雑な心境を知ってか知らずか自分の一部分は無闇に張り切っている状態だ。
最後に出た青豆ご飯、緑豆じゃなくって青い錠剤じゃなかったか?

「今日は何日?」
そう聞かれて腕時計の日付を答えるとなにやら数える声がして
「大丈夫だけど無いと駄目よね」
何のことだろうと声の方を向くと下着姿で床に手をついた由紀子が枕元を探している。
その艶姿に脳細胞がいくつか蒸発したらしく、頭の中でもつれた糸は瞬時に焼き切れていた。
そのまま成り行きに任せることにして、後ろからほっそりした身体を抱くと、私の腕に由紀子の手が
添えられるのを感じた。
「なにも、言わないで」
「ええ、私も言いません」
ゆっくりと身体を布団の上に横たえると由紀子は目を伏せた。
「泉田警部補って案外着痩せする性質なのね」
褒めてもらっているのだろう。これでも一度はSPに推薦された身であるからして。



直接肌と肌が触れ合いその熱さに私は頭の芯まで酩酊した。
「ずいぶん熱いけれど、大丈夫?その、そういうのは心臓に負担がかかるとかって」
「オトシヨリならともかく私はまだ若いですよ。安心してください」
過去数年で一番の色っぽい状況なのに交される会話は散文的で、その落差が却っておかしかった。
「私は、大丈夫よ。…こっちもそうみたいだけど」
自身にしなやかな指が絡みつくのを感じ取り、快の波が身体を走り抜けた。
強精剤だけが原因ではない高ぶりが脚の間のものに満ちそそり勃っているのを私は自覚していた。
ということは由紀子のほうも
「っん!」
指先に柔毛が触れ、その奥には溶けた柔肉が淫らな水音をたてて指を呑みこんでいく。
お互いへの気遣いでまだ抑えた振る舞いだったのが、これを切っ掛けに双方とも決壊した。
性急に由紀子をかき抱き、手に余るほどではないが柔らかなふくらみを揉みしだく。
素肌をなぞると華奢な身体が小さく震え、形良く伸びた脚が私の足に絡みついてくる。
「もういいから、早…く」
「いきますよ」
いつの間にか解かれた長い黒髪がシーツの上に扇のように広がり、肢体の抜けるような白い肌と
あいまって一幅の画のような幽玄さを醸し出している。
恋人と別れて以来の余りにも強烈な刺激に見舞われた私はこの状況にすっかり溺れつつあった。
「っ……んんぅ……ぁ……ぁああっ」
弱々しくかぶりを振る仕草の下の方で、正反対に腰をくねらせて快感の波に身を任せる由紀子のさまは、
普段の彼女を知っているだけに情欲がいっそう煽られる。
「いずみだ…っんん!」
ぬめる内壁がうねるように動いて私を一層締め付け、たまらず痙攣しながら果ててしまった。

荒い息を付きながら私は股間に違和感を感じ続けていた。これがその効果というやつか。
由紀子も私が勢いを失っていないのが分かっているらしい。
「まあ」
感心したように呟かれて私は赤面した。
「大丈夫。責任はとるって言ったでしょう」
後のところはよく覚えていない、とトボケルにはあまりにも素晴らしいヒトトキだったとだけ
言っておこう。脳内で光が何度も炸裂して、そこで体力の限界が来たのか意識が突然途切れた。

――いいから忘れなさい。これは“上司命令”よ




チュンチュンと可愛らしく鳴くスズメの声と明るい光が障子越しに室内に溢れている。
昨夜はここで…なにやらあったらしいのだがその記憶は砂で築いた城のようにサラサラと
崩れ続けていて、細かいところまではもう思い出せない。
起き上がり、簡単な身支度をして襖をあけるとキリッと服を着た由紀子の視線と出くわした。
「お早う、泉田警部補」
「お早うございます、室町警視」
座卓の上には日本の正しい朝食といった支度が整えられている。
味噌汁を上品にすすって味の確かさを褒める由紀子の姿に、料理は一通り出来るという話を思い出す。
涼子はゆでたまごしかできないっていうのに。兵器としてならトルコ料理も作れるのだが。
「昨夜は捜査協力、ありがとう」
そう礼を言って座椅子の隣に置いた鞄を由紀子は軽く叩いた。
「これで奴らを叩けるわ」
「それにしても酷いですね」
「ええ全くだわ。エリートってみんなとは言わないけれど多いものなのかしら。内部で制約が多い分
 その反動でとか言うらしいけれど」
私はジャクリーンこと若林のことを思い浮かべていた。その沈黙がどう取られたのかは知らないが

「いえ、私もそう決め付けるほど知っているとは言えないのだけれど…昔にね」
「昔っていうほどのトシでもないでしょうに」
「そう言ってくれてありがたいけれど、さすがに10年も経てば昔としか言いようがないわよね」
眼鏡越しに目を瞬かせたのち微笑んだ。
「ありきたりな話だけれど、それぐらいの時の恋愛って向こう見ずなところがあるでしょう。
 彼と行きつけたバーは各国政府お偉方の溜まり場で彼のジャズの修行にはもってこいの場所だったの。
 裏では彼らの息抜きの場所として。その時に…まあ色々と見た、というのかしら」
そのまま聞き入ろうとして引っかかった。今から10年前といったら…未成年じゃなかったか。



「堅い家に反発という気もあったのかしらね、ジャズシンガー志望という、そんな自分と正反対な彼に
 あっという間に惹かれて、夢のように彼との毎日に酔ってたわ」
それで私が見たというのはと由紀子は続けたが、某司令官やら某高官やら某大人らのセキララな私生活に
私は箸を取り落とししてしまった。味噌汁を飲んでいたら噴いてしまっていただろう。
「それは…それはまた、すごい光景を」
「それぐらい、まだまだ可愛いほうよ。」
教師に品行を褒められた時の優等生がはにかむような笑みなのに、口にする内容は不良でさえ顔を赤らめ
口ごもるようなエリート達の凄まじい性癖列伝である。
彼女の証言どおりならば、日本は国際社会でトップに立つ最強のカードが手にあることになる。
一人の領事を自殺に追い込む前にこの女性を確保すべきと違うか?隣国の大使館の人。
こちらの気持ちを読んだか
「その気になればできるけれども、そんな後ろ暗い近道を使いたいとは思ってないの。
 法と正義にのっとってルールに従った外交をすべきだと思うし。今は…期待できそうにないけど」

差し向かいで美女と朝食なんて天に舞うほどの夢ゴゴチのはずなのに、涼子一人だけでも手に余りまくって
いるのがさらにもう一人、それに匹敵する経歴の持ち主が現れただなんて、天の采配はお茶目に過ぎる。
万が一、二人が手を組んだりしたら世界征服など赤子の手を捻るより簡単に達成することだろう。
由紀子の生硬な性格が、世界の平和を(無自覚に)保っているのである。




「一昨日は、彼の命日だったのよ」
「…事故とかで?」
「いいえ」
簡潔な返事は、それ以上踏み込まないでくれという意思表示と私は受け止めた。
「受験に取り組み始めて彼と疎遠がちになったころ、彼は転げ落ちてる最中だった。
 そこのエリート達に知らぬ間に薬物に手を染めさせられて…止められなかった。
 後でいくらでも取り戻せると思っていたのだけども、自分の受験だって大事だし、
 そういう気持ちもあったことは、否定できないわ」
この人も幾万の人間と同じく、苦い思いを噛み締めて夜を越したことがあったのだ。

「だからこそ、私はしたり顔をして誠実に生きている人を足蹴にするような輩が許せないの!」
…だから由紀子は涼子を手厳しく指弾するのか。とすんなり納得しかけた私の顔を見て
「お涼はまたちょっとそれとは違うの。いつもああタカビシャでくるものだから、それで、」
色白の頬を紅潮させて由紀子がめずらしく慌てた口調で付け加えるが、途中で自分の言い訳が
子供じみているのに気付いたらしく、表情を隠すように眼鏡を指でくいと押し上げた。
「御飯、お代わりします?」
「…ええ、お願いします」
笑うのはどうにか堪えたが、肩が揺れるのは抑えきれなかった。




「今日は良く晴れそうですね」
まだ早朝の気配が残る空は濃い水色から白色光へと水彩画のようなグラデーションを描いている。
「夜遅くならないよう帰しますって言ったのに、朝帰りになってしまったわね」
「気になさらないで結構ですよ。私は本日非番ですし」
それよりも気にしなければならないことが二人の間にはあるではないか。
まだひんやりとした涼しい風が街路樹を静かに揺らしている。
「泉田警部補があやまり屋さんなのは知っているけれど、今回は…」
そこで言葉を止め、由紀子はこちらをじっと見つめてきた。
「ええ。あやまるつもりはありません」
真剣な視線に、こちらも真摯に相対する。二人とも大人の男女であるからして、昨夜の一件は
どうとでもありふれた言葉で、例えば情事とかで片付くはずだったが、それは私の本意でないし
由紀子だって同じ心情であろう。朝からの由紀子の態度が昨夜と変わってないことを見ても、
二人の距離は恋人のそれに近づいてはおらず、馴れ合った風に変化してもいなかった。

それに、私も身勝手なのは充分すぎるほど自覚しているが、心の内をありていにぶちまけると
アレコレ為したというのに、私は由紀子を好ましい女性とは思ってはいるがこの時点に及んでも
恋愛の相手とは意識することが出来ないでいるのだった。
「いいわけじみたことはしたくありませんから」
いい歳になるのに、女性一人スマートにあしらうことができない自分のツマラナサぶりが今ほど
恨めしく思えたことはなかった。
「そんなしょげた顔をなさらないで、泉田警部補。最初から私は知ってたわ」
白皙の顔が近づいてきて、多少髭が伸びた顔をそっと慰めるように手のひらで撫でられた。
「知っていたって、いったい何をご存知なんですか?」
「泉田警部補の心を、とっくの昔に捕まえている女性」


そんな…私にそういう相手なんていたっけなあ?
首を捻って心のうちを懸命に覗き込むが、私が恋焦がれる女性なんて今のところ居ないぞ?
私がそんなことをしている間に、由紀子はさっさと片手をあげてタクシーを呼び止めていた。
後部座席に乗り込みつつ今朝の空のような澄んだ笑顔でここでの別れを告げられ、扉が閉められた。
「…これについてだけは、お涼に同情するわ」
と、謎の一言を残してタクシーは桜田門の方へと走り出していった。

いったいどういう意味なんだろうか。それより、まだ体は寝足りないでいるようだ。
無理もない、あの錠剤の効果に引きずられて過去ありえないほど、その、むにゃむにゃ。
幸い今日は非番である。官舎に戻ってゆっくりと二度寝をするとしよう。
私もタクシー、ではなく地下鉄の駅に向かって歩き出していった。

終。




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