ラインハルト×ヒルダ (452さん) /1
「ここにいてほしい」
私はどれだけその言葉を待っていたのだろう。
今日のところはこのまま帰ってもいいかとも思ったが、
何となくそうなる予感もあった。
だいたい部屋の中に入ったときの陛下の目つきが違った。
色白だから、あまり酒にもつよくないのだろう。
酒の入った男特有の視線を感じた。
自分を女としてみていてくれている。それはうれしくもある。
他の者からみれば情けない皇帝なのかもしれない。
でもそういうナイーブなところが私は好きだ。
思えばこの人は重度のシスコンである。それに友人と呼べる人もキルヒアイス元帥しかいなかった。
姉と友人、高く超えられない壁がこころの周りにそびえ立っているのだ。
今までこの壁を少しでも崩して、一歩進んだ関係を持ってみたい、といろいろ努力をしてきたつもりだ。
でも、簡単に壁を取り壊すことはできなかった。
信頼はされている。どちらかといえば好きなのかもしれない、でも愛ではない。
私は満たされなかった。でも今日はチャンスだ。何せ今の陛下は普通ではないからだ。
今日の下着は白のレースだ。俗に言う勝負下着。おそばにおつかえするようになってからずっとそう。
いつかはそう言う日が来るだろうと思っていたが、準備はしておくものだ。
さて、とりあえず陛下のすぐ隣りへと腰掛けた。陛下は上気しているようだ。
酒のせいだけではないかもしれない。目は真剣だからだ。
ぼんやりと陛下を見つめるが、2,3分は経っただろうか、陛下は何もしない、手を握ることすらしない。
私だってこういう状況には慣れていない。私はなにせ初めてなのだ、経験がない。
思えば幼少の頃にダンスをした以来、一度も殿方と触れたことがない。
すること自体はだいたい理解している。月に一回のものがなぜ来るのか、一応わかっているつもりだ。
ただ、経験がないだけ。このような場合、言った本人がリードしてくれるのが一番楽なのだが、
どうもこの人にもその手の経験、いや、性交のようにだいそれたようなことでなく、
自然と女の手を握るようなことすら、今までの人生の中ではそんなにないのかもしれない。
正直、このまま朝まで2人一緒に眠るのも別に悪い選択ではないようにも思える。
手段は異なるが、可愛そうな陛下をお慰めすることにかわりはないわけだから。
ただ、せっかくのチャンスがパーになるだけだ。そして、チャンスはまた巡ってくるはず。
しかし、それも何だかじれったい。陛下は私を明らかに雄の目で見ていた。
そのような場合の女性の慰め方は1つしかないのだから。
ここは、少し陛下に刺激を与えてみることにする。
陛下の右手にそっと手を重ねてみた。熱い、どうやら火照っているようだ。
その気がないわけではないのかもしれない。
しばらく逡巡しているように見えたが、陛下は私の手に自らの手を重ねた。
やっと、この人とつながったような気がした。
陛下の手のひらと私のそれとを重ね合わせてみる。
まるで白魚のような指だ。私の指とほとんど変わらない。
二人の熱で指先に汗が生じる。陛下の体温が熱い、そして心臓の鼓動が聞こえてくるような気がした。
体を陛下に密着させてみる。ドックン、ドックンと早鐘のような音を感じる。
まだか、まだなのか。私だって初めてなのだ。先手を取ってもらわなければ、
何をすれば一番似つかわしいのかわからないではないか。
と、思った矢先、陛下がいきなり私を抱き寄せた。そしてきつく抱きしめた。
陛下の顔も赤いが、私も顔中に血が巡るのを感じた。
少し痛いのだが、それが逆に、今私は陛下に必要とされていると強く感じることができて、
不快ではなかった。むしろ心地よい痛みかもしれない。
機は熟した。すでに潤んだ瞳で陛下の目を射抜く。アイスブルーの瞳の中にほんのり染まった私がいた。
刹那、陛下が私の唇に軽くキスをした。私のファーストキスだ。お酒の香りがするのはしょうがない。
こういうときどうすればいいのだろう、私の読んだ本には、舌を絡ませるという描写があった。
ただ、それをするには陛下の唇を私の舌でこじ開けなければならない。少し恥ずかしい。
もう少し、このままでいたい気もするし、もっと深くつながりたい気もする。
すると、陛下の舌が私の唇をこじ開けようとしてきた。悩むことはなかったらしい。
ガードをとくと、陛下は私の唇や口腔をその優雅な舌で蹂躙してきた。
多分この人もファーストキスなのだろう。やり方は稚拙だった。
そして、耳年増なところもあるのだろう、初めてでディープキスをしようとしたのだから。
最初は、異物が口腔内をはいずる感じがして不快だった。しかし、慣れてくるとわるくない。
気のせいか甘い感じがする。ワインの匂いとは別な感じだ。もっと味わいたい気がしてきた。
私の舌を絡ませてみると、もっと気持ちが良いのかもしれない。
陛下の舌と私の舌を絡ませてみる。ただ蹂躙されるのはあまり好みではない。
ああ、つながっている、私と陛下が。本当はもっと早くこうなるはずではなかったのか、
キルヒアイス元帥が生きていたら、この方も女性に興味を持たれたのかもしれない。
お互いの口腔をお互いが蹂躙する、俗に言えばお互いを犯している。
気持ちがいい。私の心の中で何かが熱くなり、それは下半身に影響を及ぼし始めていた。
唇と唇が離れ、息が詰まりそうなディープキスが終わる。二人とも限界だった。
私はまず陛下のお召し物を脱がせようとした。マントが邪魔だ、衣服が邪魔だ。
生身の陛下と触れ合うともっと気持ちがいいような気がしてきた。
もともとこうなることを望んでいたのだから尚更しょうがない。
ああ、私も一人の女なのだ、という自覚が沸いてくる。
マントを脱がせると、陛下はやさしく私の手を払った。どうやら自分で脱ぐらしい。
ここへきて陛下本来の性格が表に出てきているのだろうか、
女性の為すがままにされるのは、好みではないようだ。
私は軍服を脱ぐ陛下を見つめている。白磁のような裸身が覗いてくる。
上半身の衣服を脱ぎ捨てると、さながらギリシャ彫刻のような整った半裸が目に入る。
美しく、しかもたくましい。しばらくぼうっと見つめる。
抱きしめられるだけで、高みに昇ってしまいそうな感覚に襲われる。
次は私の番だろう。自分で脱ぐよりは陛下に脱がせてもらった方がいいような気がする。
私はちょっと驚いた。陛下は少し恥ずかしそうに私に目を向けると、ベルトをはずして、
軍服のズボンを脱ぎ始めた。少々意外だ。先に脱ぐとは。やっぱり酔っているのだろうか
私の目に白のブリーフが目に入る。下着にはあまりこだわらないらしい。陛下らしいと思う。
軍服を全て脱ぐと、私は陛下の中央下部にある屹立に目を奪われた。あれが殿方の・・・。
ブリーフがかわいそうなぐらい伸びている。陛下の分身はかなり立派なものだ。
もっとも、私も実物を見るのはこれが初めてだが。
高等学校の保健の授業で一度模型を見たことがあるが、それよりも大きい。
それを、私の中に入れるというのか。少し怖くなってきた。
陛下がブリーフを脱ぎ捨て、本当に全裸になってしまった。もう後には引けない。
しかし、均整の取れた体つきをしている。この体に私は抱かれるのだろうか。
いや、私はそれを望んでいたのではなかったか。自分に言い聞かせてみる。
すると、陛下が初めて私に声をかけた。
「・・・フロイライン、私はフロイラインの裸体を見てみたい、否、見せてくれ」
「・・・わかりました。仰せに従います」
私は、ゆっくりとブラウスを脱ぎ始めた。陛下の食い入るような視線が熱い。
一つ一つ丁寧にボタンをはずしていく。本当なら男性がやるべき作業なのかもしれない。
ただ、陛下にそれを望むのは酷だろう。この人には経験がないからだ。
おそらく、女性の体も姉君以外はつぶさに見たことはないのだろう。
まるで、好奇心旺盛な少年のように、頬を紅潮させながら私の方を向いている。
銀河で一番の男に、私の裸を見せるのは、恥ずかしくもあれ、光栄なことだと思う。
ブラウスを脱ぎ終わり、きちんとたたんでベッドの脇に置いた。
こんなところでズボラだとは思われたくない。
そして、パンツを脱ぐ。そう言えば私はいつからスカートをはかなくなったのだろう。
子供の頃はスカートだったような気がする。でも、スカートは動きにくかった。
思えば私は変わった女の子だった。普通の女の子が好むようなことには興味が向かなかった。
そのせいか、貴族の女子にしては風変わりと噂をたてられたこともある。
しかし、今現在はそれが幸いしている。家は繁栄し、私は陛下のお側にお仕えしているのだから。
そして今このような幸福に直面している。貴族社会ではこのような状況は光栄なことだろう。
もっとも、貴族社会を当の私と陛下がぶち壊してしまったのだからなんとも言えないが。
そして私の体を守るのはついに下着だけになった。
そのとき、陛下が声をかけてきた。
「・・・下着は私がはずしたいんだが、いいかな」
断る理由もない。だいたい二人きりなのだから。無言でうなづく。
陛下は私の後ろに回りこんだ。背中に熱い感触が走る。陛下の指だ。
ブラをはずそうとしてるのだが、やり方がわからないらしい。初めてだからしょうがないだろう。
「このようにすれば・・・」と助け舟をだしてあげる。
ようやく外れた。下着を陛下の手から奪うとたたんである衣服の上に置いた。
そして陛下に相対する。私の胸に触れた者は誰もいない。自分でも綺麗な胸だとは思う。
サイズは、だいたい普通ぐらいだが、陛下はお気に召すのだろうか。
「フロイラインは着やせするタイプだな・・・」
感心したように陛下が言う。多分誉めていただいてるのだと思う。
この人なりの表現の仕方なのだろう。性的な魅力を異性に感じさせるのは少し嬉しいものだ。
まじまじと私の胸を観察した後、私の下半身に手が伸びてきた。
一瞬身をこわばらせるが、何をいまさらといったところか。心の中で苦笑する。
パンティーに手をかけられた。そしてゆっくりと下ろされる。
少し湿っているのが恥ずかしい。さっきの濃厚なキスのせいだ。
さすがに陛下も気がついたらしい。少し笑みをたゆませながら、手は緩めない。
下半身が露わになってきた。膝下まで下ろしたところで、陛下の手が止まる。
ああ、そうか、女性器を見たことがないんだ。
自分の性器が綺麗なのかグロテスクなのか、正直わからない。
今までそんなことは考えなかったが、いざ他人に見せるとなると、
結構なまめかしい姿をしているようだ。気になって陛下の表情をうかがう。
ちょっと戸惑っていたらしいが、今は食い入るように見つめている。
いったいどんな想像をしているのだろう。
いやらしいというよりは、どうやら興味津々といったところらしい。
いかにも陛下らしいが、こちらも少々恥ずかしいので、パンティーを全部下ろして、
ブラの上に載せる。これで生まれたままの姿になったわけだ。
陛下のものを見ると、これ以上ないぐらい凛としている。
生まれて初めて異性に裸をさらしたのだ。このぐらいは反応してもらいたい、と正直思う。
そして陛下と視線が合った。
「美しいな、フロイライン」
両方とも不器用なのだから表現の方法が散文的なのはしょうがないことだろう。
そして私も最上級の誉め言葉として受け取った。
「・・・ありがとうございます」
しばらくお互いの身体を見詰め合っていた。美しい身体をしているとつくづく思う。
やにわ、陛下が私の唇を奪った、そして犯し始めた。
一瞬息が詰まるが、とろりとした感覚は嫌いではない。
そして陛下の両手が私の背中に回り、きつく抱きしめられた。
お互いの鼓動が聞こえる。火照ったからだの体温が感じられた。
そして陛下は私をベッドに押し倒した。ああ、ついに抱いていただけるのだ。
上品なシーツの肌触りが気持ちいい。また、若干汗ばんだ皮膚と皮膚との感覚が意外に新鮮だった。
陛下はまず私の胸を攻めてきた。蕾を舐められる。片側はもまれる。
「・・・やわらかい・・・」
思わず陛下が言葉を漏らした。ちょっと嬉しく感じた。
この人の愛撫は、なんとなくぎこちないような気がする。
私も他人の愛撫を受けるのは初めてだから、なんとも言えないのだが、
まるで少年が新しいおもちゃで遊んでいるような感じだ。
こうしたら、どうなるのかな、等と考えているのではないだろうか。
急に左の蕾を強く吸われた。思わず甘い声が出てしまう。
陛下は満足げだ。調子に乗って片方の胸を強く揉まれた。
痛い、思わず顔をしかめる。
「ごめん」
まるで少年のような言葉だ。赤みがさした顔はなんとも可愛らしい。
銀河の皇帝とは思えないくらいだ。
「いえ、いいんです。続けてください・・・」
陛下が少しはにかんだように見えた。胸への愛撫はしばらく続いた。
私は時折甘い声を出し、陛下は満足げな表情をたたえている。
胸に飽いたのか、いよいよ、陛下の手が私の下半身の蕾の方に伸びていった。
私の下腹部に陛下の手が触れ、私の秘所に近づいていく。
陛下は何となくためらっているような気がする。まあ、初めてだからしょうがないのだろう。
私の秘所は先ほどからすでに湿っている。陛下に触れられたらいったいどうなってしまうのか。
私が私でなくなるようで、少し怖い。
しかし、早く触れてもらいたいのも事実なのだ。私の秘所、女としての証に。
どうやら私は興奮しているらしい。
私の秘所にようやく陛下の指がたどり着いた。
茂みをかき分ける手がぎこちない。どうやら震えているようだ。
そのうちに私の一番敏感なところに指が触れた。思わず声が出る。
「だいじょうぶか、フロイライン」
陛下に声をかけられる。気持ちよかったのだが、男性にはなかなかわからないらしい。
「・・・平気ですから、続けてください、陛下・・・気持ちいいのです・・・」
恥ずかしさで消え入りそうな声だった。そして少し瞳を潤ませて陛下を見る。
顔が上気しているのがわかるが、私だってそうだ。
この人は、普段はリードされるのを嫌う。
しかし、このような場面ではリードしてあげないとなかなか上手くいかないような気がする。
陛下には悪いが、私の思うようにしてもらうべく、私が今一番してほしいことを述べた。
「陛下、ここを触っていただけますか・・・」
「わかった」陛下がうなづく。
そして私は陛下の右手を私の秘所、特に一番感じる部分に誘導した。
「・・・ここをやさしくなでるようにしてみてください・・・」
恥ずかしいセリフだ。しかし陛下も従順だった。陛下の指が蠢くたびに、
徐々に私にも快楽の波が押し寄せてきた。頭の芯がしびれそうだ。
私の息は荒い。ときおり甘い声が出てしまうが、さすがに陛下はもうやめなかった。
慣れてきたのか、陛下がこう言った。
「なるほど、ここをこのようにすればフロイラインは喜ぶのだな」
恥ずかしくて真っ赤になる。少し睨んでみるが、陛下は意に介さない。
まるで子供におもちゃを与えたようなものだった。
まして、そのおもちゃは、愛撫することによって不思議な液体が出てくるのだから。
不意に陛下の手が止まる。今が一番いいところなのに・・・。
すると陛下は、私の両足を開かせ、なんとその間に顔を埋めてきた。
「陛下、そんな、汚いです」
「フロイラインは美しい。汚いところなんてないではないか」
陛下は私の願いを聞いてはくれなかった。
そして、私の秘所をペロペロと舐め始めた。
何かの本で読んだことがある。これがクンニリングスか・・・。
初めて異性の舌が私の大事なところを蹂躙するのだ。
ショックも大きいのだが、それを上回る快楽があった。
私は甘い悲鳴をあげ、思わず征服者の髪を掴んでしまった。
陛下は止めなかった。それどころか、前にも増して激しく秘所を舐めあげ、私の愛液を吸い上げる。
頭がぼうっとしてきて何も考えられない。私は完全に快楽に支配された。
そして、私の身体と心に、何か大きな波のようなものが迫ってくるような気がして、
直後私は、自分でも信じられないぐらい大声で悲鳴をあげて、そのままベッドに倒れこんだ。
そこで私の記憶は一時的に途切れた。
しばらくして意識が覚醒する。5分ほど記憶がなかった。
見ると陛下が今にも泣きそうな顔をして私の方を見ている。
金髪の獅子にも涙は似合うものなのか、と少し見入ってしまった。
おかしなことだが、何となくふと愛情を感じてしまう。心配してくださっていたのだから。
「・・・陛下、私は大丈夫です。どうかお続けください・・・」
「しかし」
「いえ、あれは多分軽くエクスタシーを感じて、昇ってしまったのだと思います・・・」
最後はあまりの羞恥心で声が出なかった。俗に言われるイクという状態である。
それを他人に説明するのは恥ずかしくてしょうがない。が、言わないとわかってはくれない方だからやむをえない。
陛下は、少し納得したような表情だった。こちらも少しホッとする。
しかし、陛下の下腹部を見ると、先ほどまでの痛いほどの屹立が失せていた。
まずい。陛下に心配をかけてしまい、その結果がこれでは、今までのプロセスは、
私が一人で楽しんでいただけではないか。私は陛下をお慰めに来たのではなかったのか。
私はしばし考えた。そして女性の読む雑誌で得た知識をここで披露する決意をした。
それは、かなり勇気のいる行為なのだが、このままではかえって陛下に申し訳がたたない。
私は、深く深呼吸をすると、陛下に新たな提案をした。
「陛下、陛下のご自身を元気にさせたいと思います。つきましては、ベッドに仰向けになってください」
私は耳年増だと思う。
オーディンの本屋で戦史論を物色しているとき、たまたま見つけてしまった本がある。
なんとなくいかがわしいような装丁の本だ。
普通なら見向きもしないのだが、ちょっと好奇心が沸いてしまい、中を開いてみた。
なんというはしたないマネを・・・。顔に血が集まり始めるのを感じる。
これはそういう本なのだ、ということに気がつくのにはもう少し時間を要した。
一瞬棚に戻そうとしたが、手が震えてしまい、その本を落としてしまった。
幸いにも周りは、よくあることと受け止めたらしい。誰もこちらを見なかった。
私には好都合だった。そして踏ん切りもついた。
私は戦史論をその本の上に隠すように乗せて、キャッシャーへ行った。
店員の視線が何となく好奇の色を帯びているように思えてしょうがなかったが、
少し耐えれば済むことだ、と自分に言い聞かせる。
カードと本の入った包みを受け取ると、そそくさと店を出る。
大通りでタクシーを拾い、慌てて家に帰った。私もはしたない・・・。
家について、手洗いうがいを済ませて2階の自室にこもる。
そういえばハンスが何か言っていたようだが、よく聞こえなかった。
包みから恐る恐る本を取り出す。古めかしいエッグハルトはとりあえず書棚にしまった。
問題はもう一冊の本なのだから。
早速先ほどのページをめくる。少し息が荒いと自分でも気付く。
私もすでに19歳、自分が女であることは一応自覚しているつもりだ。
学校での保健の授業も優をもらっている。
だから、男女間の性交渉に関しては、多少の知識はあった。それに多少の興味も。
ただ、実体験がないので、どうしてもそれは想像の産物に過ぎなかったが、
それでも、男女がどのようにするのかは、ある程度はわかるつもりだ。
が、正直私は驚いた。なぜ、このイラストでは、女性が男性器を加えているのだろう。
そんなことをしなくても子供は生まれるはずだが。
この本には、そうすることによってよりお互いの結びつきが深まる、と書いてあった。
本当なのだろうか。
排泄器官を口に加えるということで、本当に愛が深まるのだろうか。
私のように、それまで恋もしたことのない女にはよくわからなかった。
ただ、それをすることによって男性は大変喜ぶ、とも書いてある。
覚えておいて損はないかもしれない。
その日は一日中妙な気分だった。
本を全て読んで覚えてしまったのがいけなかったような気がする。
本当にあんなことをするんだろうか。
そうしなければいけないのだろうか。
男性に元気がないときにやってみると効果的とは書いてあったが、
それを試すときが来るとは、当時の私には想像できなかった
陛下は私の言うとおりに従ってくれた。
さあ、これからが正念場だ。
私は陛下の下半身の方へ行き、元気のない陛下自身を見やった。
陛下は怪訝そうな目で私を見てこう言った。
「フロイラインの言うとおりにしたぞ。これからどうすればいいのだ」
「陛下はそのままでいいのです。後は私にお任せください・・・」
さすがに恥ずかしい。
「そうか、わかった。フロイラインは間違ったことを言った事がないからな」
妙に納得されてしまった。誉めてもらっているのだろうか。
気を取り直すために深呼吸をした。そして、陛下自身に顔を近づける。
陛下に何か言われる前にやらなくては。
私は、陛下自身に軽く口付けをした。
陛下は一瞬驚いたように身体を震わせ、何か言いかけたのだが、それは無視することにした。
口付けをしつつ、徐々に口を広げて陛下の先端をほおばる。
口の中に何か妙な味が広がるが、それは返って私の気分を高揚させた。
「・・・そんな、フロイライン、汚い・・・あ・・・」
陛下は私を止めようとしたのだろう。しかし、すぐに愉悦の声が漏れてきた。
私も陛下が喜ぶのは嬉しい。おちょぼ口にしてほおばったまま首を上下に動かす。
陛下の身体が震えるのがわかる。ああ、感じてくださってるんだ。
嬉しくなって、舌で転がしてみる。そして強く吸ってみる。
「ああ、あああ・・」
うめき声とは反対に、陛下自身はどんどん大きくなっていく。
私の口では制御できないかもしれない。
舌を裏側の筋があるあたりで何度か吸い取るように舐めると、
陛下は私の頭部を両手でつかんだ。一瞬びっくりしたが、それでも私はやめない。
前よりももっと激しく上下運動をする。思ったよりも疲れるものだ。
しかし、心地よい疲れだ。私は頭の芯がじんじんすることに気付いた。
陛下の呼吸が荒い。私の上下運動にあわせるかのように。
そのうち、陛下自身がひときわ大きくなったような気がした。
「・・・もうだめだ、止めてくれ、フロイライン・・・もう・・・」
そうせがむ陛下を無視して、再び強く吸う。
すると突如、陛下が「・・・うああああ」と叫び、
刹那、陛下自身が私の口の中で暴れだした。
これが、殿方がイクということなのか。
感心した私の口の中で陛下自身が爆発した。
まるで溶岩流のような液体が私ののどを直撃する。
あまりの苦しさに、陛下自身から思わず口を離す。
しかし、陛下のほとばしりはやまなかった。
私の顔に身体に、陛下の液体がふりそそぐ。避けようもなかった。
熱い液体は私の顔と胸を汚して、しかし、まだおさまる気配はない。
ようやく最後の一滴が私の乳房のあたりに命中する。どうやら終わったらしい。
ベトベトとした感覚が気持ち悪い。のどにエグみがある。
そばにあったティッシュを取ると、思わず口の中の液体を吐き出す。気持ちが悪い。
これは水でも飲まないと取れないな、と思ってふとあたりを見回すと、ワイングラスがあった。
はしたないのだが、のみかけのワインを一気する。多少はましになった。
ふと我に返り、陛下を見やる。全身の力が抜けているようだ。
何となく目の焦点が合っていないように見える。
と、息も絶え絶えな陛下が言った。
「・・・フロイライン、すまない・・・でも、止めてくれと言ったではないか・・・」
私は、ティッシュで身体についた陛下の残滓をふき取りながら聞いていた。
いくら陛下の身体から出たものとはいえ、なんとなく気持ち悪いからだ。
陛下が少々非難がましい目で私を見ていたので、すこし意地悪な気分になった。
「・・・陛下は、その・・・いかがでした・・・」
なんてお答えになるのだろうか。興味が湧いてくる。
陛下は真っ赤になりながらこう答えた。
「・・・気持ちよかった・・・生まれて初めてだ・・・フロイライン」
私はそのとき、全身で幸せを感じた。