フレデリカひとりエチー(4-119さん)
「8月の新政府」として知られるイゼルローン共和政府の主席であるフレデリカ・G・ヤンは多忙だった。
しかし、いや、だからこそ、仕事の終ったあとの虚脱感は例えようがないほど心にこたえた。夕食を済ませ、シャワーを浴びて着替える。
ベッドに腰掛けて、彼女はカレンダーを眺めやった。
「そう、あの人が死んでから、もう半年過ぎたのね」
小さく独語する。あの人が死んでから。まったく、なんてことだろう? 初めは英雄に憧れる1ファンとして、次は副官として、次は妻として、常にヤン・ウェンリーを追いかけつづけてきたのに。彼はたった一年の幸福な時代を残して死に至った。
たった一年の、充実した夜の時間が連想された。彼女は勢いよく首をふる。不謹慎でもあり、自分がひどく淫乱なメスに思われた。ヤン・ウェンリーとの思い出は綺麗なものにしておきたい。
しかし、―――身体がうずく。
ヤンが死んでから、他の男性との交際は無論のこと、自慰すらいましめてきたフレデリカである。下半身のうずきに反応したいとは思わなかった。思わなかったが……
(故人を思いながらマスターベーションなんて! 天上から見ているあの人がどう思うかしら?)
そう考えると、余計に「感じて」しまうのである。
「困ったわ……」
ベッドに身体を預けると、フレデリカは天を仰いだ。
手を伸ばそうとするが、恥ずかしくてひっこめてしまう。無理やり寝てしまおうとワインを飲み干して蒲団にもぐりこんだが、身体が熱くなって完全に逆効果だった。
(あなた……ごめんなさい!)
フレデリカは、そっと秘密の茂みに手を伸ばした―――
そっと内股をなで上げる。
「っ―――」
冷たい感触が、フレデリカの心を熱くさせる。
寝台にあったヤンの写真に目をやり、小さく呟く。
「あなたがいけないのよ……あんなにはやく逝ってしまうんだもの」
顔を赤らめ、フレデリカは写真たてをそっと倒した。
―――天上で観察なんてしないでくださいね……?
割れ目に、そっと指をすべらせる。
少しだけ溢れていた蜜が、指先を湿らせた。
懐かしい感触に、思わずフレデリカは涙を流す。処女を失った日、彼女は神に感謝すら捧げたのだ。あの人が、少し困った顔をして、そっと舌を伸ばして―――
未亡人というものは、こんなにも哀しい生き物なのか。
クリストスを刺激する。中指でそっと撫で上げ、親指で押さえ込む。
「あなた……」
無意識に流れでた旋律が、鳥肌を立てさせる。
指を三本突っ込むと、ぐちゃぐちゃにかき回した。蜜の甘酸っぱい匂いが、ベッドを侵食しだす……。フレデリカは我慢ならなくなって、乱暴に自分の胸を握りしめた。
酔いがまわり、頭の中に靄のようなものが立ち昇る。
それが結晶化して、人となる。
「ん―――?」
フレデリカは戸惑いの声をあげた。