私の名前はスイクン。
世間ではオーロラポケモンや北風の化身等、様々な異名で呼ばれています。
そんな私は今、ただ涙を流し悔いるばかりの日々を送っています。
今の私の胸中を埋め尽くす感情は、後悔と罪の意識のみです。
皆さんは何故?と感じるでしょうね。
その理由をお聞かせしましょう。
15年程前でしょうか。
私は世界を疾駆する最中、あるトレーナーに捕獲されました。
それはどこにでもいそうな少年でした。
最初はあまり友好的にはなれず、そっぽを向くばかりの日々を送っていましたが、そのトレーナーは私に色々としてくれました。
例えば私の好きな味覚を当ててポロックと言うお菓子を沢山くれたり(ちなみに私は甘い味とにがい味が好きです。)、
私をポケモンコンテストという大会に参加させてくれたり、そのコンテストで優勝した私とトレーナーをとある画家の人が描いてくれたりと、
実に色々な事をしてくれました。
私は次第にそのトレーナーに友好的になっていき、
私はそのトレーナーを尊敬の意をこめて「ご主人様」と呼んで親しむようになっていきました。
それから数年後、ご主人様は大人に成長して結婚し、やがて1人の子供の父となりました。
それでご主人様がとその奥様が仕事で家にいない時は、私がご主人様の息子様の面倒を見ていました。
ご主人様の奥様はトレーナーとしての腕に恵まれ、私は奥様の持つ様々なポケモンと出会いました。
中には私よりも強く感じるポケモンがいて私は少し圧倒しましたけど、それでも奥様のポケモン達と私は仲良くなっていきました。
一家の大黒柱となったご主人様に、私は影で支えながら嬉しくも羨ましくも思いました。
時にはご主人様に嫉妬して迷惑をかけてしまったり…、今思うと恥ずかしい思い出が懐かしく感じます。
それぐらい私はご主人様を好きになっていたんです。
ですが、ご主人様との別れが突然来てしまったのです。
それはご主人様が奥様と出掛けた先で起こった事でした。
御二人はロケット団と言う組織の残党に目を付けられ、事故に見せかけた殺人で殺されてしまったのです。
しかもその時私はご主人様の息子様の面倒を見ていたため、御二人が持っていたポケモンは皆ロケット団の残党に連れて行かれたのです。
私はご主人様と奥様の仇を討つ事と、御二人のポケモン達を助け出すために、単身でロケット団残党のアジトに乗り込もうと基地を探しました。
しかし、私が基地を見つけた直後にロケット団が完全解散したという情報を知って愕然としました。
御二人の仇となるロケット団残党のボスの行方は途絶え、同時に御二人のポケモン全ての消息が途絶えてしまいました。
もう少し早ければと後悔して、私は「秘密の場所」で1日中、ずっと泣き続けてました。
でも泣き続けても始まらない。
私はそう自分に言い聞かせて、残されたご主人様の息子様の元に戻ろうとしました。
ご主人様の家にはご主人様の息子様はいませんでした。
帰路の途中、ただならぬ胸騒ぎを感じ急ぎ戻った私が見たものは、荒らされた部屋と御二人が息子様に遺したお金が誰かに持っていかれた跡でした。
その光景を見た私は必死で息子様を探しましたが、何処を探しても見つかりませんでした。
完全に絶望して頭が真っ白になった私は、再び秘密の場所で、今度は3日の間泣き続けていました。
私はご主人様の仇を討ち、御二人のポケモン達を助けるどころか、残されたご主人様の息子を励ます事も出来ずに誰かに連れて行かれた…………。
その事が頭の中から離れず、私は声を上げてずっと泣いていました。
それから私は外との交流を避けて秘密の場所で自暴自棄に走る毎日を送っていました。
当時は人、ポケモン問わず私が通ると誰もが思わず振り向く程で、
私自身も自信があった自慢の美しさは、日が過ぎるごとにボロボロになっていきました。
こんな私を励まそうと、私の旧友であるライコウやエンテイがよく私のもとを訪れましたが、
自暴自棄に走った私は彼等を乱暴に追い出して、彼等の怒りや不満を買う事になってしまいました。
いっその事なら死んでしまいたいと思った事もありましたし、実行に移そうとした事もありましたが、なぜだか死ぬ気にはなれませんでした。
私自身も良く分かりませんが、亡きご主人様がどこかで死んではいけないと言っているのでしょうか?
もしそうだとしたら教えてください。
ご主人様、まだ私には死んではいけない理由があるのですか?
夢でも良いから教えてください。
私の胸中は今にも後悔と罪の意識で張り裂けそうです…………。
完
世代を越えた想い 第3話 再会
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