世代を越えた想い 遺伝子改造実験ドラゴンソウル作 ポケットモンスター二次創作
 ここが一体何処なのかは分からない。
ただ、何かの研究所だと言う事は分かる。
えっ?何で分かるかって?
連れ去られたんだよ。僕自身が。
15歳になってやっとポケモントレーナーを始めようとして、父さんが遺してくれた一匹のポケモンといざ行こうとしたら、変な男達に捕まった。
父さんが遺してくれたそのポケモン、そのポケモンがすんごくきれいで美しいんだ。
なんて言うかな、髪の毛のような色は紫でとても長くて、頭に水晶のような物が付いてて、
尻尾みたいな物は細くて2本あって前でひらひら動いている不思議なポケモン。
そのポケモンは父さんが僕と同じくらいの年に捕まえたポケモンらしい。
幼い頃からそのポケモンと付き合ってきた僕は、その美しさに心を惹かれる時があった。

 ちなみに父さんと母さんは1週間前に起こった事故で2人とも死亡。
突然僕は天涯孤独の人生をまっとうする事になってしまったんだ。
そんな時、ポケモンなら親がいない寂しさを紛らわしてくれるかなと思って、僕はポケモントレーナーの道を選んだ。
数日前に準備を整えて、親を失った事の心の乱れを整理していたら、この変な組織に捕まったと言うわけ。

 そんな出来事から結構長い間、僕は眠っていた…らしい。(よくわからないけど、そんな気がする。)
僕は目を覚ましたが、良く分からない大きな容器に入れられていた。
目を覚ましたと同時に、どことない違和感が体中に走る。
何だろう?この違和感。
体は人間のような感じがして人間じゃない。
すると何処からか声が聞こえてきた。
「…が…め…した。」
「…ぉ!遂…覚…たか!」

 …?何を言ってるんだろう?
目を覚ましたばっかりだから良く聞こえない。
「おい!液体を取り除け!」
 液体?何の事?何をしようって言うの?
すると何処からか水を取り除く音が聞こえ、目の前の容器が外された。
ずーっと変な液体の中にいたから重力を感じられなかったけど、液体を抜かれて重力と流れてくる空気をまともに感じられる。
 僕は目の前にいる人達を見続けていた。
だけど目を覚ましたばかりだからぼやけてよく見えない。
そこで僕は目をこする。
しかし、僕はそこで見てしまった。
今の自分の姿を…!
「!?…こ、この姿は一体……!!」
 そう、その姿はもはや人ではなかったんだ。
それに声帯まで変わっていた。
「驚いたかね?君は今日から「ミュウツー」になったのだよ!」
「ミュウ…ツー…!?」
 目の前の人達が兵器がどうのとか、高い金で売れるとか色々言っているが、僕はそれどころではなかった。
気が動転していたが、やがてゆっくりと僕は思い出した。



 それは僕が変な組織に捕まった後だった。
多分催眠スプレーか何かで気を失って、しばらくして気が付くと、僕の手足は台の上に固定されていて、全裸にされていたんだ。
訳が全くわからないのに、僕の体に注射が打たれて、急に体が熱くなった。
それで僕は体を見て驚いた。
全身が少し紫を帯びた白になっていき、両腕が細くなっていく…!
僕の急所は体の中に消えていき、その急所からヘソらへんが紫色になって、僕の尻からは先が楕円形の長い太い尻尾が生えてくる…!
しかし、そこで再び注射が打たれて、僕は強烈な眠気に襲われた。
抵抗できない強烈な眠気に襲われてゆっくりと目を閉じていく中、僕は全身が休む事無く変わっていき、頭が変化していくのを感じた…。


 あれからどれくらい経ったかは分からない。
目の前にいる人達は歓声を上げている。
僕は目の前にいる人達に怒りを燃え上がらせた。
目の前の人達を苦しめたい衝動が体の中で高鳴るが、殺すのではこの人達に最高の苦しみを与えられない。
そう言えば母さんが事故死する数日前にこう言ってたっけ。

〜殺すのは残酷だしとても苦痛なのよ。でもね、もっと苦痛なのは記憶を消されて自分が誰だか分からない事なのよ…〜

 僕は考えた。
どうすればこの人達の記憶を消せるのか…。
ふいに僕は腕が細い事を思い出した。
腕が細いと言う事は、肉弾戦は不向き。
だけど、その代わりとして何か出来るはず…!
確か友達が持っていたポケモンは体が細いけど、強力な超能力が使えた……!
それに気がついた僕は念じた。

…チカクノキカイヲコワセ…

 すると、近くの機械が爆発を起こした。
目の前の人達が驚く中、僕はもう一度念じた。
これが成功したら僕は此処から脱出する。

…メノマエニイルヒトゼンインノキオクヲスベテケセ…





 僕はさっきの研究所のような建物を遠くの丘から見下ろしていた。
あそこにいる人達全員の記憶は一片の欠片も残さず消した。
今頃は自分が何者であるかを探してるか、あるいは幼い子供のように建物の中を動き回っている事だろう。
僕を兵器か何かに改造して大金を得ようとしたのかもしれないけど、それは無駄になった。


 しばらく建物を見ていた僕は、今の僕の体をまじまじと見つめた。
最初は違和感を感じていたこの体も、今では慣れてきている。
指が3本なのは不便に感じるが、指先に団子のような物が付いており結構柔らかい。
超能力が使えるから。
腰辺りはかなりくびれていて、尻尾に繋がっている紫の所付近は腰よりも一回り太い。
簡単に言えば下半身は少しずんぐりしているって所。
尻尾の根元辺りも腰より大体一回りくらい太い。
今思うとこの姿も悪くない。

 僕はこの姿が完全に気に入った。
でもこの姿でポケモントレーナーをやる事は出来ない。
その代わりポケモンと会話が出来そうだ。
そこまで考えた僕…いや「私」は気が付いた。
あのポケモンに会えるだろうか。
家にいた時、よく一緒にいてくれたあのポケモンはどうしているだろうか。
そのポケモンに会いたくなった。
私はそのポケモンの気配を探って場所を突き止める。
やや遠いがそんなに時間はかからない。
私はその体を超能力で体を浮かせ、宙を舞った。

 私がそのポケモンに抱いた感情、それはそのポケモンと死ぬまでずっと一緒にいたいと思う一途な想い……。


 完
世代を越えた想い とあるポケモンの悲しみ
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