「ふわあぁぁ~… もうそんな時期~…?」
頭の中にヘンな声が響く。幼い少年のような声。
「な、何? 誰?」
辺りを見渡すが、人影は見当たらない。今のは一体…?
「あ、あれ? 身体が動かない…? なんか様子が変だぞ?」
また声がした… どうやら、これはよくある「頭の中に直接話しかけてる」ってやつね。
…て、普通そんなことあるっ…か。エスパータイプのポケモンなら可能だし。
でも、近くにいなきゃそれは使えないハズ。じゃぁ、やっぱり今のは…?
「ん~~っ、ん~~っ」
頭の中の誰かが、力を込めるような声を出している。
(…何やってんの?)
試しに頭の中の誰かに呼びかけるように、頭の中で発声してみる、すると…
「ふぇっ?! だ、誰?!」
…驚かれた。
(誰って、アンタこそ誰よっ。勝手にヒトの頭の中で喋ってさ)
驚きたいのはこっちの方だっての。まぁ、混乱しすぎてワケ分かんないから、驚くに驚けないんだけど。
「ヒトの身体って、僕は僕だよ! 僕は千年に1度だけ目を覚ます、ジラーチ様なんだい!」
(あ~はいはい、そうですか。)
まったく、ヒトの頭の中で何がジラーチなんだか… って、ちょっと待て私!
(じらあぁぁちいぃぃーー?!!)
「そ、そうだよ? な、何とつぜん叫んだりするのさ…」
危なかった。声に出すところだった。声に出したらまた例の…
バタン!
「どうした! 何があった?!」
…来やがった。
「だぁ~からぁ!! 入ってくんなー!」
ズドーン!!
…え? ズドーン?
「あ、あひぃ… そ、そこまですること…な…」
バタン
目の前(よりちょっと向こう)には黒コゲで倒れてるお隣さん。
そしてさっきの謎の効果音。一体何が?
「あ~あぁ。やっちゃった…」
頭の中の少年――ジラーチが呆れ声を出す。
今のって、私?
「…と、とりあえず…」
玄関先で倒れられてても困るので、お隣さんはお隣さんの部屋で、ということで、ひとまず運んでおく。
…人目を避けながら。
「いや~、ビックリした~… 突然ヘンなのが手から出るんだもの」
お隣さんは気絶してるので、平気で声に出す。
「にしても、アンタ、本当にジラーチ?」
「そうだけど… そういう君は何なのさ? なんでか僕の身体をのっとってるけど」
のっとるって、人聞きの悪い…のっとったのはどっちだってのよ…
「え~っとだねぇ、なんでこうなってるかっていうとね~…」
私は先までに起こった事を頭の中のジラーチに話した。
といっても、なんでこういう状況になったかまでは、言えないけれど。
「着ぐるみが… ねぇ… そんなことあるの?」
「知らないわよ。私に聞かないで」
ジラーチ本人も分からないらしい。まぁ、分かってたらもっと早く解決してただろうけど。
「でも、そういうのって、普通は身体の操縦権って、僕にない?」
「…だから知らないっての」
確かに、何かに心も身体ものっとられて~ ってのはよく聞く話だけど、このケースはそういうわけでもない。
私が七夕の日に着ぐるみを着ながら歌ったら、突然こうなった。
一体何が引き金に? 歌? 着ぐるみ? それとも今日の日付? さっぱり分からない。
「…とりあえず、これからどうするかを考えましょう…。 もうすっかり夜になってるし…」
そういえばお腹が空いた。時計を見ると普段だったら夕食の時間だった。
冷蔵庫を開けてみるが、その中は閑散としていた。こりゃ買出しに行く必要がある…
しかし、今の状況では… どうする?!
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