「あ、うわわわっ。 いでっ!」
「だ、大丈夫・・・?」
今は何故か、大好きなポケモン、サーナイトになって、唯一の手持ちポケモン、ポチエナだったグラエナと川岸を下流に向かってひたすらに歩いている・・・
「いってて〜・・・ サーナイトも楽じゃないよなぁ」
川ということで、もちろん足元は大きめの石がゴロゴロとしきつめられている。
人間とは違い、サーナイトの足は棒のようで、常につまさき立ちでいるような感覚なのだ。
石と石の隙間に足が挟まり、度々転ぶ始末である。
「この変なヒラヒラも邪魔だし・・・ なってみると分かる苦労ってあるんだな」
「そうだよ〜? オイラも進化するとこんな感じなんだ〜、って思ってるもん」
なるまで いや、今も大好きなサーナイト。だが、これのせいで少し嫌いになりそうだ・・・
「しっかし、こう何回も転んでいちゃぁ、身が持たないな・・・ なんだか人間の時より少し痛い気がする・・・」
「う〜ん、サーナイトだからかな? あ、なんなら、オイラに乗る?」
グラエナになったポチエナが、サーナイトになった俺に言う。
その提案は確かに大賛成だった。だが、どこか不安なところがあった。
「そ、そうか? それじゃ、遠慮なく・・・」
グシャッ
「ぐえっ!」
「ひゃあ?!」
自信満々のグラエナの背中に乗った瞬間、体が落ちるような感覚に襲われた。
いや、実際に落ちたんだが・・・
「ポ〜チ〜エ〜ナ〜?」
「いってて〜・・・ あれ〜? おかしいなぁ?」
乗る前に感じた不安は、きっとこれだったんだろう。
「お前も慣れてないんだから、ムリはするなよ?」
「うーん、そっかぁ・・・」
しょうがないので、再びさっきと同じように徒歩で歩いていくことにした。
だが、歩けども歩けども景色は大して変わらず・・・。本当にここは何処なんだか・・・。
と、思った矢先・・・
「お、なんか開けてきたぞ?」
今まで切り立った岸壁を右手に歩いてきたが、ぱつんとそれが無くなってる事が遠くに見えた。
その場に立ってみると、その先は崖になっており、川も滝となって下に落ちていっている。
だが、注目すべきはそんな事ではなく・・・
「す・・・すっげぇ〜・・・」
平地での野生ポチエナ暮らしだったグラエナが、感動の吐息を漏らす。
そこから見える景色は、俺も見たことがないぐらいの絶景だった。
「確かにすげぇな。こんな景色は見たことがない・・・」
何処までも続く樹海。そして奥に見えるは連なる山々・・・。 まさに絶景である。
だが・・・
「・・・ん? おい、町はどうした?」
「え・・・? あ、そういえば・・・」
これだけ広い範囲が見えれば、町となくとも、何らかの建造物ぐらいは見えるはず。
だが、そこに見えるは木々と山のみ。まるで数万年前までさかのぼったようだ
一応、空には数匹のポケモンは飛んでいるが・・・
「考えてもしょうがないから、とりあえず歩くか・・・」
「え〜〜。もう疲れたよぉ。」
陸上のポケモンなのに、俺より体力がないってどういうことだよ・・・。 面倒なだけか?
まぁ、しょうがない。少し休むとするか・・・。
と、崖を背に腰を下ろしたその時・・・・・・。