二人兄弟
僕は竜ちゃんのベッドに腰掛けていた。今日はとても天気がいいので、ベッドの上はとても温かい。竜ちゃんは、2つ年上の僕のお兄ちゃんだ。
彼の部屋は日当たり良好なので、こんな日はストーブを点けなくてもポカポカなのだった。
ただし僕の頬が熱いのは、決して太陽のせいではなかった。 たった今廊下でおもらししてしまったので、恥ずかしくて頬が火照っていたんだ。
濡れてしまったパンツとズボンは、竜ちゃんが優しく脱がせてくれた。
だから今は、セーターだけしか身に着けていない。裸になった下半身は、布団の端でそっと隠した。
僕は中学生になった今も、おもらしの常習者だった。 その後始末をしてくれるのは、ママでもパパでもなく竜ちゃんと決まっている。
竜ちゃんは中学3年生で、高校受験を控えている。 今は勉強に集中したい時のはずなのに、僕はいつもこうして彼に迷惑をかけていた。
「幸樹、元気出せよ。誰にでも失敗はあるさ」
竜ちゃんは僕の隣に座って、そっと頭を撫でてくれた。
彼の手は、大きくて温かい。優しい目で見つめられると、ますます頬が熱くなってくる。
僕は小さい頃から竜ちゃんが大好きだった。彼と2人で過ごす時間は、僕にとって至福の時だ。
でもこの後の事を考えると、ちょっと緊張してしまう。
彼はきっと、これから僕に乾いたパンツをはかせてくれるだろう。
僕はその時、いつもあそこが大きくなる。竜ちゃんに見られていると、必ずそうなってしまう。
すると彼は、先の方を指でつまんでゆっくりとそこを擦ってくれる。
そうしてもらうとすごく気持ちがいいんだけど、その時は今以上に恥ずかしくなってしまうんだ。
それでも僕は、いつものパターンに期待した。
どんなに恥ずかしくても、竜ちゃんに気持ちいい事をしてもらうのがたまらなく好きだったからだ。
なのに彼は、突然お決まりのパターンを崩そうとした。それは僕たち2人の穏やかな時間が、激変する前兆に思えた。
「お前のためにいろいろ考えて、学校帰りにこれを買ってきたんだ」
彼はそう言って僕の目の前に白い物をチラつかせた。
それを見た時は、すごく驚いた。竜ちゃんが右手に握り締めていた物は、フワフワした紙オムツだったんだ。
僕は今まで、そんな物を使った事は一度もなかった。 もちろん赤ちゃんの時には使っていたんだろうけど、その頃の記憶は当然すっかり失われていた。
僕は呆然として声も出なかった。なのに竜ちゃんは、淡々と事を進めようとしていた。
「早くベッドに横になって。それから、股を大きく開くんだぞ」
布団を軽く引っ張られると、裸の下半身が丸見えになってしまった。 僕のあそこは彼の愛撫を期待して半分立ち上がっていたのに、それは見る見るうちにしぼんでいった。
竜ちゃんが、僕の腕をグイッと掴む。
彼は僕をベッドへ寝かせ、本気でオムツをはかせようとしていたんだ。
だけど僕は、それにはどうしても耐えられなかった。 オムツをした姿を竜ちゃんに見せるなんて、想像しただけでも死ぬほど恥ずかしかった。
「嫌だ!」
僕は彼の手を振りほどき、真っ直ぐにドアへ突進した。早くここから逃げないと、とんでもない事になると思っていた。
白いドアには、『合格』と書かれた習字が貼ってあった。 それは書道二段のママが、彼の志望校への合格を願って書いた物だった。
必死に逃げようとしていたのに、僕はドアへ行き着く前に竜ちゃんに捕まってしまった。
竜ちゃんは僕よりずっと体が大きくて、力も強い。 彼に羽交い絞めにされると、もうほとんど身動きができなくなってしまった。
「どうして逃げるんだよ!」
「離して!」
毛色の違う2つの声が、僕の鼓膜を大きく揺らした。
体がフワっと浮き上がり、目線が少し高くなる。その時は、『合格』の文字がほんの少しだけ斜めに見えた。
このままでは、あっさりとベッドに叩きつけられてしまう。そうしたら、すぐにオムツをはかされてしまう。
その恐怖を感じた時、僕は思いきり竜ちゃんの腕に噛み付いた。
「うわぁ……!」
彼は大きく悲鳴を上げ、噛まれた腕をサッと引っ込めた。するとすぐに、浮いた体がもう一度床の上に下ろされた。
早く廊下へ出なくちゃ。
僕は体のバランスを立て直し、両手を白いドアに向かって伸ばした。
その時は、本当に必死だった。僕が竜ちゃんに逆らったのは、もしかしてこの時が初めてだったかもしれない。
やがて僕の手が、やっと白いドアへと辿り着いた。あとはそれをグイッと引いて、廊下へ飛び出すだけになった。
ところがその瞬間に、頭に鋭い痛みが走った。
あまりの苦痛に、目に薄っすらと涙が浮かぶ。竜ちゃんは後ろから僕の髪を掴んで、思いきり引っ張ったのだった。
「痛い……!」
僕は白いドアに爪を立てた。すると、『合格』と書かれた紙が粉々に破れて足元に散っていった。
竜ちゃんが、僕の背中を強く押す。僕はドアと彼の肉体に挟まれて、胸がすごく苦しくなった。
「お前は赤ちゃんなんだよ。だからまだパンツをはくのは早すぎるのさ」
呻くようなその声が、両耳の鼓膜を微かに揺らした。
お尻がフワフワした物で包み込まれ、すぐに前の方にも同じ感触が走る。
僕は息ができなくなり、太陽の温もりも感じなくなって、だんだん意識が薄れていった。
気付いた時には、温かいベッドの上で仰向けになっていた。体を覆う布団は、すごく清潔な匂いがした。
目の前は真っ白だけど、その向こうに太陽の光を感じる。
竜ちゃんの姿は見えなくても、彼がそばにいる気配はなんとなく分かった。
僕は彼に何かを言いたかったけど、うまく言葉が出なかった。
彼の大きな手が、僕の頭をそっと撫でる。するとすごく嬉しくなって、自然と頬の肉が緩んだ。
すると今度は、柔らかな唇が頬に軽く触れた。竜ちゃんにキスをしてもらうと、僕はますます嬉しくなった。
竜ちゃん、大好き。
大きな声でそう言いたいのに、何故だか声が出てこない。
それはとても幸せな時間だったけど、何も言えない事がすごくもどかしかった。
そんな穏やかな時間がしばらく続くと、そのうちにまたおしっこがしたくなってきた。
僕は普段から、あまり長く尿意を堪える事ができない。
少しぐらい我慢できるだろうと思っているうちに、いつもシャーッとおもらししてしまう。
そのたびに、竜ちゃんにしょっちゅう迷惑をかけた。 彼は笑顔で僕の世話をしてくれるけど、それが受験勉強の妨げになっている事は十分分かっていた。
だから僕は、ちゃんと言いたかった。今すぐトイレに行きたいと、彼に言いたかった。
なのに、どうやっても声が出なかった。
たくさん息を吸って一生懸命に何かを言おうとしても、唇の隙間から空気が漏れ出すだけで、まったく言葉にならなかった。
だったら今すぐ立ち上がって、トイレへ行けばいい。
どうしても声が出ない事を覚ると、今度はそう思うようになった。
それから僕は、すぐに起き上がろうとした。
寝返りを打って、頭を上げて、体を起こして立ち上がる。そのイメージは、完璧に頭の中で出来上がっていた。
ところが、体が思うように動かない。寝返りを打つ事もできないし、頭を枕から離す事もできやしない。
僕はいったいどうしちゃったんだろう。
まさか、何かの拍子に運動能力が失われてしまったんだろうか。 声を出す事もできないという事は、声帯までも奪われてしまったんだろうか。
そんなふうに思いをめぐらせていると、だんだん尿意が強くなってきた。
早く何とかしないと、このままおもらししてしまう。そうしたらまた、竜ちゃんに迷惑がかかる。
そんな事ばかりが続くと、そのうち彼に嫌われてしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。絶対に嫌だ。
僕は精一杯がんばって、手足をバタバタ動かした。でも布団が少し揺れるだけで、何も状況は変わらない。
太陽の熱が体に伝わり、額にわずかな汗が浮かぶ。
お腹に力を入れても、ぐっと拳を握っても、強い尿意が遠ざかっていく気配はない。
もうダメだ。これ以上は我慢できそうにない。もう本当に、おもらししてしまう。
「お前は赤ちゃんなんだよ」
僕が限界を感じた時、いきなり竜ちゃんの言葉が頭の中で蘇った。彼はいつか、僕の耳元でたしかにそう言った。
僕は今になって、その言葉をやっと理解した。
そうか、そういう事だったのか。
どうやっても喋れないのは、僕が言葉を話せない赤ちゃんだからだ。
いくらがんばっても起き上がれないのは、僕が1人で動けない赤ちゃんだからだ。
そういえば、さっきから下半身がフワフワした物に包まれているような気がする。
それはきっと、オムツの感触だ。僕は赤ちゃんだから、オムツをはいているに違いないんだ。
じゃあ、おもらししてもいいよね。僕は赤ちゃんなんだから、おもらしするのは当然のはずだ。
オムツがおしっこを吸収してくれるから、いっぱいおもらししても構わないんだ。
それが分かると、ほっとして急に体の力が抜けた。
僕はそれから安心しておもらしを始めた。
あそこの先から勢いよく水を吐き出すと、気持ちが楽になってすごくすっきりした。
フワフワの紙オムツが、温かい水をどんどん吸い取ってくれる。
布団に包まって遠慮なくおもらしをするのは、ただただ爽快だった。
溢れ出すおしっこが、お尻の割れ目を伝っていくのが分かる。フワフワしたオムツは、前も後ろもしっとりと濡れていた。
だけど、ちっとも不快感がない。 おもらししてパンツを濡らすとかなり気持ちが悪いのに、オムツをはいているとそういう感覚がまったくない。
竜ちゃんの気配をそばに感じて、太陽の光に見つめられながらおもらしをする。
当たり前にそんな事ができるなんて、赤ちゃんもそう悪くはないと思った。
「おい幸樹、起きろよ!」
突然体を大きく揺さぶられ、幸せな時間が終わりを告げた。
一瞬目の前が真っ暗になったかと思うと、またすぐに視界が開けた。
するとすぐに竜ちゃんの姿が見えた。彼はベッドの上に正座して、僕をじっと見つめていた。
竜ちゃんの目は、ガラス玉のように透き通っていた。太陽の日差しが反射して、その目はキラキラと光を放っていた。
僕が白い霧の向こうに見たものは、太陽の光ではなくて、きっと彼の目の輝きだったんだ。
竜ちゃんの髪は乱れていた。黒くて真っ直ぐな髪が、肩の上で大きく跳ねていたんだ。
トレーナーの首周りが伸びているのはどうしてだろう。眉間にシワが寄っているのは、いったい何故なんだろう。
その時の僕には、そんな竜ちゃんの様子がとても不可解に思えた。
「竜ちゃん、どうしたの?」
自分がスラスラと言葉を話した時、1番驚いたのは僕だった。
僕は言葉を話せない赤ちゃんだったのに、どうして突然喋れるようになったんだろう。
試しに頭を持ち上げると、簡単に起き上がる事ができた。ついでに足も動かすと、軽く布団を蹴る事もできた。
「幸樹、ごめんね」
竜ちゃんが、突然身を乗り出して僕を抱きしめてくれた。その胸に抱かれると、彼の鼓動が肌に伝わってきた。
「ねぇ僕、どうしたの?」
その時は本当に、何がなんだか分からなかった。 竜ちゃんが何故謝るのかも、自分が何故動けるようになったのかも、僕にはまったく分からなかったんだ。
「何も覚えてないのか?お前は急に倒れて意識を失ったんだ。俺があんな事をしたから、きっと息ができなくなっちゃったんだよ」
僕を抱きしめる腕に力が入ると、胸が苦しくて息ができなくなった。
その時になって、僕はようやく思い出したのだった。
僕は紙オムツをはくのが恥ずかしくて、竜ちゃんから逃げようとした。 でも途中で彼に捕まって、結局フワフワしたオムツをはかされてしまったんだ。
さっきまで僕は、自分は赤ちゃんなんだと信じきっていた。
でも、そんなはずはないのだった。
僕はれっきとした中学生だ。毎日きちんと学校へ通う、ごく普通の中学生なんだ。
僕の意識はきっと、夢と現実の狭間をさまよっていたんだと思う。
少しおかしな夢を見てしまったように思うけど、僕はちゃんと現実の世界へ戻ってきたんだ。
「もう絶対にあんな事しないから。だから俺の事、嫌いにならないで」
竜ちゃんの声が、両耳の鼓膜をわずかに揺らした。そして僕は、彼の耳に短いキスをした。
僕が意識を失った後、竜ちゃんは随分心配した事だろう。
でも僕は、ここへ戻ってきた。竜ちゃんの胸に、たしかに戻ってきた。 僕の居場所は、世界中どこを探しても絶対にここしかないんだから。
それから僕たちは、ベッドの上で絡み合った。竜ちゃんの目は、ほんの少しだけ濡れていた。
そっと唇を重ね合うと、また幸せな時間が戻ってきた。
どんな事があっても、僕は竜ちゃんが好きだった。さっきは彼の手を逃れようとしたけど、竜ちゃんを愛する気持ちに何も変わりはなかった。
大きな手が、セーターの下へそっと入り込んでくる。左の乳首をつままれると、体がわずかにブルッと震えた。
僕は両手を自由に操って、さっさとセーターを脱ぎ捨てた。
今度は右の乳首に彼の舌が触れる。すると体が熱くなり、心臓の動きがどんどん激しくなっていく。
「竜ちゃん、大好き」
さっきは言えなかった言葉が、滑らかに口から飛び出した。
閉じた瞼の向こうに、明るい光を感じる。熱くなった体が、少しずつ痺れていく。
そして遂に、彼の手がオムツの中へ入り込んだ。
僕のあそこはすでに大きくなっていた。それを知られるのは、少し恥ずかしい。だけどそれ以上に、彼の愛撫が待ち遠しかった。
「あれ?」
その時不意に、耳元で小さく彼の声がした。早くいい気持ちになりたいのに、竜ちゃんの手がオムツの中でピタッと止まった。
何が起こったのか分からずに、僕は薄っすらと目を開けた。すると彼が、僕を見つめてわずかに微笑んだ。
彼の目は透き通っていて、まるでガラス玉のようだった。そこに日差しが反射して、その目はキラキラと光を放っていた。
「幸樹、オムツが濡れてるよ」
「え?」
僕は慌ててオムツの中に手を入れた。するとそこには、たしかに濡れた感触があった。
急に頭が混乱して、頬が異常に熱くなる。
僕の意識はさっきまで、夢と現実の狭間をさまよっていた。
自分が赤ちゃんになってしまったのは、もちろん夢の中の出来事だった。 でも爽快におもらしした事だけは、紛れもない現実だったんだ。
それから僕は、竜ちゃんにオムツを交換してもらった。
ベッドの上で仰向けになり、股を大きく開いて、今度はおとなしく乾いたオムツをはかせてもらったんだ。
すごく恥ずかしかったから、その間はずっと視線を床に向けていた。
お尻がフワフワした物で包み込まれ、すぐに前の方にも同じ感触が走る。
竜ちゃんは、オムツの上から僕のあそこを優しく撫でてくれた。すると僕は、早速気持ちがよくなってきた。
これではきっと、またすぐオムツを濡らしてしまう。そうしたら、また竜ちゃんに迷惑をかける事になる。
床の上には、『合格』と書かれた紙が粉々に破れて散らばっていた。
こんな事をずっと続けていたら、竜ちゃんは志望校に合格できなくなってしまうんじゃないだろうか。
フワフワなオムツの感触を味わいながら、僕は本気で彼の事を心配していた。
END