1枚の写真
 中学1年の時の夏休み。暑かったあの日、僕は従兄弟の家へ遊びに行った。
従兄弟のたっちゃんは大学生で、狭いアパートに1人暮らしをしていた。 そして僕はその部屋でとっても恥ずかしい過去の写真を彼に見せられてしまった。
たっちゃんのアパートは田舎にあったから、窓を開けるとセミの声が聞こえた。
僕たちは2人で冷たい床の上に座り、彼のアルバムを見ながら楽しい時間を過ごしていた。
「これ、どこで撮った写真?」
僕はアルバムのページをめくるたびに新しい写真を指差してたっちゃんにそう尋ねた。
たっちゃんのアルバムには海や山で撮った写真がたくさん貼り付けてあった。彼は昔からアウトドアな人だったのだ。
「それは高校1年の夏休みだな。友達と海へキャンプに行った時の写真だよ」
「ふぅん」
たっちゃんはいつも丁寧に僕の質問に答えてくれた。
海で撮った写真には、真っ黒に日焼けしたたっちゃんの姿があった。 彼の体にはほどよく筋肉がついていて、黒い海水パンツがすごくよく似合っていた。

 その恥ずかしい写真が目の前に現れたのは、ページを5回ぐらいめくった時の事だった。
僕は初めてその写真を見た時大声を出して笑ってしまった。そこに写っているのが幼い頃の自分だとは知りもせずに。
「何これ? こんなの誰が撮ったの?」
僕が指差した写真は、背景が海だった。そこに写っているたっちゃんはまだ小学生ぐらいだった。
真っ黒に日焼けしたたっちゃんは写真の中で男の子の赤ん坊を抱き、その赤ん坊はカメラに向かって放尿していた。
悪びれもせずに放尿している赤ん坊はカメラ目線だった。男の子はたっちゃんの膝の上に乗っけられ、彼の手によって両足を大きく開かれていた。そして開いた足の間にあるちっぽけな物から水を発射していた。
僕がその写真を見て笑うと、僕の横でたっちゃんが小さくため息をついた。そしてたっちゃんの細い指が遠慮がちにパタン、とアルバムを閉じた。
「俺が抱いてるのは、お前だぞ」
彼に真顔でそう言われた時、僕は頬がカッと熱くなった。

 僕はそれから急に無口になり、眠たいフリをしてベッドに横になった。
たっちゃんのアパートは狭いので、僕たちはお互いに背を向けて1つのベッドに横になった。
僕は早く眠ってしまいたかったから、布団をかぶってすぐにきつく目を閉じた。

*   *   *

 翌日、僕はたっちゃんと映画を見に行った。
田舎の映画館はすごく小さくてびっくりしたけど、映画はとてもおもしろかった。
でも僕は肝心な時におしっこがしたくなってしまった。
それは映画が終わる少し前の事だった。ちょうど黒いマントを羽織ったヒーローが悪い連中をやっつけている1番いい場面の時だった。
僕は本当は最後までちゃんと映画を見たかった。でもどうしても尿意を堪えきれなくなり、泣く泣く席を立った。

 僕はさっさと用を足して席に戻りたかった。
だけど田舎の映画館にはトイレが1つしかなくて、しかもそこは使用中になっていた。
狭い廊下を見回してもトイレと書かれたドアは1つしかなかった。そんなわけで、僕はそこが空くまで待つ以外に方法がなかった。
でも、トイレに入っている人はなかなか出てきてくれなかった。 僕は何度も白いドアをノックしたけど、そのたびにのんびりしたノックがドアの向こうから返ってきた。
「漏れそう……」
ドアの前でしばらく待っていると、我慢の限界が近づいてきた。
僕はおしっこが漏れないように股間を手で押さえ、誰もいない廊下をウロウロと歩き回った。
それでもまだトイレは空かなかった。やがて僕は股間を押さえる手の下でほんの少しだけパンツが生温かくなるのを感じた。

 やばい。僕は冷や汗をかきながらもう一度周りを見回した。その時、廊下には誰もいなかった。
僕はもう廊下でおしっこをしてしまおうかと考えた。
今ならまだ間に合うと思った。その時僕がパンツに漏らしたのは少量のおしっこだけだったから。
「もうやっちゃおう」
僕はそうつぶやいてジーンズのジッパーを下ろし始めた。するとその時、劇場の重いドアが内側から開いてそこからたっちゃんが顔を出した。
「お前、何してるんだ?」
たっちゃんは慌てて僕に駆け寄った。その時彼は僕が困っている事にすぐ気づいたようだった。
「もう漏れそう」
僕はたっちゃんの顔を見て一応そう言った。本当はその時もう少しだけ漏らしていたわけだけど。
「こっちだ」
その時、たっちゃんの大きな手が僕の腕をつかんだ。
短い廊下の片方の壁は全体が厚手の黒いカーテンで覆われていた。たっちゃんはそのカーテンを勢いよく開け、その向こうにあった白いドアを思い切り蹴った。
そのドアを開けると、目の前に洗面台があった。僕は洗面台の鏡に映る自分とすぐに目が合った。
そこはすごく狭くて、たっちゃんと僕が立ったらほとんど身動きできないほど小さなスペースだった。そこはオレンジ色の淡い光で照らされていた。
「あと10秒我慢しろ」
たっちゃんは大急ぎで僕のジーンズを剥ぎ取り、それを自分の肩にかけた。
下半身が丸出しになった僕はとっくに限界を超えていて、白いタイルの床にポタポタと水の雫をこぼしてしまった。
ここならたっちゃんと2人切りだし、もう漏らしちゃってもいいな。
そう思った時、突然たっちゃんが信じられないような行動を起こした。彼は僕の両足を開いてひょいと抱きかかえ、小さくこう囁いたんだ。
「人が来る前に早くやっちゃえよ」
そう言われても、そう簡単にはいかなかった。
僕はその時大股開いてたっちゃんに抱きかかえられ、しかも鏡に映る自分と目が合っていた。そしてもちろんたっちゃんも鏡の中の僕を見つめていた。
「嫌だ。下ろして」
僕はあまりの恥ずかしさに尿意も忘れてそう叫んでいた。
鏡の中の自分は、アルバムに貼ってあった写真の中の自分とまったく同じだった。
「いいから。洗面台の上にやっちゃえよ」
たっちゃんは早口で僕にそう言った。たしかに洗面台の上をめがけて放尿すれば、トイレの代わりにはなりそうだった。
「嫌だ……」
僕は本気でそう言った。鏡に映る自分の姿に耐えられず、本気でそう言った。
でもその思いとは裏腹に、あそこから勝手におしっこが放出されてしまった。
勢いよく飛び出したおしっこはシーッと音を立てて空中で放物線を描いた。 そして最後には洗面台の排水溝に黄色い水がどんどん流れ落ちていった。
鏡の中の自分を見るとすごくみじめだった。 中学生にもなって赤ちゃんスタイルでおしっこをさせてもらうなんて、それはひどい屈辱だった。
でも自分ではもうどうしようもなかった。
おしっこを途中で止める事なんか絶対にできそうにはなかったし、その時の僕にできる事は早くおしっこを済ませてたっちゃんに離してもらう事だけだった。
早く終わらせちゃおう。
僕はそう決意してお腹に力を込めた。するとおしっこの勢いが増し、シーッという音が一段と大きくなった。

 あれ? ちゃんと洗面台に向かっておしっこしてるのに、どうしてこんなにパンツが濡れてるんだろう。
そう思った時は、もう本当に遅かった。
寝る前にあんな写真を見せられたせいで、どうやら僕は夢を見てしまったらしい。
目を開けると、たっちゃんの部屋の白い天井が薄っすらと見えた。僕はその夜、彼のベッドでたっぷりオネショをしてしまった。
END

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