BIG BABY
午前1時。だいたいいつもの時間だ。隣で眠るお兄ちゃんは僕に背を向けて寝息をたてている。
彼はいつもながらに寝相が悪い。毛布を蹴って、背中を半分出して、しかも頭は枕からずり落ちている。
仕事で疲れてるのにごめんね。
僕は心の中でそう言いながらお兄ちゃんの背中をツン、と人差し指で突いた。 すると彼は薄闇の中で寝返りを打ち、僕の方へと体を向けた。
「漏らしちゃった?」
お兄ちゃんは眠たい目をしてそう言った。 僕がうなずくと、彼はけだるそうにベッドの上へ起き上がった。
「ごめんね、お兄ちゃん」
僕は遠慮がちにそう言って仰向けになった。するとお兄ちゃんは寝癖がついた髪をボリボリかきながら軽く微笑んだ。
痩せっぽちなお兄ちゃん。僕は最近、父さんからお兄ちゃんによく似てると言われるようになった。
「今オムツを換えてあげるからね」
彼は僕の頭の上にあるタッチライトに触れ、ベッドの上に淡いオレンジ色の光をもたらした。
僕はこの時、いつもドキドキしてしまう。
これはもうずっと続けてきた事だから、この後彼がどうするかは手に取るように分かる。
お兄ちゃんはベッドの下へ手を伸ばして新しい紙オムツを取り出す。
それから僕は彼の手でパジャマのズボンを下ろされてしまう。そしてTシャツの裾をまくり上げられる。
その後に聞こえてくるのは、紙オムツのテープを剥がす音。
そしてたっぷり濡れたオムツを剥ぎ取られると、僕の下半身は急に涼しくなってしまう。
僕はその間、光の届かない天井をじっと見つめている。
「ちょっと我慢してね」
僕はその声が耳に入ると、シーツの端をぎゅっと握り締めてきつく目を閉じる。
その後は、待ちに待った瞬間がやってくる。
お兄ちゃんは僕の両足を折り曲げて開かせ、ウェットティッシュで僕の濡れた皮膚を丁寧に拭いてくれる。
冷たいウェットティッシュが初めて肌に触れる時、僕は奥歯を噛み締めてそのひんやりした感触に耐える。
最初はお尻の方が冷たくなり、それから少しずつ冷たい感触が上の方へと移動する。
そして最後にそのひんやりした物は僕の1番敏感な部分に触れる。
その時僕の体中に耐えがたい快感の波が押し寄せ、再び奥歯を噛み締めて声が出そうになるのを必死で堪える。
僕の頭の中は真っ白になり、この時瞼の裏側にチカチカする星のようなものが見える。
そして、時々堪えきれずに僕の口から甘い吐息が漏れてしまう。
「あっ……」
お兄ちゃんは、最近やたらと丁寧にこの作業をやってくれるようになった。
彼はもしかして、僕が感じている事に気付いているのかもしれない。この時僕のものはいつも硬くなっているから。 たしかに気付かれてもしかたがない。
気付いているなら、もっと僕をかわいがってくれればいいのに。本当は、お兄ちゃんの手でいかせてほしいのに。
それとも、お兄ちゃんはまだ僕の事を本物の赤ちゃんだと思っているのかな。本当の僕は、結構大人だと思うんだけど。
僕はママの顔を知らない。ママは僕が生まれてすぐに交通事故で死んでしまったからだ。
そんな事情もあって、僕はほとんど8歳年上のお兄ちゃんに育てられたようなものだ。
お兄ちゃんはきっと僕の記憶がない時から毎日こうしてオムツを換えてくれた。
そして僕は中学生になった今でもお兄ちゃんに世話になりっぱなしだ。
優しいお兄ちゃんは毎晩こうして嫌な顔もせずにオネショの処理をしてくれる。 それは僕が赤ちゃんだった頃から13歳になった今もずっと続いている。
お兄ちゃんは僕のオムツを新しい物に換えた後、きちんとパジャマのズボンを履かせてくれる。
この時僕はスッキリするけど、それと同時にお楽しみの時間が終わってちょっと切なくなる。
僕はその後、やっと目を開ける。
やがて僕の体に毛布が掛けられ、ベッドの上を照らすオレンジ色の光が途絶えた。
お兄ちゃんは今度はしっかり枕に頭を乗せて僕の横へ寝転がる。それからぎゅっと僕を抱き寄せてくれる。
その後彼は必ず僕の鼻をツン、と突き、白い歯を見せてにっこり笑うんだ。
「おやすみ、大きな赤ちゃん」
お兄ちゃんはそう言った後またすぐに眠ってしまう。
僕はちょっと寂しくて彼に寄り添うけど、お兄ちゃんはもう決して朝まで目を覚まさない。
それが分かっているから、僕もしかたなく目を閉じた。
僕は目を閉じてウトウトしながらいつも同じ事を考える。
お兄ちゃんに本当の事を言ったら、怒るかな。
僕は最近、オムツを濡らす前に目が覚めるようになった。
でも、どうしてもオネショがやめられない。長い間続けてきた楽しみをどうしても捨てる事ができない。
小学生の頃は、早くオネショを治したいと思っていた。 それなのに、僕の気持ちはいつ変化してしまったんだろう。あのひんやりした感触が快感に変わったのは、いったいいつだっただろう。
ごめんねお兄ちゃん。本当はお兄ちゃんをもっとゆっくり寝かせてあげたいんだ。 でも、あれはお兄ちゃんにしかできない。お兄ちゃんじゃないと意味がない。
だから、僕はもう少しの間大きな赤ちゃんでいたいと思う。
お兄ちゃんが僕を大人として扱ってくれるまで。お兄ちゃんが僕の恋人に変わるその日まで。
END