after……
先週、私は17歳の誕生日を迎えた。
お母さんは、私のことをお姉さんの生まれ変わりだと信じていて、この歳で亡くなったという事を
思い出して泣いていた。
(今の私は私で、お母さんのお姉さんじゃないのに……)
私がその事を怒って石渡くんに話すと、
「お母さんにも色々な思いがあるんだよ、みずえちゃんは面白くないかもしれないけどね……でもね、
みずえちゃんが元気に育っていることを、一番喜んでいるのはお母さんなんだよ」
と言って、なんだか寂しそうに微笑んだ。
「そうだけど、でもみんなそういう風に見るから……私はお姉ちゃんの代わり?」
この言葉を言ったとき、私は生まれて初めて本気で後悔した。
「そうじゃない、そうじゃないんだよ……」
そう呟きながら私を見つめる、ひどく悲しげな瞳に私の胸がズキンと痛んだ。
「みずえちゃん……人は本当に愛おしい人と分かれたとき、もう一度出会いたいと思うんだよ。二度と
会えないとわかっていてもね……今はまだ解らないと思うけど」
「うん……ごめんなさい」
「いや、謝ることは無いよ。でもね…出来ればお母さん達には言って欲しくないんだ…その言葉は」
「わかった、言わないよ」
「ありがとう…ゴメンね、みずえちゃんはみずえちゃんなのに……」
そう言って、私をいたわるように優しく頭を撫でてくれた。
大きな手で私を癒してくれる、小さな頃から石綿くんにこうしてもらうのが大好きだった。
石綿くんは、私の両親の元同級生で、家によく遊びに来るお兄ちゃんみたいな優しい人。
お父さんと同じ歳だから、この間ふざけて「石綿のオジサン」って言ったら、本当に泣きそうな顔を
されてしまい、今でも「石綿くん」と呼んでる。
(私が年上を君で呼ぶのは、今では石綿くんだけ。あのとき、私は本当に驚いた)
石綿くんは学生の頃、お母さんのお姉ちゃんの霊(前世の私?)に恋をしていたらしい。
少し前に、本当の話なのか知りたくて聞いてみたら、
「うん、本当だよ。でもね…もう会えない思い出の人だから……」
と優しく微笑んで言った。
少し悪いことを聞いたかなと思って私がシュンとしていると
「だけど、今のみずえちゃんも妹みたいで大好きだよ」
と言って、今日と同じように頭を優しく撫でながら笑ってくれた。
私は、17歳にもなって頭を撫でてもらい、それを喜ぶ気恥ずかしさを、誤魔化すようにじゃれついた。
ふざけているうちに、私は思わず「石綿のお兄ちゃん、だ〜い好き」と抱きついてしまった。
「………」
「………」
お互いに黙ってしまい、気まずい雰囲気に包まれていると、石綿くんが優しく抱き締めてきた。
「みずえちゃん」
「あ……石綿くん」
石綿くんの身体から心地よいぬくもりを感じると、私はゆったりとした安心感に包まれた。
(…石綿くん…大好き)
私の心の中に何か暖かいものが拡がるのを感じた。
それが何なのか今の私には解らないけど、石綿くんとただこうしているだけでとても嬉しかった。
この時から、石綿くんを思う私の気持ちが変わっていった……
その後、私の思いが石綿くんへの恋に変わるのに時間はかからず、私は彼に告白した……
最初は自分みたいなオジサンでなくてもと渋ったが、私の思いを喜んで受けてくれた。
親子ほど歳が違う私達だったが、お付合いは順調に進み、2年後に高校を卒業した私と石綿さんは結婚した。
………私は今、自分が生まれ変わりでもいいと思っている。なぜなら、彼と出会えて幸せになれたのだから。