白鐘双樹、白鐘沙羅の姉妹は俺の恋人たちである。
これは冗談でもなんでもなく事実である。
しかし、恋人公認の二股というのも少し違う。
というか、彼女らから二股をかけてくれと言ってきたわけなんだ。
公認というか、希望というか。
まあ、最初はそりゃ慌てたさ。
存在しか知らなかった、学校では有名な美少女双子姉妹がいきなり付き合ってくれときたもんだ。
だけど、今では三角関係の矢印はどこを指しても双方向。
相思相愛……三思三愛なんて造語をつくっちゃうさ。
俺たちはこのまま順調に愛を育んでいけると思っていた。
しかし、世界の修正なのか。周りは幸せ者を放ってはいてくれないのだった。
俺たちが三人で恋人付き合いをしていることは、すぐに学校中に知れ渡った。
俺はともかくとして、先にも述べたが彼女らは美少女双子姉妹として非常に有名だったからだ。
アイドルともいえる彼女らがいっぺんに、しかも同じ男と付き合うことになったのだから当たり前と言えば言える。
有名になると、注目される上にやっかみなるこの上なく厄介なものも漏れなくついてくる。
代表的なものが根拠の無い噂だ。
曰く、白鐘姉妹は俺に弱みを握られていて、むりやり俺と付き合っている。
まあ、惚れた弱みってやつは握っているかもしれん。お互いに。
曰く、すでにCまで進んでいて、同時にシテいる。
これは表ざたにはできないが事実だからここでは触れない。
そして、俺たちの間にちょっとした騒動を巻き起こした噂がこれだ。
曰く、『俺の本命は姉妹のどちらかで、もう片方とはお情けで付き合っている』
ある放課後。部活が久々の休みなので、俺は教室で友人たちと雑談をしていた。
そこへ、級友が俺を呼んだ。
「お兄さん、お呼びだぜ」
ニンマリとでも言えば良いか。そんな笑みを浮かべたそいつの頭を軽くはたき、礼を言って廊下へ出る。
級友らが俺をあのように呼ぶとき、その相手は決まっている。
「こんにちわ、お兄さん」
白鐘双樹。俺の恋人、白鐘姉妹の姉である。
「おす、双樹ちゃん」
俺はある意味、この娘の笑顔が苦手だ。なぜなら、ともすれば緩みきった笑みを浮かべてしまうからだ。
鼻の下が伸びないよう、気合の入った笑顔で応える。
「どうしたの? 今日は何か用事があるんじゃなかったっけ?」
俺と彼女らは用事が無い限り大概一緒に帰っている。
俺と沙羅ちゃんは部活、双樹ちゃんは沙羅ちゃんの付き添いで、帰る時間は同じであるからだ。
だけど、昨日下校時の会話で、二人は何がしかの用事があるようだったので、今日は一緒に帰れないはずだったが。
「はい。でも双樹のほうは終わったんで、もしお兄さんがよかったら沙羅ちゃんのところに行きませんか?」
「ああ、かまわないよ」
友情より愛情を取るのか、とわざとらしくむせび泣く友人らに、にっこりと当たり前だろと別れを告げ、独り
身どもの怨嗟の悲鳴を尻目に俺たちは美術室へ向かった。
沙羅ちゃんは美術部に所属している。
俺も数えるほどしか見たことは無いけど、彼女の実力はなかなかのものだと思う。
俺のような美的感覚のかけらも無い素人が、恋人というひいき目を抜きにしても、だ。
そんな沙羅ちゃんが一番多く題材としているのが、双子の姉双樹ちゃんである。
沙羅ちゃんは、双樹ちゃんも絵を描くのも好きなのだから、それも頷けるというものだ。
残念ながら俺はまだ描いてもらっていないので、ちょっと寂しかったりする。
さて、美術室に着き、俺たちが入ると、何でだか沙羅ちゃんしかいなかった。
「ヘイ、沙羅ちゃん。なぜに君は一人なのさ」
珍妙な言い回しで尋ねると、双樹ちゃんはクスクスと笑い、沙羅ちゃんは呆れたような顔で応えてくれた。
「……今日は部活休みだからな」
「ほう。なら、なぜに君はキャンバスに向かっているのさ」
言う俺にカンバスだ、と訂正する。どうやらこだわりがあるらしい。どっちも正しいのに。
「別に私は部活だから絵を描いてるわけじゃない。描きたいときに描くんだ」
その心はすでに画家である沙羅ちゃんだった。
感心して美術室を見渡すと、沙羅ちゃんの前には何も無かった。何を描くつもりなんだろう?
訝しがる俺に、沙羅ちゃんが心なしかいつもより優しげな声で言った。
「おまえと、双樹を描きたいんだ。そこに座って」
俺と双樹ちゃんを? おお、そうか。とうとう俺を描いてくれるのか。
「やったぁ! お兄さんと一緒だ」
このとき俺は、嬉しさのあまり沙羅ちゃんの選択に気づいていなかったんだ。
構図は、イスに腰掛ける俺の腿に双樹ちゃんが座るという形に落ち着いた。
そうして待つこと二時間ほどだろうか。木炭でデッサンをしていた沙羅ちゃんが、手を休めた。
「下書きが終わったから、絵の具を用意するまで休憩していいよ」
「ん、了解。しっかし、モデルがこんなにつらいものだったとは」
「あはは、お兄さんじっとしているの好きじゃないもんね」
まあ、それもあるんだけど。
「いくら双樹ちゃんが軽くても、長い間乗られてるとさすがにしびれてくるよ」
腕枕したときみたいにね、と付け加えると、二人して真っ赤になってしまった。(前作参照のこと)
真っ赤になったままの沙羅ちゃんがガチャガチャと画材の準備をしている。
ちょっと興味があったので近寄って見ると、それらは全てかなり使い込まれているようだった。
パレットには様々な色が乗っていて、絵の具も……ん?
「あ、これ俺がプレゼントしたやつだね」
この絵の具は彼女らの誕生日に、沙羅ちゃんへあげたものだ。(これまた前作参照)
「あ、ああ。もらったからには使わないとな」
「そっか、嬉しいよ。誕生日プレゼントに消耗品をあげるってのはどうかと思ってたけど、使ってくれれば甲斐
があったってもんだ」
「ふふふ。でも、沙羅ちゃんてば、最初使うか迷ってたんですよ」
「あ、双樹!」
俺が眉をひそめて二人を見やると、双樹ちゃんが笑っていた。
「使おうか、それとも取っておこうかって?」
「……そうだよ。なんか、もったいない気がして」
ふてくされた顔で沙羅ちゃんがそっぽ向き、双樹ちゃんがまた笑う。
俺たちがいると、だいたいこうなる。それがとても楽しいんだ。
これがいつまでも続くと、そう思っていたんだけど……。
沙羅ちゃんが絵の具を使用しはじめて一時間ほど。時刻は六時近くになっている。
今は夏だから最終下校時刻は七時。あと一時間ぐらいかと気づいたときに、沙羅ちゃんに尋ねてみた。
「なあ、沙羅ちゃん。そういや、なんで俺を、っつーか、俺も描いてくれる気になったの?」
「どういう意味ですか?」
いきなりの俺の質問に、双樹ちゃんが俺を見上げた。
「ほら、先週だっけ。俺も描いて欲しいなーって言ったら、描いてくれなかったじゃないか」
「そう言えば、そんなこと言ってましたよね」
「でしょ。嬉しいんだけどさ、なんか急だなって思って。で、何か心境の変化でもあったの、沙羅ちゃん?」
沙羅ちゃんを見やると、気のせいか、無表情を装って筆を動かしているように見えた。
「……別に、描いてもいいかな、って思っただけだ」
「そう思ったきっかけみたいなのはないの?」
「……」
「沙羅ちゃん?」
黙ってしまった沙羅ちゃんの顔を双樹ちゃんが伺うようにする。
「双樹、動くな」
「う、うん……」
なんだろう。やっぱり少し変だ。
俺の質問で場の雰囲気は冷めてしまい、時計の針の動く音しかしなかった。
すごく気まずいんだけど、それでも俺は気になったんだ。
「沙羅ちゃん」
「……」
俺の問い詰める言葉の強さに、沙羅ちゃんは筆を置いた。
その思いつめたような雰囲気に、俺と双樹ちゃんは沙羅ちゃんの隣に腰を下ろした。
何やら言いづらそうに俯いていた沙羅ちゃんだが、決心した表情をあげた。
「もう、終わりにしないか?」
一瞬なんのことなんだかわからなかった。何せ主語がなかったからな。
でも、すぐに俺たちの関係のことなんだと気づいた。
「な、何言ってるの、沙羅ちゃん!?」
俺が声を出す前に、双樹ちゃんが叫んだ。
「もともと無理があったんだよ、三人で恋人付き合いなんて」
どこを見ているのだか。沙羅ちゃんは俺も双樹ちゃんも見ていなかった。
「私は双樹のオマケだったんだから、別にいいんだ」
「そんなのだめだよ! 三人一緒じゃないと、だめなの!」
双樹ちゃんが沙羅ちゃんにすがりつく。それでも沙羅ちゃんは頑なだ。
「これでいいんだよ、双樹。おかしかったことが正常な形に戻るんだから」
そんな沙羅ちゃんに何か感じたのか。双樹ちゃんが沙羅ちゃんの目をじっと見る。
「……沙羅ちゃん、それ、本当に沙羅ちゃんの考えなの?」
「……」
「誰かに、何か言われたんじゃないの?」
双樹ちゃんの目の圧力に、沙羅ちゃんは負けた。ちなみに俺も双樹ちゃんには全敗中だ。
「私はいいんだ、別に。でも、双樹が陰で何か言われるのが我慢できない」
沙羅ちゃんが吐き出すように続ける。
彼女の友人が、噂を聞きつけたのだという。
簡潔に言えば、俺が姉妹のどちらかが好きなんだけど、三人で付き合ってくれということだったから、
それを隠していやいや付き合っている、という噂だ。
「双樹の想いが穢される、っていうのかな。嫌なんだ。双樹がどれだけ好きなのか知っているから」
俺をチラと見る。目が合ったのは一瞬だったけど、なんだかその目はいつもの沙羅ちゃんじゃない。
「だから、少なくとも私がいなくなれば噂はなくなるだろうって思ったんだ」
沙羅ちゃんの独白が終わり、美術室にはまたカチカチと音が響く。
「沙羅ちゃんは三人で過ごした時間は、楽しくなかった?」
「……楽しかったよ」
膝の上でギュッと手を握り、沙羅ちゃんから目をそらさず、問いかける双樹ちゃん。
「お兄さんのことが、好きになれなかった?」
「……双樹ほどじゃないけど、今は好きだよ」
今の答えはちょっと複雑。
「お兄さんに抱かれたとき、どんな気持ちだった?
私がお兄さんに取られちゃうのが嫌だって理由だけで抱かれたの?」
「……そんなこと、ない。少なくとも、その……あげてもいいぐらいには好きだった」
女の子の気持ちは俺にはわからんけど、それってかなりのレベルの好意なんじゃないか?
「だったらどうして、お兄さんから離れようとするの?」
「……」
それまで言いよどんではいたものの、質問には答えていた沙羅ちゃんがつまった。
でもやっぱり、双樹ちゃんには勝てないんだろう。
「沙羅ちゃん」
「……私は双樹が幸せならそれでいいんだ。私がいなくなればコイツを占有できるんだから、いいじゃないか」
「沙羅ちゃん! 私がそれで喜ぶと思ってるの!?」
めずらしく声を張り上げる双樹ちゃん。
このまま放っておいたら、沙羅ちゃんをひっぱいてしまうかもしれないと思わせるほどの剣幕だ。
だけど沙羅ちゃんはやはり頑なで、というより意固地になっているのかもしれない。
「もう決めたんだ。それに、コイツだって何も言わないんだから納得してるんじゃないのか」
と、俺のほうを見やる。
「お兄さん、何か言ってください」
「俺? 何かって、沙羅ちゃんのことについてか?」
「はい、お兄さんは沙羅ちゃんが離れていってもいいんですか?」
「沙羅ちゃんが決めたことなら、俺がとやかく言うことはないよ」
俺の言葉に、二人とも驚いた顔をする。驚いた顔はすぐにショックを受けた顔になった。
「お兄さん……」
「コイツもこう言ってるんだ。だから、いいじゃないか。それに、私より双樹のほうが付き合いやすいだろ」
意固地でもないな、自棄になってるってのが正しそうだ。
「この絵は今日を最後に付き合いをやめようって思ったから、記念に描こうって思ったのかな?」
俺が絵を覗き込みながら尋ねると、沙羅ちゃんは暗い表情で頷いた。
絵は確かに上手い。だけど、な。
「ふーん……なら、いらねーや」
そう言うと、泣きそうな顔で俺を見ていた双樹ちゃんも、うなだれていた沙羅ちゃんも、目を見開いた。
「もう、沙羅ちゃんの言いたいことも、双樹ちゃんの言いたいこともないかな?
だったら俺の言いたいことを言うぜ」
「え? で、でもとやかく言うことはないって……」
「沙羅ちゃんが決めたんだったら、よく考えたんだろ。だったら、それについては俺は言うことはない。
今から言うのは俺の意見だよ。それを聞いて沙羅ちゃんが意見を変えようが変えまいが、それは自由だよ」
改めて腰をかけなおし、二人に向き直る。
「あの……お兄さん怒ってる?」
む、語尾がちょっと強かったのがバレたか。
「んー、まあ怒ってるっちゃ怒ってるかな。俺に」
「自分に?」
「そ、俺に。なんつーか、沙羅ちゃんにそんなこと考えさせちゃったんなら、俺の器が足りてないのかなって」
二人と付き合うなんて、相応の器でないと難しいんだと常々思っていた。
まあ、失敬な言い方をすれば二人を同じように満足させられるか、ってことだろうか。
それができてなかったんだなって、悔しいのと同時に情けない。
沙羅ちゃんを見ると涙ぐんだ目でこちらを見ていて、小さくそんなことない、と呟いたようだった。
「誰に何言われても動じないぐらいに俺に惚れさせてやれなかったんだなって。……凄いこと言ったな、俺」
呆気に取られている二人だった。俺も自分で言って呆れたぞ。
「ま、それはともかくだ。とやかく言わないと入ったけど、間違いは直したほうがいいよな。
沙羅ちゃんが離れたら噂が消えるかっていったらそんなことはないぞ。今度は別の噂が流れるし。
それも沙羅ちゃんに同情的で、双樹ちゃんに攻撃的なのが」
「な、なんで!?」
それは考えてなかったのか、沙羅ちゃんは妙に焦っていた。
「そりゃ、周りがどう見るかって言ったらさ、双樹ちゃんが沙羅ちゃんから俺を奪ったように映るだろうさ」
黙ってしまった沙羅ちゃん。考えが浅かったようだね。
「そうなったら、双樹ちゃんにも沙羅ちゃんにもつらいんじゃないか?」
「そんな……だったらどうすれば……」
「そりゃ、君が決めることだよ。噂なんて七十五日すれば無くだろうけどさ」
うつむいてしまった沙羅ちゃんの肩を双樹ちゃんが抱きしめる。つらそうだな、二人とも。
「まあ、またさておきだ。嫌だぞ、俺は。沙羅ちゃんがいないのって」
あごに手をやって、沙羅ちゃんの顔を上げさせ言ってやる。
「俺たちにからかわれてふてくされたり、
双樹ちゃんと手をつないでる俺におずおずと手を差し出してきて、
いつまでたってもキスすると真っ赤になっちゃって」
思い出して笑う俺を、涙ながらに睨みつける沙羅ちゃん。その隣では双樹ちゃんも笑みを浮かべている。
「俺は嫌だぞ。そんな沙羅ちゃんがいないのは、嫌だ」
「なんて、ワガママ」
もう堤防が決壊しそうな瞳をぬぐってやると、沙羅ちゃんは俺に抱きついてきた。
「そ、俺ワガママなの。知らなかった?」
ポンポンと頭を叩いてやる。子供みたいだ。
そんな俺たちを慈愛に満ちた表情で見つめる双樹ちゃん。ちょいちょいと手招きをしてやる。
双樹ちゃんは実は自分を押し殺してしまうところがあるからな。
そんな双樹ちゃんも、俺は抱きしめる。
「もちろん、一緒に沙羅ちゃんをからかったり、俺と会うと花が咲いたように笑ってくれて、
俺までつられて笑っちゃって、キスするととろけたような顔になっちゃう」
双樹ちゃんの堤防はもう決壊していた。
「これだけは言っておく。というか、むしろ誓いかな。
双樹ちゃんより沙羅ちゃんが、沙羅ちゃんより双樹ちゃんが好きだなんてことはない」
あの噂には 失敬なと言いたい。
俺は二人を差がつけられないほどに愛しているし、二人にイカレてしまっている。
それぞれ長所も短所もあるし、直して欲しいと思うところもないわけではない。
だけど、俺は声を大にして叫ぶことができる。そういったもの全て含めて、
「俺は白鐘双樹、白鐘沙羅を愛している。だから、俺がどれだけ二人のこと好きなのか、わからせてやる」
電気を消し、俺たち三人は教壇の影に息を潜めて隠れている。
しばらくして見回りに来た教師をやり過ごし教壇から出ると、もはや外は暗くなっていた。
「ま、これぐらい明るけりゃ問題ないか」
夏とはいえ七時にもなると真っ暗だ。でも、ライトも月明かりもあるので明かりは十分だ。
「あ、あのお兄さん」
「本当に、ここで?」
二人とも緊張しているようだ。それこそ、俺たちの初めての夜の時ように。
「ああ。今、俺たちの気持ちが再確認できたここでするのは、意味があると思うんだ」
美術室の窓際、明るい場所に腰を下ろす。
いつもどおり、二人が俺の両隣に座ってくれている。
ちなみに、ここでする理由なんて、ホントはどうでもよかった。
俺がしたいってのが、本音なんだと思う。もしかしたら俺もわかっていないのかもしれない。
「さて、と。今日は……変なこと言い出しだ沙羅ちゃんへのお仕置きと、ハラハラさせた双樹ちゃんにお詫びをするか」
笑って言ってやると、沙羅ちゃんが引きつった顔になった。
「んーと、まず……よっと」
「わ、何すんだ、バカ!」
む、バカとはひどいな。ただ沙羅ちゃんの胸のリボンを解いただけなのに。
ちょっとムッとした俺は、無言で沙羅ちゃんの後ろに回り、後ろ手に軽く縛った。
「こら、何するんだ、バカ! ヘンタイ!」
「ぬふふ、そんなこと言っていいのかな?」
「あ、あのお兄さん。あまり手荒なことは……」
おずおずと双樹ちゃんが俺に言ってくる。
「大丈夫だって。可愛い恋人に手荒なことはしないってば。ちょーっとイジメちゃうけどね」
ニヒヒってな感じで笑うと、沙羅ちゃんはまた顔が引きつった。
「な、何するんだよ……」
うーむ、普段気の強い沙羅ちゃんが気弱になっている姿は胸キュンだな。
「何もしないよ」
『え?』
「沙羅ちゃんはそこで、俺と双樹ちゃんを見てるだけ」
言って、俺は双樹ちゃんを抱き寄せてキスをする。
最初は触れるだけ、そして次第に深くする。
「ん……ちゅ」
驚いていた双樹ちゃんも、舌が差し込まれるとそれに応じてくる。
しばらくお互いの舌の感触を味わってから離れると、沙羅ちゃんが真っ赤になって俺たちを見ていた。
「ん……はあ、お兄さん?」
トロンと顔のまま、何か聞きたそうな双樹ちゃんだが、俺は何も言わずに胸のリボンを解く。
そして双樹ちゃんを俺の脚の間に座らせ、沙羅ちゃんと向き合うような体勢にする。
よし、完成だ。
裾から手を差し込み、制服をたくし上げると、双樹ちゃんのブラが露になる。
「お、お兄さん!?」
「お、お前何するんだよ!?」
さすがに恥ずかしくなってきたのか、二人が叫ぶ。
「何をするって、俺と双樹ちゃんがHするのを、沙羅ちゃんが見るんだよ」
ま、つまるところ羞恥プレイと放置プレイかな。
フロントホックの双樹ちゃんのブラを外す。正直者の俺には失礼ながら、大きいとはいえない胸が現れる。
双樹ちゃんの胸だし、可愛いから全然気にしないけどな。
「ひう……お兄さぁん」
恥ずかしそうに俺を見上げる双樹ちゃん。さすがに三人でHしたとはいえ、この状況は恥ずかしいだろうね。
だけど、それが目的の俺には止める気は欠片もないんだ、諦めなさい。
抵抗しても無駄と悟ったか、諦めたのか。
されるがままになっている双樹ちゃんの首筋にキスをして、舌先で舐めると同時に胸を揉みしだく。
「うぅ……ふん……」
抱き合っていた頃からなのか、それともキスをしてからか、すでに双樹ちゃんの乳首は硬くなっていた。
乳房を搾るようにしながら、キュッキュッってな感じに乳首を刺激すると双樹ちゃんはビクッと震えた。
「ひゃう……お兄さん、それ気持ちいいです」
鼻にかかったような声。艶があるとでも言うのか、こんな声を聞いた日には我慢できるもんじゃない。
俺は双樹ちゃんの胸を揉みながら、モノを双樹ちゃんのお尻に擦りつける。
服越しだけど、柔らかい感触が伝わってきてボルテージアップ!
「お兄さんの……硬くなってます」
「うん、双樹ちゃんが可愛いからね」
耳元で言ってそのまま耳たぶを甘噛みする。
「あう……」
また双樹ちゃんはビクッと震える。気をよくした俺はさらに刺激を与え続けた。
さて、沙羅ちゃんはと言うと、だ。
「……」
俺と双樹ちゃんの痴態を目を丸くしてマジマジと見ている。
さらに、モジモジと太ももを擦りあわせている。
エロ本で読んだだけの知識なんだけど、上手くいったのかもしれない。
おそらく沙羅ちゃんは自分で触りたいけどできないでいる状態だろう、多分。
後ろ手に縛られている状態じゃ、それぐらいしかできないだろうからな。
俺は沙羅ちゃんをあえて無視して、双樹ちゃんの下着に手を差し込んだ。
「んっ……ふぅ……!」
入り口を触ると、クチュと湿った感触が伝わってくる。
「双樹ちゃんて、やっぱりHだ」
「うぅぅ、お兄さんいじわるです」
ささやいてあげると、顔を真っ赤にしてしまう双樹ちゃんはとても可愛い。
そんな双樹ちゃんがもっと見たくて、膣の中に指を指し込み、出し入れをする。
「あっ、やぁん!」
快感が強いのだろうか、身をよじる双樹ちゃんを押さえつけながら、刺激を続ける。
「ふぁっ、んぅ……お、お兄さん、双樹、もう……」
潤んだ瞳で懇願してくる双樹ちゃんに、俺も我慢できなくなった。
擦りつけていたモノを取り出し、双樹ちゃんの腰を持ち上げて下着を脱がせてあげる。
「双樹ちゃん、沙羅ちゃんによーく見せてあげようね」
「えっ!? あっ、お、お兄さん待っ……ああっ!」
「……っ!」
双樹ちゃんの願いむなしく、俺のモノは双樹ちゃんに突き刺さったのだった。
「は……あ……沙羅ちゃぁん」
「は、入ってる……」
俺のモノがピッタリと双樹ちゃんにはまっている(ちょいとお下品)。
それは沙羅ちゃんからよーく見えているはずだ。
何せ見やすいようにスカートをめくってから入れたからね。
さらに双樹ちゃんが脚を閉じないように、俺の脚で支えているし。
「お兄さん、恥ずかしいです……」
「この、お前、何でこんな……!」
双樹ちゃんは恥ずかしがり、沙羅ちゃんは混乱しているようだ。
「だから言ったじゃないか。沙羅ちゃんに見せてあげよう、って!」
「ひあっ!」
双樹ちゃんを持ち上げて落とす。重力と双樹ちゃん自身の体重が接合点に一気にかかる。
さらに双樹ちゃん好みの小刻みな前後運動、いや上下運動にしてあげると双樹ちゃんの嬌声が途切れることなく続く。
「あっ、あっ、あぁっ!」
沙羅ちゃんが息を飲んで双樹ちゃんの痴態を見つめている。それに、接合点も。
「そう言えば、沙羅ちゃんは前回呆けてたから、双樹ちゃんのこの姿を見るのは初めてなのかな?」
「バ、バカッ!」
「ほら、双樹ちゃん。もっと沙羅ちゃんに見せてあげないと」
声をかけるけども、双樹ちゃんには聞こえていないようだ。
「んっ、は、あっ」
と、さすがに限界が近くなってきた。双樹ちゃんの膣は身体に合わせて小さくキツいのだ。
「双樹ちゃん、俺そろそろ」
「お、お兄さんっ! 双樹も、もう……は、あああっ!」
「む、くっ!」
最後の一突きで双樹ちゃんが身体を弛緩させる。かろうじて引き抜くことに成功し、俺の液は双樹ちゃんにかかった。
「あ……出てる……」
ボソリと、沙羅ちゃんが呟くように言って、すぐにその内容に気づき赤面した。
余韻に浸っているかのように力の抜けてしまっている双樹ちゃんを特等席に座らせてあげる。
何の特等席かって? もちろん、俺と沙羅ちゃんの試合のだ。
「沙羅ちゃん、よく見えた?」
俺はモノを出しっぱなしにして沙羅ちゃんに近づく。
「っ、この、ヘンタイ!」
「あ、傷つくな、その言葉。Hな沙羅ちゃんに言われると」
「な、何言ってんだお前!」
だって、ねえ?
「ここをこんなにしてちゃ、説得力ないぜ?」
「あ、ひゃん!」
沙羅ちゃんのスカートに手を差し込むと、下着は湿っていた。そりゃもうぐっしょりと。
「俺たちがシテるのみて、うらやましかったんでしょ?」
「そ、そんなことない!」
照れ隠しに叫ぶ沙羅ちゃんだ。でも、大きな声出すと人が来ちゃうぞ。
「じゃ、次は沙羅ちゃんだからね」
「うわっ!」
座り込んでいた沙羅ちゃんを、這いつくばらせる。っていうと乱暴な感じだけど、ちゃんと優しくしたぞ。
腰を高くさせると、縛っていることもあってとっても、
「うわ、沙羅ちゃん可愛くてHだ」
「な、何言ってんだ、バカ……」
今度のバカには力がなかったな。
「よし、双樹ちゃんに沙羅ちゃんの可愛いところを見せてあげような。」
「バ、バカ……あっ」
下着に触っただけでチュクって音が聞こえる。準備はいらないかもな。
目の前に花弁と菊の花。いずれは菊の花をしようと思っているのはまだ秘密だ。
さておき、入り口を触るとスルリと中に入ってしまった。
「ん……は」
やっぱり準備万端のようだ。軽く中を擦ってあげると、十分に湿っていた。
「Hな沙羅ちゃん。行くよ」
「あ、ちょ、あうぅぅっ!」
待ってと言おうとしたのかもしれないけど、無視してモノを沙羅ちゃんに突き刺す。
膣は沙羅ちゃんのほうが大きくて、双樹ちゃんのほうがキツい。
だからといって気持ちよさが違うわけじゃない。
「ん、っく、沙羅ちゃんの中、熱いよ」
「はっ……あ、バカ……ぁ」
苦しそうに言う沙羅ちゃん。中に入ったのそうだろうけど、やっぱ体勢が苦しいのもあるんだろうか。
「んっと」
沙羅ちゃんの手を縛っていたリボンを外してあげる。もう必要ないしね。
自由になった手で身体を支える沙羅ちゃん。これでさっきより自由に動けるわけだ。
「ひ……んぅ……」
沙羅ちゃんは中全体を擦るように大きく動くのが好みだ。まあ、これで二回目だから確証はないんだけど。
「あ……ああ……」
背中がビクビク震えている。感じてくれているんだろう。そんな沙羅ちゃんに、
「ほら、双樹ちゃんも見てるよ」
言ってあげると、思い出したかのように双樹ちゃんのほうを見た。
「そ、双樹……」
「沙羅ちゃん……」
見つめあう姉妹。ふと、双樹ちゃんを見て思いついたことがあった。
「よっと!」
「ふぁっ! な、何すんだ、お前!」
俺は沙羅ちゃんを抱え上げ、いまだ腰が抜けている双樹ちゃんの前に連れてきた。
「ほら、沙羅ちゃん。双樹ちゃんのソコを奇麗にしてあげなよ」
沙羅ちゃんの目の前には、双樹ちゃんの花弁。そこはまだ濡れていて、俺の残滓も残っていた。
「うぅ……お前、やっぱりヘンタイだ」
とか言いつつも、舌を伸ばす沙羅ちゃん。開き直ったのか、逆らっても無駄と知ったか。
「あっ、沙羅ちゃん……んんっ」
恥ずかしそうに、だけどされるがままになっている双樹ちゃん。うむ、これぞ3Pの醍醐味。
俺は身を屈め、白濁を舐めとっている沙羅ちゃんの裾から手を差し込んだ。
沙羅ちゃんのブラもフロントホックだった。外すと、弾かれるように沙羅ちゃんの胸が現れる。
「ん? 沙羅ちゃん、胸大きくなったんじゃない?」
「バ、バカッ! そんなわけ……ひゃん!」
前に揉んだときよりも、ちょっと弾力が違うような……。
「あ、ん……お兄さんも、そう思いますよね?」
沙羅ちゃんに舐められて感じながらも、双樹ちゃんが同意する。
「そ、双樹!」
「ん、沙羅ちゃん、だめぇ」
ちょっと怒った沙羅ちゃんの反撃は、双樹ちゃんへの舌技だ。
俺の位置からじゃ残念ながらよくわからないので、次回のお楽しみにしておこう。
ゆっくりとモノを出し入れしていると、沙羅ちゃんの呼吸が荒くなっていくのがわかる。
胸を揉み、乳首をいじってあげると快感から逃げようとするかのように身をよじるのが可愛い。
なんだけど、後背位だと沙羅ちゃんの顔がわからないんだよな。
気持ちいいんだけど、ちょっと悲しい。
そう思ったら、早く沙羅ちゃんの顔が見たくなって、抜き差しのスピードが次第に上がっていく。
「んっ、やぁ、早い!」
「ほら、だめだよ。双樹ちゃんをいかせてあげなきゃ」
いつの間にやら奇麗にする、からいかせてあげるに俺内目的が変化していた。
それでも何も言わずに俺の言うことを聞いてくれる沙羅ちゃんだった。
「は、んふ、んんっ」
「あ、ああ沙羅ちゃん……きゃぅ、ん……」
いったばかりの双樹ちゃんに、焦らされていた沙羅ちゃん。
そして気持ちよすぎる膣内を猛スピードで動いている俺。
三人が達するまでに、それほどの時間はいらなかった。
「沙羅ちゃ……ん、ああっ!」
「ん、んん……はあっ!」
「う、おっ!」
「お兄さん、ケダモノです」
「ヘンタイ」
「む……」
事が終わって、身支度を整えると、二人は俺に向かってこう言った。
うん。返す言葉もない。だって、
「でも、そんなお兄さんも好きです」
「イヤだけど……嫌いじゃない」
こう言ってくれる可愛い恋人たちだからな。
「俺も、Hな二人は大好きだぞ」
双樹ちゃんには抓られ、沙羅ちゃんにはボディに肘うちをくらってしまった。
「絶対、離さないからな!」
さて、後日談ってほどでもないんだが。
例のあの絵は沙羅ちゃんが描いた後、双樹ちゃんが続きを描いたんだ。
題材はもちろん、俺に腰掛ける沙羅ちゃん。
双樹ちゃんの絵は下手ではないけど、沙羅ちゃんには及ばない。
だからちょっと奇妙な絵になってしまった。
だけど、この絵は俺たちの絆の証拠であり、愛の結晶であるんだ。
左右に沙羅双樹を抱え、白鐘の音、ウエディングベルを聞けることを祈る。
願わくは、三人で永遠に……。
……なんつって。詩的に締めるのは俺にはムリだな。
没案