イレーネス  
 
「龍神の滝」のタイトルで以前クロノトリガーのところに載せていたものを、  
細部を少しだけいじって投下します。別の展開があったのですが  
忘れてしまい、修正だけにすませています。自己満足ですみません。  
 
 
「わたしのからだ、におうでしょ、セルジュ……?」  
 水掻きのあるイレーネスの紫苑の両手が水面から上がると、やさしく  
セルジュの貌を包みこんでいた。彼女に掬われた龍神の滝がこぼれながら、  
セルジュの火照る頬に心地いい。  
「ニオイ……ですか、イレーネスさん?」  
「イレーネスといって。あなたとわたしはひとつしか違わないもの」  
「でも、それは……」  
 亜人と人の時の流れは必ずしも同期とは限らない。それに、住環境に  
より特化した分、人よりも長寿となる。  
「いいの。ねっ、おねがい。呼び捨てにしてくれてもいいから」  
 イレーネスの拇がセルジュのくちびるをさわる。  
「じゃあ、言い名付けることにするから」  
「あら、いいの。そんなことしても」  
「えっ、ああ……」  
「うそ。うそだから……」  
 イレーネスの黄金色の耀きが心なし曇る。  
「イレーネス……さん」  
「ふふっ。そうね。わたしのおさかなの臭いは消えないわね」  
 恥じらいながら答えるイレーネスはセルジュを見つめてから、数瞬、  
瞼を閉じて、ゆっくりと開いてみせた。少しばかりの曇りに、  
ディープパープルのアイシャドウが艶めかしい。セルジュはイレーネスの  
恋情のなかの、もうひとつの感情、淋しそうにしている金色の瞳に訴えかけた。  
「ううん、イレーネス。とても、いい匂いがするよ」  
 イレーネスの瞳が微みをかえして細くなる。セルジュは、イレーネスの世界に  
吸い込まれてゆく。セルジュの真直ぐな瞳に、人魚・イレーネスも  
吸い込まれていってしまっていた。  
 
「伝承とは、あべこべね」  
「なにか、言いましたか?」  
 動物と人との亜種であるイレーネス。そして人であるセルジュ。二人は、  
龍神の滝に浸かりながら抱擁を繰返す。イレーネスの人外でありながら、  
麗人を極めた姿態は仰向けになっていて、岩棚でゆったりとくつろいでいる。  
「セルジュはステキっていったの」  
 セルジュはイレーネスが躰をあずけている、岩棚に両手をついて、  
透き通って陽光にきらめく水面に、ただ美貌だけ浮かべて自分を仰ぎ見る  
イレーネスを心から欲していた。  
「ありがとう、イレーネス」  
 少年は裸で、両手の狭間に人魚の裸身を捕える、少年にしては逞しい肩幅と胸板。  
人魚の豊麗な乳房は沈んで、少年は上体を水面から出し、その人魚を見下ろしている。  
イレーネスのからだが、すこしだけ動いた。  
「ねぇ、セルジュ、いい匂いって、なにかしら?」  
 手がセルジュの胸と二の腕の間に触れる。イレーネスの豊満で綺麗なバスト  
(いたずらっぽいイレーネスの瞳だったが、セルジュの言葉に、まだ消せない  
なにかに、どこか怯えているようでもあり、心なし顫えてもいた)も水面から  
顔を覗かせた。肌理細かな肌に龍神の滝の雫は真珠になる。  
 セルジュは艶やかで、妙かなる絖りのある、美しい人魚の肌に跨っていて  
(人でいえばほぼ太腿を跨ている格好になり)、水面下には目の覚めるような  
蒼の尾がゆっくりと動いて、セルジュのキュッと引き締まった臀部も水面から  
顔を出して、尾ひれが水面をパシャッ!とやさしく叩いていた。  
「うそ……」  
「うそなんかじゃないよ」  
「……」  
「また、そういう瞳をする」  
 
「だって」  
「だって……って。ぼくは嘘なんかついたりしない」  
 それでも、安らいでいないのか、イレーネスの瞳から曇りは消えていない。  
「じゃあ、セルジュに足りてないのは、やさしい嘘なのかも」  
「うそなの?うそだって。ボクよりずっと大人なのに、拗ねているの。イレーネスは?」  
「わたしが、おとな?それに、拗ねているって?」  
「怒った?でも、ほんとにそうおもうんだよ。ごめんね」  
「ずるいわ、そんな言い方……。でも……、どうして、そう思ったの?」  
 恐る恐る、窺うようにセルジュを見ている。セルジュには、そんな貌を見せた  
イレーネスを可笑しく可愛らしくも感じていた。  
「唄声に祈りをのせられるから……かな。竪琴にあわせて唄う、イレーネスは  
とても綺麗だから」  
 愛の詩で男を誘うのは、古来よりの人魚の伝承。それが、戦う武器にもなる。  
特に夜の海、夜の月であるならば。けれど、今は昼の月。  
「セルジュ、へんなこといって、ごめんなさいね」  
 セルジュの魅力に惹かれてしまっていた、麗人の人魚。  
「ほんとうのことだから」  
「ううん、さっきの拗ねていたってこと」  
「ほら、やっぱり」  
 イレーネスの瞳が細り、やさしく笑っている。  
「こんなことを、セルジュに頼んどきながら……。お姉さんにあこがれていたのに、  
前に踏み出すのをこわがっているのね」  
 姉の気持ちを知って、その気持ちを唄いたい。なのにイレーネスは  
セルジュへの恋情を隠して、抱いてと頼んだことを素直にあやまった。  
隠すことはフェアじゃないと今更ながらに思う。歌に祈りをのせて唄いたいのなら。  
 
「だから、拗ねていたのかもしれないっていうの?」  
「もう、言わないで。羞ずかしいから」  
「イレーネス」  
「なあに、セルジュ?」  
「じゃあ、ぼくをもっと、やさしく騙していてよ」  
「もう、だますなんて言い方、よしてよ」  
 麗人の人魚の貌が赧らんでいた。  
「やさしく、だましていてよ、イレーネス。可愛らしさを、もっと大人っぽく  
見せていて」  
「わたしだって、セルジュに甘えたいわ。それに……セルジュは、見かけによらず、  
甘えん坊さんなのね」  
「うん」  
「あら、簡単に降参なの。認めちゃったりしていいのかしら?わたしたちの  
リーダーなのにね」  
 イレーネスは冗談のつもりで言ったことだったから、セルジュは笑って  
かるくいなしてくれると思っていた。イレーネスにもその準備もあった。  
しかし、セルジュの瞳には真摯さが宿っていた。  
「たぶん、ぼくがトリガーであることと関係していると思う」  
「トリガー……なの?」  
「そう。このすべての世界の可能性における命の灯火。ぼくには  
つらいことだけど。それぞれの想いを見ていたら、やっと受け入れそうになった」  
「ごめんなさい」  
「気にしていないから。ほんとだよ」  
 セルジュの顔をイレーネスの手がやさしく撫でる。  
 
 好いてくれている人が傍にいる。しかもやさしい女性に頬を触れられる感覚が  
こんなにも気持ちいいことを、あらためて少年は知った。イレーネスは撫でていた  
手を離し、小指でセルジュのくちびるに若水を授けるみたいにふれた。指先で  
ルージュをひくみたいに。  
「でもね、最初のセルジュの言い方だと、リーアはご先祖さまになるのよ」  
 話をはぐらかすイレーネス。けれども、どこかで繋がっている言葉。  
この世界のあり方みたいにして。愛撫されていた、セルジュの頬がやさしさを  
渇望するみたいに、イレーネスの手の感触をもっと欲していた。  
 小指は下唇を、薬指は上唇にふれる。すべての指が降りて、頤に窄まって、  
また、セルジュの顔をやさしく撫でつける。河原に置いたイレーネスの鎧の  
真珠色の宝玉が、降り注ぐ陽光に照らされてきらめいていた。水面も負けじと、  
光り輝いて、セルジュの心をゆさぶる。  
「リーアをおばあちゃんとは言えないし、それは困るね」  
「でしょう。でもあなたは立派な、お・と・こ」  
 茶化したような、溜めを含んでの発話だったけれど、イレーネスの顔は  
真直ぐにセルジュを見ていた。  
「この世界を統べるトリガーなら、わたしを変えてみせて。お姉さん……。  
いいえ、セルベスが知った愛というものを、わたしの躰に壊れるくらいに  
刻んでもらいたいの。セルジュ、あなたに、してもらいたい」と告白した。   
 昨晩、セルジュが聞かされた、あえかな花の願い。イレーネスの尾の上に  
押し付けられているセルジュのペニスが逞しく膨らんだ。  
「あっ、嬉しいわ、セルジュ……」  
「イレーネス、きみの唇にキスしたいよ」  
「いいわ、セルジュ。してっ、してちょうだい」  
 
 水面に浮んだイレーネスの美貌のなかでひときわ目を引く、真紅の  
ルージュを引いたような唇がひらいて、白い前歯を覗かせ喘ぐ。潤んだ  
イレーネスの瞳が細くなって、熱情の炎と波に包まれる。長く濃やかな  
ディープブルーの髪が透明な龍神の流れの中でたなびいてたゆたい、  
翼のかたちをした耳が、くなっと折れ曲がって性感を噛みしめていることを  
セルジュに囁く。  
 イレーネスはセルジュの背を両手でやさしくさわり、真直ぐに少年に  
向かって伸びていった。そして彼女の烈しい命の耀きを包み込むかのように、  
イレーネスの躰の傍に付いているセルジュの腕が畳まれて、ふたりの距離が  
徐々に近づいた。  
 僅かな時、挨拶の口吻が交わされて、それでいて濃厚で甘く熟した  
果実のような味わいが交歓された。はじまりのせつない鼓動がくるおしい。  
挨拶が終ると、くちびるが触れるか触れないかの距離になっていて。  
「セルジュ……。狂ってしまいそうなの。たまんないわ」  
「ぼくもだよ。イレーネス。やさしくしなきゃって、おもっているのに、  
こわしたい衝動が込み上げて来ちゃうんだよ」  
 そして少年は人魚をじっと見つめた。  
「いいのよ。セルジュの好きにしてくれても」  
 思いつめたような視線が痛かった、その間。  
「どうしたの?」  
「イレーネス」  
「なに……かしら、セルジュ……」  
「怒らないで、聞いてくれる?」  
「聞いてみなくちゃ、わかんないでしょう」  
 それは彼女の正直な気持ち。イレーネスは吐息のように呟いた。  
 
「……」  
「うそ。怒らないわ。セルジュの声……。ほんとうの声を聞きたいの」  
「ほんとにいい匂いがすると思ったんだ。ほんとにだよ」  
「うん、ありがとう。セルジュ」  
「イレーネスから、母さんみたいな感じがしたからなんだ……」  
 
 そんなやりとりをする、ふたりの姿を影から見ている者たちがいた。  
「セルジュはおさかなの匂いなんて気にしないのに。焼き魚も、おいしい、  
おいしいってたべてくれたし……。なんてったって、漁師の子なんだから」  
 レナがぶつぶつ、ほお杖をつきながらつぶやいている。  
「あいつはバカか!オレでもあん時ぐらい、どう言われたいかわかるぜ!」  
「どんなふうよ」  
 レナは怒りの矛先をキッドへと向けることを思いつく。  
「ばっ、ばか……」  
「あっそ。ばかって言われたいんだ、キッドは。名前もガキだし、あってるわよ。  
ぺったんこ」  
 もの凄い剣幕でキッドはレナを睨んだ。  
「ちがうっ!それに、おまえ、最後のほうでなんか言ったろ。おまえとオレとで、  
さして代わり映えなんかすっかよ」  
「ん?あっ、ああ、イレーネスと較べてってこと。それじゃあ、あんたさぁ、  
どう言ってもらいたいの。いってごらんなさいよ」  
 
 キッドの冒険をいつも眺めている大きな瞳が、いつになくどぎまぎしている。  
「えっ、ああ……。はっ、花の匂いとかさぁ、あんだろ。決まってるじゃんか!」  
「へえ、キッドでもわかるんだぁ。んなこと、力入れて言うなっつうの、バカたれ」  
 レナが目を細めてキッドをしらっと見た。  
「また、なんか、言ったか?」  
「ん?なんも言ってないよ。何度も訊かないでよ」  
 そういって、肘を付いた手をうるさそうに振ってみせた。  
「オレに絡んでんだろ!」  
「なにも言ってないってばぁ!絡んでんのは、そっちでしょうが!」  
「なっ、なんか、言った!ぜえぇぇぇったいに、なんか言った!」  
「うっさいなあ、べらんめぇの旦那たちは黙っててくんないかなぁ」  
「うっ、うわあっ!」  
 ふたりは声を揃えて、割って入ってきた人影に驚いて、躰を退けて  
叫んでしまう。赤い二本のドハデな角と、その先にぶら下がっている鈴が  
ニョキッとふたりの空間を裂いていたから。  
「チッ!コスメフリークになんか言われたかないね!」  
 ツクヨミの大きな瞳がキッドを睨め付けた。  
「アタイに喧嘩を売ってるの?」  
「そんな、ド派手な格好でうろつかないでくれる。びっくりするじゃないのさぁ!  
ほら、ガキは頭をさっさと下げるよろし!」  
「なっ、なにすんだよ」  
 レナがキッドを加勢して。ツクヨミの騒色の頭を無理矢理、地べたに押さえつけ。  
「んぐうっ!」  
 セルジュとイレーネスの交歓の覗きをよそに、一触即発の空気が漂っていた。  
「はいはい、喧嘩はおしまい。おしまい!おしまいってば!なんなら私が  
買ってあげようか」  
 
「わあっ!」  
レナがびっくりしてもうひとりの乱入者を見る。  
「なんでお前がここにいんだよ。ツクヨミ、こいつを消しちまえ!」  
 キッドも叫ぶ。  
「アタイに命令しないでよう」  
「ほらほら、ガキは黙ってちょうだい」  
 颯とレナのフライパンを取り上げたリサが、キッドの頭をそれで思いっきし叩いた。  
「つううっ!」  
「あら、いい音するじゃないの。中味がからっぽなんじゃない」  
「なにぃ!」  
 キッドはリサの首根っこを掴もうとする。  
 
「おかあさん……?」  
「ご、ごめん……へんなこと口走ったりして」  
「へんなこと。ふうん。へんなことだと思っているのね、セルジュは」  
「ちっ、ちがうよ。ぼくは、ただ……」  
「ただ、なんなのかしら?」  
 詰問ではなく、年上の女性が下の男の子をからかうみたいにして。  
「うまく、言えない。気に障ったら、ごめん」  
 時空が捻じ曲がっている世界にあって、母の存在はセルジュにとって  
尊いものだった。いまこうして生きていることが、かけがえのないものという意味が  
何倍にもなって体現できて、精神が壊れそうなくらいになって返ってくる。  
「困ったの?」  
「うん……」  
 
「ごめんなさいね。そして、ありがとう……かな。それ、最高の  
誉め言葉だと思うの。ちょっと、ちがうかもしれないけれど、  
わたしにもわかるもの、セルジュ。セルベスのことをもっと知りたいと  
思ったこと、間違いじゃないって言えるから」  
 イレーネスは嬉しそうに瞳を細めると、セルジュを跨らせたまま  
人魚は躰を廻して、ゆっくりと背中を向けた。セルジュのペニスがイレーネスの  
鱗でぬるっと撫でられた。得もいわれぬ感触が快美感となってセルジュの  
背筋を駆け抜ける。  
「あうっ!」  
 イレーネスは貌をセルジュに捻って「まだ、このくらいで射精しないでね」と、  
さっきの続きのように悪戯っぽく微笑む。イレーネスの水に濡れた美貌が  
セルジュの躰を熱くさせた。目の覚めるようなイレーネスの青の素肌から、  
翼のように生える背びれが水面から覗かせる。  
「ほんとに、いいの、イレーネス?」  
 セルジュがイレーネスに懐かしい匂いを感じたことと、これからする  
酷いことに踏ん切りが出来ずについ訊ねる。人魚は代わりのない、恋情を  
人の子に捧げようとしていた。  
「セルジュこそ、いいのかしら?」  
 イレーネスがその言葉を吐いた時、性愛の昂ぶりが先走っていって、  
豊満な乳房が揺れて喘いでいたのをセルジュは知らない。でも、声音の  
濡れた変化と、覚めるような青の肩が微かに揺れて背びれがふるふると  
しているのが見てとれた。  
 
 セルジュはイレーネスの臀部の円らな窄まりを眺めた。  
「ボクはかまわないよ」  
「ありがとう。お願いするわ」  
 セルジュは熱くなったペニスを掴んでイレーネスの青のまろやかな臀部の窪み、  
その一点に狙いを付け、亀頭を潜り込ませようとした。しかし、思うように行かずに  
セルジュのペニスは強くイレーネスに押し戻されてくる。  
「ああっ!」  
 両手をついているイレーネスの躰が来るべき予兆に少しだけ仰け反っていた。  
水のなかであっても、セルジュのペニスにイレーネスの肌の絖りが塗されてゆく。  
セルジュはイレーネスの魅力的で女性らしい(人の女性のようにむちむちっとした)  
臀部の傍に左手を付いて、右手に掴んだペニスをいま一度狭穴にあてがって  
イレーネスを刺戟した。  
「はあっ……、ああっ!」  
「今度はちゃんと挿れるから、イレーネス。ごめんね」  
「いっ、いいのっ。来て!セルジュ。来てッ!」  
 しかし、イレーネスの狭穴は逞しくなったセルジュの強張りを持ってしても  
容易には受け入れなかった。二度目も滑って外れ、再度試みたら、その弾力に  
また戻されてしまう。  
 龍神の滝に小鳥たちの囀りと滝の流れ落ちる音に混じって、尖端が狭穴を  
捉えようとするイレーネスの熱い嬌声とセルジュの焦りの声が蕩けあって  
響いていた。  
「はあ、はあ、セ……セルジュ、もう、焦らさないでぇ……。ああ……。  
もう、ダメ……。ダメよ」  
「ご、ごめん、イレーネス。ボクは焦らしているわけじゃないんだ。  
もう、やめようか」  
 
「ダ、ダメ!そんなことしたら、絶対に許さないから!ゆるさないわ、セルジュ」  
 女の凄艶な美貌をセルジュに向けていた。その一瞬がセルジュのペニスに火を点け、  
はちきれんばかりにペニスを膨らませていった。  
 
「なんか凄いね……」  
 レナがぽつりと呟いた。  
「人魚のあそこってどうなってるんだろ?」  
 キッドが疑問に思っていたことを素で口にする。  
「そりや、一個だけでしょう。おさかななんだもん」  
 ツクヨミがにべもなく答える。  
「おさかな……。そうよね。おさかなだもんね。でもさ、あんたたち、ふたりして  
セルジュに嫌われてるわ」  
 レナがぼそっとまた言った。  
「なんでそうなんの!アタイがなんでよ!ヤマネコ様の時もね、ずううっと  
いっしょにいたんだからね」  
「こいつとオレをいっしょにすんなよ」  
「だから?」  
「だからって……」  
「なんにもなかったんでしょうに」  
「そ、そんなことないよっ」  
「へぇ、ふうん、ほう、そうなの。じゃあ、聞かしてみてよ。いた時間なら、  
わたしのが上よ」  
 レナが言う。  
「時間じゃないよ。そんなんで、なんか進展あったのかい!」  
 キッドの言葉に今度はレナとツクヨミが少し拗ねて黙り込んでしまう。  
「そういう、キッドだってねぇ!」  
 
「なによう」   
「むなしくなるから、やめやめ」  
「そう、時間じゃないわね。あんたたち三人、媚々でがんばんなさいよ。  
イレーネスにセルジュもってかれてもしらないわよ」  
 リサが三人に、ありがたいとどめの鉄槌を振った。  
「なんで、あんたはいつもスプリガン婆さんみたいなこと言うの?」  
 それを眺めていたツクヨミがリサにぼそっと喋った。  
「へ?」  
 醜悪といってはなんだが、想像するだに恐ろしい貌の色が、リサの頭のなかに  
ドドドドッと雪崩込んで来た。  
 
 イレーネスは付いていた両腕を折って肘を付くと、セルジュもそれに合わせ、  
背に覆い被さり左肘を水のなかの石棚に付いて、イレーネスの左の二の腕を掴む。  
セルジュは躰の片側を浮かせて、右手で亀頭を搾り込むように握って、  
イレーネスの臀部の小さな窪みにあてがい、躰を密着させるようにして尖端を  
狭穴にぐぐっと潜らせた。  
 イレーネスの狭穴はセルジュの艶やかに張って、赤黒くてかる瘤によって  
無残に押し拡げられていった。  
 
「ああああっ!」  
 セルジュはイレーネスの尻に跨る格好で組み敷いて、人魚の一点の穴に  
ずりゅっと挿入された。か細い女の悲鳴が滝に響きわたる。細く綺麗な頤を  
突き出して身悶え。  
 堪えるはずだったものが解き放たれて、イレーネスに苦悶の声を噴き上げさせる。  
それは激痛というもの以上になってイレーネスを襲う。  
 いくら気持ちが和らげられていたといっても、厳然として躰に、苦痛は  
灼けるような感覚を強いいて打ち込まれた。  
「だ、だいじょうぶ、イレーネス!」  
「こ、このまま挿れてちょうだい!」  
 ふたたび、イレーネスはセルジュを振り向いていた。蒼い髪のほつれが美貌に  
妖しく絡んでいた。  
「いいの、イレーネス」  
 セルジュの声も切羽詰ったようになり。  
「いっ、いいから……。は、はっ、あっ、ああ……」  
 人魚の貌は激痛に、すぐに下へと落とされてしまう。イレーネスのものには遥かに  
及ばなかったが、ペニスへの苦痛はセルジュも一緒だった。  
 
 烈しく勃起しているペニスに釣り糸できつく縛り付けられているような  
感じがして、セルジュのこめかみにはドッと汗が噴出していた。だが、ある一点を  
通過するとセルジュの怒張はイレーネスの狭穴にずほっと収まった。   
 一瞬、セルジュはイレーネスの狭穴が裂けてしまったのかと思って、  
肉の繋がりの部分を見る。血は出ていなかった。しかし、ふたたびペニス  
全体への締め付けが襲ってきた。  
「セ、セルジュ……」  
「だいじょうぶ、イレーネス」  
「き、気にしなくていいから、好きにして……。好きに……うごかして……」  
 頭をガクッと落として、うなじを晒しながらイレーネスはセルジュに声を掛けてくる。  
とにかく、早く射精してイレーネスからペニスを抜き取ろうと考えていた。  
セルジュはゆっくりと尻を振った。抽送がはじまるとイレーネスの貌が  
仰け反って大きな叫びを上げた。  
「ごめん、このまま動くから、イレーネス!赦して」  
「はあぁあっ!動いて!うごいて!セルジュ!あっ、あ、あっ、ああっ!」  
 イレーネスの咽喉が伸びきって、背びれに彼女の青い髪が縺れていた。  
セルジュはイレーネスの縋りつくように締め付けてくる直腸壁を引き摺って  
律動を繰り返した。早くイレーネスを痛みから解放してやりたかった。  
イレーネスの締め付けで、セルジュの絶頂は程なくやって来た。  
夥しい量の白濁がイレーネスの躰の奥に迸った。  
「あああっ、セルジュ!」  
 イレーネスの躰が快美に顫えるなかで、その変化が現れた。手の  
水掻きが消え、尾ひれが裂けて人の脚のかたちにみるみると変貌していった。  
素肌もディープシーブルーから白雪のような素肌になってゆく。ただ髪だけは  
青のままに、ぐんっと伸びて脚までもとどくくらいになっていた。  
 
 しかし、イレーネスの髪がどれくらい伸びたかは、はっきりとはわからなかった。  
ただ、青い髪が水面に妖しく散っていて、それで十分だった。イレーネスの  
背中や腰からもひれが消えて、匂いたつような女らしさをさらに纏っていた。  
セルジュは名残り惜しいイレーネスの躰から怒張を抜き去った。  
「あっ、あうっ、あっ、ああ……」  
「イレーネス、ねえ、イレーネス……」  
「セルジュ……」  
「綺麗だよ、イレーネス」  
「ああ……。ありがとう……」  
 セルジュは抜き取ったペニスを処女地の双臀のスリットにあてがい、  
イレーネスの耳に貌をよせる。  
「ちがうよ。ほら、みてごらんよ」  
「あっ……」  
 イレーネスの左手首を掴んで水中から引き上げた。  
「人魚のイレーネスも綺麗だけれど、人の姿のイレーネスはもっと綺麗だね」  
 手首を掴まれて上げられた手からも水掻きが消えていて、細く白い手が  
くなっと下を向いて垂れて、指先からはぽたぽたっと雫がこぼれ落ちていた。  
 セルジュは後ろから抱きついたまま首から右手を廻して、その左手を取って  
両手で掴んで唇に含んだ。  
「はあぁああっ、あっ、あっ」  
「どうしたの?」  
「わ、わからない。わからないの。全身が性感帯になったみたいで……せつないの。  
とても、セルジュ……。とてもよ」  
 イレーネスの朱に染まった貌がセルジュを見て含羞でいた。  
「イレーネス、呑み込まれそうなくらいに、綺麗だよ」  
 セルジュはイレーネスの言葉を確かめるかのように、双臀にあてがっている  
ペニスを、ゆっくりと尻を振り立てて観て、彼女の生まれたての素肌を擦る。  
 
「うあっ、はうっ、いっ、いやあっ、セルジュ……。うごかないでぇ、  
たまんないの!」  
 イレーネスは顎を引いて金色の瞳を閉じて真珠の雫をこぼしていた。  
拒んでいるのではない。たなびく髪が水面にゆらめいて蒼くきらめく。  
イレーネスの髪がセルジュの躰にも纏わり付いてきて、本来、人として  
持っていたはずの、生まれたての女性器に少年を誘っていた。  
「だめなの……」  
「ううん。もっと。もっとして、セルジュ……!」  
 セルジュはイレーネスの水中にある左脚を引き揚げて、仰臥させた。  
木陰から見守っていた四人は、イレーネスの柔らかい躰と、高く掲げられた  
美脚にため息を吐いてしまう。  
「もう、帰ろうか」とキッドがぽつりと言った。  
 
 
 食事の時、龍神の滝にいた女性たちはみな俯いていた。イレーネスだけは  
堂々としていたけれども。  
 ただ、例外といえば花の子のフィオだけはセルジュにしつこく付き纏ってはいた。  
「ねえ、せるじゅ」  
「なっ、なんだよ。行儀わるいよ、フィオ」  
「抱け」  
「ぶっ!」  
 女四人とセルジュは、口にしていたものをテーブルに吐き出していた。  
「抱いて、水を注せ、せるじゅ」  
「フィオ、お仕置きするわよ!」  
 ルチアナが真っ赤になって怒鳴り散らす。  
「やだ」  
 イレーネスが人に変貌しているのだから、たいがいのことは察しがついた。  
つかないのは、どんなすごいことをしていたのかということで、  
分からない者たちにはスプリガンが事細かに吹聴しまくっていた。  
 
 

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