悩める青少年 16









「知り合い、なのか?」


アスランが去り、教室内は体育祭の喧騒も聴こえるが、思いのほか静かだった。
フラガ先生が、僕に近づいてくる。


「え?」

「さっきの、ざふと組のアスラン・ザラと、知り合いなのか?」


そう問うフラガ先生の表情は、真剣だった。
今までこんな先生は見たことがないかもしれない。


「アスランとは…お、幼馴染です。で、でも僕もアスランがこの学校にいるってさっき知ったばかりでっ…」


別に後ろめたいことなど何一つないのに、余りに真剣な目で見つめてくるフラガ先生に、
僕の返答はどもりがちになってしまう。

「…このトリィは彼から貰ったんだろ?」

少し切なそうに、フラガ先生は言った。
そのトリィは、自分のことが話題に上っているのを理解しているのかいないのか、
キラの肩に乗って、首をかしげている。




「あ、…は、はぃっ…あっ!!」




パタパタっと、金属の羽音が教室に響く。
気づけば、僕は先生の胸に抱きこまれていた。
僕の返事がいい終えるか終わらないうちに、先生に引き寄せられたのだと知る。


今日のフラガ先生はどうしたのだろうか?
いつになく真剣で、険しい表情の先生に、僕は戸惑うばかりで、
引き寄せられても、僕の腕の行き場をどうしていいものかわからない。
僕が迷っていると、先生の顔が僕の髪に埋められた。



「ごめんな。」


「…どうしたんですか?」



何を謝られる事があるのだろうか?全く身に覚えがない。
彼の行動の意味が理解できない。
先生の顔を見ようと、少し身じろいだ時、思いもよらない言葉を耳にした。




「…妬けた。」




え?


今、何て?妬ける?先生が、僕に?
人気者のフラガ先生に、僕が妬くことはあっても、その逆はありえないのに。
ますますワケがわからなくなって身が固まった僕に先生は言葉を続ける。



「アスラン・ザラと幼馴染なんだろ?お前がどれだけトリィを可愛がってきたのか見て来たんだ。
つまりはそのトリィをくれた幼馴染をどれだけ大切にしてるか、わかるだろ?」


「先生…それって…」


「そうさ、お前を、幼馴染のアスラン・ザラに捕られるかもしれないって思ったんだよ。
かっこ悪いよなぁ…幼馴染とはいえ、12も離れたヤツ相手に、お前に嫉妬するなんてな。はは…」


やや自嘲気味に。
でも僕は知ってる、そうやって、おちゃらけてるように見せるけれど、
本心は真剣だってコト。先生のそういうところ、僕はよく知ってる。


僕は彷徨っていた両腕を、フラガ先生に廻した。



「…バカ。」

「そうだよな、バカだよなぁ…」

「違うっ!…嫉妬するのがバカなんじゃなくて。」



ぎゅっと先生にしがみついた。
先生の体温と心音がTシャツ越しにも感じられる。
いつもより温かいと思うのは気のせいだろうか?
いつもより先生の鼓動が早いと思うのは気のせいだろうか?




「…僕がっ…僕がフラガ先生以外を好きになるわけがないじゃないですかっ!!」


「…キラ…。」



僕の気持ちが揺らぐと、先生への気持ちが軽いものだと思われていたことに怒りを感じるけど、
でも、嫉妬してくれたことに喜びを感じてしまう自分がいるのも事実だ。
自分でもワガママだと思うけれど、でもフラガ先生を好きな気持ちはどうしようもない。
僕たちの恋愛は、とても不安定でスリリングで。誰からも祝福してもらえるようなものではないけれど。
でも、それでもこの気持ちは誰にも止められはしないのだ。僕自身でも。














パーンというピストルの音と、より大きな歓声がグラウンドから聞こえてきた。
一体どのくらい僕たちは一言も交わすことなく抱き合っていたんだろうか。
どうやら次の競技が始まったらしい。
そういえば、先生もさっきまではあのグラウンドで走っていたんだ。



「フラガ先生。」

「ん?」



抱き合ったまま僕はフラガ先生を見つめた。
先生の返事がすこし甘えているように聞こえた気がする。

「リレー、1位オメデトウございます。」

先ほどの先生の勇姿を称え、僕は背伸びをして先生の頬へキスをした。
頑張った先生へのご褒美、だ。
先生は一瞬、やや驚いた表情をしたけど、直ぐに笑みを取り戻す。
すごく恥ずかしかったけど、先生のシアワセそうな笑顔に、僕も微笑を返した。
でも、そんな僕たちを取り巻く柔らかな雰囲気は次の瞬間に消されることになった。




「なぁ、これだけ?」




「っ!!!」
ご褒美はもうないのかと、ねだるフラガ先生。
この人はっ!!!何歳なのだと疑いたくなる程に、甘えてくる。




でもその甘えも、愛されている故であるのだから。
そう思うと、嬉しくて。
けど素直に答えるのは、恥ずかしくて。







この夜、僕はたくさんの…否、過剰なほどのご褒美を与えるハメになったことは、
言うまでもない。体育祭の代休を僕は一日ベッドの上で過ごすことになった。






続く。
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モノすっごい久々の更新です。ココのところ単品の更新が続いてましたから。
今回はヤキモチを焼くムウさん。
自信家な所もあるけど、実は弱気になっちゃうこともあるんですよ、特にキラたんに関しては。
恋する者の弱みと言うヤツですか?
可愛いヤツじゃ。(アホ)



      

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