悩める青少年 17





ごろんとベッドの上で寝返りを打つ。
さっきから何度も同じことを繰り返している。



秋も深まり、朝晩はやや冷え込む季節。
日の短さを、毎日感じる今日この頃。
体育祭も終わり、学期末のテストまではまだもう少し猶予があるため、
のんびりとした毎日を送っていた。
今日は土曜日。
いつもだったら、今頃フラガ先生と楽しい週末を迎えているはずなのにな、そんなことを延々と思いながら
キラはベッドの上の住人と化している。
フラガのいない週末は、久しぶりであった。
フラガと付き合う前までは一人でいることが当たり前で、普通のことだったのに、
今はもう一人でいることに、否フラガがいないことにとてつもない寂しさを覚えてしまう。


ぶるりと体が震えた。
秋の寒さの所為ではなく。
隣にあるはずのぬくもりがない所為で。


そんな時だった。
携帯の着メロがけたたましく室内に響き渡る。
突然の音に体が一瞬びくつきながらも、キラは電話を手にした。
ディスプレイに示された名前を見て、それまでの鬱は一気に吹き飛んでしまった。






「は、はいっ・・もしもし・・?」

『キラか?オレだ、フラガ』


受話器越しに聴こえる心地良い低音に、体が温まるのを感じた。
フラガは今、若手教師を対象とした研修旅行に参加しているのである。
時計を見やれば、今は夜の10時過ぎ。
宴会で盛り上っているであろう時間であるのに。


「今、大丈夫なんですか?」

『あ?あぁ・・皆酔ってるからな、ちょっと抜け出してきた』


研修旅行とはいえ仕事中なのに、
自分のことを気にしてくれているフラガにとても胸が苦しくなる。
逢えない日がこんなに辛いなんて。
貴方を好きになりすぎて、自分がどうかなってしまうんじゃないかと恐怖を覚えるくらいだ。
『・・ラ?・・・キラ?』
「っ!!・・は、はいッ!」
フラガの声に陶酔しきっていたらしく、不意に呼びかけられまた心臓がどきんとはねた。
眠いのなら切るぞ?と言われて…慌ててそれを否定する。
ヤダ、まだ貴方と繋がっていたいから。


「…あ、あまり長電話とかしたことなかったから…あ、あの、その…慣れてなくて・・」


そういえばそーだなぁ、と、やや間延びしたフラガの声。
なんでもない言葉なのに、どうして貴方が言うとこんなにドキドキするんだろう。

『なぁ、キラ?』
「はい?」

『しよっか?』
「…?え?」


するって何を---…と尋ねる前に、その答えは受話器を通して僕の耳元へと囁かれた。


『テレフォンセックス』


!!
あまりにも直物的過ぎるその言葉に、僕は固まってしまう。
テレフォンって…あの・・電話で・・ってことなんだろう。
僕だって、17歳なんだからその言葉の意味はわかるけれども、
あくまでもそういうことっていうのは絶対自分とは無縁のことだと思っていたのだ。
それに、そんな電話の声でだけでなんて、と思っていた僕は、その後あっさりと崩されてしまっていた。







『キラ』
まるで、先生の催眠術に掛かってしまったかのように、僕は言われるがまま、
パジャマに手を差し込んで、自分のモノを握りこんだ。

『いつも俺がしてるように、自分でやってみてごらん』

先端から既に出始めてしまっている先走りを、自身全体に塗りこむように。
右手で受話器を持っているために、自身を弄るのは当然左手。
利き手ではないそれに、いつものように上手く動かせないもどかしさを
腰を揺らすことで紛らわせていた。
「ァ・・ッ・・・ア、ア・・んっ・・」
『もっと早く擦って』
「あっ・・・やぁッ・・あ、あぁッ・・せん・せぇっ・・」
名を呼べば、先生はいつも僕の欲しいものを与えてくれるのに。
今日はいくら呼んでも刺激は中途半端なままだ。
足がシーツの上を何度もあがいて、無数の皺を作る。
『キラ』
「ッ・・フ・・ラガ・・せんせぇ・・・ぁ、ア・・もうッ・・」



『・・キラ・・・イっていいぞ・・』



フラガ先生からの許可を得た僕は、
いつも先生がしてくれているように、先端の窪みを爪で軽く引っかいた。



「アァッ!!・・・あぅ・・・」





受話器越しに聞こえてくる息切れに、
あのかわいいコドモの痴態を思い浮かべ、顔がにやけるのを止められない。
自分の言うなりに動くという、男ならば誰もが感じる征服欲を満たされる。
…対象となっている相手もオトコだけれど。
きっと、達したばかりでまだ意識がほうけているのだろう。
あの小さな手を淫らな白濁に塗れさせて。
時折妖艶な雰囲気を纏うコドモの名を呼ぼうとしたその時だった------



「ふーらがせんせっ」

「っ!!!」

突然肩をつかまれ振り向けば、美術講師のバルトフェルドだった。
酒がまだ廻っているのか、とも思ったが、素がこういう男なのだ。
おとぼけているようで、実は計算高いというか。
なかなか腹のうちが読めない人物。
「な、何か用ですか?バルトフェルド先生」
精一杯のポーカーフェイスで対応する。
その隙に、キラとの通話を断ち切った。
寸前にキラの”先生っ?”という声がかすかに聞こえた。
心の中でスマンと詫びながら。

「やだなー、アンディと呼んでくださいって言ってるでしょうがー。
 クルーゼ先生が、フラガ先生を呼んで来いっていってるもんですからね…
 探しに来たんですけど…」

---お電話中でしたよね?
なんて何食わぬ顔で言いながら、電話を手にしている腕を掴まれた。
「なッ!!」
「あれー??切っちゃったんですか?」
携帯電話のディスプレイには、通話時間が映し出されているだけ。
酔っているのか、わざとやっているのか、本当に読めない男だ。と思いつつも
内心は、電話を切っておいて良かったとほっとする。
しかし次の瞬間、この男が酔っていないことを確信した。


「確か、”先生”って聞こえた気がするんだけど…」


裏に何か含んだ言葉。
口の端はやや上がっているようにも思えた。
「何言ってるんですかっ!ほら、クルーゼ先生が待ってるんですよね」
話題をそらし、俺はバルトフェルド先生の背を押して建物の中へ戻る。

…キラ、ゴメンな。







まだまだ宴もたけなわで、クルーゼの挑発にまんまと乗せられているフラガ。
先ほどの警戒心はどこへやら、今はもうクルーゼしか見えていないようだ。
さっきの電話の相手は一体誰なのだろうか。
テレフォンセックスらしいことをしていた相手とは。
暑いといって先ほど脱いだフラガの上着のポケットから、携帯電話と取り出し
通話記録を盗み見た。

「…ふーん…そういうことですか…フラガセンセ?」


コレは面白いことになりそうだ、とバルトフェルドは
グラスに残されたビールを一気に飲み干した。





続く。

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・・・・一体何ヶ月ぶりの更新なんだか、恐ろしくて書けんとです(笑)
ついにやりましたー!
電話Hネタ☆
…キラたん、放り出されたままですが大丈夫でしょうか?


     

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