悩める青少年　１

季節は７月、もうすぐ夏休みに入ろうという頃。

そして今はＬＨＲの時間。

「えー、では各種目の出場者を決めたいと思います。

自分の出たい種目に手を上げてください。」

体育祭実行委員のトールがちょっぴり緊張しながら言った。

９月に体育祭があり、今日はこれから自分の出る種目を決めるのだ。

体育祭なんて出たくないのに…

運動が苦手なわけじゃないけど、僕は人前に出ることが苦手だった。

そんな憂鬱な僕を余所に、

泣きたくなるような青空をバックに太陽がグラウンドを照り付けていた。

「…これでＬＨＲを終わりたいと思います。

優勝に向けて各自夏休み中も練習を怠らないようにしてください。」

トールはそういうと、自分の席に戻っていった。

トールの隣の席では、トールの彼女で、同じ体育祭実行委員のミリアリアが

今日のＬＨＲで決まった内容をノートに書き写しているようだ。

「じゃぁこのままＳＨＲ始めるぞ！」

突然担任のフラガ先生の声が耳に入り、僕は慌ててミリィから視線をはずした。

「・・・何か質問は無いか？・・・無いなら今日はこれで終わりだ。

それから、ヤマトは放課後残るように。以上。」

フラガ先生が出席簿を閉じながらそう言うと、タイミングを計らったように学級委員長のサイが挨拶の指揮を取った。

あ、・・・やっぱりバレてたか…。

「先生ぇ、さよーならー！」

「おぅ。寄り道すんなよ〜！」

「やだぁ、コドモじゃないんですよぉ〜だ！」

「まだまだガキだぜ、お前さんたちは。」

フラガ先生と、同級生の楽しそうなやり取りを遠くに聞きながら、僕は席に座ってグラウンドを眺めていた。

下校する生徒がまるで蟻のように見える。

今は夏休み直前の特別日課でクラブ活動も無いから、みんなどこか寄り道して帰るに違いない。

「何見てんだ？」

突然、頭上からフラガ先生の声が振ってきてびっくりした。

窓の外から、教室に目を移すと、いつの間にか皆帰ってしまっていて、教室にはフラガ先生と僕の２人きりだった。

「・・・」

僕は、フラガ先生のすべてを見透かしたような、青い目が苦手だった。

でも、こんな夏の青空みたいなとても綺麗な目が好きでもあった。

フラガ先生の青い目に吸い込まれそうになって、僕は慌ててグラウンドに視線を戻す。

「すごいでかいな、あの雲。」

「・・・はい。」

そんな取り留めの無い会話をした。

どうして、フラガ先生は僕を居残りさせた本題に早く入らないのだろうか？

そう思い、ふとフラガ先生の横顔に目を向けた瞬間、フラガ先生も僕のほうを向き、こう言った。

「なんで手を上げなかった？競技。」

「！！・・・」

そう、僕は体育祭のどの種目にも手を上げなかった。

僕は参加したくないし、どうせ僕が手を上げなくても誰も気づかないと思ったのに。

どうしてこの人は・・・気づいてしまったんだろうか？

先生から視線をはずしたかったけど、先生はさらに僕の顔を覗き込んでくる。

たまらなくなって僕は目を伏せた。

「出たくないのか？ヤマトは。」

「・・・はい。」

「そうか、なら仕方ねぇよなぁ。」

思ってもいなかった先生の言葉に、僕は目を開けた。

僕の前には先生の笑顔があった。

まぶしすぎる。涙があふれてきた。

どのくらい、僕は他人から微笑みかけられていなかったのだろうか？

僕は自分から世界を閉ざしていたのに、

心のどこかでは誰かに接して欲しいと望んでいた。

今回のＬＨＲでも、手を上げていない自分に皆が気づかないだろうと思いつつも、

気づいて欲しいと願う自分もいたのだ。

僕の目から流れる涙を親指で拭いながらフラガ先生は言った。

「思い切り泣いていいぞ。ただし、泣き止んだら笑うこと☆」

先生の手が、僕の頭をなでる。

僕はもう涙を止めようとは思わなかった。

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・・・長くなったので切りました。

いきなり７月設定からです。入学式から書こうとも思ったんですが、面倒で。(オイ)

しかも裏要素ゼロかよ！

まぁ１話目だしね。我慢しておくんなまし。

ムウさんが数学教師なのは、個人的な趣味です(爆)

理系がすきなので。

あと、キラが一人暮らししているというのも、

単にこの方が都合付けやすいでしょ、イロイロと。そう、イロイロとね。

だから深く突っ込まんでください。