abnormal affection
「んんっ…」 神尾が目を覚ました。窓から朝日が差し込んでいる。 「朝か…ふぁあ〜」 神尾は欠伸をしつつ軽く伸びをした。 「……あたたた…」 神尾は偏頭痛に襲われ、突如昨日の事が走馬灯の様に思い出された。 「……!?」 神尾は突然ベットを起き上がり、バタバタとバスルームへ向かう。 「俺…昨日……」 神尾が鏡に写る己を観ながら呟く。 「…でも……あれっ?」 己の姿を観てふと考える。昨日着てた服をちゃんと着ている。 特に痛い所がある訳でもない。ベットも乱れていない。 「あれは…夢…だったのか…?」 「…キモイ顔、ず〜っと写してんじゃねーよ…」 跡部の姿が鏡に映し出される。 「…うっわぁッ!!あ…跡部ッ…!?」 神尾は裏返った声で跡部に返答した。 「何だ神尾、人様を化物みてぇに……」 跡部が歪んだ表情を観せる。 「いや…ね…いきなり…現われる…から…」 神尾が慌てた口調で言う。 「何…そんなに慌ててんだよテメェは…?」 跡部がニヤリと笑いながら神尾に近付きつつ言った。 「な…何も慌ててなんか…ねーぜ?」 神尾は顔の表情を引きつらせつつ言った。 そして跡部は神尾の横に立ち耳元でこう囁いた。 「…昨日のお前は…本当、凄かったなぁ〜」 「はひっ!?」 再び神尾の声が裏返る。 「…昨日のお前は…バカ顔にしては魅力的で…背筋がゾクゾクしたってモンだ」 跡部の細長い指が神尾の首筋を伝う。 「あっ……」 神尾が困惑した表情で言う。 「……」 跡部は無言で手をぱっと離しベットへ向かう。神尾は跡部の今の行動で呆然としていた。 「オイ、テメェぼーっとしてんじゃねぇ!チェックアウトだぞ!!」 「あ、ハイッ!!」 神尾は我に還る。 「…俺は普段のテメェより…マゾヒスト神尾の方が好きだぜ」 不敵な笑みを浮かべる跡部。 「…こんの野郎…いっぺん死んで来いッアホベ!!」 神尾は跡部に枕を投げ付けた。 □ □ □ 「やっぱ俺様の教会がナンバーワンだな!」 跡部は軽く伸びをした後、教会の古びた扉を開いた。 「…幾ら古かろうがここが落ち着くな……」 跡部はそう言いながら十字架の前へと立った。 俺もそうだ。まだここに来て半年なのに何か落ち着くんだ。そして、懐かしさを感じる。 何でだろ?懐かしさを感じてるのは確かなんだけど、でも何に対してかが解んねーんだよなぁ〜? 「オイ、神尾〜」 ふと呼ばれて気付けば跡部は扉の前に立っていた。 「ちょっと俺は煙草買ってくるぞ」 「あ、はいっ!!」 …そうだ!!懐かしさを感じるのは跡部だ!でも…何で跡部?訳、解んねーよ…。 何処かで逢った…っけ?いや、そんな心当たりはないし…。 『跡部』と『教会』 この二つを結び付けると一層懐かしいと言う想いが強くなる。 二つに共通するもの……? 「あー全然解んねーよーッ!!」 神尾は頭の中で何度も思考するが何も想い浮かばない。 「あ、そっか!!跡部が帰って来たら聞けば良いんじゃねーか!…ふぅ……」 神尾は一呼吸おいた後、跡部の荷物を置こうと神父室にへと足を向けた。 そして、神父室のドアノブを握り開けようとした瞬間… ──カタカタッ… 神父室の中から微かな物音が聞こえてきた。 「……!?」 神尾はその微かな物音によりドアノブを一旦下に戻した。 ──今…物音…した…よな…? 神尾は歪んだ表情を見せる。 この神父室入るにはあの扉絶対通らないと無理だ。跡部は今煙草買い行ってる…この中には一体誰が居るって言うんだ… もしや…あの有名な教会泥棒か!?でも、跡部は金の管理ちゃんとしてるから、何も取るモン無いし…… ご愁傷様だな…あんな古びた扉わざわざ開けて、神父室入ったは良いけど何も無いんだからな…取り敢えず…捕まえないと…。 ──ガチャ!! そして神尾は勢い良くドアを開いた。 「…誰か居るのか!?」 神尾が部屋に入ると同時に叫んだ。 「…!?」 部屋の中に居た人物が神尾を驚いた表情で見つめる。 「…あ……」 神尾はその人物が自分には無いモノを持っているので見惚れてしまった。切れ長な瞳、その人物で神尾の瞳の中は埋め尽くされた。 「……妖しいモノやない…って言っても無駄やな…」 その人物は苦笑いをしつつ、神尾の方へと近付いて来る。 自分より大きくて…とても鼻筋の通った…そんな彼は俺に手を差し伸べてこう言った。 「えーっと…この教会の元伝道師の忍足侑士と言います。宜しくな〜」 俺たちは握手を交わし合った。 「今この教会で伝道師をしている神尾アキラです。こちらこそ宜しく」 神尾が笑顔で自己紹介をする。 「…でも…今日は何の用事で?」 神尾が不思議そうに忍足に尋ねる。 「いや、忘れ物を取りに来たんやけど見つからんくてなぁ……」 忍足が歪んだ表情を見せる。 「…忘れ物…?」 神尾の表情が曇る。 「…大切な人から貰ったモノなんや…」 忍足は遠くを見つめる様な瞳で切なそうに言った。 神尾はその忍足の瞳に魅了され危うく我を忘れそうになった。 「…一緒に探しましょうか?」 そう神尾が言うと忍足はありがとうとお礼を云って笑みを浮かべた。 「所で探しモノって何なんですか?」 神尾が忍足に尋ねる。 「あー…ってか敬語止めへん?同じ伝道師でそんな年も変わらんみたいやし…神尾君って呼んでええかな?」 忍足が無意識にニッコリと笑う。その忍足の笑顔により神尾は頭がぼーっとしてしまう。 「…ってか、神尾君…人の話聞いてるん?」 忍足は不思議そうな顔で神尾の顔を覗き込んだ。 「あ…あぁ〜ゴメンゴメン……」 そう謝った後、神尾はふと深司の言葉を思い出す。 『以前いた伝道師は逃げるように……』 「あーーーーーーーっ!!!!」 神尾はそう叫んで忍足を見つめた。 「何やいきなり…」 忍足が驚いた表情を見せる。 「いや…た、確か…前の伝道師って……」 神尾はそこ迄言うと言葉に詰まり、下を俯いてしまった。 「…逃げたって奴?…それ、俺の事やで」 そう忍足がサラっと言うと、神尾は勢い良く顔をあげて忍足を凝視した。 「…忍足さん…なんだ…」 神尾は複雑な心境で忍足を見つめる。 「…俺は…跡部からの行為に耐えられへんかった…それと……」 忍足が口籠もった。 「それと…何?忍足さんっ!!」 神尾は少し苛立った口調で言い放つ。 「…好きな奴が…おんねん…」 next 勢いに乗って更新じゃー!感想貰うとやる気出るんです(単純人間) えと、新たな人物は忍足です。相当この忍足の役が一番悩みました。候補としては3人くらい挙げてたんやけどね。 先ず、跡部が攻めで許せる人物じゃないといけないという絶対条件があるので…。色々と悩んだ挙げ句忍足、忍足侑士です。 此処に出てくる忍足は結構恰好良いイメージで描いてます。普段はヘタレとかヲタクとかなんだけどね…あはは(乾笑) そんでまぁ、忍足の好きな人はうちの好きCPを考えればどちらかに絞られる訳で。そこらへんは今は想像して考えてやって下さい。 で、今回の更新分は結構重要な回だったりします。まだまだ先長いですがお付き合い頂けると嬉しいですvv 20030907戒堂訛音