abnormal affection

神尾は深司の教会へと足を向けた。 「…神尾が連絡無しに来るなんて、珍しいね」 常に伝道師は教会に居る訳ではない。それは神父も同様である。 「…とにかく外は寒いんだしさ…さっさと中入りなよ」 深司はチャペルの裏手にあるロビーに神尾を招いた。 「…で、どーしたの?何か話があって来たんでしょ?」 珈琲をカップに注ぎつつ淡々と話す深司。 「あぁ…うん…そうなんだけど……」 手を組んで下を俯く神尾。 「…はい、珈琲。猫舌なんだから気を付けて飲みなよ」 手を組む神尾の目の前に珈琲の注がれたコーヒーカップが置かれた。 「あぁ、ありがと…」 神尾はコーヒーカップを口に運んだ。 珈琲を一口飲み、息を一息吐いて、神尾は再び…… 口を開いた。 「えーっと、やっぱり俺…跡部しか考えられないんだ…」 神尾は深司から目線を反らす事無く、話を続けた。 「…好きとかそういう次元じゃなくて…あの人がいなきゃ駄目…俺は…跡部が必要なんだ……」 神尾はそう言い終えると頭を下にした。 「…御免……」 神尾が深々と頭を下げるのを深司は見つめつつこう言い放った。 「…じゃあ…俺は必要無いんだ……」 深司の冷淡な一言。 「いや…えと…そういう訳じゃなくて……」 何か納得くる言葉を探すが思いつかない。瞬きの回数は増え、呼吸は荒がる。 「…ばっかじゃないの……」 ぼそぼそと呟きだした深司を神尾は凝視した。 「…そんな間に受けなくても……冗談に決まってるじゃんか…本当、神尾はそういう所バカ正直なんだよね…」 いつものようにブツブツと呟く深司。 「…あぁ、そ…それなら良いんだけど……」 神尾は微かに安堵の表情を浮かべた。 「神尾は…そういう所いい加減直した方が良いよね……」 無表情でブツブツと呟く深司。 しかし、 心では泣いていた。 今、この場で… 泣いて…泣いて… 泣き叫びたい…… でも、 大切な君が 言う事だから 痛い位良く解る。 「…あのさぁ…今週は俺たちが伝道師になって初めてのクリスマス礼拝なんだよね…だからさぁ…早く準備再開したいんだよね……」 深司が神尾を睨むように呟く。 「あぁ…ご、ゴメンって深司!俺もうか、帰るからッ!!!!」 神尾は慌てて、帰る身支度の準備をした。 「…神尾だってさ…こんな所でサボってる暇なんて無いんじゃないの…?あーあー良いよねぇ〜神父が伝道師溺愛だとねぇ…何かムカつくな……」 本当は…帰らないで欲しいんだ。 「…あーもー解ったって〜!帰って俺も準備するからーっ!!」 帰ってなんか欲しくないんだよ。 「…そ、それじゃーッ!またなー深司ー!!」 でも、君をこれ以上観てると… 見えない何かに自分の心が押し潰され…… 音を立てて崩れていき…… 「…お互い初めてのクリスマス礼拝頑張ろうなーっ!」 ズキズキとちくりちくりと俺の心は… 痛むどころか悲鳴を上げている。 「…あーうん、またね…」 本当に好きだった。 いや、 今でも好きだよ。 今でも愛しています。 だからこそ…… 「…幸せにならないと承知しないからね……」 「…しん…じ……」 そんな瞳で見つめるなよ。 泣きたいのはこっちの方だよ。 「…御免な…ホント御免……」 あぁ…もう…… 「…御免で済むなら警察なんかいらねーッ!…って何時も言ってるじゃんか…」 堪えきれなかった…俺の瞳からは、一筋の涙が流れた。 「…俺は…一人で大丈夫だから……」 力一杯の強がり。 「…じゃあね……」 ――バタンッ!! さようなら…俺の初恋…… さようなら…愛しの……… 「はぁ……」 神尾の溜息は白い息にへと変化した。 これで良かった…これで…… 「…はぁ…ッ…」 神尾は声を上げて一人泣いた。 人一倍気遣い、 人一倍情に熱く、 人一倍脆い。 「うっ…く…ッ…」 俺は、人を傷つける事を酷く嫌っている。 しかし、 今回ばかりはどうしようも…なかった…… 「…あぁ…泣きやまないと……」 今俺は泣く事は出来ない。 今俺がやるべき事それは……真実と向き合う事。 「…御免で済むなら…警察なんか…いらねーよ〜ッ!」 神尾はお腹の底から叫んだ。 幸せを 手にする為には、 何らかの 犠牲が生じる。 所詮人間は 自分が一番可愛い。 それを認めるのは 凄く困難な事である。 だが、 それを初めて 人間は立証した時に、 『成長』を 遂げるのである。 「…さて、帰ってクリスマス礼拝の準備するぞ〜っ!」 教会には愛する貴方が待っているんだ。 早く帰ろう貴方のモトへ。 そして、 沢山貴方を愛させてください。 ■ ■ ■ 「使徒信条」 『我は天地の造り主、全能の父なる神を信ず。 今日はクリスマス礼拝。 2000年最初のクリスマス礼拝はイブと言う素晴らしい日に行なわれた。 ──身体のよみがえり、永遠の生命を信ず。アーメン。』 明日はいよいよクリスマス本番。 キャロリングが終わったら直ぐに行かなければ…… 「神尾〜愛餐会の準備の手伝ってくれ。俺も後から行くからな」 「は〜い、解りました〜」 今日受洗した人や他の教会から移って来た人に挨拶をし回る跡部。 「…やっぱ神父って大変だなぁ……」 「…ふぅ……」 愛餐会も一段落しやっと俺は席についた。 その席からは皆に囲まれている跡部が見えた。 その跡部の姿を俺はじっと見つめた。 「……!?」 そしたら不意に跡部と目が合った。 跡部は満面の笑みを投げ掛けてくれた。 俺は恥ずかしさの余り目線を反らした。 どんどん身体全体の体温が上がっていくのが実感出来た。 俺は席を立ち教会の外へ出た。 「…何だよ…アイツ……」 俺はあの日以来、跡部と仕事以外の会話がマトモに出来ないでいた。 「…又だ……」 跡部が好き過ぎて直視出来ない。 外に出てみると、 街はクリスマス一色。 明日、 あの景吾と逢う。 嬉しい様な… 嬉しくない様な… 複雑な気持ち。 でも、 逢わないと何も始まらない…そんな気がする。 20世紀最後の年。 神は私に試練をお与えになった。 その試練を乗り越え素直になり、真実を認めた時、私は… 永遠(とこしえ)の愛を、初めて手にするだろう。 「主よ…私をどうか愛する人の処へお導き下さい…」 今は唯、祈るだけ。 next

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