空に背を向ける(1)

名前に見覚えがある人手え挙げて(笑)

SE 強く吹きつける風の音
リフル(子供)「う…」
SE 砂の上で上半身を起こす。砂の音
リフル(子供)「(息を呑み)…お母さん!」
リフルの母「う…。リフ、ル…」
リフル(子供)「お母さん、しっかりして!」
リフルの母「ごめん…ね、リフル…。お母さん、もう…」
リフル(子供)「…! いやだよお母さん、目を開けてよ、ねえ! おかあさんっ…!!」
(リフル、しばし泣き崩れる。やがてそれがすすり泣きになった頃)
SE 風の音に人の声と、砂漠を歩く4人の足音が混じり始める
男1「…親子連れだって?」
シア(子供)「そうだよ、俺が見た時、まだ生きてた! だから早く!」
男2「たぶん砂嵐にやられたんだろう」
男3「しかし珍しい話だ」
男2「ああ、ここ何百年も、余所者がこの辺りに辿り着くなんてこと無かったのにな」
シア「あっ、あそこ!」
SE 砂漠を駆ける足音
(SEにかぶって小さく 男3「お、おい、あれ…!」男1「あ、ああ」)
シア(子供)「良かった、君は気がついたんだね」
リフル(子供)「うん、でも、お母さんが…」
シア(子供)「もう大丈夫、大人の人呼んできたから。…どうしたの? 早く助けてあげようよ」
男1「(前のシアのセリフの語尾に重なるように)そいつから離れるんだ!」
シア(子供)「え?」
SE 砂漠の上を駆けてくる3つの足音男がリフルを蹴り飛ばす音
リフル(子供)「うあっ!」
SE リフル、砂漠に倒れこむ
シア(子供)「何するんだ! ひどいことしないでよ!」
男2「おまえ、このガキの髪の色見てみろ! 金色じゃねえか!!」
男1「おまえだって知ってるだろ。金色の髪を持つ者は、災いを呼ぶ呪われ人だ」
シア(子供)「知ってたけど、―――で、でも…」
男3「まさか本当に金髪なんて人間がいるとはな…。禍々しい…」
男2「うわ、母親のほうも金髪だ。…もっとも、こっちはもう駄目だな。死んでるよ」
リフル(子供)「そんな…、お母さん!」
男1「おっと、逃げるな」
リフル(子供)「やめて…。離して!!」
男3「…どうする」
男1「こんなガキでも呪われ人だ。何をしでかすかわからん。とりあえず長老に引き合わせてみよう」
男3「そうだな、殺すにしても放り出すにしてもそれからだな」
シア(子供)「やめてよ、助けてあげてよ、ねえ!」
男2「おまえは黙ってろ」
男1「さあ、来るんだ。…妙な真似はするなよ」
リフル(子供)「い…いやだ、いやだー!!(語尾にエコー。だんだん小さくなる)」
SE 風の音、だんだん大きくなる


   タイトルアナウンス「空に背を向ける」


SE 石造りの階段を登る足音がふたつ
前の世話役「呪われ人はこの塔の最上階に閉じ込めてある。シア、おまえの仕事はあいつの身の回りの世話と空読みの結果を報告すること、それと、あいつを逃がさないための監視役。」
シア「わかってます」
前の世話役「ま、分厚い扉に頑丈な鍵、窓には鉄格子とくりゃ、そうそう逃げ出せないとは思うけどな」
シア「俺は、塔の1階に住み込むことになるんですよね?」
前の世話役「そうだ。基本的にあいつの空読みは一日に一回だけど、急な砂嵐なんかを読むことがあるからな。そういう時にあいつが呼びつけたら、すぐに駆けつけなきゃならん。色々不自由なとこもあるが、我慢するんだな」
シア「はい」
前の世話役「じゃ、鍵を渡しとく、塔の扉のと、最上階に続く階段のと、最上階の部屋の。あと、おまえの部屋のな」
シア「…ずいぶん厳重なんですね」
前の世話役「なんせ相手は呪われ人だ。しかも空読みなんて妙な力を持ってるからなあ。(ひと息ついて)…しかしおまえも妙なやつだよな。街を飛び出して3年間行方不明になってたと思えば、ふらりと帰ってきて、よりによって呪われ人の世話役なんかやりたがるなんて」
シア「(自嘲気味に)…俺にはもう、帰る家もなかったし。呪われ人の世話役っていう仕事なら、とりあえず住む所はもらえるって長老が…」
前の世話役「そうか。まあ、そのおかげで俺は晴れてお役御免になれるんだから、有難いことこのうえないけどな。…着いたぜ。ホラ、鍵開けて」
シア「あ、はい」
SE 鍵を開ける。重たい扉が開く。
前の世話役「おい、新しい世話役を連れてきたぞ」
リフル「…その男が?」
前の世話役「今日から俺に代わって、こいつがおまえの世話をする。」
シア「シアだ。よろしく」
リフル「………」
前の世話役「じゃあこれで。…シア、行くぞ」
シア「…あ、いや。俺はもう少し居るよ」
世話役「おまえなあ…(囁き声で)馬鹿、あんまり長居はするな。おまえも呪いをひっかぶるかもしんないぞ?」
シア「(囁き声で)早く仕事に慣れたいから、少しこいつと話をしてみたい」
世話役「(溜め息をついて、囁き声で)…わかったよ。じゃあ、とにかく鍵には気をつけるんだぞ。くれぐれも逃げられないように」
シア「わかった」
SE 扉の開閉音。階段を下りる足音が小さくなっていく。
リフル「(ひとり言のように)ふん、臆病者。最後までびくびくしやがって…」
シア「(リフルにかまわず)改めて、今日からリフル、おまえの世話をすることになったシアだ。よろしく」
リフル「ふーん…」
シア「どうした」
リフル「おまえはあんまり怖がってないみたいだな。」
シア「………」
リフル「今までのやつらはみーんな、俺が呪い人だってんでびくびくしながら来て、そんでこの髪の毛見てもっと怖がったぜ?この金の髪こそ、俺が呪われてる証拠だからな」
シア「…俺は、おまえの世話役だ。いちいち怖がっていては仕事にならん」
リフル「…変なやつだなおまえ。面白い」
シア「それより、今日の空読みは…」
リフル「ああ、もう終わってるよ。明日は風が弱い。穏やかな天気だと伝えてくれ」
シア「わかった。ではまた後で…ん?」
リフル「どうしたー?」
SE 拳で軽く壁を叩く音
シア「この壁のひっかき傷はなんだ? えらくたくさんあるが」
リフル「ああ、それな、日数が数えてあるんだよ。今日のを入れて1352本あるはずだぜ? …俺がこの部屋に閉じ込められてから、もう四年目だ」
シア「四年か…。長いな。まあ、金の髪を持つ呪われ人のおまえが、それだけ生かされてるのが不思議なくらいだが」
リフル「…っ! (声を荒げて)そんなこと、俺が一番よくわかってるよ! (押し殺した怒りの声で)…もう、行けよ。出てけ」
シア「………」
SE 扉を開ける音
シア「(小さく)…すまなかった」
リフル「えっ…?」
SE 扉を閉める音。階段を降りる足音が小さくなる。
リフル「今あいつ、…謝った…? この、俺に…?」
SE ベッドに腰掛ける。
リフル「シア、か…。今までのやつらとは、なんか違うな…。」


SE 人々のざわめき
リフル(子供)「(泣きながら力なく)やめて、はなしてぇ…。たすけ、て…」
リフル(モノローグ)「これは…4年前の…」
男1「長老、こいつだ!」
リフル(子供)「あっ」
SE 突き飛ばされ砂利の上に倒れこむ
SE どよめく人々(「ほんとに金の髪だ…」「街の中に入れても良かったの?」「気味が悪いわ…」「さっさと殺しちまったほうがいいんじゃないか?」など口々に)
長老「おお、言い伝え通りの金の髪…。まさしく災いを運ぶ呪われ人じゃ、恐ろしい…」
男1「どうします」
長老「言い伝えに従い、命を絶って後、その骸を街から遠く離れた場所に打ち捨てるのが良かろう」
リフル(モノローグ)「そうだ…。この時俺は母親に死なれ、あげく自分も殺されそうになってて、もう何もかもどうでもいいような気分になってたんだ…」
男1「じゃあ、処刑の方法はどうしましょう。 首を跳ねますか?」
長老「そうじゃなあ…」
リフル(子供)「あ…」
男1「(驚いて)ちっ、なんだよ、急に起き上がるんじゃねえよ。まだそんな力残ってやがったのか」
リフル(子供)「くる…」
男1「はあ?」
リフル(子供)「砂嵐がくるよ…!」
男1「何でまかせ言ってやがる」
リフル(子供)「ほ、ほんとだよ。かなり大きい…。みんな外にいちゃ危ないよ!」
男1「うるさいな、黙ってろ」
長老「日が沈む前に処刑を行う。準備をしろ。それまでにその呪われ人は牢に繋いでおけ」
男1「はい」
男2「ほら、来い!」
リフル(モノローグ)「両腕を掴まれて立たされ、もう駄目だ、死んじゃうんだって絶望した時…」
SE 遠くで風の音
男1「なんだ…? 風が強くなってたな…」
SE 風の音、だんだん強く大きくなる
男2「まさか…!」
SE 風の音、最大。木々のざわめく音。石造りの建物が壊れる音。人々の悲鳴。
男3「砂嵐だっ・・・!」
女「大きい!」
長老「みな、建物の中へ避難するのじゃ、早く!」
男1「長老、こちらへ!」
SE 乱暴に木の扉を閉める音。建物の外ではまだ風と砂が吹きつける。木の扉ががたがたと鳴る。
男1「(息を切らしながら)ちっ、長老、こいつだ、こいつが砂嵐を呼びやがったんだ!」
リフル(子供)「そんな、僕は何も…!」
男2「そういやこいつ、砂嵐がどうとか言ってやがったな…」
男3「災いを呼ぶ者…」
女「金の髪の呪われ人…」
男1「殺せ! 今すぐ殺しちまえ!!」
わあっ、と同意の声が人々からあがる
長老「待て!」
途端に人々が口をつむぐ。相変わらず建物の外で続く、風の音と扉がきしむ音だけが聞こえる
長老「…おまえ、砂嵐がくる、と言ったな。何故わかった?」
リフル(子供)「…おじさん達は、わからないの…?」
長老「………」
リフル(子供)「えっと、…空の声が、聞こえるんだ。それで、嵐がくるのがわかるの。…他にも、雨や風なんかも…」
男1「長老、何してるんですか? 早いとここいつを処刑しちまわないと…」
長老「この者は殺さない」
男1「なっ、なんで…」
どよめく人々
長老「よいか皆。確かにこやつは呪われ人。この砂嵐も、こやつが災いを呼び込んだからだ」
人々からあがる「そうだそうだ」「そうよ!」という声
長老「しかし、こやつはどうやら呪われ人であるがゆえ、不思議な力を持っているらしい。天気が読めるのだ。…そうだな?」
リフル(子供)「うん…」
長老「…となれば殺すのは惜しい。生かして、街の役に立ってもらおう」
男1「そんな…!」
男2「呪われた力に頼らなくったって…」
長老「砂嵐がいつくるかわかれば、防御も容易い。雨が降るのはいつか、風がどう吹くのかがわかれば、作物を育てるのに大きな助けになる。…違うか?」
男1「うっ…。それは…」
長老「呪われ人を街で生かしておくことは危険なことかもしれんが、それだけの価値はあろう」
男1「まあ…長老がそこまで言うんなら…」
ざわめく人々。口々に「しかたない…」「でも恐ろしいわ…」「長老の決定だ」
長老「…さて、そういうことだ。呪われ人、名は?」
リフル(子供)「リ、リフル…」
長老「では、リフル。おまえは今日から空読みとして、この街の役にたってもらおう」


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