空に背を向ける(2)

しかし強引な話の展開ですね

リフル「…はっ!」
SE 布団を跳ね上げ起き上がる音。ベッドの軋み。
リフル「夢か…。(大きく息を吐いて)…あの頃の夢なんて、久しぶりだな…」
SE 鍵の音。扉の開く音。
シア「夕飯だ。…なんだ眠ってたのか?  
SE 扉の閉まる音
シア「昼寝とはいいご身分だな」
SE 部屋を数歩歩く音に、トレイに乗せた食器がカチャカチャと鳴る音が重なる。トレイを机に置く音。机に食事を並べる皿の音。
リフル「…おい、二人分あるぞ?」
シア「…? それのどこがおかしい?」
リフル「え、だって…。シアもここで食うのか?」
シア「一人で食事してもつまらんからな」
リフル「(十分に間をおいて、少し嬉しそうに)…おまえ、やっぱり変なやつだ」
シア「なぜだ」
リフル「だって、この部屋で俺と一緒に夕飯食べようなんて世話役、今までいなかったぜ?」
SE 椅子を引く音
シア「いいから座れ。食べるぞ」
リフル「ああ、はいはい」
SE 椅子を引く音。
SE 食事をする、食器やフォークが擦れる音
リフル「…そういや、前の世話役が言ってたっけ。シアってこの街飛び出して三年間行方不明になってたんだって?」
シア「ああ…」
リフル「なんでそんなことしたんだ?」
シア「…知っての通り、このコトリクはちっぽけな街だ。一歩街の外に出れば、あとはえんえん砂漠が続く。ほとんどの人間が街から出ることなく一生を終えるが、俺はそれがいやでな。街の外がどうなってるのか知りたくて、それで」
リフル「へー。よく家族が承知したなあ。」
シア「両親はとうに死んでたからな。俺は叔父の家の世話になってたが、その叔父も病気で死んで。それも街を出るきっかけだったな。…俺が十二の時だ」
リフル「そっか…、ごめん」
シア「いや」
リフル「で、街飛び出して、三年間。何してたんだよ。街の外とやらはどうだった?」
シア「…別に何も。途中小さな街はあったけど、やっぱり行けども行けども砂漠で。こうしておめおめと戻ってきたってわけだ」
リフル「なんだ…」
シア「…今度は俺がおまえのことを聞こう。空読みというのは、どういうもんなんだ?」
リフル「ど、どうって…」
シア「どうやったら明日やら明後日やらの天気がわかるんだ?」
リフル「そ、そんなの説明できないよ。そこの窓開けてぼうっとしてれば、空の声が聞こえるんだって。」
シア「それはリフルが呪われ人だからか」
リフル「…そうなんだろうな。だから、シア達から言わせるとこれは呪われた力なんだろ? 髪の毛だって、こんな色だし…」
シア「そうだな。コトリクの街の人間は、髪の毛は黒か茶色。…おまえのは、綺麗な金髪だ」
リフル「(驚いき、焦りながら)綺麗って…」
シア「おまえの母親も、綺麗な金髪だった」
SE 急に椅子から立ち上がり、机を叩く音。机の上の食器が揺れて音をたてる。
リフル「―――!! なっ、なんで…? なんでおまえがお母さんのこと知ってるんだよっ!」
シア「…わからないか? リフル」
リフル「ええ…?」
シア「四年前、俺はその頃からコトリクの街の外というものに憧れてた。だからあの日も、叔父の目を盗んで街の外の砂漠をうろついてた。そして、金髪の親子が行き倒れてるのを見つけた」
リフル「(大きく息を呑み、充分溜めて、怒りの声で)…おまえが! おまえがあの時の!!」
シア「そうだ。思い出したか」
リフル「ああ、思い出したぜ…。ちくしょう、おまえのせいだ! おまえがご丁寧に大人なんて呼んで来るから、俺はこんな所に閉じこめられて…! その間おまえはコトリクを飛び出して自由を満喫かよ、ふざけるな!!」
SE 拳を机に叩きつける。はずみでコップが倒れて床に落ち、割れる。
リフル「…出てけ。この部屋から出て行け」
シア「ああ、そうするよ」
SE 割れたコップのかけらを拾う音。食器をトレイに戻す音。トレイの上の食器が鳴る音を足音と共に。扉が開き、閉まる。鍵をかける音。
リフル「(扉が閉まって、しばらくして、涙声で)…よりによって、あれがシアだったなんて…。ちくしょうっ…!」


SE 扉がだんだん、と叩かれる。
シア「リフル」
リフル「…なんだ」
シア「…入ってもいいか」
リフル「世話役が、何呪い人の機嫌伺ってんだよ」
シア「………」
SE 鍵を開ける音、扉が開き、閉じる。
リフル「よう、シア」
シア「リフル、昨日は…」
リフル「昨日のことならもういい。一晩寝て冷静になった。…考えてみりゃ、あの時小さかったおまえ一人で俺たち親子を助けられたとは思えないしな。大人を呼んでくるのが当然だろ」
シア「でも」
リフル「おまえが見つけくれたおかげで、俺は今でも生き延びてる、そう思うことにした。だからもういい。呪われ人でもなんでもな」
シア「…違う」
リフル「ん? 何だ?」
シア「違う。おまえは呪われてなんか無い。ただの人間だ」
リフル「(驚き)な、何言って…。だって俺は金の髪で、空読みもできて…」
シア「空読みなんて、呪われた力でも不思議でもなんでもない。あれは知識さえあれば、誰にでもできる」
リフル「―――なっ…!!」
シア「いいかリフル。俺は嘘をついてた。三年前街を出てから俺は西へ向かった。けどいっこうに砂漠は終わらなくて、そのうち食料も底をついてもう駄目かと思ったとき、空を飛ぶ不思議な乗り物に運良く出会ったんだ。俺はそれが飛行機というものだということすら、その時はわからなかった。とにかく俺は助けられ、飛行機でクードという大きな国に連れて行ってもらえた」
リフル「クード…」
シア「クードは学問や技術…、何もかもがコトリクよりはるかに高度で、発達していて。…それに、おまえと同じ金の髪の人間が大勢いた」
リフル「………!(息を呑む)」
シア「クードで俺は色んなことを学んだよ。気象のこともな。雲の形や風の向き、空の色や鳥の様子。そんなのを考慮して未来の天気を予測することなんて簡単だ。リフルはそういう知識を使って空読みをしてたんだ、そうだろ?」
リフル「…はっ、そうかよ、そういうことかよ」
シア「リフル…?」
リフル「おまえはその知識とやらを身につけて帰ってきたわけだ。…俺はお払い箱かよちくしょうっっ!!」
シア「リフル、それは違う」
リフル「何が違うんだよっ。…そうだよ、俺はクードで生まれた。九歳の時乗ってた飛行機が落ちて、砂漠をさまようはめになったんだ。それでやっと人の居るとこに辿り着いたと思えば、呪われ人なんて呼ばれて。俺が今まで生きてこれたのは、空読みなんて力が、…呪われ人だからこその力があるって俺が演じて、それを街の連中が信じ込んでたからだ。シアが俺の代わりに空読みができるんなら、もう俺はいらない。金髪の呪われ人の俺なんかすぐに殺されちまう…!!(最後は涙声で)」
シア「殺させない!!」
リフル「え…?」
シア「…ずっと後悔してきたんだ…。俺が言い伝えのことを深く考えずに、金髪の親子の元に街の大人を招いてしまったから、おまえは呪われ人とさげすまれ、こんなとこに閉じ込められて…。金の髪がなんだっていうんだ。俺はずっと、リフルを助けたかった。そのために一旦街を離れることにしたんだ」
リフル「たすけ…る…?」
シア「金色の髪だから呪われ人なんて馬鹿げてる。そもそもそんな言い伝えがあるのは、コトリクが大昔自分からけしかけた戦争に負けて、はるばる逃げてきた人間が作った街だからだ。その戦争の相手が、金髪の人間の国だったんだ。…これも、クードで歴史を学んでわかったことだ」
リフル「俺、ここから出れる、のか…?」
シア「出してやる。クードに帰りたいだろ?」
リフル「でもどうやって…? そりゃ確かに世話役のおまえは鍵を持ってるから、この塔から出るのは簡単だけど、塔の外にも監視の目があるぜ? 追っ手だってすぐにかかるだろうし…」
シア「大丈夫だ。俺に考えがある。リフル、おまえを堂々と外に出してやる」
リフル「堂々、と…?」


SE 階段を上る二つの足音。やや早い。
長老「まさかそんな…」
シア「本当なんです長老。とにかく早く来て下さい」
SE 階段を登りきる。鍵を開ける音。扉が開く音。
リフル「長老、シア…!!」
長老「おお、なんと…!!」
SE リフルに歩み寄る長老の足音。やや摺り足。
長老「髪が…。髪が黒になっておる…!」
シア「今朝、朝食を運んできたらこうなっていたんです」
長老「何故だリフル! 何があった!!」
リフル「お、俺も朝起きたらこうなってて…、何がなんだかわからないんだ。ひとつ思い当たることがあればすれば、…俺、今日が13歳の誕生日なんだ」
長老「なんじゃと…?」
リフル「…そこ、壁に傷があるだろ? それ、俺がここに来てからの日数をずっとつけあるんだ。それ数えてみたら、今日が誕生日になるんだよ」
シア「長老、コトリクでは13歳で成人だ。これはひょっとして、成人を迎えたことで呪いがとけたのでは…? 空読みの力もなくなったようですし」
長老「なにっ、そ、それは本当か!?」
リフル「ああ…。どうしても、もう空の声が聞こえないんだ…」
長老「…なんということだっ…」
シア「どうします、長老。もうリフルは金の髪の呪われ人ではありません」
長老「(力無く)式にコトリクの民として受け入れるしかなかろう。どこへ行こうと好きにするがいい。この塔にこのまま住んでいてもかまわん。」
リフル「あ…ありがとう、ございます…。あのっ、長老!」
長老「(力無く)なんだ」
リフル「俺、空読みの力はなくなっちゃったけど、呪いがとけて本当に良かったと思ってます。これで、俺が街に災いを呼ぶ危険はなくなったわけだし」
長老「ああ…。そうか、そうだな。そこは喜んでやらねばならなかったな。…すまなかった」
SE 長老の足音。扉が閉まる。
長老「しかしもう空読みが居ないとなると、辛いのう…」
SE 扉が閉まる。もう鍵の音はしない。
シア「…うまくいった、な…」
リフル「うん…」
シア「さすがクードの染髪料。綺麗に黒く染まるもんだ」
リフル「(呟くように)…まなかっただって…」
シア「うん?」
リフル「すまなかった、だって…。あの長老が。…なんだよ、髪が黒くなっただけじゃねえか。金じゃなくなっただけじゃねえか…。それだけで、こんなっ…」
シア「リフル…」
リフル「馬鹿だよ、この街の連中…。髪の色だけでさっ…!」
リフル、泣く。
シア「そうだな…。だからこの街を出るんだ。もうおまえは自由なんだから。…さて、どうする? コトリクの街からかなり離れた辺りでクードに通信を入れれば、飛行機で迎えに来てもらえる。なんなら今すぐ出発したっていいくらいだ。あんまり長くコトリクにとどまってると、髪が伸びてまだ金髪だってことばれちまう。そうしたら呪われ人に逆戻りだぞ」
リフル「(泣きやみ、鼻をすすって)うん、あーでも、ちょっと待って。あと5日、待ってくれ」
シア「何する気だ?」
リフル「んー、俺が知ってるだけの天気の知識、書いて残していこうと思って。…何があったら砂嵐が起こるのかとか、どんな雲があったら雨が降るのか、とか…」
シア「リフル…」
リフル「(照れ隠しにぶっきらぼうに)ま、まあ、いちおう衣食住は面倒みてもらってたしな。長老もえらいあわててたし」
シア「(嬉しそうに)そういうことを言い出すと思ってたよ」
リフル「へへ…。シアも手伝ってくれよな」
SE リフルの足音。上下開きの窓を開ける音。
リフル「…毎日毎日、この窓開けて、鉄格子ごしに空を見た。そんで下を見て、街を眺めるんだ。この部屋は最低だけど、この窓からの眺めは悪くなかったな…」
シア「それももう終わりだ。今日からは違う場所からでも、いくらでも眺められる。ひとまず第一歩だ。塔の外に出てみるか」
リフル「うん、そうだな」
SE 扉が開く音、閉まる音に、シアとリフルの会話が重なる
(シア「ところでリフル、本当に今日が誕生日なのか?」リフル「さあな〜」 
SE 階段を下りるふたつの足音が小さくなっていく

 

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