姉しよ三国志〜柊家の野望〜
第四話 ねーたんの決意。
―――205年。宛。
「報告します! 新野が曹操軍の攻撃を受け、陥落!」
「へ? もう!?」
「ご注進! ご注進! 江陵が曹操軍の攻撃を受けて陥落! 朱霊将軍が寝返りました!」
「マジで!?」
「流石、魏の礎を築いた曹孟徳ね……今までの戦いとはわけが違う」
「だーっ、もう! キリがない! 攻めても攻めても取り返されるし!」
「だったらもっと攻め取ったらいいんだよ」
「うむ! 向こうが一都市落とす間に、こちらは二都市落とせば良いのじゃ」
「そのとーり!」
「そうだね! よーし、気合入れていこう!」
「おおーっ!」
「行っちゃったね……」
「最近私達、ぞんざいな扱いだよね」
「仕方ないよ、私達、あんまり戦闘は得意じゃないから」
「アタシは探索でもしてくるワ。イイ男が居たらゲットしてくるネゥ 」
「じゃあ……私は扇動でもしてくる」
「私達は、また商業でも上げようか」
「うん」
一方その頃。
―――許昌。
「ほう、柊軍が出撃したか」
「はっ」
「殿! 我が軍の出撃の準備は整っておりますぞ」
「よし! この隙に宛を落とすぞ! 洛陽にも援軍を要請せよ!」
―――新野。
「進め! 進めっ! 勝利の女神はお前たちの前に下着をチラつかせているんだぞ!」
「ぬぅっ! ここはなんとしても持ちこたえろ!」
「矢に火を点けて……撃て、撃てーっ!」
「あちっ、あちっ!」
「これなら楽に勝てそうだなー」
―――宛。
「今日は頑張ったね、ぽえむちゃん」
「うん、商業が50も上がったね」
「た、大変です!」
「? どうしたの?」
「曹操軍がこの宛に進軍中と伝令が参りました!」
「ええっ!?」
「許昌からの曹操率いる軍が約6万、洛陽からの援軍が約4万。あわせてその数、およそ10万!」
「ど、どうしよう、ぽえむちゃん。高嶺はまだ戻ってきてないし」
「……ウチの姉さんもまだ帰ってきてないよね」
「と、とにかく防戦の準備をしなきゃ」
「この都市の部隊って、どのくらい残っているのかな」
「元戎弩兵が約9000、重騎兵が10000の2部隊が残留しております!」
「5分の1の兵力だね」
「か、勝てるかな」
「……とても無理」
「ええっ!?」
「……でも、クー君が戻ってくるまで、しのぐ事ならできると思う」
「そ、そっか、空也達が戻ってくれば互角以上の戦いができるよね」
「うん。だから頑張ろう、巴さん」
「うん、頑張る!」
―――新野。
「うむむ、市街戦に持ち込むとは、えらく粘るなあ」
「なに、敵は少数だ。包囲して殲滅してくれようぞ」
「申し上げます!」
「なんじゃ、騒々しい」
「たった今、宛より伝令が参りました!」
「ふむ。して、なんと?」
「許昌より曹操率いる軍勢が宛に来襲!」
「なんですとー!」
「その数、援軍も合わせて約10万! 至急、お戻り下さいとの事です!」
「こうしちゃいられない! て、てっしゅ……」
「待ちなさい空也!」
「要芽姉様!」
「まずはここを陥落させるのが先よ」
「で、でも」
「大丈夫。宛の防御力は最大に上げているし、巴だって居るわ。私達が帰還するくらいまでなら耐え切れる」
「うむ、その通り!」
「わ、分かったよ。じゃあ、急いで攻略しよう!」
―――宛。
「衝車で打ち破れーい!」
「巴様! 城門が打ち破られました!」
「くっ!」
「……市街戦の準備を。政庁は絶対死守」
「ははっ!」
「頑張って、もう少しだから……」
「空也が……空也が戻ってくるまでは!」
「一気に落とせーい!」
「そうはさせるか!」
「!?」
「お待たせ、ともねぇ、ねーたん!」
「空也!」
「間一髪、だったね」
「もう戻ってきおったか!」
「俺達が戻ったからには好き勝手させねぇゼ!」
「チィッ」
「よし! 私も打って出る! ぽえむちゃん援護を!」
「了解」
「突撃ッ!」
「くっ! ここから先は通さ……」
「邪魔しないで!」
「イヤアアアアッ!」
「い、一合でやられるとは……」
「くそう、退けーい! 退けーいッ!」
「へへーんだ、おととい来やがれ!」
「空也」
「クー君」
「ともねぇ! ねーたん! 大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「……うん、平気」
「うむうむ、二人とも大儀であった。飴をやろう」
「あは、ありがとう雛乃姉さん」
「……平気だけど……死にそう」
……ぱたりこ。
「ぽ、ぽえむちゃん!?」
「ねーたん!?」
「む……これは!」
「な、なに!?」
「……くーくー」
「……寝ておる」
「び、びっくりしたなぁ、もう」
「あは、ぽえむちゃんは今回が初陣だったからね……すごく疲れたんだよ」
「くすっ……じゃあ私が部屋まで運んであげようかしら…………じゅるり」
「わああっ! だ、だめっ! わ、私が連れて行く」
「…………ちっ」
「よーし、兵士の補充と城壁の修復が済んだら、また出陣するぞー!」
―――次回予告。
時は208年。
快進撃を続け、荊州を得た柊軍。
柊軍の怒濤の勢いに、長年敵対していた曹操と孫策は手を結び、頑強に抵抗する。
そんな折、空也の目の前に最強の敵が現れる。
その敵とは……?
次回、姉しよ三国志第五話
『誰が為に鐘は鳴る』
乞うご期待っ!