柊家の野望〜革新〜
第六話 動くこと雷霆の如し
―――1575年 新発田城。
「ただいま。今、戻ったわよ」
「ど、どうだった?」
「どうもこうも、また人質を要求されたわよ」
「えー、また?」
「ううむ、同盟を結ぶのに人質を要求してくるとは、難儀なものよのう」
「で、今回は誰?」
「あの武田のヒヒ親父め……よりによって」
「え、いるかちゃんを!?」
「わ、私ですかぁ!?Σ(゚д゚lll)ガーン」
「まったく……僧体のくせに、とんでもないスケベ親父だわ」
「人質って、能力があんまり高くない人が選ばれやすいんだよねー」
「はふん、ひどい。゚(゚´Д`゚)゚。 」
「同じ雑魚武将でも、どうせ選ぶなら犬上帆波を選んでくれたら喜んで引き渡してやったのに、ムカツク」
「誰が、雑魚武将よ、誰がっ!」
「ううっ、でも、仕方ないですよね……みなさん、お元気でー」
「何言ってるの。とっくに決裂したわよ」
「そうですよね……私ってばちょっと内政ができるだけで、殆どお役に立ててない……って、決裂!?」
「当たり前じゃない。アナタは私のものよ。誰があんなヒヒ親父に渡すものですか」
「ふぇぇぇーん、おねーさまぁ」
「そうとも! いくら同盟の為だって、オレ達の大切な仲間を引き渡すなんてできるもんか!」
「うむ、その言や良し!」
「……………………」
「ん? どしたの?」
「……いえ、なんでもありませぬ」
「あ、そう」
「……………………」
↑
前回、あっさり人質に遣られた水谷正村さん(55)
「でも、これで周りは敵だらけになっちゃったね」
「何、心配ない。今や我らの勢力はこの日の本で比類なきものであるぞ。まとめて叩きのめしてくれようぞ」
「よーし! 先手必勝、こっちから攻め込んでやる!」
―――春日山城。
「ぬぅ、もう攻め込んできおったか!」
「どぅりゃー! 槍突撃ッ!」
「小賢しい!」
「くっ、やるなおっさん!」
「我が甲州流軍学、見せてくれるわ!」
「!?」
「喰らえ! 同士討ち!」
「効かないわ!」
「!? な、ならば篭絡ッ!」
「お見通しっ(・ε・)」
「こ、混乱ッ!」
「……見切った」
「ぬぅっ、やりおるわ」
「フフッ、我が軍にそんなチンケな計略に引っかかる者は……」
「うわああん! ねぇねぇやめて、やめてねぇねぇ」
「あれ? 敵と思ったら空也だった。メンゴメンゴ」
「うぉう!? 兵士が引き抜かれた!」
「あれ……? ちょうちょがが飛んでる。まてまてー」
「……この、馬鹿どもが」
「しっかりするのだ、皆の者!」
「おお、雛乃姉さんの鼓舞じゃー、ありがたやー」
「むむっ、もう立て直しおったか」
「よし、今度は我らの力を見せてくれよう、ゆくぞ皆の者!」
「故にその疾きこと風の如く! 組撃ち鉄砲!」
「その徐かなること林の如く! 釣瓶撃ち!」
「侵略すること火の如く! 強襲!」
「動かざること山の如く! 乱戦!」
「知りがたきこと陰の如く……火牛計」
「動くこと雷霆の如し! 車懸り!」
「おおおっ! 我らが十八番を奪うとは!」
「よっしゃ、いけいけー!」
「クソッ、退けッ! 退けーッ!!」
「春日山城、獲ったどー!」
「よし、この勢いを駆って、一気に攻め滅ぼすぞ。空也、我に続け!」
「は、はいっ!」
「待って!」」
「な、何っ!?」
「空也!」
「あれ? お城で内政やってる姉貴がなんでこんな所に?」
「た、大変なのよ」
「ど、どうしたの?」
「ヤスが……ヤスがぁ!」
「……え?」
―――新発田城。
「おお、空也殿……ゴホッ、ゴホッ」
「な、なんだよヤッさん……何、寝込んでるんだよ!」
「それがしにも、とうとうお迎えが来たようでござる」
「ダメよ! 私に断りもなく勝手に死ぬなんて許さないんだから!」
「高嶺殿……共に市や学舎を建て、田畑を耕し、城下町を発展させたのは楽しゅうございましたなぁ」
「ヤスさん、死んじゃダメだ」
「巴殿……足軽技術開発の為に城に篭った事も、今はただ懐かしい……そう言えば、それがしが巴殿の部隊の軍師に就いた事もありましたな……ゴホッゴホッ」
「ヤッさん! しっかり!」
「空也殿、天下を手に入れなされ……ぐふっ」
「ヤッさーーーーん!」
「逝って、しまったか……」
北条氏康 享年60。
……合掌。
―――次回予告。
戦闘、内政と軍の中核を担っていた北条氏康(ヤッさん)を失った空也。
しかしその悲しみを乗り越え、柊軍は武田、続いて上杉も滅ぼし、快進撃を続ける。
そんな柊家の前に戦国の覇者、織田信長と後の世の勝利者、徳川家康の連合軍が立ちはだかる。
果たして空也は、その2強の猛攻を凌ぎ切る事ができるのか!?
次回、柊家の野望〜革新〜 第七話。
『人間50年』
乞うご期待っ!