柊家の野望〜革新〜
第一話 八幡様がみてる。
―――1555年 小田原。
「と、いうわけでまた始まっちゃったけど……」
「はいはいはーい。お姉ちゃんにおまかせ! ちゃんと予備知識を仕入れてきたよ」
「さっすが海お姉ちゃん。で、どうしたらいい?」
「まずはセオリー通りに内政で力を蓄えないとね。幸い隣の今川家とは同盟を結んでる状態で、背後の憂いは今の所ないから、とっとと関東周辺を制圧しないとね」
「そうかー」
「始めの内はお金が不足しがちだから、金銭収入の多い『市』を多めに建てるといいんじゃないかな」
「あのー」
「おわっ、いきなりクドい顔っ! ……って、あんた誰?」
「それがし、北条氏康でござる」
「ホウジョウウジヤス? 誰?」
「これ、くうや。この地に住まう者が、氏康公を知らんでどうする」
「ああ、この国のエライ人か……で、何?」
「いきなり城を乗っ取られた我々はどうすれば……」
「そうね、狭いから出て行きなさい」
「そ、そんなご無体な……」
「黙れよ」
「ひぃ」
(こわっ)
「や、やはりこういう重大な事は評定を開いて皆で話し合わないと……」
「そんな悠長に構えてるから、アナタの次の代で秀吉に滅ぼされたのよ! とっとと出て行きなさい」
「これ、かなめ。そう邪険に扱うでない」
「しかし姉さん。彼らの俸禄のせいでこの地の収益がマイナスの状態です。早く追放した方がいいのではないですか?」
「で、あるか……ではすぐ傍の城を落として、そこを経営させればよかろう」
「なるほど。流石は姉さん、良い考えです」
「うむぅ」
「そういうわけだから、早く隣の岩付城を落としてらっしゃい! 兵は与えてやるから」
「え、我々だけで?」
「安心しなさい。ちゃんと流言や激励で援護してあげるわ。さあ、早く行きなさい!」
「は、ははーっ!」
そーれから。
(*゚ー゚)
「ぜーはーぜーはー」
「やればできるじゃない」
「うむ、大儀であった。飴をやろう」
「ははーっ、恐悦至極にござりまする」
「これで統治国は二ヶ国。あとはしっかり発展させるよー」
「申し上げます!」
「ん? なんかあった!?」
「今川家の当主、義元様が織田家との戦いで討ち死に致しました!」
「へ?」
「これを機に、今川家の武将、松平元康が岡崎に独立! そして織田と同盟を結びました!」
「ふふっ、世に名高い『桶狭間の合戦』ね」
「あー、なんか聞いた事あるなぁ」
「いずれ西進した時に立ちはだかる障害になるかも知れないわね」
「おお、皆の者、あれを見よ」
「おー、鶴岡八幡宮がある」
「我らには八幡様の加護があるぞ! 恐れるな!」
「よーし、とっととクリアして早く帰ろう!」
「おおーっ!」
「って、私達、出番これだけ?」
「いきなり、ぞんざいに扱われてる……」
これから、これから……。
┌┤´д`├┘
―――次回予告。
開始早々、岩付城を制圧して着々と内政と技術革新を進め、優秀なお姉ちゃん達のお陰で付近の大名達よりも、かなりのスピードで戦力を高めた柊家。
そしてついに空也は挙兵する。
その標的とは……?
次回、柊家の野望〜革新〜 第二話。
『初陣』
乞うご期待っ!