お姉ちゃんが贈るABC






 昔々……ではなく、ごく最近の事なんですが、ある所にとても仲のよ……くもなく悪くもないごくフツーの姉弟が居てました。

 弟は高校の入学式、お姉ちゃんは同じ高校の2回目の始業式を控えたある晩の事。

 弟はお姉ちゃんに部屋に呼び出されていました。

「ねーちゃん、話ってなんだよ」

 弟はちょっと不機嫌でした。

 こうやって呼び出された日にゃ、ロクな事がないからです。

 この前呼び出された時は買い物に行くからと荷物持ちをやらされたり、その前なんかは部屋の模様替えをするからと力仕事でコキ使われたりしていたのです。

「いいから、そこに座りなさい」

 お姉ちゃんはそう言って弟の足元を指差しました。

 用意の良い事に、そこには座布団が置いてありました。

「?」

 言われるままに、弟は座布団の上に腰を下ろし胡坐をかきました。

「正座しなさいっ!」

「は?」

「いいからっ!」

 お姉ちゃんは弟をギロリと睨みつけました。

「はいっ」

 弟は素直に正座しました。

 お姉ちゃんは腰まである長くて黒い髪の、今日も黒系のシックなワンピースが良く似合う素敵な美人なのですが、ツリ目な上に三白眼で目つきがかなり悪かったのです。

 そんなお姉ちゃんに睨まれてしまったら、ただでさえ精神的優位に立たれている弟は素直に言う事を聞くしかありませんでした。

(俺、何か悪い事したかな……?)

 正座しながら弟は考えました。




 お姉ちゃんがお風呂に入っているのを覗いて(;*´д`*)/ヽァ/ヽァしたり。

 お姉ちゃんのパンツを盗んでひとりえっちで(;*´д`*)/ヽァ/ヽァしたり。

 寝ているお姉ちゃんにえっちな悪戯して(:*´д`*)/ヽァ/ヽァしたり。




 ―――なんて事は、どこぞの弟とは違って一切やっていませんでした。




 この弟は純粋な、いがぐり頭の野球少年だったのです。

 ちょっとやそっとの煩悩はスポーツで発散できる子なのです。

 しかもエースで4番打者でした。

 もちろん夢はアメリカに渡ってメジャーリーガーになることです。

 数年後、彼は単身アメリカに渡り、マイナーリーグで辛酸を舐めつつもその努力が実ってメジャーリーグまで登りつめ、『彼のストレートは世界一だ』と評価されるまでのピッチャーに成長するのですが、それはまた別のお話でした。

 とりあえず、彼に思い当たる節は全く……



(ねーちゃんのアイス、勝手に食ったのがバレたかな?)



 ……あったみたいでした。

「さて……」

「ご、ゴメンよねーちゃん!」

 弟は先手必勝で謝る事にしました。

「え?」

「風呂入ったら喉渇いて……だ、だから、その……」

「……はぁ?」

 お姉ちゃんはしどろもどろな弟を見て首を傾げます。

「あれ? アイスの話じゃないの?」

「アイス?」

 お姉ちゃんは記憶の糸を手繰り寄せます。

「……はっ!」

 その刹那、お姉ちゃんは凄い勢いで部屋を飛び出してしまいました。

 しかし、5分もしないうちにお姉ちゃんは、ドドドドド! と効果音とともに部屋に飛び込んできました。

「あんたはーっ!」

 ゴツン!

「ひでぶっ」

 入ってくるなり、お姉ちゃんは弟のいがぐり頭をグーで殴りました。

「お風呂あがりの楽しみにしてたのにーっ!」

「ご、ゴメンよねーちゃん……つい」

 ヤブヘビでした。

「ったく! ……まあ、いいわ」

 お姉ちゃんはそう吐き捨てると、そのままくるりと背中を向けました。

「…………?」

 普段であればここから、うめぼしグリグリのコンボがクリティカルに炸裂するはずなのですが、今回は追撃はありませんでした。

 珍しいこともあるもんだと、弟はただ黙って窓の外を見つめるお姉ちゃんの背中を見ていました。

 闇夜の空に、ちょっとだけ欠けたまあるい銀色の月がぽっかりと浮かんでいます。

 現在NASAでは宇宙服を着たバニーさんに月で餅をつかせる計画が持ち上がっているのですが、世間で今、それを知る人は誰一人として居ませんでした。

 数年後、その計画は見事に実現してしまい、

「食堂でちょっと言ってみただけだったんですが……」

 と、総責任者の酒井さんがコメントするのですが、それもまた別のお話でした。

「今日は大事な話があるの」

 不意に窓の外を見ていたお姉ちゃんが弟の方に向き直りました。

 とても真面目な顔です。

「な、なんだよ、大事な話って」

「あ、あんたも明日から高校生……ちゃ、ちゃんと知っていた方がいいと思うのよ」

 でもなんだかお姉ちゃんの声は、ちょっと上擦っていました。

 顔もちょっと赤くなっているっぽいです。

「ちゃんとって……何を?」

「いや、その……まあ、なんというか……」

 急にお姉ちゃんの歯切れが悪くなってしまいました。

「?」

「えっとね……その……赤ちゃん」

 ようやく聞き取れる声で、お姉ちゃんはそう言いました。

「赤ちゃん?」

 弟が首を傾げると、お姉ちゃんはキッと睨みつけました。

 ……いや、ホントは睨んだつもりはなかったのですが、ツリ目で三白眼で目つきがかなり悪いもんだからそう見えてしまうのです。

「そう、赤ちゃんはねぇ……コウノトリさんが運んでくるんじゃないのよっ!」

 ビシッと弟を指差してお姉ちゃんは、そう叫ぶように言いました。

「ええっ!?」

 弟はお姉ちゃんの突然の告白に、ビックリしてしまいました。




「何言ってんだ、ねーちゃん」

 ……あまりにもおバカな事を言うもんだから。

「え?」

「今時、そんなの信じてる奴なんか居るわけねーだろ……」

 弟は思いっきりな呆れ顔で溜め息を吐きました。

「え? そうなの?」

 お姉ちゃんは面食らった表情で弟の顔を見つめました。

「じゃ、じゃあ、あんた、もう赤ちゃんがどうやってできるのか知ってるの?」

「当たり前だろ? 俺、もう明日から高校生だぞ……」

 弟はそう言って、やれやれと両腕を広げました。

 そりゃそうでしょう。

 この情報化社会真っ只中、赤ちゃんの作り方くらい小学生でも知っています。

 まして、この弟はもう明日から高校生、いくら彼がいがぐり頭の野球少年といえども、このくらいは知っていて当然……

「赤ちゃんはキャベツ畑で拾ってくるんだよ。常識だろ?」




 …………………………。








 この、イカっ! ヽ(`Д´)ノ








「ああ、違うの……そうじゃないの」

「え? 違うのか!? 俺、父ちゃんから『お前は中山さんちの畑で穫れたキャベツ切ったら出てきた』って聞いたぞ」

「それ、ウソ」

「マジでっ!?」

 愕然とする弟に、お姉ちゃんはまた背を向けました。

「ところで、あんた……彼女、居る?」

 背を向けたままお姉ちゃんは弟に、そう訊いてきました。

「はぁ? なんだよ急に」

 不意な問いに、弟は怪訝気な顔になりました。

「いいからっ」

 またお姉ちゃんは弟に向き直り、ギロリと睨みつけました。

「わ、分かったよ……」

 怖かった弟は白状する事にしました。



 ……いや、お姉ちゃんは別に睨みつけたつもりはなかったんですが。



「居ないよ、そんなの興味ないし」

 すまし顔で、弟は言い切りました。

 このいがぐり頭は『野球が恋人』な近年稀に見る熱い野球少年なのでした。

 ……まあ、ある意味寒くもあるのですが。

「そう」

 お姉ちゃんはなんだかホッとした様子で、ちょっとニコッと微笑みました。

(………………怖っ)

 でも弟には、誰かを呪い殺しそうなくらい不気味な笑いにしか見えませんでした。

 お姉ちゃんは笑うのが苦手な人なのです。

「でもね、今はそうかも知れないけど、あんたももう高校生……この先、彼女の1人や2人、できるかも知れない」

「そ、そうかな……」

 弟はこう見えて、なかなか均整な顔立ちで背も高く、スポーツで鍛えているせいかガッチリと引き締まった身体をしていました。

 本来は結構モテそうなのですが、ジャニーズ系が持て囃される昨今、流行らない、いがぐり頭のせいでそれがちっとも目立たないのでした。

「そしてその彼女と、その……えっと……あの……」

 また急にお姉ちゃんがどもり出しました。

 どうやら、とても言いにくい事を言おうとしているようです。

「いや、だから……せ、せ、せ、せ……」

「せ?」

「せ、セックスしたり……」

 顔を真っ赤に染めながらも、お姉ちゃんはなんとか言うことができました。

 その姿が、ちょっと萌えです。(;*´д`*)/ヽァ/ヽァ

「せ、セックス?」

「そ、そう、それ」

「そういやたまーに聞くけど、それってなんなんだ?」

 弟は、今時、セックスというものが何なのかを知りませんでした。

 まあ、赤ちゃんはキャベツ畑で拾ってくるものだと信じているくらいですから、当然と言えば当然なのですが……。

 弟はクラスメイトや部活の部員達がエロ話で盛り上がっていても、ドコ吹く風で黙々と野球の練習に打ち込んでいる少年なのです。

 英和辞典のSEXの項目を蛍光ペンでチェックなんてしていないのです。

「好き同士の男の子と女の子がする事……きっとあんたも彼女ができたらしちゃうのよ」

「そ、そうなのか……」

「でもね、それをしてしまうと女の子に赤ちゃんができてしまうの……あんた、もし赤ちゃんができたら育てられる?」

「それは……無理だと思う」

「そうよね。でもセックスするなとも言えない……だって好きになったら止まらないものだから」

「と、止まらないのか?」

 ちょっと大げさな気がしないでもないですが、まあ、あながち間違ってはいないかも知れません。

 若き日の性衝動というものは、そう簡単には抑えられないものなのです。

「そうよ。でも、欲望の赴くままにしてしまっては相手の娘を妊娠させてしまうかも知れない……」

「……………………」

「早くに気づけば中絶させられるかも知れないけど……その女の子に精神的にも肉体的にも深い傷を負わせてしまう……それはとても大変な事で、悲しい事なのよ」

 お姉ちゃんはそう言って、悲しそうに俯いてしまいました。

「じゃ、じゃあ、どうしたらいいんだ?」

「避妊、するのよ」

「避妊?」

「そう、赤ちゃんができないようにセックスして愛を深めるの」

 そうなのです。

 今日、お姉ちゃんが弟を呼び出したのは、弟に正しい性知識を身に付けさせるためだったのです。

 青少年の性が乱れ、早熟な故の間違った性知識による望まない妊娠や取り返しのつかない事故などが多発する昨今ですが、正しい性知識を身に付けることでそれらを防ぎ、より良い高校生ライフを弟に送ってもらおうという親……いや姉心なのです。

 なかなかできることではありません。

 というか、普通はしません。

 それよりこのいがぐり頭に、それだけの甲斐性があるのか甚だ疑問なのですが。

「で、その避妊ってのはどうやるんだ? ねーちゃん?」

「これをね、使うの」

 お姉ちゃんはスカートのポケットから、なにやら取り出してそれを弟に見せました。

 なにやら小さくパックされた、3枚綴りのもの。

「なんだ、これ?」

「コンドーム、って言うのよ」

「コンドーム?」

「そう、これを使うのよ」

 お姉ちゃんはそう言って弟にそれを渡しました。

 そうです。

 お姉ちゃんは、今日、弟にこれを見せる為に隣町のコンビニで買ってきていたのです。

 流石に近所で買う勇気はありませんでした。

「で、これをどう使うんだ?」

 弟はそれを透かしてみたりしながら、お姉ちゃんに聞きました。

「えっ!?」

 とたんにお姉ちゃんの顔が真っ赤になってしまいました。

「?」

 そんなお姉ちゃんの姿を見て、弟はちょっと首を傾げます。

「えっと、それは、そのう……」

 恥ずかしそうに俯きつつ、指をコネコネしながら、お姉ちゃんは言葉を濁します。

 でも、普段は威張ってばかりのお姉ちゃんが、こうやって慌てる姿を見るのは凄く……



(……面白れぇ)



「なー、ねーちゃん。これ、どうやって使うんだってばよ」

 ここぞとばかりに大人しく正座していた弟は、お姉ちゃんに3枚綴りのコンドームをひらひらさせながら、半立ちの状態で詰め寄りました。

 はたから見れば、かなり危ない光景です。

「えっと、それは……そのう……オチ……ンに……

 肝心なところで、お姉ちゃんは小声になってしまいました。

「……え? 今、なんて言った?」

「え? いや、だから、その……オチ……ンにかぶせる……



( ゚д゚)ノ<先生! 肝心なところが聞こえません!

「え? だから聞こえないってば」



「うるさいわねっ! アンタのチンコにかぶせんのよっ!」



 弟の、あまりのしつこさに、とうとうお姉ちゃんはブチ切れてしまいました。

「……は?」

 弟は目を丸くして、ビックリしてしまいました。

 いや、怒った事によりも、そのセリフに。

「あ……う……」

 一旦はブチ切れたお姉ちゃんでしたが、自分自身のセリフにまた顔を赤くしてしまいました。

「ねーちゃん、凄い事言うなあ……」

「う、うるさいわねっ。でも大事な事なんだから!」

「ふぅん、これをねぇ。で、かぶせてどうすんだ?」

「…………え?」

「いや、かぶせるのは分かったけど……かぶせてどうなるんだ?」

「え? だ、だからそれはセックスする時に……」

「セックス? ……ってのはどうやるんだ?」

「どうやるって……」

 そうなのです。

 このいがぐり頭は、そもそもセックスというものがなんなのか分かっていないのです。

 要するに、足し算や引き算くらいしかできない小学生に連立方程式や因数分解を教え込もうとしているようなものなのです。

「そ、それは、その……」

 また、お姉ちゃんは赤くなりながら指をコネコネし始めました。

 まあ確かに面と向かって説明するのは、ちょっと苦しいかも知れません。

「つぅか、ねーちゃん。セックスってした事あんのか?」

「あるわけないでしょ!」

 お姉ちゃんは電光石火で否定しました。

 実はお姉ちゃん、セックスはおろか、男と付き合った事すらありませんでした。

 お姉ちゃんは、確かに鴉の濡れ羽色の長い髪が素敵な美人なのですが……。




「あの目で睨まれた時は、背筋がゾッとしちまったYO」

「ありゃぁ、貞子も目じゃないね」

「機嫌……悪かったのかな?」


 ―――昔、お姉ちゃんに声をかけた男子生徒達のインタビューより。




 ………………………………。


 いや、お姉ちゃんは別に睨んだ訳じゃないんです。

 ツリ目で三白眼で目つきがかなり悪いだけなんです。

 それと慣れてないから、いきなり男の子に話しかけられて、ちょっとビックリしただけなんです。

 本当はちょっと抜けてて可愛い性格の娘なんですっ。




「なんだ、ねーちゃんもした事ないんじゃ話になんねーよ」

 そんなお姉ちゃんを見て、弟は呆れ顔で首を横に振りました。

「え?」

「だってそうだろ? した事もないのに教えるだなんて、できっこねーよ」

「あ、ううっ」

 弟の言う事も、もっともです。

 先生が経験もないのに、生徒に教えられるわけがないのです。

「し、した事はないけど、やり方ぐらいはちゃんと知ってるんだからねっ!」

 でも、お姉ちゃんも必死です。

 それに、ここで弟にバカにされてしまっては、お姉ちゃんの威厳というものが保てなくなってしまいます。

 ただでさえ、最近、男女の体格差がでてきて昔みたいに力で捻じ伏せるという荒業ができなくなってしまっているのですから。

「ふぅん、じゃあ、どうするんだ? ねーちゃん」

「そ、それは……その……オシベとメシベが……そのう……」

 ……今時、オシベとメシベはないでしょう、お姉ちゃん。

「オシベとメシベ? 何言ってんだねーちゃん?」

 やっぱり通じませんでした。

「だ、だから、その……男の子の……が女の子の……に

「え?」

「だ、だからぁ……男の子のオチ……が女の子のア……に



( ゚д゚)ノ<先生! 肝心なところが、また聞こえませんっ!

「いや、聞こえないってば」


「うるさいわねっ! 男のチンコが女のアソコに入んのよっっっっ!」




「…………………………」

「あ……ううっ」

 弟はお姉ちゃんのブチ切れたセリフに絶句してしまい、そのお姉ちゃんはまたもや赤くなってしまいました。




 お姉ちゃん。









 またやっちゃいました。
ヽ( ´ー`)ノ





「……で、アソコってどこだ?」

「ほえっ!?」

 弟の更なる追撃に、お姉ちゃんは予想していなかったのか変な声を出してしまいました。

 なかなか容赦ない弟です。

 つぅか、このいがぐり頭はマジで分かっていないようです。

「だ、だから、そのう……」

 流石に今度のはブチ切れても口に出せない様子です。

 そういや、男の子のオチンチンってのは、いくらでも口に出せるのに、女の子のは、なんであんなにも言い辛いんでしょうねぇ。



 ひょっとして差別ですか? 殴りますよ?



「だ、だから……その……ここ」

 お姉ちゃんは口に出す代わりに、自分の下腹部を指差しました。

「そこに?」

 弟がお姉ちゃんの指差した所を自分も指差し、

「これが?」

 そしてその指で自分の下腹部を指差しました。

「……………………」

 お姉ちゃんは、黙ってコクリと頷きました。

「ほー」

 弟はなぜか感心したようにウンウンと頷きました。

 ようやく弟に理解してもらったせいか、お姉ちゃんはちょっとホッとしました。

「……で、入れてどうするんだ?」

「ふにゃっ!?」

 また不意を突かれたせいか、お姉ちゃんは変な声を出してしまいました。

「入れてどうなるって……」

 お姉ちゃんは、また赤くなりながら指をコネコネし始めました。

 どうやら指コネコネは、お姉ちゃんの困ったときの癖のようです。

「そりゃあ、赤ちゃんを作る為に……」

「あー、そうだっけ。でも、作ったらマズイんだろ?」

「そうだけど……」

「じゃあ、なんでやるんだ?」

「それは、その……」

 お姉ちゃんの指コネコネがスピードアップしました。

 物凄いスピードです。

 あまりの速さに指先が見えないくらいです。

 ちなみにお姉ちゃんは、珠算検定一級を取得していました。

「きっ」

「き?」

「き……気持ちいいんだって……その、大好きな人とすると」

「へぇ、気持ちいいのか」

「で、大好きな人が、もっと好きになれるんだって」

「大好きな人が……もっと好きに?」

「そう。セックスってのはね、愛し合う2人が愛をもっと深め合う神聖な儀式なのよ」

 お姉ちゃんはそう言って神様に祈るように指を組んで、うっとりと目を瞑りました。

 まあ、処女ですから夢見る乙女になるのも仕方のない事なのかも知れません。

 こんな娘ほど、そんな幻想を打ち砕くかのように激しく、壊れるくらいに骨の髄まで犯してやりたくなるのが男のサガというものなのですが……。




 ……え? ワタシだけ?(゚Д゚≡゚Д゚)?




「ふぅん。もっと好きにねぇ……」

 弟は何やら考え込みました。

「じゃあ、ねーちゃん。オレとセックスしよう!」

「にゃふっ!?」

 弟の突然のセリフに、またお姉ちゃんは変な声を出してしまいました。

 でも、今回は弟の方がよっぽど変な事を言っています。無理もありません。

 つぅか、このいがぐり頭は何考えてるんでしょうか。



(ねーちゃんがもう少しオレの事好きになってくれたら、怖い目で睨まれなくて済むかも知れないぞ)



 ………………………………。



 おまいって奴は……(;´Д`)



「ば、バカな事言わないでよっ!」

「……そうかな?」

「だ、大体、セックスってのは好き同士の男の子と女の子が……」

「じゃあ、いいじゃん。オレ、ねーちゃんの事、好きだぜ?」

「ほえぁっ!?」

 弟の突然の告白に、お姉ちゃんは真っ赤になって変な声を出してしまいました。

「すっ、好き!? あんたが!? 姉ちゃんを!?」

「うん。ねーちゃんって目はメッチャ怖いけど、美人だし……すぐ怒鳴るし、女のくせにグーで殴るけど、優しいとこもたまにあるし」

 と、弟はちょっと顔を赤くし、照れながらそんな事を言いました。

「そ、そうかな」

 お姉ちゃんも、赤くなってちょっと照れてしまいました。



 ……でも、良く聞けばあんまり褒めてないのですが。



「それに、まんざら他人じゃないしな」



 ………………………………。



 いや、まんざら他人じゃないからダメなんですよ? フツー。



「そ、そうね……確かに他人ってわけじゃないし……全然知らない男の子よりも、あんたの方が安心かも」

 いや、だからそれがダメなんだってばさ。(;´Д`)

「だろ?」

「う、うん」

「だから、やろうぜ」

「わ、分かった……」

 ついにお姉ちゃんは弟に押し切られてしまいました。







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