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「ところで」 急に、姉さんが話に入ってきた。 「デルクイさんとは、どんな人なんですか?」 「……デルクイさん?」 皆で、顔を見合わせる。 「デルクイはウタレルっていう諺は、デルクイさんって人がとても有能だったから、それを妬んだ同僚に陥れられたっていう故事が由来なんでしょう?」 「……い、いや」 それは違う、といいかけたその時。 「良く知ってますね、お姉さん。デルクイ……出瑠久井は戦国時代、織田信長に仕えた武将で経理に長けた人だったのですが、同僚の明智光秀に讒言されて主君の信長に首を討たれた人なのです」 と、各務がうんちくを披露した。 「出瑠久井は首を討たれる……それが短くなってデルクイはウタレるとなったのですよ」 「そうなんですかぁ」 うんうん、と素直に感心する姉さん。 「後年、豊臣秀吉……当時は羽柴秀吉という名前でしたが、彼は出瑠久井とは親友で、主君を討った明智光秀を倒した際には彼の墓の前に勝利を報告をしたと言い伝えられているんですよ、お姉さん」 「へぇーヘェー」 火嘉が、何かのテレビ番組で聞いたことのあるような声を出した。 「そんな戦国武将が居たなんて、知らなかったけど……出る杭は打たれるって、そんな由来じゃないと思う……」 第一、『出る杭』じゃ……。 「思うも何も、ウソだよそれ」 綾香ちゃんがため息をついて、首を振った。 「ウソ!?」 ボクが目を各務に向けると、彼は横を向いて口笛を吹いた。 「全く……そこの赤いバカを騙すんならともかく、はるくんやよそ様のお姉さんまで騙そうとするな! この白いバカ!」 「ほう、よくぞ見破ったな。さすが水無月。そのたゆんたゆんの巨乳は伊達じゃないな」 はっはっは、と各務がそう言って不敵に笑った。 即興であれだけのウソ話を作るとは、さすが各務だった……。 「関係あるか! 胸の話はするな!」 気にしている胸の大きさをからかわれて、綾香ちゃんが大声で怒鳴った。 ちなみに彼女は、あの大きな胸を小さくするために日夜努力している。 もっとも、その努力の悉くが無駄に終わってるらしいけど……。 「ん〜、ではデルクイさんとは一体、何方なんでしょう?」 姉さんが首をかしげて、考える仕草をする。 「エックハルト=フォン=デルクイは、その昔、古代ペルシアはローエングラム王朝に仕えた……」 「ええい、しつこい!」 綾香ちゃんが各務の頭をペシッと叩いた。 「むっ、この私の頭を叩くとは……興味深い事だ」 「各務……他人の姉さんを騙すなよ……」 ジロリと、ボクは上目遣いで各務を、たしなめる様に睨みつけた。 「騙すとは人聞きが悪いな。私は嘘は吐かないぞ……まあ、冗談を言うのは大好きだがな」 「あんたの冗談は面白くないっ!」 ビシッと、人差し指を各務に向けて、綾香ちゃんが怒鳴った。 「ふぅ、やれやれ……これだからユーモアを理解できない人間は困る」 大仰に、各務は両腕を広げてやれやれと首を振った。 「少しは笑いも取れないと、巨乳アイドルとして大成しないぞ」 「そんなものになる気は無いっ!」 「いや、水無月にアイドルは無理だろう」 くっくっくと笑いながら火嘉が、腹を抱えて笑った。 「確かに水無月の胸はでかいが、背もでかいからな」 「くっ、あんたら……」 「ふむ、確かにそれはネックだが……まあ、安心しろ。私にプロデュースさせれば、国民的アイドルも夢ではないぞ。私は天才だからな」 「だから、そんなものになる気はないってーの!」 というか、一学生の各務がプロデュースって……。 ……でも、各務ならやりかねないと思った。 「しかし、風野が女で水無月の胸を持っていたら最強だったんだがな」 「はうっ」 いきなり矛先が変わった。 「風野が女で胸がでかい、か」 「な、なんだよ……」 ふむふむ、と呟きながら、火嘉がボクの顔をジロジロと見つめた。 「ふむ、なるほど……」 そして目を瞑りつつ顎に指をあて、考える人のポーズを取る火嘉。 「ロリで巨乳か…………いいじゃないか(:*´д`*)/ヽァ/ヽァ」 ……そして至った結論が、これだった。 「変な事言うなよ、火嘉……」 少し、鳥肌が立った……。 「こらっ!」 突然、その様子を目の当たりにした綾香ちゃんが、ボクと火嘉の間に割って入った。 「はるくんをそんな目でみるなんて……赤いのっ! やっぱりアンタ、そっちの趣味があったんだな!」 ボクを守るように背にした綾香ちゃんは、ビシッと、火嘉の目の前に人差し指を突きつけて怒鳴った。 「へ? ……ば、バカ! ちげーよ!」 なぜか、不意打ちされたみたいに慌てて否定する火嘉。 「はるくんを汚したりしたら、私が許さないんだからね!」 「汚してねぇ! つぅか、そっちの趣味もねえっ!」 「そ、そっちの趣味って……」 …………………………。 (どっちの趣味?) ……ちょっと考えたけど、判らなかった。 …………………………。 ……もう少し考えたら判りそうな気がしたけど、気にしないことにした。 |