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2005,05,10, Tuesday
ロスト・エデン
このところいつも、昼休みを公園で過ごしている。食事を済ませて、職場の目の前にある大きな公園へ向かう。陽だまりの中、緑に包まれているととても気持ちがいい。
空いているベンチに腰掛けて、大きく息を吸い込む。都会のど真ん中とはいえ、光合成の力は偉大である。澄みきった魔法が体を満たしていく。しばらくのあいだ、煙草を吸うのも躊躇われてしまう。ふと目を遣ると、たくさんの鳥たちが戯れている。時折、鳩や雀に混じって見たことのない美しい鳥が現れて目を楽しませてくれる。 ああなんて素晴らしい。太陽のぬくもり、風のささやき、鳥たちのさえずり、向かいのベンチで眠るホームレス。起きろ。起きて働け。いや待て待ちなさい。もしかしたら彼は今日、休業日なのかもしれないよ。きっとそうだ。寝かせておいてあげようよ。 といった具合に、ホームレスにあまり好意的でない私ですら、こんな清々しい気持ちにさせられてしまう。ここはまさにこの世の天国のようである。ほら目を閉じると、空から天使が舞い降りてくる。 しかしながら、実際に舞い降りてきたのは「テンシ」ではなく「ケムシ」であった。私はむいむいが大大大っ嫌いである。いや嫌いとかそんな生易しいモンではない。もう天敵だ。嫌いとゆうより怖い、に近い。おそらく私の前世は虫たちに喰われるレタスか何かだったのだろう。 そんな視界に入っただけでゲンナリしてしまうようなモノが、今、この、肩にのっかっている!ショックのあまり意識が遠のきかけ、これまでのいろんな事が走馬灯のようによみがえって来る。本当の意味で天国に逝きかけた。 しかし逝ってる場合ではない。このコレを何とかせねば。手で払いのけるなんて、考えただけでブルブルブルである。だが、そうこうしているうちにヤツは動き出す。まっすぐこっちの方へ。もうこうなったら振り払うしかあるまい。 閑静な昼下がりの公園で、突如ストリート顔負けのアグレッシヴなダンスを披露しだすサラリーマン。まだだ、まだいる。もっと、もっと激しく、もっとダンサブルに!MPでも吸い取れそうなほど不思議な踊りになっていく。いつの間にか集まっていたギャラリーたちも釘付けだ。 気がつくと、もう毛虫はどっかに飛んでいってしまったようだ。なんとか一命を取りとめた。辺りを見渡すと、ギャラリー達が賞賛の...わ、笑われてる。めっさ笑われてる。颯爽と、小走りにその場を去る。同じ職場の者に見られていなかったのは幸いであるが、あの場には私のような常連さんも多いだろう。ハズカシイったらありゃしない。 かつてアダムは、「恥」の概念を悟ったが故にエデンを追放された。私も、もうあの場所を訪れる事はないだろう。 |
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