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2005,04,08, Friday
五ジッポ百歩
先日、長年愛用していたジッポーライターを久しぶりに引っぱり出した。ここ数年は職場でしか吸わなかったのでずっとしまいこんでいたのだが、事ここに至りついにその封印が解かれる運びとなったのだ。
今日び「煙草は精神安定剤」などと仰々しい、そう思われる向きもあるやもしれんが、私にとっては誇張でもなんでもない。このところ劇的に摂取量が増えた。そして傍らのジッポーは15年以上前からの付き合いである。当時、モノマガジンやらホットドッグプレスでやたらと話題になっていた「ヴェトナム・ジッポー」。私もそれっぽいのが欲しくなり買いに走ったのだ。生まれて初めてのジッポー、さよなら100円ライター、ウェルカムジッポー、ドキドキワクワクである。ペダルを踏み込む足にも力が入る。入りすぎてチェーンが外れたりもしたが、幾多の困難を乗り越えて、ちょっと半泣きになりながら、私はついにジッポーを手にした。その名は「オキナワ・ジッポー」。トポスで3,800円だ。もちろんレプリカである。サッパリ解らない英語と、アメリカ海軍のマークが彫ってある。それでも当時は何だかオトナの階段をひとつ昇ったみたいな気になっていたものだ。 しかし今にして思えばこのジッポー、かなりアレだ。未だに英語の意味はよく解らないが、おそらく沖縄を占領した時の記念品を模したものなのであろう。あまり気分のいい物ではない。さらに、海軍だと思っていたのが実は海兵隊であった。今もなお沖縄にあって不祥事の限りを繰り返している連中だ。そう考えると何だかコレを所持しているのがイヤになってきた。だがやはり大きな思い入れもある。私の、あまり人には言えたものではない青い歴史の数々が刻み込まれた品でもあるのだ。ある時ジッポーマニアショップのオッサンに言われた「音ぁ、イイと思いますよ」というお追従も頭から離れない。いや実際、音はイイ方だと思う。 そんな葛藤の中、事件は起こった。一言でいうと、無くしちゃったのだ、ジッポー。どこで落としたのか、どこに置き忘れたのか、皆目見当がつかない。あれこれ思い返し、あちこち探し回ってみたが見つからない。ちょっと半泣きになりながら、更に探し続けたのだが、結局見つからなかった。仕方が無い。これで迷いにも踏ん切りがついたというものだ。過去との決別。さらば青春。ありがとうホットドッグプレス。 というワケで、私は早速新しい歴史のパートナーとなるジッポーを買いに行くことにした。行きつけのジッポーマニアの店「音ぁ、イイと思いますよ」は、いつの間にやらつぶれてしまったようだ。妙なファンシーショップになっていた。が、新たな専門店を発見したのでそこに行ってみる事にした。店内は決して広くは無いのだが、専門店と謳うだけあって、かなりの量のジッポーが置いてある。アメリカンなもの、トライヴァルなもの、ガンダム、ルパンなどのアニメもの、釣り系、ペット系、風神雷神竜神などのヤンキー系。特に目にとまったのは、ショートホープのレリーフものだった。かなりシブい加工である。正直スゴい欲しくなった。いっときプレゼントキャンペーンとかやってた奴だろうか。ちょっと違う感じがするが。いずれにせよホレた。ただ、お値段がちぃとばかしお高いのだ。 それから小一時間ばかり、歩いて5歩くらいで端から端までいけるくらいの店内をウロウロ行ったり来たりしながら、陳列してある全てのジッポーを品定めするかの如く装い、ショッポジッポーを買うかどうか悩み続けていた。だがいい加減、こんな事で逡巡している自分が情けなくなってきたので、ズバッとキメる事にした。 「すいません、コレください。」 「っと、どの奴?」 「この、あの、ガンダムの奴...」 「あー、百式ね。ちょっと待って」 だって安かったのだ。金色でちょっとカッコいいし。百式だし。昨今のZ祭りにまんまと乗せられた感アリアリだが、気にしない。ショッポジッポーはもうちょっとオトナになってからだ。 そんなワケで、今私は金色に輝く百式ジッポーを愛用している。ただ、音はイマイチだが。 あのマニアショップのオッサンなら何と言うだろうか。 |
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