「さて」
その不思議な沈黙を破ったのはダグラスであった。
「嬢ちゃんはどうするんだ?
 俺はさっき言ったとおり、人を待たせているんだが」
他人事の様に、よく解らないといった表情を浮かべるルルゥ。
「どう・・・しましょう??」
「おいおい・・・」
流石に、この無計画ぶりには額に手を当てて項垂れてしまう。
「何か目的があったんじゃあないのか。
 商人なら・・・とりあえず今商売用カートが必要だろう?
 そういった何かだ」
「うぅん、それも必要ですけど・・・
 それを実行するに当たって、何をすればいいのか解らなくって」
「・・・・・・」
唇に指を添えて、深く考え込むルルゥ。
その様を、心底訝しげに見つめるダグラス。
「・・・・・・・・・」
暫く時が過ぎても、ルルゥは考える事をやめない。
「・・・・・・・・・・・・」
いい加減に我慢が出来なくなってきたダグラスが珍しく声を張り上げる。
「あー解った解った!
 俺のパーティに来い!」
「・・・・・・え?」
突然発せられた言葉にルルゥの時が止まる。
「待たせてる奴ってのは俺のパーティメンバーだ、序でに紹介してやる・・・聞いてるか?」
「・・・え?・・・な、なんで、私なんかを??」
やっと我に帰ったルルゥは、纏まっていない頭でなんとか疑問を振り絞る。
「・・・嬢ちゃんがあんまりにも見てられないからだ。
 危なっかしくて仕方がない、一人前になるまで俺が鍛える」
ややぶっきらぼうに、目線を外して言い放つのは照れ隠しからだろうか。
「い・・・いいんですか?」
恐縮しながらそっと尋ねる。
「男に二言は無い」
目線は外したままである。
「あ・・・ありがとうございます!!
 私も、ダグラスさんと旅が出来たらいいなって、思っていました!」
にぱ、と、笑顔に更に花が咲いたような表情で喜ぶルルゥ。
「〜〜〜」
年頃の娘に照れるという自分の年甲斐の無さを恨みつつ、歩き始める。
「行くぞ」
「はいっ」
照れ隠しな固い表情の熟練剣士の後ろには幼さの残る笑顔の眩しい新米商人。
誰もが不思議に視線を向けるカップリングであった。


「待たせたな」
宿屋エントランスのテーブルで腐っている男性アコライトに悪ぶれた様子も無く声を掛けるダグラス。
「!
 遅いッスよ兄貴!!何してたんですか!!
 ホントに何時間待ったと思ってるんです!?」
強い口調で兄貴分らしいダグラスに攻め寄る。
「悪かったって。その代わり、新しいパーティメンバーを確保した」
相変わらずちっとも悪く思っていないダグラス。それを解っているのか、男も食い下がらない。
「・・・そんなこと言ってもね、僕は退きませんよ!大体兄貴は」
「あ、この方・・・ですか?パーティメンバーの方は?」
「!!」
言いかけにひょっこり顔を出したルルゥに、男の視線が釘付けになる。
「ああ。
 ま、パーティと言っても俺とこいつの二人だけ・・・」
「初めましてお嬢さん、ようこそ、『鋼の騎士団』へ」
ダグラスの説明に割り込んで、ルルゥの眼前に跪きお姫様に接するように手を握り掲げながら挨拶をする男。
いきなり手を握られるのは恥ずかしいのか、戸惑いながら返事を返すルルゥ。
「!は、はぁ・・・」
「また始まった・・・こいつの悪い癖が」
どうやら常習犯らしい。
ダグラスは思わずため息をつく。
「おぉ、なんと美しい御手・・・
 絹の触り心地といった形容がしっくり来る・・・」
「はっっ・・・!?そ、そんな」
妙な形容にますます混乱が進行していくルルゥ。
男は更に調子に乗っていく。
「そして流れるような美しい髪・・・
 天使が与えたもうた奇跡としか言いようが無い・・・」
「べ、別に・・・そんなことは」
ただ困ることしか行動が取れず、ルルゥはおろおろと身をよじる。
「お名前も、さぞお美しかろうと存じます・・・
 お教え、頂けませんか?」
「あぅ、えと・・・ルルゥ、ライトシードと申します・・・」
「・・・!?」
混乱に耐え、なんとか自分の名前を発音する。
すると、その名前に反応して、男が目を見開いて驚愕する。
「ルルゥ・・・ルルゥなのか!?」
「・・・ほぇ?」
未だ反応が薄いルルゥに、男は畳み掛ける。
「僕だ、アルだ!アル シュトルハイム!」
「っ!!」
流石にこの名前には正気に戻らずには居られなかった。
「ぼ、坊ちゃん!?」





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