ゴジラ-1.0特集


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■特撮怪獣映画として

ここでは、ゴジラメインで書いていこうと思います。
それでは作品のストーリーに沿って観ていきましょう。

初登場。

序盤いきなりゴジラが登場します。猛獣といった趣きで、人間を食い散らかします。しかし、そのサイズはいささか小ぶり。
キリン程の背丈しかありません。国会議事堂、新宿副都心を破壊出来るサイズではありません。

ここで、なぜゴジラは敷島を襲わなかったのか。なんて野暮な事は言ってはいけません。
そもそもゴジラなんていないんですから。
こういったご都合主義的な展開は、甘んじて受け入れましょう。

終戦から3年。この間にビキニ環礁で核実験が行われ、これが原因でゴジラが巨大化します。

このゴジラが巨大化する理由は、1954年公開の第1作(以下1954年版)で詳しく語られるのですが、本作では核実験があった。という事実のみです。
他の原因かもしれないし、元々ゴジラは強大化する生物で、最初に登場したのは幼生かもしれない。別個体かもしれない。核実験など関係なかったかもしれない。
ゴジラが群れで海中に生息していても不思議ではないわけです。
そもそもゴジラはいないわけで、何もわかっていないのですから。なんとでもなるのです。
ですが、そんな野暮な事は言ってはいけません。
ゴジラ生誕70周年記念作品ですから、ゴジラは核実験の犠牲者でなくてはならないのです。

2回目の登場。巨大化したゴジラ。

機雷の爆発で怪我をしたゴジラですが、すぐに自己修復してしまいます。

自己修復が1954年版にもあったかどうか不明なのですが、その速度が半端ありません。まるで昆虫か小動物なみの速さです。
というのも象のように巨大生物は長生きです。そのため新陳代謝も時間をかけて行います。
生物界において巨大であるという事は、怪我をすること自体が少なく、怪我をしても襲われる心配がないということです。
ですから時間をかけて治癒すればいいのです。ですがこれも野暮。
ここでもなぜ敷島は助かったのか。なんて事は言ってはいけません。

3回目の登場。銀座上陸。

3回目に現れたのは銀座でした。初めてその全貌を現わすゴジラ。

典子(浜辺美波)の乗る電車を口に喰わえるゴジラ。
1954年版を彷彿とさせるシーンですが、私には間抜けに感じました。
典子が電車から脱出するまで、微動だにしません。記念撮影でもしているかのようです。

電車の中で宙ぶらりんになる典子。この特撮は「ロスト・ワールド ジュラシック・パーク」(※1)にもありました。
そのため今一つ盛り上がりに欠けてしまったことは否めません。

※1)「ロスト・ワールド ジュラシック・パーク」では車が崖で宙ぶらりんになります。
この特撮。駐車場に車をクレーンでぶら下げて撮影しているのです。
その中で演者が芝居をしています。
背景はCG合成。映画の中では数十メートルの崖の上ですが、現実には2,3メートルの高さでしょう。
下には安全マットを敷き、演者が怪我をしないよう対策が施されていたはずです。
この特撮を成功させたためか、以降宙ぶらりんになるアクションがハリウッドで散見できるようになります。

その後は尻尾を振り回し、放射能流も吐き、やりたい放題です。

尻尾の速度はまさに凶器。目にも止まらぬ速さで銀座を破壊します。
これだけの速度はCGでなければ、さすがに無理。操演(※2)では撮影した映像を早送りで再生するしかないでしょう。

※2)カメラに映らないような細い糸をゴジラの尻尾に繋げ、糸を使って尻尾を操作すること。

放射線流の発射は背びれが順に青白くなっていきます。これはハリウッド版ゴジラとほぼ同じ。1954版は背びれが発光するだけでしたが、ハリウッド版の方が盛り上がるため、そちらを採用したのでしょう。
違うのは吐き出す直前に、大きくゴジラが息を吸うことです。
観ていて思わず私も息を吸い込んでしまいました。

廃墟と化した銀座には、ゴジラの肉片が落ちており、これが放射能を発生させ復旧作業もままならない。「シン・ゴジラ」にもあった肉片。
「シン・ゴジラ」の頃にはわかりませんでしたが、おそらく核実験によって、ただれたゴジラの皮膚ではないかと思われます。このあたりは反核の象徴ゴジラらしい演出です。

もしかしたら、被ばくしたゴジラは日本に水を飲みに来ているだけかもしれません。原爆投下直後に、被ばく者が水を欲したように。
ですがゴジラの巨体にあう水量と言えば琵琶湖ぐらいしかありません。ゴジラが琵琶湖の位置を正確に知っているとも思えないので、1作目から本作まで、ゴジラは琵琶湖を求めて日本各地に出没していただけかもしれません。
これもゴジラなんていないので、なんとでも言えるのですが、そんな野暮な事は言ってはいけません。

「わだつみ作戦」立案。

そんなゴジラが再上陸してくるという。米軍占領下の日本では米軍がゴジラ退治をするのが筋ですが、ソ連との関係上、米軍が軍事行動を起こすのは何かとまずい。日本政府も米軍のいいなりなので、何もしようとしません。

何もしない米軍、政府に代わり、民間でなんとかゴジラを食い止めようという話になります。「シン・ゴジラ」では、これでもかと政府関係者が登場していましたが、本作は一切出てきません。

民間主導で始めたゴジラ掃討作戦。作戦名は「わだつみ」。ウィキペディアによると「わだつみ」とは海神のことだそうで、ファンタジー風に言えば「ポセイドン作戦」といった所でしょうか。

この「わだつみ作戦」。
私はオキシジェン・デストロイヤーでも出てくるのかと期待したのですが、そうではなく、ゴジラをフロンガスで一気に深海まで沈め、次に一気に浮き輪を使って浮上させる。というもの。
急激な水圧変化でゴジラを圧死、もしくは膨張死させよう。というのです。

そんな折「震電」という大戦末期の戦闘機が見つかります。これを修理してゴジラの口の中に爆弾をお見舞いする。という事になります。
というのも敷島曰く、「機雷も主砲も歯が立たないゴジラ。しかし内部はもろいから有効なはず。」だそうで。
強運敷島。兵器も手にいれ、爆弾までも手に入れ、「震電」に乗り込んで「わだつみ作戦」に参加します。

「わだつみ作戦」開始。

「わだつみ作戦」の当日。予定より早く上陸の気配をみせるゴジラ。急遽作戦開始。

ゴジラの周りをフロンガスで囲むため、2隻の船が周回。交差するシーンは圧巻。「衝撃に備えよ。」なんて「進撃の巨人」さながらです。

敷島はゴジラの上空をハエのごとく旋回する。あまりに小さく速いので、ゴジラも手足が出ない模様。

フロンガスの準備が整い、ゴジラを一気に深海へ。アナログの深度計が、なんともいい味を出して深度を報告してくる。

最深部まで到達した時点で、今度は急浮上。水面近くまで持ち上げます。

しかし何かしらの故障があったのか、途中で止まってしまいます。仕方なく2隻の船でゴジラを急浮上させようとしますが、加重オーバー。とても浮上できそうにありません。

そこへ「わだつみ作戦」の事を聞きつけた船乗り達が駆けつけ、手を貸します。

このあたりが、いかにも日本的。天才(ヒーロー)一人で何もかも解決してしまうハリウッドとは大違い。個より集なのです。

なんとか急浮上させたゴジラですが、ほとんど効果なし。

無理もありません。水上をかなりの速さで泳ぐゴジラ。それなりの水圧には耐えられる筈ですから。身長と対比してもかなりの深度でなければ、なんともない筈なのです。

ゴジラにとって「わだつみ作戦」は単なる水遊び程度の事だったのかもしれません。
ですが、そんな野暮な事は言ってはいけません。この国のお家芸は口封じですから。
結局敷島の震電が放った爆弾が致命傷に。
海中に没していくゴジラ。

しかしゴジラは不死身。深海で再生しているのでありました。


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