劇場版 鬼滅の刃 無限列車編特集


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■感想

久しぶりの映画館。
「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」以来なので5年ぶりです。
コロナ禍ということもあってか、記録的な大ヒットとなった本作。
「千と千尋の神隠し」を映画館で観た手前、映画館で観ておこうかと、半ば義務感のようなものに駆られて観賞しました。

5年前は大画面、大音響に感動していましたが、今回はやかましいだけでした。慣れたのかもしれません。
しかし「千と千尋の神隠し」よりは定番のエンターテイメント作品に仕上がっていました。

「鬼滅の刃」自体に関しては「鬼滅の刃 兄妹の絆」に詳しく書いたので、今更書くこともありません。

あえて本作で気になった箇所と言えば、必殺技の乱用でしょう。

基本漫画のアクションの見せ場といえば1対1の対決が定番です。古くは「巨人の星」では投手と打者。「あしたのジョー」はもちろん1対1。「ドラゴンボール」「北斗の拳」「ワンピース」も同じです。
この方が物語として盛り上げやすい。なぜなら主人公と対峙する相手も詳細に描くことができるからです。

ところが、本作では何度も触手が伸びてきて主人公たちを襲います。
そのため何回も必殺技を繰り出すことになってしまい、必殺技の希少価値が薄れてしまいました。わざわざ必殺技の名を叫ぶのが馬鹿らしくなってしまうほどです。

実写映画ではそんなことはありません。古くはブルース・リーやジャッキー・チェン。最終決戦は1対1になるものの、1対多のアクションが必ずあります。
一方、日本のテレビ時代劇は、ほとんどが1対多のアクションです。1対1の対決では一瞬で勝負がついてしまい盛り上がらないからでしょう。
本作のヒットを受けて実写でチャンバラをやろうとする物好きなプロデューサーがいたとしたら、1対多や1対1でどこまで盛り上がるかにかかっているといえそうです。

その他に気になったのはアクションシーン。本作はCGと手書きの両方のアクションが使用されています。そのためか、CGのアクション(触手が伸びてくるシーン)では手書きのアクション(主人公たちが刀をふるうシーン)が物足りなく感じ、テレビシリーズのような高揚感は得られませんでした。葛飾北斎の「GREAT WAVE」のようなエフェクトに慣れてしまったこともあるのかもしれません。

また、CGのアクションを観た後に手書きのアクション(煉獄と上弦の対決シーン)を観たためか、必殺技のエフェクトばかり目についてしまって、人物の動作に物足りなさを感じてしまいました。とは言え、「幻魔大戦」の火炎竜を彷彿として、何とも懐かしい気持ちにさせてくれたのも確かなのではありますが。

戦いが終盤に差し掛かってからは、本作のもう一つのメインともいえるお涙頂戴タイム。印象に残ったのは煉獄の母の言葉。
「人より優れているものは、その能力を私利私欲に使うべきではない。世のため、人のために使いなさい。」
他にも煉獄の言葉で、
「いくら悲しみに沈んでいても、時間は止まってはくれないし、同情などしてはくれない。」
など名言が数多く登場します。

今から思えば、「3年B組金八先生」の名言集のようでもあります。金八先生では主人公金八からすべての言葉が生まれましたが、本作は登場人物の多くから名言が登場しています。
これも、誰もがオンラインで発言できる時代に、ヒーローだけに名言を負わせるのは荷が重過ぎるからでしょう。

さらに、煉獄の言葉に、
「人は老いて死んでゆく。だからこそ、いとおしくもあり、尊くもあるのだ。」
というのがあります。
これは無限列車と同じくSLが登場する「銀河鉄道999」のテーマの一つでもある永遠の命と限りある命のオマージュとみることはできないでしょうか。
「銀河鉄道999」の星野鉄郎はメーテルとの別れを経て大人になります。本作の竈門炭治郎も煉獄との別れを経て大人になっていくように思えてしまいます。

マスクをしながら劇場を出るとき、瞳が濡れていたのはここだけの秘密です。

TV放映鑑賞後の感想(2021/9/28追記)

煉獄のラストに改めて涙。最初は風変わりな先輩だった煉獄。それがラストになってからこの人の弟子になりたいと思わせるような名言。
「先輩が後輩の面倒をみるのは当り前だ。」
でやられてしまった。理想の上司にランキングするぐらいのキャラクターに仕上がっている。
それを顕著に表しているのが伊之助の対応。最初とラストでは明らかに煉獄に対する態度が違う。

厭な奴を好きになる。しかもそれがその人の最後になってわかる。という仕掛けは「さらば宇宙戦艦ヤマト」のデスラー総統。「機動戦士ガンダム」のララァ・スン。と同じ。
主人公を盛りあげるだけの脇役が、忘れられないキャラクターに変貌する瞬間だ。

しかも煉獄のラストでは、猪の仮面をかぶっている伊之助の表情はわからない。
観ているこちらが想像するより他はない。その伊之助が煉獄のラストに涙しているのが判明するのは声優の声である。
助演男優賞を煉獄ではなく、伊之助にあげたくなるほどの名演技であった。

こういったマニアックな観かたは多くの人はしないだろうから、煉獄ばかり人気が出てしまうのだろうなぁ。
と思ったりもする。

そういえば本作は楽しい夢の中で過ごすという話が出てくる。初見時は連想しなかったが、「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」と同じ。宮崎駿監督の「風立ちぬ」には夢の中の話があり、新海誠監督の「君の名は。」は夢の中の話が現実とリンクしている。

伏線が回収されていないとか、物語が破綻しているとか、リアルじゃないとか、物語に色々難癖をつける輩を一掃するには、これ以上ない夢の中の話。最近の流行なのか、とにかく夢の中の話ばかり観ている気がするのは私だけだろうか。


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