君の名は。特集
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■恋愛作品として
恋愛映画は毎年何本も制作される。
その内の何本かが、その時代を象徴する恋愛映画になる。
それは、「ウエストサイド物語」であったり、「ロミオとジュリエット」であったり、「ゴースト ニューヨークの幻」であったり、「美女と野獣」であったり、「タイタニック」であったりと、枚挙にいとまがない。
本作は2010年代を代表する恋愛映画になった。
ここでは恋愛映画としてこの作品を観てみようと思う。
「転校生」では二人が秘密を共有したために恋愛感情が芽生えたが、ラスト二人は離れ離れになって終わる。
大林監督だか、映画評論家の意見だったかは忘れてしまったが、あのラストの後、二人が出会ったとしても恋愛感情に陥るのだろうか。
恋愛には秘密がつきものなのに、「転校生」の二人は秘密が全くない。
ホクロの位置やら、食べ物の好みやら、何もかも知りすぎている。
そんな二人が果たして出会って恋愛は成就するのか?
別れるか、倦怠期を迎えた夫婦みたいなんじゃないか。
という意見だったと思う。
そういった意見を知ってか知らずか、本作では入れ替わりが終わると相手の名前を忘れてしまう。
まるで、「私の頭の中の消しゴム」みたいだ。
なんとも切ない。
しかも名前を忘れないように書き留めた名前が、実は告白だったなんて、流石に私もこれには感動した。
恋愛物にはいくつかのお約束がある。
定番は「ロミオとジュリエット」のように二人の仲を引き裂く障害が多いほど燃え上がるというもの。
本作では、相手は既にこの世の人ではなく、しかも相手の記憶をなくしてしまうという障害が付きまとう。
また、恋愛物には二人の絆を象徴するアイテムが登場する。
よく使われるのは指輪だが、他にもプレゼントだったり、写真だったりと様々だ。
本作では、三葉の実家で作っている組み紐が象徴的なアイテムとして登場する。
ちなみに中島みゆきの「糸」が流行ったのがこの作品のおかげかどうかは知らない。
さらに、キスシーンがあるはずなのだが、なぜか、新海監督はキスシーンを出さない。
本作で間接キスがあったぐらいだ。
隕石落下の後、事態が収拾して、時は流れてから、これまでの記憶をなくすことと、組み紐という伏線が効いてくる。
知り合いもいないはずなのに、なぜか飛騨のことが気になり、組み紐に目を止め歩道橋で足を止める瀧。
新海監督はベタ過ぎると思ったのか、すれ違いになって再会できない二人。
大林版「時をかける少女」のラストみたいだ。
どうなることかとヤキモキさせて、電車のすれ違いで再会する二人。
アニメ史上に残る名シーンだ。
そして、ラストは階段で再会する二人。
「転校生」のオマージュといわずして何といおう。
記憶をなくしてしまった二人から出てくる最後の台詞は
「君の名前は。」