シン・ゴジラ特集


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シン・ゴジラ画像
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■特撮怪獣映画として

「巨災対」が設置されてからは特撮怪獣映画として描かれます。
ここでは、ミニチュア、CGといった特撮映像について書いていこうと思います。
以下に色々書いていますが、すべてはこの一言に尽きます。

「ゴジラかっちょえー。」

いかにゴジラを格好良く見せるか。
その一点にのみスタッフが精魂傾けた作品といえます。
それでは、作品のストーリーに沿って観ていきましょう。

冒頭(東京湾)。

最初に登場するのは尻尾。
ウィキペディアによると第1形態から第5形態まであるようですが、初見ではせいぜい2種類の形態しか確認することが出来ません。
コアなファン向けの詳細設定といえるでしょう。

最初の上陸。

第2形態が河川を遡上する際、河川の船がミニチュア(だと思う)で作られているのですが、「巨神兵東京に現わる」で敢えてミニチュア製作にこだわっただけに、庵野、樋口監督のこだわりを感じました。

「巨神兵東京に現わる」の頃はふざけた映画を作ったものだと酷評したのですが、今から思えば東日本大震災が発生する前から「巨神兵東京に現わる」の製作を始めていたのなら、庵野監督にツキがなかったという他はありません。
「THE END OF EVANGELION」「もののけ姫」と同じ時期に公開されましたし、今回も「君の名は。」という大ヒットと同じ年の作品になってしまいました。
同時期に大作が生まれ、それを越えられないようです。

ところで第2形態がとても獰猛な怪獣とは思えない人をくったような造形の巨大生物なので、
「ゴジラ以外の怪獣が出て来るのではないか?」
と思ったのですが、予想に反して、この妙ちくりんな形の巨大生物がゴジラなのでした。

その後、ゴジラがモスラ同様に変態を遂げお馴染みの姿になります。
一瞬モスラのように繭にでもなるのかと思いきやCGをふんだんに使って一瞬で姿を変えていきます。
最近のハリウッド映画はCG満載なので、観客も下手なCGでは納得してくれないと思うのですが、十分に観賞に耐えうるCGでした。

あえてミニチュア製作にこだわるのもCG技術ではハリウッドにかなわないからかもしれません。
または、CG満載映画に食傷気味の観客を狙っていたのかもしれません。

二度目の上陸。

二度目の上陸の後、お馴染みの伊福部昭氏の楽曲と共に東京駅に向かうことになります。

この時の、ゴジラの遠景が美しい。

まるで、緩やかな富士山の稜線を見ているような遠景です。
着ぐるみでは再現できない素晴しいクオリティでした。

テレビがアナログからデジタルに変わった最大の点は画面の縦横比が9対16になったことです。
ですが、それを意識させる映像作家は残念ながらいませんでした。
元々映画のスクリーンサイズが9対16だったためそれをそのまま採用したらしいのですが、テレビを観て育ち、テレビ作品ばかり作っている映像作家には9対16の縦横比は横に余分な空白が出来るだけで、面倒な規格変更でしかなかった筈です。
ところが本作では、その横幅にあうように尻尾も込みで映し出されます。
多少尻尾が長すぎるような感じもしますが、実に優雅に進むゴジラに感動しました。

また、上陸に伴い各ブロックごとに停電が発生するのも新鮮でした。
アメリカでは一箇所停電すると街全体が停電してしまうらしいのですが、この辺の停電に関する設定もおそらく現実の通電システムを踏襲しているのでしょう。
1954年公開のゴジラ第1作を彷彿させるぐらい暗い映像で、何が映っているのかわからなくなるようなシーンでは劇場に足を運ぶべきだったと悔やまれました。

自衛隊と戦闘(タバ作戦)。

自衛隊との戦闘は1954年版を彷彿とさせる戦車隊が火を噴きます。
1954年版は戦車がミニチュアでしたが、自衛隊の撮影協力により本物の映像やCGがふんだんに使われています。
急旋回する戦車の砲塔など迫力満点です。

またまたハリウッド映画との比較で申し訳ないのですが、ハリウッド映画では古くから飛行機やヘリが惜しげもなく登場してきます。
日本では自衛隊に関して風当りが強かったため長い間自衛隊の撮影協力が得られず、模型の戦闘機や秘密兵器がゴジラを攻撃するのが常でした。
私の記憶では「戦国自衛隊」で装甲車が出てきたぐらいです。
その装甲車も本物かどうかよく知りません。
ところが、本作では攻撃ヘリ、戦車、高射砲、駆逐艦などがCG合成かもしれませんが所狭しと登場します。
軍事オタクにはたまらない映像だらけでしょう。

米軍の登場。

自衛隊の攻撃は失敗に終わり米軍の登場。
米軍の攻撃でやっとゴジラに傷をつけることに成功した途端、ゴジラは火(放射線流)を噴きます。
私などは

「負けるなゴジラ」

と応援したくなったのですがこれまでのゴジラと違い口からだけでなく、背中や尻尾からも攻撃でき、しかも最初は不完全燃焼なのか、赤い火であるにもかかわらず、最後は巨神兵のごとくレーザーのような光線を発します。
これはもう庵野監督の趣味の世界で巨神兵をイメージしたのでしょう。

また、口の中を「エイリアン」のフェイスハガー(顔に取り付くエイリアンの幼生)のように丸い形状にしているのも流石。
テッポウウオも同じように直線的に水の噴射を行うことが出来ますが、確かテッポウウオは管のような器官から水を噴射していたので、ゴジラもそうなっている筈ですが、もしかしたら丸くなって何かを噴射する生物がいるかも知れません。

よく出来ているのは攻撃されて傷を負うまでゴジラは一切攻撃していなかった。ということ。
生物として攻撃されるまでは絶対に攻撃してきません。
威嚇する必要もないのか雄叫びを上げることもしませんでした。

休眠状態。

放射線流を噴いてガス欠したのか、休眠状態になります。
場所は東京駅。これが後の伏線になります。
作品としては小休止。
ただ、バリヤーともいえる監視システムが稼動しており近づく飛行物体はことごとく攻撃される模様。

休眠中とはいっても死んでいるわけではないので、糞だかなんだかよくわからない老廃物らしきものが落ちていたり、表皮の欠片が落ちたりするのはおそらく垢か何かなのでしょう。

これもある評論家が指摘していたことですが、ハリウッド映画では開始1時間するとド派手な戦闘が行われ、その戦闘で主人公は敗北します。
この作りはジャッキー・チェンの「酔拳」と同じ。
「酔拳」の作り方をハリウッドが真似たのか、その逆かは知りませんが、「ロッキー」「ダイハード」もこの体裁を取っているらしいです。

このことに70年代から2000年代に至るまで日本映画の監督の何人が気づいていたのか、日本映画は独自のストーリー展開で妙に理屈っぽくて、暗い作品ばかりだったように思います。
また、70年代から2000年代はスピルバーグ監督作品を筆頭にハリウッド映画がやたらもてはやされていた時期。
スピルバーグ監督作品の作り方を他のハリウッド監督が真似、それが普遍化したからこのような分析が出来るのかもしれません。

それはさておき特撮怪獣映画としては戦闘シーンばかりでは製作費が際限なくかさんでしまいます。
人間ドラマとしての体裁を整えることができ、敗北後の対応策も検討できるためゴジラの休眠はいわばお約束。

子供の頃は戦闘ばかりあってもいいのにと思っていましたが、やはりそれでは殺伐としすぎるし、メリハリがなくてクライマックスのインパクトが薄れてしまいます。
作劇としても必要不可欠な休眠状態といえるでしょう。

その間に東京都の住民350万人の避難を映像化しています。
輸送用ヘリも戦闘時と同じくCG合成か本物でしょう。
また高速道路の渋滞は実にリアルでよく出来たCGでした。

ヤシオリ作戦。

ゴジラの血液を固めて動けなくしてしまうという「ヤシオリ作戦」。
ウィキペディアによると「ヤシオリ作戦」の由来は、ヤマタノオロチを眠らせるために使用したお酒ヤシオリからきているらしいのですが、映像的にはゴジラの解析図をヤシのように折ったことから命名されたようにも見えます。

作戦はこれまたお馴染みの伊福部昭氏の楽曲と共に開始されます。
まずは無人運転による新幹線爆弾。
子供だましといってしまえばそれまでですが、巨大ロボットやどこぞの特命機関が作った秘密兵器よりもずっと現実味を帯びています。

ただ、ゴジラをメインに映像化したためと、ミニチュアによる新幹線だったため迫力に欠けました。
もっと電車を凶器のごとく重厚に映すことも可能だった筈ですが、JRから許可が降りなかったのでしょう。
それでも、1954年版では手に持たれ破壊されるだけだった電車を本作では武器として使うのは新鮮でした。
東京駅でゴジラが休眠していたのも偶然ではなく、実は必然だったという。
ゴジラの登場する所にまで注意が行き届いていて驚かされます。

特筆すべきは高層ビル群の破壊。
1977年に公開された「スターウォーズ」で多くの映像作家は度肝を抜かれましたが、この頃はまだ、爆発のエフェクトがCGで描かれているだけでした。
やっと最近日本のテレビドラマでもこれくらいの爆発エフェクトが苦もなく表現できるようになったので、50年ぐらい日本はハリウッドのCG技術に遅れをとっていたということになります。
後に「スターウォーズ 特別編」でCGが追加され爆発だけでなく爆発による破片も描かれるようになりました。
これも1999年に公開された「スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」の頃なので、15年以上も前になります。
そのクオリティにやっと日本の特撮技術が追いついたと見るべきでしょう。
特にビルが傾く際、ビル内のオフィス機材が床を滑るワンカットは秀逸でしたし、ゴジラに覆いかぶさるように高層ビルが倒れていく際、窓ガラスが一枚一枚丁寧に描かれていて、庵野監督らしい病的なまでのこだわりと、
「金かかってるなぁ」
と感じました。

血液凝固剤をクレーン車でゴジラに飲ませるのも実にレトロ。
1954年版にはなかったと思いますが、実際に運用されてしかるべき処置です。

一度は失敗しかかるも二の手、三の手を用意して最後は失敗したのではないか?
と思わせる演出も見事。

「エヴァンゲリオン」では、横からのアングルで政府高官を映していましたが、「タバ作戦」では政府高官が銀幕(中継される映像)を食い入るように見つめ、今回の「ヤシオリ作戦」でも政府高官が銀幕を食い入るように見つめています。

これも、素晴しい演出で、まさに固唾をのんで行く末を見つめている政府高官達と同じ心理状態に、観客の心理を誘導しているのです。

「ヤシオリ作戦」が成功し、目標(ゴジラ)が完全に沈黙しても敢えて歓声をあげない演出も素晴しい。
ハリウッド映画なら歓声をあげ、喜び抱きあうシーンをメインに持ってくる所ですが、一部の自衛隊員が喜んでいるだけで、そこはシニカルに冷静に淡々と物語は進んでいきます。

思うに、ゴジラを倒すことよりもゴジラに破壊された街並みを復旧することがメインだからでしょう。
そして冒頭ではハリウッド映画を意識した作りだったにも関わらず、最後は日本版ゴジラの面目を保ったと観ることも出来る作品であり、ゴジラを倒した後は現実の物語に戻すため、敢えてBGMが一切ないことも付け加えておきます。


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